マーリンなオリ主と降谷零   作:ラムセス_

22 / 81
時計じかけの摩天楼終

 

 コナンくんの発案で、連続放火事件と爆破事件の被害、全てが森谷帝二の設計した建築物だということが判明した。

 

 つまりこれは一般的に見れば被害者森谷帝二、そしてそれを恨む犯人という構図になるが……。

 私の千里眼では、この男が爆弾を仕掛けて回っていたことはよく見えている。

 

 意味のわからないことだ。

 なぜ自分の作品を爆破するのやら。

 制作を嗜む身として制作物が気に食わないことぐらいあるが、所詮それは主観的な評価だ。

 評価とは他人が下すもの。この男はどこまで行っても自己愛しかないということだろう。

 

 退院のための手続きをしながら、コナン君がうろうろと受付内を歩いた。

 毛利探偵は目暮警部に呼ばれていないし、蘭さんは今日のデートのためにもう出ていっている。

 

 コナンくんが降谷くんを見上げて言った。

 

「今頃公安も森谷さんから話を聞いてるんだよね。ねぇ、安室さん口利きできるでしょ、僕も行きたい!」

「だーめー。というか君はほんとそろそろ蘭さんに断りの連絡を入れなさい。ドタキャンは最悪だよ」

「いやっでも何か奇跡が起こって新一兄ちゃんが来られるようになるかもしれないし!」

「ないでしょ。君破局しても知らないよ?」

「ぁぁぁぁあああ」

 

 絶望の表情でコナンくんは膝をついた。

 本人として誕生日オールナイト映画デートに死ぬほど行きたいのだろう。

 でもいけないものは仕方ないし。

 

 哀れになったのか降谷くんが私に問いかけてきた。

 

『なぁマーリン、彼をなんとかすることってできるのか?』

『無理だね。魔術で下手に手を加えてエネルギーが逆噴射したらとんでもないよ。彼がデートへ行けないことは確定してる』

『可哀想に……』

 

 降谷くんは這いつくばってメソメソするコナンくんに10円玉を供え、そのままナムナムした。

 べしっと10円玉をリターンしてコナンくんは憤慨したようだった。

 祈ったのになんで!と被害者顔の愉快犯降谷くんを添えて。

 

「でもなんかしっくりこないんだよね。どうして森谷さんの建物ばかり狙われるのか」

「森谷帝二に恨みを持ったものの犯行じゃないのかい?」

「いや、それ以外になにか共通点が………あるような………」

 

 コナンくんは考え込んでいる。

 降谷くんが首を捻って私に声をかけた。

 

『マーリン、彼のいうことに心当たりは?』

『もちろん。それはつまり』

 

「「───非対称。爆破された建物は、ぜんぶ左右非対称だ」」

 

 またコナンくんに先を越されてしまったようだ。

 私の声とコナンくんの声は、ほぼ重なって聞こえていたことだろう。

 さすがは国民的推理マンガの主人公。

 推理の速度は本当ピカイチなんだよな。

 

 そのまま芋蔓式に推理は進んでいくらしい。

 顔色を青くしてコナンくんは立ち上がった。

 

「ということは、じゃあ……俺に電話をかけてきたのも西多摩市の件で、あの時………蘭が危ない!!!」

「おっと」

 

 駆け出したコナンくんの首根っこを掴んで降谷くんが静止した。

 

「どこか行きたいんなら僕が送るが」

「安室さん!」

「あのとんでもないスケボーを夜間に乗り回すのはやめてくれ。大日本帝国民の迷惑になる」

「米花シティビルだ!早く米花シティビルに行かないと!」

 

 喚くコナンくんを抱え上げ、降谷くんは「すみません、急用でこの手続き明日にしてください!」ととんでもないことを言い置いてから駆け出した。

 看護婦さんが絶望の顔で走って呼び止めようとしている。

 

