深夜の魔法少女アニメを履修してるタイプのマスコット(超善良)が来た 作:蓋然性生存戦略
ハジメマシテの方は初めまして。
天啓が下りたからやっちまおうシリーズです。
当然見切り発車なので更新頻度はお察しください。
では!!
異界に踏み込む。
もうすぐ《魔獣》が出現するだろう。
その前に準備だけは進めておこう。
「《燃え盛れ》」
私はスマホ型の変身デバイスを片手に、変身するためのキーワードを呟く。
すると、炎が足元から舞い上がり、私を覆い尽くす。
焼き尽くされるかと思われそうな私は、しかし炎が晴れた時には黒装束を纏っている。
黒一色の袴。
帯の位置は腰。
どう見ても死◯装だが、美少女型マスコット枠に問い合わせても「名は体を表すっていうじゃん?」とにべもない。
私の名前が山本 柳だからって炎熱系最強の死神に寄せることはないと思うんだが?
「グルルルルル……」
変身が完了すると、今回の《魔獣》も出現した。
今回はミノタウロスらしい。
純粋なパワー型、カモだ。
「さっさと終わらせようか」
私は愛刀《残照》を担ぎ、特に緊張することもなく対峙する。
最早慣れたモノである。
「ホントはちゃんとしたバイトしたほうがいいんだろうなあ……」
そんな事を考えながら、私は昔を思い出す。
アレはそう……中学二年になった春。
だいたい半年前の事。
進級してすぐの頃の通学路。
不気味なくらいに人通りが消えた通学路で、私こと
「ボクと契約して、御使になってよ!!」
「そのセリフで誰がなるかボケェ!!」
なるわけが無いんだよな。
例えマスコット枠と思わしき存在の見た目が、膝まである長いストレートロングの黒髪黒目、アカデミックドレスに身を包んだ絶世の美少女だったとしても!!
その台詞をぶっ放されて魔法少女的存在になるヲタクはいない!!
「よかったぁ、このセリフにノータイムでその反応ができる子を探してたんだ」
しかしまあ、このマスコット枠も勉強しているもので。
ノータイムで拒否った私はむしろ標的にされた。
「まあまあ、魔法少女の成れ果てが魔女だとか、ノルマ達成できないと死ぬとか、そういうことはないから。何なら昼寝だけしててもOK」
「昼寝だけしてたらノルマ未達成でガチで死んだ作品をさも当然のように履修してるタイプのマスコット?」
「個
「最近のニチアサも結構ハードでは?」
「大丈夫、ニチアサだから!!」
このマスコット、ニチアサへの信頼が厚すぎる。
「というか何が何でもニチアサにするから安心してほしい」
「そこまでして何がしたいんだよ、逆に」
「それを聞くと今からボクの中間管理職の悲しみを垂れ流すことになるけどおk?」
「やめておきまーす」
「ボクだって自分の世界の管理があるのに……なんで地球の管理者が不在なんだよ、おかしいだろ……」
「あー……元気出して……?」
ぽろっと漏らされた言葉は全力でスルー。
私はまだ、この時は関わらないと決めていた。
とはいえ、人通りが少ないわけでもない通学路に人っ子一人いない時点で、超常の気配を感じ取っていた。
たぶん逃げ出しても逃げられない。
そんな雰囲気を感じ取っていた。
ので、諦めて会話する。
「ありがとね……まあいきなり御使と言われても困惑するよね。だから簡潔に話すね。
《魔獣》っていう存在が発生するようになるよ、
ついでに魔力を持つ人間が産まれてるよ、
出来るだけ必要な仕事だけに集中したいから魔力を持つ人にお手伝いをお願いしたいよ、
がんばったらご褒美出るよ、
負けても死なないしケガもしないように仕組みは作ってあるよ。
以上、何か質問ある?」
質問しかないが?
