マーリンなオリ主と降谷零   作:ラムセス_

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迷宮の十字路①

 

 山能寺という寺から依頼があって、はるばる京都までやってきている。

 

 毛利探偵、その弟子である降谷くん、そしてコナンくんに蘭ちゃんがパーティメンバーだ。

 

 依頼は盗まれた仏像に関することだ。

 盗まれたのは八年前で、なんと縁があれば帰って来るからと警察にも届けなかった筋金入りの諸行無常論者である。

 

 通された和室で正座し、降谷くんがここで働くお坊さんをじっと見た。

 

「それなら何故今になって依頼を?」

「先日……このようなものが寺に届きまして」

 

 そう言ってお坊さんが見せてくれたのは、五重の塔の屋根に奇妙なイラストが描かれた、子供向けクイズのような紙だった、

 添付の手紙には「この絵の謎を解けば仏像の在処がわかる」と書かれている。

 もう一枚には無くなったはずのご本尊の写真。

 ある程度は信憑性がありそうだ。

 

 降谷くんとコナンくんが考え込んだまま一言も発しない。

 謎が解けていないのだろう。

 彼らが一目で解けないということは、かなりの難易度もしくは特殊な前提知識が必要となる暗号と考えられる。

 

 ふうむ、と蘭ちゃんが考え込んだ。

 

「この後私たちは和葉ちゃんと京都観光するんだけど、コナンくんはどうする?」

「あ、僕は安室さんと行きたいところがあるんだ」

「ええ、暗号も風光明媚な景色を堪能していれば自ずと答えがわかるかもしれませんし」

 

 降谷くんがあえて呑気を装って笑顔を作った。

 毛利探偵が呆れたような声で「安室くんは少し坊主と休憩してろ!俺がなんとかしてやるよ!」と啖呵を切った。

 コナンくんと降谷くんがハイタッチする。

 こいつら仲良いな。

 

 外に出て、まず話し出したのはコナンくんだ。

 切り替えたような怜悧な瞳で推理を話し出す。

 

「仏像を盗んだのは『源氏蛍』。それはまず間違いないね。送り主は僕たちに暗号を解かせようとしてるのかな」

「同意見だ。そうだなぁ、まず向かうは五条大橋かい?」

「一応ね」

 

 源氏蛍とは、仏像等の窃盗で有名な盗賊団である、らしい。

 

 現在そのメンバーが何者かに殺害される連続殺人事件が起きていて、その関係性が気になるところ、とのこと。

 そういう全国各地の事件がスッと出て来るのすごいんだよなぁ二人とも。

 

 降谷くんがうーんと伸びをした。

 

「まあ、盗人は僕らの仕事の範疇じゃないんだけどね」

「そりゃ……殺人と窃盗ならそうだね」

「でもさっき、念のためマーリンに仏像の在処を教えてもらったよ」

「!!!!」

 

 コナンくんが愕然と目を見開いて降谷くんを凝視する。

 

 千里眼にかかれば失せ物探しなんて楽な仕事だからな。

 降谷くんの方は気楽なもので、特に感慨もなくうーむと顎に手を当てて推理を続けている。

 それが日常だとでも伝えるかのように。

 

「鞍馬山の玉龍寺だ。鐘楼の屋根に隠されてたみたいだよ」

「………代わりに何を差し出したの」

「瑣末なものだよ」

 

 ほんとうに瑣末で、今晩ハーブティーを入れてくれることになっている。

 ポアロで磨いた彼の腕前はますます見事で、私も自分が入れるより彼に入れてもらった方が好みなんだよな。

 コナンくんは焦りに歯噛みしながら言葉を急いだ。

 

「頼りすぎちゃダメだ。安室さん、貴方にとってそれが便利な力であるのは間違いなくても、いずれ後戻りできなくなる!」

「後戻りする必要は無いさ。僕はこの日本のためならば自分の身とて惜しくない。文字通り身を捧げて心残りはない」

 

 演技3割、本音7割。

 ニタリと正気と狂気の入り混じる瞳で、降谷さんは凄絶な笑みを形作った。

 そこに何故か邪悪な呪詛を感じて、私はパチパチ瞬いてまじまじと見た。

 

 コナンくんが降谷くんの邪悪を感じ取って一歩後退りしている。

 

『降谷くん降谷くん、なんか私のツノ拾い食いした?』

『ツノを拾い食い?どんな概念だ。アヴァロンに邪悪そうなツノが陰干してあったのは知ってるが』

 

 心当たりのなさそうな様子から、どうやらツノの拾い食いはしていないらしい。

 おかしいな、令呪からの逆流だろうか?

