学園アイドルマスター〜コスモスと青い不死鳥〜   作:kimberlite

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ギャルとお嬢様

 

 ある日の午後、春の柔らかな日差しと、暖かい陽気に包まれている初星学園のグラウンドを生徒たちが走っている。

(月村さんたちは別の班か、確か。学園の外を走っているはずだ)

 

 そんな走る生徒たちを横目に見ている生徒が一人、左手にスマホをぽちぽちといじりながら、右手で時折。膝の辺りを撫でている。

「うへぇ……あっつくるしー。やってらんないってまったくもー」

 

 秋桜は彼女に声をかける。

「あなたは参加しないのですか?」

「んー?ダルいしサボりー。あんたは?」

 

「長沢秋桜と言います。プロデューサー科のものです」

「マ、すっげーー!初めて見た。じゃあさ、Pっちがここにいるのは、誰か目当ての子がいるってこと?」

 彼女の反応からは、生徒にとってのプロデューサーというのがどんなものなのか、秋桜は改めて実感させられる。

 

「まあ、そんなところです。というか……Pっち?」

「うん、プロデューサーだから、Pっち♪……駄目?」

「いえ、別に構いませんが」

 彼女の勢いに乗せられ、つい呼び方を許す秋桜。自分はともかく、他のプロデューサーにはそう言わない方がいいかもしれない。

 

「やった♪……へへっ、Pっち、けっこー優しいーじゃん!あたしのことも清夏っちとか気安く呼んでよ。それと、Pっちに、お薦めの生徒を教えてあげよーっ!あそこで頑張って走ってるあの子、見えるよね?」

 清夏が指さした少女、リボンで編み込んだハーフアップの、日本人離れした風貌に秋桜は見覚えがあった。

「葛城リーリヤさんですか」

「お、Pっち知ってるんだ!お目が高いね。ちょっぴり体力はないし、かなり気弱なやつなんだけどさ、すごいやつなんだ。ぜったい、アイドル向いてると思う」

 清夏がそう太鼓判を押すように言うと、チャイムが鳴る。

 

「今日はここまで。各自休憩ののち、次のメニューへ移れ!」

 リーリヤたちのグループが、一斉に屋内へと動き出す。

 

「てか、別にいいじゃん。あたしのことは。目当ての子がいるんでしょう?」

「いえ、目当ては……」

 

「プロデューサー、待たせたな。話はなんだ」

 トレーナーが秋桜に気づいて、声をかける。

「お時間失礼いたします。月村さんのことについてですが……」

 

「あー、手毬っちのプロデューサーってPっちだったんだ。じゃねえ」

 清夏はそういうと、リーリヤたちを追って屋内へと向かう。

「はあ、紫雲のやつ。私のことが苦手なんだろうか、他のレッスンではサボってないようなのだが……。っと、月村のことだったな、私も今のアイツには思うところがある」

 そういうと、トレーナーは秋桜に最近の手毬について、報告し始める。

 

(トレーナーの見立てには、私も同意見、だけど……)

「きゅう……」

 トレーナーと今の手毬について話し合った秋桜は、プロデューサー室へと向かう途中、目の前で一人の少女が倒れ込む。秋桜には、その華奢なシルエットには見覚えがあった。

「篠澤さん!?」

 

 

「プロデューサー!?その子は?」

「月村さんこそ……」

(月村さんと一緒にいる子は……確か)

 広を保健室へと運んでいる途中、秋桜は手毬と出会う。手毬も秋桜同様、一人の少女を連れ、いや運んでいる。2組の倉本千奈(くらもとちな)、かつては世界一の金持ちとも称された倉本グループの孫娘。試験では、ブービーの広をも下回る最下位合格だったと聞く。

 

「先生は、いないみたいだね……はぁ」

(不用心だな、でもせっかくだから)

 4人が保健室に入ると、秋桜は机の上に目をやる。華奢を通り越して折れそうなほどか細い広、明らかに鍛錬不足でぷにっとしている千奈、この2人をベッドで寝かせてから、秋桜はこれはチャンスとばかりに何かを探し始めた。手毬は肩で息をしながら、秋桜に尋ねる。

 

「あのさ、プロデューサー。このまま放置するのも不安だし、見ていてもいいかな?」

「はい、大丈夫ですよ」

 秋桜は見つけた1枚の用紙に目を通しながら、手毬の頼みを了承する。

 

(これは、早めに手を打つ必要があるな)

 

「あら、長沢さん」

「あさり先生、こんばんは」

 帰り道のスーパーで、秋桜はあさりと出会う。

 

「意外ですね、先生もここで買い物なさるんですか?」

「もしかしてわたし、タイムセールの惣菜を大食いする先生だと思われてます?お昼ご飯を食べそびれちゃっただけなんですからね!」

(意外って、惣菜コーナーじゃなくて、スーパーのことだったんだけど……)

 必死になるあさり先生の買い物籠を見ると、タイムセールの惣菜は確かにないが、なぜかいくつものカツサンドがある。

 

「先生、これは……?」

「こ、これは……その。きみの担当アイドルに購買のカツサンド、最後の1個を買われちゃって」

 あさりが、昼食へありつけなかった時のことを思い返しながら話す。無念さと食べ物の怨嗟が伝わってくる。

 

「健診直後で何食か抜いていたとはいえ、あんな幸せそうにカツサンドを頬張る人は初めて見ました。彼女、あんな一面もあるんですね」

「あれ、高等部の健診ってバリウム飲みましたっけ?」

 秋桜があさりに何気なく質問した時、何かを閃いてハッとする。

 

「先生、ありがとうございました!」

 あさりに頭を下げてから急いで品物を追加し、会計を終えるとどこかへ電話をかける。

 

「もしもし、お父さん?家にあったクーラーボックスとタッパー、今から取りに行ってもいいかな?」

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