深夜の魔法少女アニメを履修してるタイプのマスコット(超善良)が来た 作:蓋然性生存戦略
ワイバーンをギガブロが始末した日の翌日。
朝5時半。
起床から朝食までの束の間の自由時間。
私はリラクゼーションルームでくつろいでいた。
だってみんな起きるの遅いのだもの。
「山本さんは起きるのが早いですねー。できれば部屋で大人しくしてて欲しかったんですがー」
くつろいでいると、キャサリン先生が見回りに来た。
人が寝ているところで1人くつろぐのは落ち着かなかったのだ、許してほしい。
「すみませんね、キャサリン先生。1人の方がリラックスできるんです」
「まあしおりには特にそう言ったことは記述してないのでいいんですがー……先生心配ですー。ちゃんとお話しできるのにクラスのみんなとはお話ししてないみたいなのでー」
「めんどくさいんですよね。よくないとはわかってるんですが」
「わかっているならいいのですがー……まあ、山本さんはなまじ1人で完結してしまうので必要性を感じないというのもわかるのですがー」
「あと他人にどこまで話をふっかけていいか分からないんですよね。話しかけてもらえれば、どこまで話していいかのラインは分かるんですが、自分からだとどのラインまで話せばいいのやらと。そこまで気を回して会話をする必要もないと言えばないので、良くないとは思いつつ流してますね」
「なんでそこまで自己分析できていてそうなっちゃうんでしょうねー……」
「さぁ?もう覚えていない過去に何かあったのかもしれないですね。覚えてないですけど」
正直な話、幼少期の記憶はあんまりない。
はっきり覚えているのは小学3年からだ。
それ以前の記憶は相当曖昧である。
つまり私の鮮明な記憶は実質7年ほどしかない。
別に大きな事故に見舞われたとかではないのだけど。
そういえば朱緋町に引っ越してきたのもその時期だったか。
何かあったのかもしれないね。
覚えてないけど。
それで特に困ったわけでもない。
比較的どうでもいい。
「まあいいですー。勝手にどこか行かないならくつろいでもらって大丈夫ですー。山本さんは優等生なので大丈夫だとは思いますがー」
「緊急時はちゃんと合流しますよ」
まあ、他校の宿泊者もいるので、ちょっと危ないが。
別にいいだろう。
この時間はどうせ私しかいない。
電子書籍でも読みながら……ん?
誰か来たな。
知らない顔、となると別の学区の子だろう。
確か隣町の
そこの生徒だろう。
まあ、喧嘩をふっかけられない限り関係のないはなs「アンタ、山本 柳?」どうやら私を知っているらしい。
いや、誰よ。
「そうだけど、あなたは?」
「
「ごめんだけど直近7年くらいしか記憶がないの。ありきたりな名前だし人違いってこともない?」
「ふざけるな!!私のことなんか眼中にないっていうの?!そのムカつく態度は相変わらずのようね!!」
「眼中にないっていうか記憶がないんだってば。あとここ公共の場だから叫ばないで。朝の5時半よいま。他所様に迷惑でしょ」
このヒステリック少女は誰?
いや、本気で覚えてない。
覚えている限りの7年、私はぼっちなのだから。
「……本気で覚えてないっていうの?」
「だからそう言ってるじゃない。生憎とサッパリ覚えがないから突っかかられてもね」
「ふざけないでよ……アンタを超えるために私は……!」
「えーっと、別に私超えるとかそういう目標持たれる実績ないんだけど」
「興味本位でありとあらゆる大会を破壊しておいて都合よく忘れてるくせによく言ったものね……!」
「ごめん本当に記憶がない。それ本当に私?」
「アンタのことよ!!アレだけのことをやっておきながら本当に忘れてるっていうの……?!」
「真面目に知らん人の話されてる気がしてる」
「……わかったわ。もう良い。少しでもアンタに期待した私が馬鹿だったわ」
えぇ……?
なんだったの今の。
『過去に因縁ありって感じだねー』
「聞いてたのアローズ」
『一応ね。いざという時は守るためにね』
「そうそう遅れは取らないわよ」
『大人の責務ってヤツさ。それはそれとして、多分キミと思わしきジュニア大会優勝総なめの子なら確かにいたっぽいよ。活動時期は今から8〜9年前。名前は山本柳』
「へー。でも私には覚えがないねん。ちゃうと思うで」
『ちなみに今アカシックレコード経由で確認したけどキミのことだね』
「ほな私かあ」
ぶっちゃけ私はそんな天才なわけではないんだが??
ただ早熟だっただけではなくて?
