学園アイドルマスター〜コスモスと青い不死鳥〜 作:kimberlite
(今回から6話くらい出てもちょい役止まり)
「プロデューサー契約の申請、受理いたしました。不備等がなければ、入学式後から有効になります」
「ありがとうございます。あさり先生」
ボイストレーニング室を出た秋桜は職員室で契約書を根緒亜紗里(ねおあさり)先生に提出している。
「次は生徒会室ですね」
「はい」
プロデューサー契約については職員室に申請するものだが、プロデューサーとアイドルがプロデュース契約を結ぶと、プロデューサー室として、空き教室を1つ貸し出してもらえるようになる。そして、その部屋の管理は職員室ではなく、生徒会で行なっているため、引き渡しは生徒会室で行われることになっている。
部室以上、事務所未満といったものだが、プロデューサーの存在はアイドル達にとって一種のステータスのようなものであり、貸し教室以外にも、奨学金の審査が通りやすくなる等様々な恩恵を受けることができる。
無論、プロデューサーの存在に胡座をかく、方針が合わない等伸び悩むアイドルも例年一定数は出てくるものだが、
(月村さんなら、大丈夫)
「はじめまして、生徒会長・十王星南(じゅうおうせな)よ」
秋桜が生徒会室に入ると、金髪の少女が直々に声をかけてくる。化粧品の広告で見たことはあっても、こうして対面するのは初めてだ。彼女の白いブレザーの間、彼女のタイに挟まっているピン、それこそが、
—学園最高のアイドル『一番星』(プリマステラ)の証—
「お茶をどうぞ」
星南にパーテーションで区切られた応接用のテーブルに案内されると、シニヨン気味のハーフアップにまとめた別の女生徒がお茶を淹れる。慣れた手際だ。きっとこうして多くの応対をしてきたのだろう。女生徒がパーテーションの外に出ると、星南が切り出す。
「まずは、入学おめでとうございます。長沢秋桜さん」
「どうも、ありがとうございます」
その時、パーテーションの外から、何かを落とす音が聞こえる。
「失礼しました!」
「莉波、そこで待ってなくて大丈夫よ」
星南にそう言われ、莉波と呼ばれた女性は脱兎のように、向こう側へと駆けて行った。
(今のがあきお……くん?同姓同名じゃなければ、そうだよね)
2人きりになったところで、星南が秋桜に切り出す。
「入学者名簿を見て、貴方に興味を持ったわ。今プロデューサー科に入学してきた中で、アイドルから転身してきたのは、あなたが唯一だったから」
「ご存知なんですか、私のこと」
『一番星』が興味を持たれていると思うと、秋桜としても嬉しくなる。
「……恥ずかしながら、調べるまで知らなかったわ。アイドルパワー100000以上の逸材が、まだ他にもいたなんて。喉の具合はどうかしら?」
「声に関してはこの通りですが、状態としては落ち着いてきました」
何を言ってるんだと思いつつ、現在の容体を聞かれ、秋桜は答える。
「そう、早速担当アイドルも見つかったみたいだし、プロデューサー室の件も生徒会で準備しておくわ」
「ありがとうございます」
部屋の件が一段落すると、星南のトーンがより真剣味を帯びる。
「これは、内緒にしてほしいのだけれど」
--私、卒業後はアイドルをやめてプロデューサーを目指すの--
星南の発言に、秋桜は言葉が出ない。
「そんなに、驚くようなことだった?」
「……なぜですか?」
秋桜は、絞り出すように星南に問う。
「初星学園には、私に負けない星々たちが日々育ちつつあるわ。あなたが担当する月村手毬もその1人。……私の才はここまで、トップアイドルにはなれない。だから、夢を託すことにしたの。自分の手でかつて夢見たトップアイドルを育てること。それが私の新しい夢、今のその準備期間というところね。だから、アイドルからプロデューサーに転向した先輩として、色々と教えてもらえないかしら」
なんと後向きなことを、これほど前向きに言うのだろう。しかも、目の前の相手は自分と違って、アイドルを悔いなくやり切ったと言わんばかりで、感情の湧き上がった秋桜は、先ほどまでとは違った女性のような声で荒げる。
「自分の夢は自分で叶えてください!!私は、まだ……」
刹那、秋桜が血を吐いてその場に倒れ込むと、物音に気がついた女生徒が駆けつけてくる。
「長沢さん!しっかり、莉波、この方を保健室へ」
秋桜は女生徒に肩をかけられながら、意識が遠のいていった。
--私はまだ、割り切れてなんてない--