やったー!ウラン鉱石を手に入れたぞ!
私は工房の中心で異界の核を前に、ワクワクと作業準備をしていた。
既にいくつかある異界の一つには大量のウランが格納されている。
「なぁ、ウランなんだけど…危険はないんだよな?」
不安そうな諸伏君に私はにっこりと微笑んだ。
「安心して。これ。私がここより深いところに作ったこの異界に隔離してあるから。失敗しても核廃棄物が地獄に降り注ぐだけだし」
「えっ、あるのか地獄」
「あるよ。悪魔は働き者だから地獄には落ちないようにね」
悪魔さん達は皆仕事に真摯だ。
見物に来ていた明美さんが「悪魔さんに怒られないかしら、それ」と心配そうに私をみた。
まあ、事故ったらクソほど怒られるとは思う。
でも地獄の新たなコンテンツとして楽しんでいただければいいんじゃないかと個人的には思っているわけである。
最悪イエシュア君の後ろに隠れてやり過ごせば怒られることもない。
さて、今後の作業を紹介しよう。
まず空間内部の区画整理である。
原子炉区画、熱交換区画、発電区画、魔力変換区画エトセトラ。
温度や湿度、広さなどは完璧にこちらで調整できるからな。
事前に作ってあった図面通りに要石を置いて術式を整備作業がまず初めに取り掛かるべき内容になる。
区画同士を連結する配線には特殊な空間跳躍耐性をつける必要があるだろう。
とはいえここまではほとんど準備済みなので気にしなくていい。
問題はこの後から。
建物と構造物を作る作業になるわけである。
私はキリリとした顔になって叫んだ。
「諸伏君!明美さん!土木建築の経験はあるかい?」
「流石にないなぁ。ショベルカー運転できるかって話だろ?」
「私前に車両系建設機械運転技能講習受けたわよ。組織で受けろって」
「組織で!?!?!?」
「埋める時必要なんですって。他にも小型移動式クレーン運転技能講習とか、玉掛け技能講習とかもやったわよ」
「健全な講習が闇を帯びて聞こえてくる」
諸伏君がしょっぱい顔をしている。
重機は私が幻覚で出すとして、これら土木作業は結構大掛かりな工事となるはずだ。
全部魔術でやってもいいが、のんびり土木勉強しながら試行錯誤するのが良さそうだ。
なにせ大型タービンや発電機など、超重量のものを支える構造物を作ることになるのだ。
建設の途中で魔術も練り込んで、振動吸収や放射性遮断機能もつけるし。
損耗した部品の自動修復機構も付けねば事故の元となる。
冷却設備や水循環設備、発電機構はそのまた後だ。
監視設備と保守設備も最後に作っておかねばなるまい。
ああ、それと発電所内に工場も作っておかないとな。
自動修復で間に合わない不具合があった場合に向けての保守用部品作成工場だ。
ちなみにここまでやってまだ原子炉はできてないものとする。
その後原子炉作ってタービン作って魔力変換機構作って自動運転機構作って試運転して。
うーん道のりは遠い。ちまちまやるとして完成まで30年ぐらいかかるだろうか。
ここ最近では1番のビッグヒマつぶしコンテンツだ。
盛り上がってきたぞう!!!
私は意気揚々と拳を振り上げた。
明美さんが一緒になっておー!と声を上げてくれる。やさしい。
と、そのあたりで念話が入った。
降谷君の声だ。
「おーいマーリン、そろそろ仕事だからすまんが待機頼む」
『わかった。そっちに視線を移すよ』
私の声が念話となって工房中を反響する。
諸伏君が「お、ゼロの仕事だ」とニコニコ笑った。
「零君頑張ってるわね」と明美さんも後方保護者顔の模様。
みんなでもそもそ解散したので、私も一人ハーブティーのポットを片手に移動する。
自室の椅子に腰掛け、私はゆったりと机に肘をついた。
今降谷君がいるのはアジトのようだ。
銀髪君に呼び出されて嫌そうな仏頂面をしているのが見える。
銀髪君がタバコを咥えたまま嗤った。
「つまりだ。今後の峰不二子との対応はお前に一任する。テメェは必要に応じて組織に情報を上げろ」
「いいんですか?僕にそのような権限を持たせても」
「もし組織が会話の主導権を握っていると知ったら、その上であの女は組織に毒を仕込んでくるだろうよ」
銀髪君は肩をすくめてタバコを吐き捨てた。
それを踏みにじって消し、そのままニタリと笑う。
「俺たちはルパン一味とことを構えねぇ。それは彼の方のご命令だ」
「なるほど、承知しました」
「それと、マルサス暗殺ご苦労だったな。奴ほど用心深い男を殺せるのはテメェしかいなかったろう。そこでだ」
凶悪な笑みが深まる。誰しもがそこに悪意を感じざるを得ない笑みだ。
「追加任務だ。アイリッシュに最近不穏なところがあってな。疑わしきは罰せよだ。消せ」
「それはそれは、珍しいですね。ピスコ一派としては地に足ついた幹部だと思っていましたが」
「そのピスコが落ちたんだ。思うところがあるんだろうぜ」
「………いいでしょう。僕は貴方からの依頼を遂行するだけです。死に様にお望みはありますか」
「なるべく苦痛に満ちた死を、だ」
「承知しました」
降谷君は深々と一礼して背を向けた。
話はこれで終わりらしい。
『あー、めんどくさ。内部抗争かよ。別に幹部が減る分には僕は嬉しいが、くだらないにも程がある』
『帰ってからハーブティー飲むかい?』
『それよりカロリーだ。カロリーを胃にかっ込みたい。』
『なら今諸伏君が豚丼作ろうとしてるよ。一緒に食べるかい?』
『!!食べる!ヒロの豚丼タレがいいんだよな、タレが』
降谷くんは殊更明るい声を出した。
その声色にストレスを感じ取って、私は静かに問いかけていた。
『降谷くんは殺人に思うところはあるかい?』
『…………』
降谷くんはしばし沈黙したようだった。
足音だけが廊下を反響する。
ここは交通の便が悪くて、駐車場まで若干距離があるのだ。
外は雨だった。
ざあざあと降りしきる雨に、傘を持たない降谷くんが立ち尽くした。
『慣れた。初めは吐いたが。考えれば、死んだ方が日本のためになる奴らばかりだ。ただ……あの世はあるんだろう?』
降谷くんが自嘲するように問い返した。
私が雨を弾く魔術をかけてやれば、その間に降谷くんが車まで駆ける。
「助かる、マーリン」と小さく感謝の言葉がかけられた。
『僕では天国には行けないな。コナンくんとは離れ離れだ』
『ふふ、それなら私とお揃いだ。私も天国には行けないから』
『なら安心だな。地獄の道も共に歩けば悪くないはずだ』
ニコニコした降谷くんに私は頷いた。
なんて。
私は地獄にも行けないのだけどね。
・ナザレの人
な゛ん゛でぞん゛な゛ごど言゛う゛の゛!!
・覚者
うわびっくりした。イエス突然叫ばないでよ。