今日はミラクルランドに遊びにきている。
ミラクルランドは横浜に新しくできたテーマパークだ。
1番の売りは海に突き出すように作られた巨大ジェットコースター「スーパースネーク」。
都内のトロピカルランドの客を吸い取るのでは無いかと危惧されている。
その隣に建てられたレッドキャッスルという名のホテルを前に、子供達は大はしゃぎで走り回った。
「すっげー!早く行こうぜ!」
「お城みたーい!」
私はうむうむと頷いて腕を組んだ。
『いいなぁ、私もテーマパークに行ってみたいものだ』
『ん?マーリンは行ったこと無いのか?』
『行こうと思えば行けるけど、一人で行くのは通だろうに。足りないのは一緒にテーマパークを楽しめる友人だよ』
実際問題、私と親しいのは年中超忙しい為政者たちか、世俗から離れた聖職者ばかりだ。
その関係性もテーマパークとかとは程遠い。
降谷くんがすこしだけ瞬いた後、にっと笑った。
『仕方ない。ヒロ誘って三人で行くか。男子三人でテーマパークって高校生みたいだな』
『ありがとう…!私はいい友人を持った!!』
私はよよよと感動に涙した。
私の感性だとテーマパークって最近できたイメージだから、なんとなしに行きそびれてきたんだよな。
70年くらい前かな。
アメリカにできて「行ってみたいなー」と思いつつ今に至るみたいな。
私はワクワクと言葉を紡いだ。
『あれだよあれ、お化け屋敷とジェットコースター。あれ行きたい。「恐怖を楽しむ感情」ってここだけ珍味が味わいたい』
『拾い食いするなよ。食っても僕のかヒロのにしておけ。というかホラー映画とかでもよくないか?ほら、アヴァロンで上映会やった時あったろ』
『映画は出来が良すぎて恐怖によるえぐみがちょっとね。もう少しマイルドな味が好き』
『おいお前あの時勝手に僕らの感情食ったろ。勝手に食うのは協定違反なんだが。今日のハーブティーお前が入れろよ』
『うっ。味見だけです。あいあいさー』
今回の依頼人はホテルの最上階にいるようだ。
どうやら相当な富豪らしい。
依頼人は最上階を貸し切って、そこを根城に長期滞在をしているようだ。
通された会議室もミラクルランドを一望できる絶景の立地だ。
最高級の家具や美しい絵画で飾られた室内で、どうにも浮いた安っぽい椅子がなんだか不自然。
グレードがツーランクぐらい落ちた雰囲気だ。
降谷君がしょっぱい顔をした。
『これ、椅子に何か仕掛けとか無いだろうな。座ったら体が真っ二つは辛すぎるが』
『ひとまず中に爆弾も刃物も入ってなさそうだよ。肘掛けの辺りに変な機械が入ってるけど』
『肘掛け?あのプラスチック製の黒い部分か。分からないな……とりあえず触らないようにしておこう』
この異常はコナン君も気がついたようで「あの椅子なんか合ってないね、この部屋に」と眉間に皺を寄せている。
降谷くんがコナンくんにそっと囁いた。
「そこの椅子の黒いプラスチック部分、なんか怪しいから触らないようにね」
「え、マーリンさんからの助言?」
「電子的な仕掛けが入ってるって」
「………」
コナン君が緊張に身を固めた様子が横目で確認できた。
その後やってきた執事さんに配られたのは、ミラクルランドのフリーパスIDだ。
VIP専用のそれは一日楽しみ放題で、子供たちは喜び勇んで配られたそれを腕につけた。
降谷君がフリーパスIDを腕にはめながら、顔色悪くブツブツと呟いている。
『昔あったんだ。金持ち主催で、首に爆弾巻いた人間を殺し合わせるゲーム。いつのまにか企画が自然消滅したけどなんか嫌な予感がする』
『あっ、そのゲーム私も知ってる。かなりきつく注意してやめてもらった覚えある!』
『よくやった!世の善を成した!それはともかく、このID爆弾だったりするか?』
『私、電子部品に関しては素人だから、見るからに爆弾って見た目してないと分からない…』
しょぼ、と私は萎れて小さくなった。
「気にするな、お前にはいつも助けられてる」と降谷くんが優しく声をかけてくれる。
などとよそ事を話している間に子供達だけは解散の運びとなった。
コナン君はまだここに残りたいようで「まって僕も…」と言いかけて蘭ちゃんに連行されてしまった。
すかさず、コナン君がピッと飛ばしたのは盗聴器だ。
シール型のそれを降谷君が受け取って、何食わぬ顔で机の裏に貼り付ける。
コナン君がサムズアップしたことに、降谷君も静かに他の人に見えない角度でサムズアップを返した。
こういうところ、悪童コンビって言われるんだよな。
さて。ここからは大人の時間だ。
カーテンを閉め切り、大きなモニターに逆光で顔もわからない男の姿が映る。
降谷君が「あーーーー」と念話で苦悩を垂れ流しにした。
『早速ですが皆さんには殺し合いをしてもらいます。あったんだよ。あったんだよマジで。僕来賓側で呼ばれたもん』
『これ終わったら警察に駆け込む?』
『僕ならこのIDに盗聴器と発信機を仕掛けるな。何かあったらボン!だ』
『心配しすぎじゃ無いかい?まだそうと決まったわけじゃ…』
からの前任が爆死した一部始終の映像のご開帳である。
「そのIDにはコンポジション4、つまりプラスチック爆弾が仕掛けられています」とのこと。
降谷君はすっかりむくれてしまった。
『マーリン、前やったように爆弾のエネルギー発散はできるか?』
『できるよ。全員分やればいいんだね』
『ああ。盗聴機能等を生かしたままでな。この腐れ野郎は絶対に捕まえる。今解除を知られると最悪逃げられる』
『了解。あーあ、爆弾まずいんだよなぁ。なんかすぐには食べたくないし、冷蔵庫に入れとこうかなぁ』
『うっかり開けたら吹き飛びそうだからやめてくれ』
爆弾を純粋なエネルギー源として変換して食う、魂喰らいの亜種だ。
アメリカの青いケーキみたいなただひたすらの糖分の味にパクチーがひとつまみ。
舌が変になるんだよな。
『ともかくコナン君はもう入ってしまったか?』
『うん。ミラクルランドの中。通常のやり方では出られないね』
『仕方ない。念話に入れて今後を相談しよう』
そんなわけで。
前途多難なデスゲームが幕を開けたのであった。
・その頃の立川
「あっイエス見て!屋台出てる!りんご飴屋台だ!」
「あるねえこの時期。りんごもはや関係ないけど」
「私も会いたいな。せっかく下界に来たんだし会ってかないのかい?」
「え……なんか……2000年も経ってまだ救えてないのにどの面下げて感がさ…うん……」
「そ、そっか…辛いよね……」
「しかも私ら、今オフだし…余計に何呑気にしてんの的な」
「うっ」