「ひとまず行こう。だがありうるのか、自分の手がけた建築物を、不出来だからという理由で多くの人間ごと爆破するなんて」

「さあね。証拠不十分だから公安のおじさんには言えないかな」

「なるほど。だが確かめるには十分だ。お手柄だコナン君!少々運転は荒くなるぞ!」

 

 

 最高速で到着した米花シティビルは、いつも通り多くの人の出入りするデパートであった。

 幸いにも警察に車を止められることもなく、暴走車両は立体駐車場に入ることができた。

 運転が荒いって、文字通り荒れ狂う奴があるか。

 

「蘭さんの話を森谷帝二は聞いていた。その上で、計画を邪魔された奴が当てつけをすることは十分考えられるということか」

「うん。だとしたら映画館だね。下手したら時間も合わせてくるかな」

「こんな自己愛の権化のようなことを考える男だ。何をしてきてもおかしくないさ」

 

 軽く小走りして周囲を見渡し、降谷くんが眉間に皺を寄せる。

 

『マーリン、爆弾の場所を頼む』

『だんだんSiriの気持ちになってきた私だよ。映画チケット売り場の燃えるゴミのゴミ箱の中に一つ。さらに大きいものが廊下の椅子の陰に一つ。それで全部だね』

『助かる!』

 

 どうやら降谷くんは誤って財布をゴミ箱に捨ててしまった人を演じることにしたらしい。

 係員さんに言って、付き添いでゴミ箱の中を調べていっている。

 コナンくんは別の場所を探しているようだ。

 

『降谷くん、ゴミ箱爆弾の残り時間は15分だ。分解は間に合うかい?』

『設計次第だな。マーリンは知識はあるか』

『あいにく爆弾の知識は無いなぁ。いざとなったらアヴァロンに転送することぐらいはできるけど』

『最後の手段にしておこう』

 

 ゴミ箱の中から爆弾が出てきた頃には、残り13分を切っていた。

 ごついこれ見よがしなカウントダウン画面に、受付さんが仰天して悲鳴をあげている。

 周囲の人も「ばっ、爆弾だァァアアア!」とさけんで三々五々に逃げ出してしまった。

 もうめちゃくちゃだ。

 コナンくんが駆け寄ってきて叫んだ。

 

「見つけた!?」

「小さいのはね。これは出入り口を塞ぐためで、位置的に本命が他にあると思う。コナンくんはそちらを頼む!」

「わかった!」

 

 蓋を開けてすぐに降谷くんは歯噛みしたらしい。

 構造が一般的なものと違いすぎる、と小声で悪態をつく。

 

 森谷という男は爆弾を構造からなにまで自作したらしく、量産品とまるで異なる設計の爆弾となっていたようだ。

 すなわち、設計図がなければ太刀打ちできないということを意味する。

 

『それか、魔術で急激に冷やすことぐらいはできるよ』

『……10年ほど前から対冷却システム付きが流行っている。この場で爆発する危険があるからそれはできない』

『なるほど、とすると……』

 

 私はううむと首を捻った。

 

『食べてしまおうか』

『なに?』

 

 私は夢魔として感情を食べることができる。

 それ即ち、概念的なエネルギーを食べられるという意味だ。

 

『爆発をオドに変換して吸収する。まあ、できなくは無い試みだね』

『それでどの程度爆発の影響を縮小させられるんだ?』

『この爆弾ぐらいならクラッカーみたいな爆発になるよ。私は激マズ飯に吐きそうになる』

『すまないがやってくれ。口直しのコーヒーは作るから』

『仕方ないなぁ』

 

 ひとのみ。

 ごくんと魔術的に取り出したエネルギーを私は飲み込んだ。

 オゲー!!!まっず!!!

