マーリンなオリ主と降谷零   作:ラムセス_

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おまけ:マギ⭐︎マリ旧国立競技場ライブ!前編!

 

 今、私は楽屋裏にいる。

 

 今日はついにビッグイベント、マギ⭐︎マリ旧国立競技場ライブイベント「♡Milky Way Dream♡」の当日である。

 

 私のような小さい規模の事務所がさばくのは本当に大変だった。

 

 一応、私の事務所は法人化している。

 酒類製造免許の取得の時にも使用した法人で、私が代表取締役社長になっている。

 つまり社長としての仕事もせねばならんということで、時々私はハードなスケジュールに目を回すことになるわけだが。

 

 教皇庁が回してくれたマネージャーさんを添えて、あとは数名の事務スタッフ。

 それ以外は外注で賄っている。

 

 マネージャーさんが扉をノックして、恐る恐る入室して来た。

 

「カメルレンゴ(ローマ教皇秘書長)が聖マーリンにご挨拶申し上げたいとのことです」

「おや、またか。彼も忙しいだろうに。わかった、案内してあげて」

「かしこまりました」

 

 すごく小さくなってソソソ、とマネージャーさんが退出していく。

 

 マネージャーさんは霊感……というか霊視の類があるようで。

 私と初めて会った時、飛び上がってびっくりしてその場で五体投地しかねん状態になったのだ。

 敬虔なクリスチャンで、私にも低い姿勢を貫いている。

 

 もっと気安く話してもいいんだがなぁ。

 

 しばらくすると、小さくノックが部屋に響いた。

 どうぞ、と扉の向こうに声をかける。

 

 入室して来たのは品のいい老齢の白人男性だった。

 

「お忙しいところ失礼致します。聖下より、あなたにご挨拶申し上げるよう仰せつかっております」

「ピウスからの手紙はこのあいだ貰ったよ?」

「聖下はあなた様がこの公演を大切にしていることをご存知ですので」

「まいったなぁ」

 

 秘書長は恭しく祈りの仕草をした。

 会話はヘブライ語だ。

 私と会話する時の作法として2000年間、これが使われている。

 

 カメルレンゴは、ローマ教皇庁の役職でローマ教皇の秘書長のことを指す。

 一般的には使徒座空位の時に特別な職務を果たす役職だが、私との極秘連絡窓口も兼ねている。

 

 そして、彼の腰もそんなに軽く無い。

 だからこの訪問も何か重大な意味があるとは思うのだが。

 

「先週の配信も素晴らしく、心震えるものでした。聖下も感動の涙を流しておりましたとも」

「涙腺が緩くないかい…?」

「とんでもない!聖マーリンと主の聖書にすら記されぬ会話を耳にできたのですから。これに涙せぬ信徒はおらぬことでしょう」

「ただの昔話だよ。でもそうだね、彼の言葉はいつだって人々の心を優しく包み込んでくれた。偉大な男だった」

 

 私は少しだけしんみりした。

 親友が死んで約2000年。

 今思い返してみても、彼に助けられぬ日はなかったと思える。

 

『トゥンク。マーリンが私のこと考えてくれてる。自己肯定感上がりそう』

 

 身も蓋もねぇ啓示EXが勝手なことを抜かしている。

 かっ、勘違いしないでよね!あんたのことなんてなんとも思ってないんだからね!

 

 ともかく、本題を確認することとする。

 

「それで、そろそろ何があったか話してくれるかい?」

「………実は一つ、ご相談がありまして」

 

 秘書長は声を低く、密やかにした。

 

「聖座平和分析局からの報告で、エチオピア北部で紛争の兆候あり、と。武力衝突があったようです」

「おや。あそこはしばらく持つと思ったが……もうか。わかった、私が介入しよう。ただ、夢で全て解決するとは思わないようにね」

「勿論でございます」

 

 聖座平和分析局は、世界各地の紛争や難民危機を分析して教皇の外交判断を支える専門部署。

 ……という名目の、私の介入を進言するための情報機関である。

 私の夢での介入についてまとめた極秘部門もあり、まさに秘密機関と言えるだろう。

 

 しばらくの沈黙の後、秘書長は顔を綻ばせて頷いた。

 

「きっと、主もあなた様の活動を祝福しておられます」

「でも際どい服着て踊るのは彼は泣くよ。その辺彼は身持ち固かったから」

「なんとかならないのですか…その…スカート丈などは……」

「生足の方が盛り上がるよ。実はこの姿、彼にも昔見せたことあるんだ」

「しゅ、主にそのお姿を見せられたのですか!?」

「混乱はしてた。でも体調崩すからお腹は冷やさないでねって言われただけ。本当に優しいんだよ、彼は」

 

 秘書長難しい顔をして、ややためらうように口を開いた。

 

「こう言っては不敬かもしれませんが、あなた様の語る主は只人のような、不思議な温もりが感じられますね」

「あの頃の彼は生きていたからね。生きていれば温もりもある。夕飯の話も旅の話も怖い話もした。富はなかったが、心は豊かだった」

 

 私はふわりと笑顔を作った。

 

「だからこの活動も、その時の熱が少しでも伝わればと思って歌って話そう。応援しておくれ」

「勿論でございます、聖マーリン」

 

 

 

 そろそろ時間だ。

 舞台に上がれば、ファンからの歓声と絶叫が会場を満たした。

 

 今の私の姿はレディ・アヴァロンの衣装を舞台映えするように多少手直しした派手な服装だ。

 ミニスカートに黒タイツが鮮烈に人の心を惹きつける。

 夢魔なのだから、そういう視線は慣れっこだ。

 

「みんなー!マギ⭐︎マリだよっ!元気にしてるかい?」

 

 私がマイクで叫べば、野太い歓声が響いた。

 会場を見渡せば、なかなかに女性客も多い。

 お悩み相談室の客層も結構女性も多かったし、意外と男女両方の客をつかめているのかもしれない。

 

 所々、表情の険しいおじさんが歩いていて公安であることが察せられた。

 あんまり空気を固くしないでほしいんだが、彼らの目を惹きつけられるほどのステージできれば成功だろう。

 彼ら的には任務失敗で大目玉かもしれないが。

 

 バルコニー席でSPに固められた法王様がほくほく笑顔をしている。

 純粋に舞台を楽しみにしてくれているようで何よりだ。

 隠れてお悩みレターも送ってくれて来ていたし、法王という席も苦労が大きいのだろう。

 純粋に忙しくて疲れるのもあるかもしれない。

 

 お、降谷くんの姿も発見。

 仕事中のバーボンのような目立たない黒服でトイレの前あたりに寄りかかっている。

 

 ライブは今、始まったばかりである。

 





・聖座平和分析局
一応公的な情報機関。
「永遠の証人局」とも呼ばれていて、集めた情報をマーリン主に送ることを「証人にご報告申し上げる」と言う隠語を使う。

・マネージャー
信のおける信徒ということで送り込まれた。
主と漫才かます聖マーリンという構図に畏れ多すぎて会話ができない。
仕事熱心だがマーリンと会話する時だけ声めっちゃちっちゃい。
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