なんでそうこっちに都合がいい条件が出て来るかね。
サブカルチャーというものよく知っているマスコットだ、本当に。
「はい、質問ですマスコット先生。私が選ばれたのは魔力を持っているということですか?」
「はいそうです」
「ではもうひとつ。魔法って悪いことに使えますか?」
「使えませーん!!深夜アニメのどろどろした御使同士の戦いとかもさせませーん!!」
「《魔獣》を放置しても問題は起きますか?」
「おきません!ボクの仕事が遅れるだけです!!『あ、これ勝てねーわ』とか『今そんな気分じゃないしな……』とかで放置されても全然オッケー!!世界の危機とかそんなんじゃないです!!」
「ご褒美はどんなもん?」
「討伐された魔獣の強さに応じて変動します。最低でもswi◯ch2くらいのお値段は約束しよう……」
不穏な言葉が最初の一言だけ過ぎる。
QBの台詞を吐いてからここまで好条件を叩き出すのは一種のギャグなのか。
「ちなみに《魔獣》との戦いは専用フィールドになるから一般人も来れないよ」
「至れり尽くせりじゃん、なんで最初にQBネタを仕込むんだよ」
「その方が親近感湧くかなって……」
「警戒度マックスだわボケがよ」
滑りに滑ってるんだよ、ホント。
「ちなみにこれ契約書ね、ちゃんと読んで確認してね」
そして胸元からおもむろに取り出される契約書……。
ちゃんと読む。
こちらが不利益になるようなことは書いていなかった。
裏面とか小さい文字とか、隠し文字とかもない。
というか契約書の項目に『契約希望者が認識できる形で記載されていない場合、それらは一切の効力を持たない』って書いてある。
本当に契約書通りでしかないらしい。
「疑り深いね……それくらいの方が好ましいYO!!」
「え、アンタ本当にただただ深夜アニメを履修してるだけの善良マスコット……!?」
「そうだよ」
「なんでQBネタを仕込むんだよォ……!!」
「QBネタぶち込んでも飛びつくような頭の軽いお馬鹿さんは要らないので」
「一種の篩!?」
まあ、彼女にも考えがあってQBをしているらしい。
魔力を持ってれば誰でも魔法少女にするわけでもないと。
危なくないお仕事でお小遣いが貰えるのなら……と既に私の思考は傾いていた。
「一応契約書にも書いてあるけど、高校卒業したら退職してもらうからね、仕事はちゃんと探すんだよ」
「あ、はい」
将来の仕事まで心配してくれてる。
なんだこいつ。
本当になんなんだこいつ。
「ま、大学資金を集める手段として使わせてもらおうかしら」
「それもまた良し。じゃ、ここにサインをお願いね」
宙から現れたペンを握り、私は契約書にサインをした。
これが、私の波乱万丈な青春の一歩目だとは知らずに。
『コングラッチュレイショーン!!御使による難易度Cの初討伐おめでとう!!ま、だからと言ってご褒美が増えるわけではないんだけど。規定は規定だからね』
ミノタウロスを焼き斬り殺し終わると、変身デバイスが勝手に浮かび上がって勝利を祝ってくれる。
画面に映っているのは黒髪黒目の絶世の美少女、マスコット枠の
ニコニコと人のいい笑顔だ。
「難易度Cだと50万は堅いんだっけ?」
『まーね。流石にこっから先は、ただのアルバイトじゃ倒せない領域だからねぇ……その分ご褒美は弾むけど、出来ればあんまり無理はして欲しくないかな~ってライン。安全とはいえね?』
「ま、今回は私と相性が良かったから完封だったけど。まだBとかは挑みたくないわ」
『そりゃまあ、流石にね?Bからは特殊能力強くなってくるからねえ……ほい、今回の査定結果が出たよ。62万円相当のご褒美になるね』
「いつも通り株で。投資投資」
『しっかりしてるんだか見立てが甘いんだか』
暇な時に《魔獣》をシバくアルバイトを始めてからすでに半年。
順調に戦い続けて、私は御使全体で初となる難易度Cの《魔獣》を倒した。
難易度はGから始まりSまであり、Cとなれば熟練とも呼べる……とアローズは言っていた。
『まさかシステムを稼働してから半年でCランク討伐が出て来るとは思ってなかったなあ。全体平均がもう少し伸びてきたら、本格的にボクの仕事も楽になりそう。今でもすごい助かってるんだけどもさ』
「ランキングなんてもん実装したからじゃないの?」
『いやぁ、ニンゲンって何かと競いたがる比較の獣だよねえ、ニッシッシ』
どこまで計画通り何だか。
根は善良だが、こちらを思い通り転がそうとするところは少し悪辣さを感じる。
