ホテル・レッドキャッスルへ帰ってくるのは割と早めの時間になった。
うまく別行動となった白馬キッド君は、公安の人員と共に深山商事に向かったようだ。
さっきのバイク襲撃のお礼参りだ。
まあ、向こうは上手くやってくれることだろう。
まだ時刻は夕方だが、結論が出た以上引き延ばす意味もない。
報告のためにやってきたそこで、執事さんを通して最初に通された部屋へと通される。
暗いモニターが煌々とあかりを灯した。
『お疲れのところ申し訳ないが、早速報告をお願いしたい』
「そうだな。あんたがここまでして知りたかったことだ。焦るのも無理はない」
代表で毛利探偵が前に出る。
ピンと張り詰めた空気は、服部君も降谷君も不測の事態を警戒している証だ。
「だがまず脇に逸れるが、捜査中に襲ってきた連中について話がしたい」
『言っておくが、私ではないよ。私に君たちの捜査を邪魔する理由がない』
「だろうな。俺らを襲ったのは別の連中だ。正確には、深山商事の深山総一郎の指示だった」
『!?深山先輩が…?一体なぜ』
本当に心当たりがないらしい。
依頼人は困惑をあらわにしている。
「どうやら後輩の清水麗子の依頼で、現金輸送車襲撃事件を嗅ぎ回る探偵と、その依頼人を消すよう言われてたらしい」
『な……馬鹿な、麗子は死んだはず!』
「生きてたんだ。俺らも会ったしな。聞いてなかったんなら、後で盗聴器のデータを聞きなおしたらどうだ」
『…………!』
毛利探偵の言葉に依頼人が息を呑んだ。
まさか、という疑念が噴出しているのが手に取るように分かる。
「ともかく、清水麗子は死んだふりして潜伏し、現金輸送車襲撃事件に関わる人間を全員消そうとしてた。金を独り占めするために」
『そんな……』
「あんたの知りたかった西尾殺害事件の真犯人もわかった。あんたの持ってたライフルのレンズから、マスカラが見つかった。清水麗子のもんだ。おおかた、先に一発で殺してみせた後、あんたに死体を撃たせたんだろ」
『…………』
いかにも打ちのめされているようだ。
だんだんと依頼人の口数が少なくなっていく。
降谷君は心底くだらないと言わんばかりにため息をついた。
私はそっと降谷くんに声をかけた。
『あの依頼人、プライド馬鹿高いところ降谷君に似てるね』
『喧嘩なら買うぞ。僕は実を伴うタイプだ』
『プライドの高さを否定しないあたり筋金入りなんだよなぁ』
しばらくの沈黙を挟んでから。
依頼人は俯いたまま頷いたようだった。
『わかった。ご苦労だった、君たちの爆弾を解除しよう』
「これからどうする気だ、アンタ」
『さて。どうせ私自身長くない。逃走時の事故で余命わずかの身だ。やはり、信じられるのは自分自身のみということか』
その言葉に反応したのは服部君だった。
半目で不満げな様子のまま口を開く。
「アンタ、もしかしてと思っとったけど清水麗子も愛してへんかったんか。自分の装飾品として愛してたんやろ。完璧な自分っちゅー美しいもんの装飾品」
『……参ったな。本当に君たちは名探偵らしい。見くびっていたことを謝罪しよう』
「あほくさ。そないな浅い奴に愛語る資格無いでホンマ。人間一年生かいな」
降谷くんが一人なぜか明後日の方向を向いている。
『まさか君も人間一年生かい?降谷くん』
『うるさい。女なんて別に居てもいなくても人生に影響はない。そうに決まってる』
『私に言えることじゃないけど諦めるのはまだ早いよ降谷くん。よく志保さんとお茶会してるじゃないか』
『高校生にその気になってたら犯罪臭しかしないだろうが。純粋に赤井被害者の会だ』
『赤井被害者の会』
なにやら新しい集会が出来上がっているらしい。
たぶん赤井秀一暗殺計画とかも練っている危険団体だろう。
ともかく、爆弾は外れたらしい。
IDを外そうとボタンを押すと、IDはするりと外れて手の中に収まった。
服部君が慌ててコナン君に電話をしている。
部屋を後にしようとする降谷君に、慌てて毛利探偵が声をかけた。
「あ、あの依頼人はどうすんだよ!?」
「それでしたら間も無く公安が動くと思いますよ。爆弾をつけた人間を街中で歩かせる。つまりテロの疑いでお縄になることでしょう」
そのようにうっそりと笑う降谷君に、毛利探偵が深いため息をついた。
「あのなぁ、俺を信頼してくれてんの分かるけどよ、せっかく知らないふりしてんだからもうちょっとこう、隠してもバチは当たらねーんじゃねぇか?」
「毛利先生のことを尊敬していますので!」
「何かあったら抱え込むって聞こえんだけど。この平和に生きてる名探偵をそっとしとこうって親切心が弟子にあると嬉しいんだがなぁ!」
「あはは、ご冗談を!名探偵には名探偵に相応しい舞台がありますので!」
もう絶対「その名探偵の肩書き便利に利用させて♡」に聞こえるんだもんなぁ。
同じ思いらしい毛利探偵がガックリと肩を落としたようだった。
そして怒りのゲンコツ一発。
降谷君は悶絶して頭を押さえた。
服部君が後ろで電話しているのが聞こえてくる。
「はぁー。なんやえらい修羅場だったみたいやな。こっちもオモロかったで。具体的には安室サンが本性見せびらかしてて……せやせや。最近あの人皮剥げてへん?中身の007見えとるでアレ」とのこと。
あちらも無事何とかなったようだ。
平和に事件を終えることができて、私はにっこりと微笑んだ。
今晩はアヴァロンでお疲れ様会をするよしよう。
そのあたりで。
ガサッと外の手作りの伝統的郵便受けに物が入る音がした。
アヴァロンに郵便が届くのは非常に珍しい。
前は「悪魔よ集え!フットサル大会!」のお知らせが届いたぐらいで、ご無沙汰だったのに。
とことこと取りに行くと、そこには品のいい羊皮紙が巻かれてリボンで結わえられた物が入っていた。
実に時代がかっている。
「なになに…『アークエンジェルズより重要なお知らせ。汝、主の降臨せし立川へ来られたし』…?」
立川???????????
・その頃のナザレの人
「え、勝手に呼んじゃったの!?!?嘘でしょ部屋の片付けもしてないのに!?!?」
「わ、私その日は喫茶店で過ごした方がいい?」
「待ってブッダも一緒にいて!!!お願い!!!」