深夜の魔法少女アニメを履修してるタイプのマスコット(超善良)が来た 作:蓋然性生存戦略
相手がギアを上げるというのなら。
私もギアを上げて対応する。
長くて15分。
それくらいしか保たないが。
「森羅万象、黄昏を示せ」
『《焔塵卿》!?それはだめだろう!?』
あと15分経てば、ギガブロもじり貧ながら正面戦闘が可能になる、はずだ。
そのあと私は役立たずの燃え滓になるが……まあ、私なんぞよりも才能にあふれた3人と最強のサポーターがいる。
何とかなるだろう。
私は、
「《
『ああもう、悪い子だ!!』
私は焔を爆散させ、そして収束させる。
焔を身に身に纏うのではなく、焔を身の内に込める。
苦しい、熱い、止まれない、滾る。
「ガァァアアアア!!」
私は雄叫びを上げて加速する。
ギアを一気に何段階も上げ、速度にモノを言わせて斬り結ぶ。
一度、二度、三度。
焔の軌跡は描かれない。
焼け焦げた黒装束の影だけが眼に映るだろう。
《
これは焔を外側ではなく内側に発する技であり、殲滅力や神秘属性を捨て去る代わりに、一時的に凶悪なまでの身体能力を手にする力だ。
問題があるとすれば、変身形態に多大な負荷をかけ、効果時間終了と共に強制的なデスポーンを強いられる。
デスポーンのペナルティが発生しない訓練室で編み出した技で、実戦投入は初めてだ。
だが今はこれでいい、これがいい。
「ここから15分は私が前を張る!隙をついてダメージを出して!」
速度は上回った。
膂力は足りない。
技量はまだ私が上。
15分間負ける要素はない。
また、《ラプラス》の未来予知もある。
対応されても対応を返せるだろう。
『グ、ゥ……オマエ、シノゲバ、オデ、カチ!!』
「それはどうでしょうねえ!!」
幾重の剣戟の末の、鍔迫り合い。
力は足りない。
押し負ける。
ならば受け流す。
体勢を崩せればそれでいい。
己が名のように、しなやかに受け流せ。
「甘い!!」
『ヌ……!!』
「《テラトンハンマー》!!」
そして横からぶっ放される、完璧な一撃。
ただ一撃に特化した必殺技。
このままでは私も巻き込まれるが、受け流しに成功した私は体勢を崩していない。
つまり動ける。
私が成すべきは一つ。
離脱ではない。
「チェストォ!!」
顔面に飛び蹴り。
より確実に《テラトンハンマー》を叩き込むためにギリギリまで追撃し、離脱する。
「とっておきだァ……!!」
そしてギガブロのミーティア。
スターのハンマーで足が止まっているところに叩き込まれる現状最大火力。
緑色の閃光が迸り、火柱を上げる。
「《シャドウクラック・グリムリーパー》!!」
そしてフィストの貫通必殺が突き刺さる。
彼の攻撃はあらゆる防御、耐性、概念を貫通する。
そのことにいまだ彼は気付いていないが、しかしだからと言って弱いわけではない。
耐性貫通攻撃とは、いわば確定ダメージと同義であり、弱者救済の聖剣となりうる。
そんな彼が、溜めに溜めた最後の一撃。
黒鬼に大打撃を与えるだろうと確信した一撃だった。
『グ、ギ……ヤル、ナ!!』
だが、黒鬼は健在。
大打撃を与えるには与えた。
だが戦闘不能に追い込むほどではなかった。
全員、大技を放った後で隙だらけだ。
黒鬼はもう動いている。
私が対応するが、一歩遅れた。
判断を違えたか?
「いいえ、まだです!!《
否。
事象が改変された。
なんという
私たちはまた万全の状態から動き、黒鬼はまた体勢を崩した。
「……私はここまで……勝ちなさい」
しかし《ラプラス》はここで
もう未来予知と事象改変には頼れない。
だがこれでいい。
今しかない。
「終の太刀、《
「《テラトンハンマー》!!」
「《ミーティア》ァ!!」
「《シャドウクラック・グリムリーパー》!!」
もう一度叩き込まれる最大火力。
これでダメなら、後数分私が粘って終わりだ。
無論、
ただ、ここにいるアローズという神の分霊が、一柱消える。
負けイベントに勝てなかっただけのことだ。
何も恥じることはない。
初めから注意はされていた。
ただ、啖呵を切っておいて情けないとは思う。
だから勝つ。
勝ちたい。
勝たせろ!!