まあ、こちらに危害を加えようとはしてこない。
人間がどういう生き物なのかを理解した上で、そういう手段を取っているだけなのだろう。
『こんなランキングに乗ったところで、特にご褒美とかは無いんだけどねえ?』
人は勝手に競い合う。
それを理解しているからこそ、何の実利もないランキングなんてものを実装した。
必須要素ではなく、自己満足として。
私のような年頃の少年少女を上手く転がすものだ、本当に。
「まあ、おかげで私が目立ってるんだけど」
『まあそこはね。キミ優秀だからさ、必然的に』
「活動地域とかそういうの、一切明かされないからバレてないけどさあ」
『くふふ、そうだね。御使ランキング堂々1位の《焔塵卿》さん?』
「うるさーい!!」
魔法少女ではなく、
少年もいるのに魔法少女に限るのはちょっと……ということで御使が正式名称だ。
私はそのランキングで堂々と1位になってしまっている。
なんてこったい。
『キミの平均リザルトが高すぎるだけなんだけどね』
「だまらっしゃい」
事実陳列罪で電源落としの刑に処す。
まあ、必要であれば勝手に起動するから無意味だが。
私は異空間から出て、周りに人がいないかを確認してから変身を解く。
時刻は既に18時。
特に怒られないが、私は変身デバイスをしまって、自宅へと急いだ。
流石にCランク相手はてこずったからね、仕方ないね。
「ただいま~」
返事はない。
我が家は片親のひとりっ子なので、当たり前である。
母さんは仕事中。
どんなに速く見積もっても帰宅は19時だ。
その間にお風呂を沸かして夕飯を作る。
最早日課と化した風景だ。
『毎日毎日、嫌にならない?』
「ならないわよ。もう慣れたしね」
『今反抗期やっておかないとあとあと大変だゾ』
「何の心配をしてるのよ」
『一応これでも二児の母だぞう!!』
「うっそくさ」
勝手に起動した変身デバイスから話しかけてくるアローズと会話しながら夕飯を作っていると、本来持たされている携帯端末から通知が来る。
どうやら今日は帰りが遅くなるようだ。
自分の食事を済ませて片付け、お風呂を済ませて勉学に励む。
たまに行き詰って、気晴らしに《魔獣》を倒すこともあるが。
『しっかし、ここまでいい子ちゃんだと息が詰まらないかい?』
「ま、いつかは自由にやりたいわねー」
『ふふ。ま、困ったらいつでも相談なさい。なんたってボクは神様だからね』
「こんなフレンドリーで身近な神様他に知らないけどね」
別段、困ってることなんてないのだ。
何も問題はない。
まあ、確かに私はクラスでは孤立気味ではあるが。
別に1人が辛いわけじゃないしね。
さて、一通り学習が終わったし、先に寝るとするか。
「おやすみ、アローズ」
『はいはい、おやすみー』
私はスヤスヤと眠りについた。
・山本 柳
どこにでもいる普通の逸般人。
どこぞのかぐや姫の超人たれ目スキーだと思ってください。
サブカル大好き、ゲームもそこそこやるが、勉学も真面目。
最近のストレス発散は《魔獣》狩り。
御使としての名は《焔塵卿》。
ランキング堂々一位のバケモンである。
・
以前から作者の作品を追ってる人は既に察しているかもしれないアイツ
初手で特大のボケをかまして御使にしてもいい人間とそうじゃない人間を篩にかけてる。
仕事を増やす馬鹿は要らないので残当。
自分の世界の管理をしていたら地球の管理まで任されて涙が止まらない。
ので、自分の趣味を兼ねて御使システムを構築して仕事を楽にした。
・御使
アローズによって変身ヒーローになった少年少女たちの総称。
篩にかけられているので良い子しかいない。
《魔獣》を倒すとご褒美がもらえるので日夜頑張っている。
なお、魔法は悪用できないよう徹底されているので犯罪者は未だZERO。
・《魔獣》
地球に積み重なったバグ、エラー、その他諸々。
良くないモノを物理的にぶち殺せるエネミーとして抽出したもの。
討伐難易度が設定されており、S~Gまである。
致命的な奴はアローズが率先して対処してあるので安心安全。
・本作地球
管理者やれる奴が全員「他のことで忙しいから」と言ってたらいまわしにされた挙句、他の世界を管理しているアローズにぶん投げられた世界。
地球産の神の類はいるにはいるが、力関係としてはアローズ>>超えられない壁>>地球の神。
自力で神になった者と、信仰によってしか存在を維持できない土着神では格が違う。