『将棋、チェス、ピアノ、習字、ダンス、空手、柔道、剣道。挙げ句の果てにはEスポーツジュニア地域大会も優勝しているみたいだね。小学1〜2年の頃の話だ。出場している年上の子を全部薙ぎ倒しての優勝だ、化け物か何かかな?』
「何それこっわ。それ本当に私?」
『キミのことらしいねえ……そんなのが近くにいたらそりゃ歪んじゃうのも仕方ないかなって』
「何やってんのよ過去の私」
別人のような戦績に驚きを隠せない。
おかしいでしょうどう考えても。
『ごく稀にいるんだよねえ、そういうハイエンド個体としか言いようがない子。今のキミからはそんな感じはしないけど』
へー。
生まれること自体はあるんだ……今の私のことではないが。
「まあ良いわ。思い出しそうにもないし。ところでアローズ。なんとなくなんだけど異界に入った?」
それはそれとしてだ。
人の気配が消えた。
恐らくは湧いたのだろう。
《魔獣》が。
『キミのような勘のいい子は好きだよ。話の途中だがゴブリンだ。被害は気にしなくていい、ギガブロくんもすぐに合流する。ただし数が多い。王級個体は確実にいるだろうね。規模から考えてAランクは確定だ』
「おっけい。そっちの首尾は?」
『もちろん上々、気分上上!侵入経路は特定済みだ、やっちまえ!!』
「《燃え盛れ》!『森羅万象、暁を齎せ』《灰墨の硝煙》!!」
Aランク想定だというのなら、最初から全開だ。
「五の太刀、《
焔が宿を埋め尽くす。
恐らくは異界の範囲は宿全体。
2校6クラスを収めて有り余る大きな宿だ、ゴブリンの数も相応だろう。
「なら宿ごと焼けばいい」
『Wow Crazy……』
「ハーッハッハッハ!景気が良いな、《焔塵卿》!」
『ギガブロくんも合流か。決着はさっさとつきそうだね』
討伐ご褒美ポイントが積み重なる音がする。
小物はあらかた焼き尽くしたと思って良いだろう。
あとは大物だが……『バキャア!!』出てきたわね。
……デカくない?
どこに潜んでいたというレベルででかい。
ギガブロの倍はあるといえばわかるだろうか。
ゴブリンということを考慮するとデカすぎる。
『あ、アレは作るだけ作ってお蔵入りになって放置していた《魔獣》データの《ゴブリン仙人》?!」
「知っているのかアローズ!!」
『Sランクに迫る戦闘力に加え、頭のおかしい深夜テンションで作ってたから18禁アタックも搭載している危険モンスターだ!!』
「なんでR18要素を入れてるんだよ!!なんでデータを残してるんだよ!!」
『戦闘力の完成度が高くてェ……削除するのが勿体無くてぇ……』
「消せよ!!ちゃんと!!」
「ならばオレが前に出るほうがいいだろう」
『本当に頭のおかしいテンションで作ってるヤツだからケツも掘られるよ』
「ちょっと勘弁してもらえない?」
「あ、素に戻った」
『未使用データの保存領域にまでアクセスされるとは思わなかった。前回よりも手口が巧妙だな。新しい侵入経路もあると見たほうがいいかもしれないな……』
心配になるようなことを言うなあ。
アローズ1人で本当に大丈夫?
『骨のある仕事になりそうだよ全く!ひとまず行動パターン修正開始!18禁アタック全般削除!!』
「ナイス!!」
『まあこれ以上は分霊ボディのボクだと無理なんですけど。本体は忙しいのであとは頑張ってほしい』
「ガッデム!」
ただまあ、R18展開が起きないなら気兼ねなく暴れられる。
Sランクに迫る戦闘力とはいっても、迫るだけである。
ランクはAの最上位くらいか。
ギガブロがいる以上は何とか抑えきれると思いたいが。
「朝食がまだなのよね」
「オレもだ。だがまあ、朝飯前というヤツだなァ?」
「油断は野菜人のお家芸なのわかってて言っているのかしら」
『本体より急報。炎上しまくってる異界の中に一般人を1名確認!例によって魔力持ち!最悪だ!!』
「ふっざけんな!?景気よく燃やしちゃったじゃないの!!」
『グスッ……』
「今凹むな、あとで凹め!!ギガブロ、ここお願いできる!?」
「手加減はできんぞ!!」
「一直線でぶち抜く、問題ない!!」
クッソ、なんで一般人が紛れ込んでるのよ!!
そんなことあんまりないんじゃなかったの!?