 

 私の突然の問いかけを怪しんだのか、降谷くんが訝しげにこちらに質問を投げかける。

 

『何があった?』

『いや、降谷くんがちょっとだけ人類悪の端末になってたから。変な破滅願望に囚われてたりしないよね?』

『コナンくんに狂人誤解されて破滅願望には苛まれてるけど、それ以外か?』

『まさにそれじゃん。可哀想に降谷くん……』

『ギャグ的な意味合い以外でまさにそれってなることあるか???』

 

 悲しみのあまりむしゃくしゃで世界を破壊しようとしていたらしい。

 まあ、私が成獣にならなければ降谷くんにも悪影響はないから問題ないだろうが。

 もしもの時は人類悪の端末への変生もありうるだろう。

 

 気をつけないと、と私は気を引き締め直した。

 

 そうこうしているうちに五条大橋へと到着。

 五条大橋は義経と弁慶の決闘場所だ。

 弁慶が道ゆく人から刀を奪い取っていたのもこの場所だったとされていたっけか。

 

 まあ、12世紀後半はすでに私はアヴァロンに籠った後だから日本史は詳しくない。

 アヴァロン内部の整備と基督教を通しての干渉、そして人道支援ぐらいしかしていなかったからな。

 

 そこには先んじて服部くんの姿があった。

 ぷらっと当て所なさそうな服部くんが右手を挙げて挨拶する。

 

「おう、安室サンと工藤やないか!」

「もうこれ諦めの境地だよね。コナン君、工藤家の養子に入ったってことにしたらどうだい?」

「服部、オメー和葉ちゃんに有る事無い事吹き込んでやるからな」

「なんでや!!!『今回のは極道の仕業かもな』言うだけやん!!」

「そしてこのトンチ能力。尖りすぎてるよ性能が」

 

 一周回って降谷君に感心されている服部くんである。

 「まあ僕は絶対本名教えないから別にいいけど」と他人の構え。

 

 キリッとした服部くんは向こう脛をコナンくんに蹴り飛ばされ、「あ痛ッ!?手加減……はしとんねんて……」とトーンダウンする。

 コナンくんは友情に免じてキック力増強シューズは使わなかった。

 降谷くんがニコニコ笑顔で圧をかけると、服部くんは咳払いした。

 

「ごほん。そ、そっちも源氏蛍の事件を調べとんのか?」

「ああ。ところで服部、鞍馬山の玉龍寺ってどんなとこか知ってるか?」

「行ったことはあらへんけど…もうすぐ潰れるはずやで。後継がおらへんかったから」

「!ならその前に行かねーとな」

 

 コナン君の言葉に降谷くんが頷いた。

 服部くんがにっと笑ってサムズアップする。

 

「ほなら俺が案内したるわ。京都はよく来とるし、慣れたもんがいた方がええやろ」

「サンキュー服部!」

 

 話のまとまったところで、ふと服部くんが奇妙なことを言い出した。

 

「ところで安室サン、目ェそんな色やったっけか」

「え。………スマホのインカメラで見ても異常なさそうに思うけど…」

「せやったら俺の気のせいか。うーん、なんかそないなやばそうな色と違っとった気がしてるんやけどなぁ」

 

 首を捻る服部くんに、なんかだんだん怖くなってきたらしい降谷くんがソワソワ私に声をかけてきた。

 

『マーリン、本当に大丈夫なんだろうな?』

『私の獣の性質が流れ込んで、降谷くんが若干人に警戒されるようになってるね。前回のツノがちょっと伸びすぎたらしい。ごめんよ』

『最悪なんだが。初対面の人に警戒されるのは仕事に影響が出るんだが』

『ごめん。改善のため鋭意努力いたします』

『よろしい』

 

 人類悪は人類の獣性によって生み出される大災害だ。

 人類が人類である限り切り離せない悪は、人にとっても目に入れたくない、見たくない汚点である。

 ゆえにこそ、人の警戒を引き寄せてしまう。

 

 私の端末と化した降谷くんがどのような人類愛を帯びるのか。

 それを究明せねば、この事態の解決は不可能だろう。

 





・獣の端末、バーボンあるいは安室透
魔獣赫みたいなもの。
獣が羽化した時には「苦痛と絶望でもって幸福な夢を尊ぶもの」と化す。
人よ、悪夢こそが幸福な夢を幸福たらしめるのだ。
人は失わねば大切なものに気が付かない。
そうだろ、マーリン。
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