 

 次いで、降谷くんが乱雑に配線を切る。

 反応してパンっと弾けるが、光も上がらないスカのような爆発だった。

 

 そのままコナンくんのところへ向かえば、既に爆弾は見つけていたらしい。

 警察に電話をかけていて、その声は叫ぶような類のものになっていた。

 

 爆弾のタイマーは40分後。

 十分に機動隊が到着するのを待てる時間だ。

 

「だから爆弾があるんだって!」

『子供がこんな悪戯をしちゃダメだろう?お母さんに代わりなさい!』

「だから今それどころじゃないんだ!!」

 

 押し問答だ。可哀想に、ハナから信じられていないらしい。

 降谷くんが電話をもぎ取って押し殺したような怒声で応答した。

 

「保護者です。米花シティビルシネマ1で爆弾が発見され、今現場はパニック状態です。今すぐに避難誘導をお願いします。既に一つ破裂済みです」

『は……』

「では、お願いします」

 

 そのままコナンくんに電話を押し付けて、自らスマホを取り出した。

 電話先は部下の風見くんのようだ。

 

「風見、聞こえるか」

『降谷さんですか、今森谷帝二に聞き取り調査を行っていて…』

「次の爆弾が見つかった。米花シティビル6階の映画館だ。片方は時間が間もないから処理したが、もう片方の爆破は40分後。爆発物処理班を向かわせてくれ」

『!?!?!?は、はいっ!』

「それと、森谷には人員を張り付けろ。おそらく奴が犯人だ。泳がせればボロを出す」

『わ、わかりました』

「頼んだぞ」

 

 スマホを下ろして降谷くんは息をついた。

 

「子供の姿というのはつくづく不便だな。まさか110番を悪戯だと思われるとは」

「ほんっとーに早く大きくなりたいよ。わかる安室さん?僕を労って風見って公安のおじさん紹介して」

「強かすぎるだろ。風見の繊細な心臓が破裂したら可哀想だからダメだ」

「僕のことコブラか何かだと思ってる???」

 

 二人はくすくすと笑い合い、それからコナンくんがさりげなさを装って質問した。

 

「ところで、安室さんがよく言ってるマーリンって誰のこと?部下の人?」

「友達だよ。大切な友達。いつか君にも紹介したいな」

「安室さんって僕以外に友達いたんだ。すごくアクが強いから友達とかいないものだと」

「失礼だぞ君!!!僕だって親友の一人くらいはいるんだ」

 

 などと会話しているあたりで、遠くから「新一!新一!!!」と声が聞こえてくる。

 どうやら蘭ちゃんが中に来てしまったらしい。

 

「蘭姉ちゃん!?どうしてここに!」

「ここは危険です!外は立ち入り規制されていませんでしたか?」

「え…なにかたくさん人が出てきて人だかりはできてたけど…」

 

 「まだ動いていないのか!!」と降谷さんが怒り心頭の表情をした。

 あれからまだ5分ぐらいだし、状況の確認とかしていたら仕方ないとは思うのだが。

 自分の指示が5分以内に実行されていないことに降谷警視はご立腹らしい。

 

 その時である。

 ビビッ、という音を立てて、残る一つの爆弾が遠隔操作された。

 

 表示された残り時間は15秒。

 

 一瞬、皆の表情が消え失せる。

 

「走れ!!!」

 

 コナンくんの声に、降谷くんが蘭さんを抱えて非常階段の扉を乱暴に開けた。

 残り12秒。

 固有時制御で30秒に変更。

 

 1階まで階段を駆け降りたあたりで、爆弾が破裂する。

 蘭ちゃんはコナンくんを咄嗟に抱きしめて、そのまま押し出されるように建物の外へ。

 

 なんとか無事に脱出成功。

 ビル側の避難誘導により館内に残っていた人間も少なく、被害は最小限に抑えられたのであった。

 





・コナン君
降谷のことを「怪しげな公安のお兄さん」として慕っている。
一般的な人名のため、まだマーリンのことは実在する人だと思ってる。
マーリンという酒はある。
次回!灰原さん登場!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。