『サポートポインタ、表示完了!!ぶちぬいて!!』
「一の太刀、《刃星砕爪》!!」
要救助者がいる場所まで一直線に道を切り開き、疾走する。
私たちの活動で人死にが出るのは寝覚めが悪すぎる。
どうやら火の手の回っていない部屋を見つけて籠っていたらしい。
よかった。
「ひぃ?!」
「って、あなたは」
なんという偶然だろうか。
弓場 秤と名乗った他校の生徒だった。
まあ、別に私から思うところはない。
サクッと担いで、アローズが開いたゲートに放り投げる。
「話はあとで。命が惜しかったら大人しくしてて」
「ちょ、説明くらいぶべら!?」
『わぁ、敵か味方かわからない言い方するねえ』
うるさいな。
とりあえず戻る。
ギガブロの気が高まって溢れている。
あっちの戦いもヒートアップしているようだ。
「とっておきだァ!!」
うわ、ミーティアぶち込んでる。
異界の宿が既に半壊した。
けどヒートアップはしているが、思ったよりエンジンがかかり切っていないな。
一応手加減はしてくれているのだろう。
「ギガブロ、救助は終わった。手加減は要らないわよ」
「そうか。ならば、オレは敵を破壊し尽くすだけだァ……!!《ブラスターメテオ》!!」
うわ、躊躇なく無差別攻撃し始めた。
防御手段を持っている私とギガブロしかいないのならば別に構わないが。
『げ、ギャ……!!』
果たして敵は生きているのか。
答えは是。
敵は逃げようというのか。
それも是。
ならば私たちがすべきことは?
デストロイ一択である。
「六の太刀《
焔の檻で改めて囲う。
逃げ場はない。
救いもない。
ただ当然のように死ね。
「どこへ行くんだ?」
『げ、ゲギャギャギャア!!』
「たった独りでかぁ?」
這いつくばるゴブリン仙人を叩き潰し、ギガブロが戻ってくる。
彼がいればAランクも危なげなく対応できるな。
安全のためにレイドでAランクを狩りに行っているが、ハイリターンを求めるならばソロで行ける実力がある。
私もだし、フィストとスターもだ。
伊達に3巨頭とは呼ばれていない。
「終わったな。所詮、クズはクズなのだ」
「本当に言動がそっちによるわね」
「望んだわけではない」
ま、もう終わったのだ。
あとは異界から戻るだk『まだ終わってない!!二人とも、上だ!!』オウガ●イルに殺されるのは勘弁だ!!
――ズゥン……
厳かな重低音。
上から降ってきたその巨体は、人の姿をしていた。
虎柄の腰巻、真っ黒な肌。
筋骨隆々の肉体に、頭部に生えた、二本の角。
黒鬼である。
オ●ガテイルどころか
『オデ、オマエ、マルカジリ』
『さすがにまずいね。言語能力を有する黒鬼の討伐ランクは……Sランクだ』
「さすがにデュオでSランクは無理よ?」
「クランの精鋭がここにいれば何とかなるだろうがなァ……」
『撤退してくれて構わない。今本体が対応に動いている。分霊のボクでも本体が来るくらいまでは時間を稼げる』
勝ち目はない。
Sランク上位というのはそれだけの暴力である。
だが、それが異界に閉じ込めているとはいえ無秩序に暴れるのは止めなければならない。
「で、ここにいる分霊のあんたはどうなんの」
『おやおや?ボクの心配をしてくれているのかい?ここにいるボクは分霊だから気にする必要は』
「完全な同期が取れてない時点で個々の人格を持った個人だよ。で、もう一回聞くよ。無事に勝てんの?」
『……』
「時として沈黙は雄弁に語るものだよ、アローズ。ギガブロ、どれくらい稼げば対抗できる?」
「1時間だ」
「オーケイ、おもっくそ時間を稼ぐわよ」
『ちょちょちょ!?無理する必要はないんだよ!?リスポーンシステムがあるとはいえ自分から死地に向かう馬鹿な真似はよすんだ!!』
「だそうだが《焔塵卿》」
「今日食う朝飯がまずくなるから却下ね」
「オレもだ」
さて、絶望的な戦いを始めよう。
・弓場 秤
過去の柳に関係があるらしい重要人物。
隣町の陽翠中学の生徒、弓道部。
どこぞのアーチャー並みに百発百中。
幼少期に柳と関係性があったが記憶を失う前の柳がやらかしてこじれた。
逸般マインド全開の幼少期の善意が空回ったせい。
・黒鬼
実は恐怖の象徴として描かれる割には鬼ってろくすっぽ弱点が明記されてないんですよね。
強い匂いがだめだとか、とがったものが苦手だとか。
なんか曖昧なんですよね。
イワシとヒイラギの葉で魔除けとしたりするそうですが、それで鬼退治ができた例って文献あさっても見ないというか。
Q:つまり?
A:特にこれといった弱点が存在しないアルティメットフィジカル生命体として降臨している。