なんか加速度がついて本日三話目。
次、すなわちプロゴルファーの辻弘樹さんの場所へ向かう道すがら。
毛利探偵はむむうと唸って降谷くんを見た。
「本当に見てないのか安室君、犯人の顔とか」
「残念ながら……フルフェイスのヘルメットを被っていましたし、ライダージャケットで体格も分かりづらかった。僕くらいの男性の可能性が高いな、という程度です」
「そうか……」
毛利探偵が後部座席で深々と頭を下げ、真摯に謝罪する。
「すまん。俺のせいで危険に晒した。君は村上丈とは何も関係ないってのに」
「!!頭をあげてください!毛利先生のせいじゃありませんよ!」
「それでもだ」
村上丈とは、今回の犯人と目されている男だ。
最近出所しているが、以前毛利探偵が警察官をしていた時に逮捕されて恨みを叫んでいたことが記録されている。
復讐に動き出した、というのが今の所の警視庁の見立てらしい。
でも、もしそれが本当だとしたら毛利探偵の責任は全くない逆恨みである。
だというのに頭を下げ、毛利探偵は真摯に降谷君を心配している。
降谷くんは困ったような顔をして、それでも嬉しさを隠しきれずに微笑んだ。
こんな風に誠実な人間がいることに喜びが抑えきれないのだろう。
隣で狭そうにしてるコナンくんに「何で嬉しそうなの」と聞かれている。
さて、話を巻くとして、降谷くんたちはヘリに乗ることになるわけだ。
というか命が狙われているというのに平然と飛行機に乗ろうとする辻とかいう人物も豪胆なものだ。
生粋の陽キャというか、良くも悪くもデリカシーのないタイプの人間なのだろう。
助手席に降谷くん、後部座席に目暮警部とコナン君を乗せてのフライトである。
毛利探偵は狙われている当人ということで一旦お休み。
結構押し問答があったが、降谷くんが「体格だけでも見てますから、犯人がいればわかることもあるかもしれない」と言って押し切った形だ。
コナンくんは安心安定の密航である。
降谷くんが航空機用ヘッドセット越しに声をかけた。
「コナン君、ほんと体張るよね。後から毛利探偵にしこたまぶたれるに決まってるのに」
「ねぇ!安室さぁん!おねがぁい!」
「仕方ないなぁ。今度知恵を貸して欲しい案件があるからそれで助け舟を出すよ」
「やりぃ!」
「これ、ワシにも聞こえとるんだぞそこ。安室君も止めんか」
目暮警部に一喝され、二人は同時にシュンとなった。
最近では毛利探偵に悪ガキ二人組扱いされている節がないでもない。
辻さんが「ははは、子供はヤンチャなぐらいがちょうどいいんですよ!」と言いながら運転している。
のんびりと都会の絶景が窓の外に広がり、降谷くんがぽやっとした声を出した。
『そういえばマーリンは飛べるのか?魔法使いといえば箒に乗って空を飛ぶのが定番だが』
『飛べるよ。でも飛行魔術ってのは難儀なものでね、燃費が悪いところがある』
型月では有名な話だ。
重さに対して飛ぶための魔力が指数関数的に上昇していく関係で、人一人飛ぶには馬鹿みたいにコストがかかることとなる。
例外はいくつかあって、プリズマイリヤのカレイドステッキなんかが代表的だろう。
あれはアホほど魔力があれば自由自在に空が飛べるという話だ。
あと「トーコ・トラベル」という目的地にゴムをくっつけて引っ張る方式があったか。
ちなみに私は妖精の理論で思いのままに空を飛ぶタイプである。
そもそも悪魔は空を飛ぶものだ。夢魔たる私が空を飛んでも何らおかしくない。
降谷くんがふうむと瞬いて思案した。
『僕が自在に空を飛べれば…跳べずとも浮遊さえできれば、色々な制約を無視して逃走や進入経路に使えるんだがな』
『今度やってみるかい?空中浮遊。あーくまのちからー身にーつーけたー』
『歌うのやめてくれないか。別件になってるじゃないか。
デビルアイ搭載。強化魔術でデビルキックもお手のもの。
数万度のビームはちょっと大変だが、だいたいの能力は真似できそうだ。
なんてくだらない話をしている間に辻さんの容態が急変。
目がー!とムスカのような叫び声を上げながらヘリが急降下した。
おあーーっ!!!と悲鳴を上げる目暮警部を尻目に、降谷さんが慌てて機首を上に引き上げる。
「どうされました!?」
「ま、眩しくて目が開けられない!!目が痛いんだ!」
「っ、散瞳剤だ!安室さん!ヘリの運転できる!?」
「自家用操縦士資格なら持ってる!辻さん、代わります!」
「すまない…」
ここにヘリの運転技能を有する人間がいたのは不幸中の幸いだろう。
ゆっくりと通常航路に戻りながら、コナンくんは苦笑いしたようだった。
「安室さん高級車乗り回しててヘリコプター免許持ってて時々ハイブランドの服着てて、実家太いけど家出してきた説がすごく濃厚になってるよね」
「そんな。目暮警部も聞いてるんだよ」
「でも園子姉ちゃんも『あの人は間違いなくパーティ慣れしてる。ハイソサエティの渡り方を知ってるタイプよ』って言ってた」
「本当にただの趣味なのに」
降谷くんは乙女のように恥じらった。
ちなみに真相は業務上必要そうだったからとのことなので、本当に根っからの嘘つきである。
目暮警部が「何でワシを引き合いに出すんだ。ともかくコナンくんについては毛利くんにキッチリ説明するからな」と目を三角にしている。
「そういえば安室さん、この間のマギ⭐︎マリのライブ行けた?」
「急になんだい。君がアイドルに興味があるようには見えないけど」
「その言葉そっくりそのまま返すよ」
コナンくんが目暮警部に命乞いのポーズをしながら平然と言葉を続ける。
「毛利のおじさんが敵情視察でちょっと近くまで行ったらしいんだ」
「て、敵情視察かぁ」
「麗しきヨーコちゃんのライバルになるんじゃないかってトゲトゲしてた。それで偶然、僕がライブ会場に入っていく安室さんを見たんだけど」
「知らないなぁ。よく似た別人じゃないかい?」
「安室さんのカラーリングでよく似た別人いたら変でしょ」
まっすぐなコナンくんの言葉に降谷くんは憤慨したらしい。
ポコポコ怒って口をへの字に曲げた。
「変とは何だ変とは。僕のセンシティブなところをいじめて楽しいかい?」
「センシティブなつもりなら一発芸山姥ファッションは無いでしょ。僕軽口叩いていいのかかなり迷ったよ」
「まあ色とか些細な問題だよね。人に覚えられやすいのは明確な欠点だけど」
「それでマギ⭐︎マリの件なんだけど」
「その話はすでに営業終了したのでまたのお越しをお待ちしております」
「勝手に閉店しないで」
目暮警部が「君ら、仲良いな、こんな状況で」と呆れたような顔になる。
コナンくんは少しだけ躊躇ったが、それはわずかな間だけだった。
二人はニコッとして「まあね」とだけ声を揃えて答えたのだった。
・コナンくん
その善性が確かだからこそ、探偵として真実を明らかにして、正しく法の裁きを受けさせようと決意する。
要望があればマギ⭐︎マリライブ編を投稿しようかな…。