マーリンなオリ主と降谷零   作:ラムセス_

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啓示

 

 コナンが「ちょっと相談したいことがあって」と言えば、降谷は素直に風見裕也の連絡先を渡してくれた。

 

 コナンのことを信じ切っているようだ。

 その瞳には信頼と友愛とが滲んでいる。

 騙すようで気が引けたが、これも彼をよく知るための処置である。

 

 

 風見裕也を呼び出した公園で、コナンはブランコに腰を落ち着けて静かにその時を待っていた。

 

 夕日がビルの合間から差し込んでいる。

 眩しい光だ。コナンは目を覆って空を見上げた。

 赤く染まった空が鮮やかに重苦しい血色を示している。

 

 空の彼方に夜が迫っている。

 

 いつのまにか公園の淵に風見が立っていた。

 公安警察で、恐らくは降谷の部下。

 そのままコナンの方に歩み寄って、巌のような声を出す。

 

「何のようだ」

「安室さんについて相談があって」

 

 コナンの言葉に、風見は身を固くしたようだった。

 電話口では、大事な話があるからこの時間に公園まで来てほしいというだけだった。

 電話番号を知っている、ということを重く見て風見は来たようだが、まだ警戒は解いていないらしい。

 無言で圧のある視線が先を促した。

 

「安室さんって公安の人でしょ。たぶん風見さんの上司かな。警保局保安課の人だと思うけど」

「………」

「別に答えなくていいよ。答える権限もないだろうし。それより、安室さんの精神的不調について話を聞きたいんだけど」

「!!!」

 

 風見が肩を跳ね上げたのを見て、やはり公安の方でも把握はしているのだろうとコナンは思うだ。

 それはそうだ。

 あんな明白に心のバランスを崩していて、仕事に支障が出ないはずがない。

 

「僕の方では、彼が空想に取り憑かれていること、それが二年前を契機にしていることは把握してる」

「…………なぜ」

「安室さんが自分から打ち明けてくれたんだ。信頼してくれてるみたい」

 

 考え込む風見は冷や汗を一筋、焦りを露わにしている。

 だがそれだけの信頼を安室から得たのだろうと理解して、風見は拳を握りしめた。

 沈黙が場を満たす。

 

 数秒、息づかいと拳の軋む音、そしてためらいがちに口を開く。

 

「あの人は………人殺しだ」

「知ってる」

「だが上の覚えが非常にめでたい。彼の言葉は迅速に叶えられ、あらゆる汚点は隠される」

「権力者の血縁か何か?」

「分からない。ただ、同時に彼はああまで狂い切っているというのに任務の続行を命じられ、そしてそれを狂ったままで遂行し続ける力を持っている」

 

 風見は視線を下に向けた。

 言い淀むように、重苦しい息をついて瞳を伏せる。

 

「優秀な人だ。誰よりも。だから二年前、同じ捜査官の殉職に耐えきれなかった。幼馴染だったとも聞いている」

「…………あの人の殺人を隠蔽しているのは公安?」

「組織での悪事は彼が自ら始末している。それは潜入捜査官共通のルールだ」

「そう」

 

 組織ぐるみでないなら、まだ救いはありそうだ。

 そのようにコナンは思った。

 彼の救いとして、真実を明らかにするのが義務だと思ったから。

 それが灰原哀の救いになるとは限らないけれど。

 

 灰原哀のことを思い、コナンは歯噛みした。

 

 刑法第三十九条、心神喪失者の行為は、罰しない。

 同二項、心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する

 …………。

 だからといって、唯一の肉親を殺されて納得できるものではないのだ。

 

 しばらく、コナンは風見と共に情報交換した。

 安室の妄想について傾向とそれが意図するところを把握するためだ。

 

 彼は寝ると夢を見る。

 そこをアヴァロンと名付け、本物の世界だと誤認している。

 アヴァロンでは死者が平和に暮らし、彼に微笑みかける。

 その住人はいずれアヴァロンから出て来て、再び現世で生活するのだという。

 

「あの人の望みが、そういうことなんだね。死者にもう一度会いたいんだ」

「そうだと私も思う。ささやかな望みだ。誰もが望む夢の具現だ」

 

 それだけの喪失と向き合った結果が、これなのだろう。

 救われない、とコナンは思った。

 

 夕日が夜に飲み込まれていく。

 もうそろそろ帰らねば蘭に心配されてしまうだろう。

 コナンはトン、とブランコから降りて夜色の空を見上げた。

 

 まだ答えは出ない。

 灰原の憤り、安室の悲哀、真実の在処。

 

 全てを納得させられる答えを探るため、もう少し時間がかかりそうだった。

 

 

 

 

 

 

『えっとね!もうね!絶対私の指示に従ってね!いい!?』

 

 脳内ナザレの親友がてきぱきと指示を出しているので、私はうむ、と頷いた。

 

 諸伏くんに決められた項目全てを過不足なく伝える。

 宮野さんに同じく伝えて、現実に下す作業をトップスピードで行う。

 宮野志保に決められた日数続く指向制御平面で魔術的防護を固める。

 エトセトラ。

 

 これぞ私が普段使っていない奥義、「啓示EX」である。

 

 私が2000年前、死にゆく親友に授けられた規格外の能力にして、目標達成への道導。

 普段はオフ状態で喋る親友をやっているが、本当はなかなかの優れものだ。

 

 天からの声を聞き取り、直感さながらの正確さで目標に対する筋道をつける。

 それは正確無比で、未来予知にすらなるだろう。

 だが根拠がないため最短でも最良でもない。

 間に不純物が混じっていても取り除けないから、そのまま丸ごと従うしかないのである。

 

 ようは型月的な意味合いで「未来測定」……すなわち自分の行動で未来を固定する異能に近い。

 あれだ、乱数調整だ。

 だから私の行動にも意味不明な要素が混じる。

 壁に向かって15歩歩いてバックからポーション出して戻して出して戻して。

 

『あのね!こんなになるまで私に頼らないのはどうかと思うの!お説教が嫌だからってミュートにするとか酷くない!?』

 

 脳内ナザレの親友が喚いているのでむっつりしつつ、一度起動した以上指示には従わねばならんため態度で不服を表明する。

 だってぇ、親友口数多くてめんどくさいしぃ。説教臭いしぃ。ぶつぶつ。

 

 あっ眩しッ!!!

 抗議の意思を光で示さないで眩しい!!!!

 

『今は絶対に宮野妹さんに姉生存を伝えちゃダメだからね。最低限の二つの塔が爆発してからでないと、お姉さん死んじゃうから!』

「えっ何それ怖い」

『それと黒い魚が顔を出す前に再会させないと妹さん自害しちゃうから気をつけて!』

「繊細だななんか!!!」

 

 フラグ管理めんどくせー!!!

 だから嫌なんだよ啓示EX!見えすぎて自分ががんじがらめに縛られるんだよな!

 

 何だか危険な予感がしたから久しぶりに起動したが、やっぱり下手に手を出すと大火傷する案件だったらしい。

 

 軟着陸させるのに苦労しつつ、私は大きなため息をついたのだった。

 





・宮野明美生存
実は伝えるタイミングが非常に難しい。
主に季節外れのハロウィンパーティと天国へのカウントダウンに関わってきて、死亡フラグと密接に関わってくる。
測定した以上、お告げを無視して無理やり未来を変更するのが非常に難しい。

・啓示EX→A---
正確な認識ではないので大幅にランクダウンしている。
本当は救世主の分霊が助言しているし、啓示は未来測定などよりもっと融通のきく能力である。
救世主「マーリンって鈍感だから私のことちっとも気づかないんだよね」
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