しかし、残酷なるかな。
現実は非情だ。
まだ、黒鬼は立っている。
『コレデ、オワリ、カ?』
息も上がっている。
金棒を支えにしている。
全身傷だらけ。
それでも、奴は立っていた。
「クソ……」
「虫ケラ風情が、思い上がるなよ……!」
「届きませんでしたか……」
私に余力はもうない。
限界を超えた駆動により、変身形態はもう維持が難しいところまで来た。
敗北である。
『クラウ、ツヨクナル。カンシャスルゾ』
勝利を確信した黒鬼が、ゆっくりと歩いてくる。
一歩、二歩。
私たちは食われ、デスポーンする。
敗北を受け入れ、目を瞑ろうとした。
その瞬間だった。
――ピシャァァァァァン!!
電が周囲を切裂いた。
「もう大丈夫!!」
「何故って?」
「「「「「ボクたちが来た!!」」」」」
上を見上げれば、無数のアローズ。
優に数百は下らぬ人数のアカデミックドレスの少女がいた。
左手には雷光を、右手には盾を。
頭には光輪を掲げ、背に幾何学模様の翼を背負っている。
「本体が対処完了したって言うから、分霊部隊出撃!!力の1号!!」
「同じく2号!」
「3号!」
「中略666号!!」
「絶対666体は過剰だと思うけれど!!」
「本体がハッスルしちゃったから仕方がない!!」
「これも悪い子がいけないんだ!!」
「というわけで、せ~の!!」
「「「「「一斉掃射!《
再び降り注ぐ雷の雨。
『万雷』とはこのことと言わんばかりの光景だった。
あとやかましい。
女3人寄れば姦しいとは言うものの、666人はあまりにもではないだろうか。
「ガハハ!勝ったな!」
「戦いは数だよ兄貴!!」
「分霊一体だと足止めが精々だけどな!!」
「3人寄れば文殊の知恵、塵も積もれば山となる!!」
「今日はアローズちゃんのいいとこ見せちゃうぞ~~!!」
うるさい、あまりにもうるさい。
やかましいことこの上ない。
『ガァァアアアアァアアッッッ!!!』
「効かないよ~~ん!!」
「アイギス重ね掛け!!」
「実質一人ファランクス」
しかしその連携と数の暴力は本物である。
各御使に派遣されている分霊が集まればこうも圧倒的なのか。
分霊1体で時間稼ぎが可能だというのならば、当たり前の話ではあるが。
『フザ、ケルナァ!!』
「大まじめさ!《
「もういっちょ!」
「さらにもういっちょ!!」
それでもなお健在の黒鬼。
あまりにもタフネスが過ぎないだろうか。
「うーん、やっぱりデータ弄られてんねえ」
「ボクたちの攻撃の通りが悪いや」
「でもデータを直せばいいだけじゃんね」
「オラ、喰らえ分霊666体の同時ハッキングだ!!」
「まあ実際は1割程抑えに入るんですが」
アローズのデータに改竄を挟む存在とは一体……。
一応こいつ神の分類なんだけど。
「というかデリートしたほうが早くない?」
「説あるコアトル」
「あそーれポチッとな」
「「「「「削除」」」」」
アレだけ私たちを苦しめた黒鬼は、アローズの過剰なまでの援軍の前に消し去られた。
……これが神と人の間にある差か。
むしろこれだけの実力差があるのに手が足りない状況って何?
どれだけデカい山を抱えてるわけ???
「状況終了~~」
「じゃ、1号よろしく」
「ボクら帰るから」
まあ、始末は終えたのだろう。
ボロボロの私たちの前に、1人を残してアローズは消える。
「さて、特別報酬とお説教の時間だ。た~っぷり支払った後、た~~っぷり叱ってあげるから覚悟しておくれ?」
このあと、私は思った。
あの黒鬼の方がまだ怖くなかったと。
黒い空間に連れ込まれ、変身を強制解除され……
「あのねぇ、確かに分霊とは同期を取ってないし一個人として呼ぶべきものなのかもしれないけどそれはそれとしてキミたちが怖い思いをする必要なんてないのそこのところわかってるかなァ?分霊を一個人として認めて守ってくれようとするその姿勢は嬉しい限りだけどボクの予備演算領域でしかない分霊とキミたちの安全を比べればどう考えてもボクの分霊にリソースを割く必要がないことは分かると思うんだよわかるよねわかってわかれわからなければいけないetcetcetc」
延々と説教されることになったのだった。
それはそれとして流されたのはアローズってハナシはダメ?
ダメですか、はい……。
・《
アローズの主兵装。
すごくバチバチする。
本体の物よりかなり弱い。
・《
アローズの拘束技。
すごくジャラジャラする。
本体の物よりかなり弱い。
・666体の分霊部隊
明らかに過剰
馬鹿の所業。
人間の光の部分を見てテンション上がり過ぎ。