深夜の魔法少女アニメを履修してるタイプのマスコット(超善良)が来た 作:蓋然性生存戦略
いつも通りの朝。
いつも通りのホームルーム。
いつも通りクラスから孤立気味の私は、授業が終わればさっさと帰る。
当然帰宅部である。
季節は10月。
既に秋と呼ばれるが残暑が厳しい地域も時期。
今日も今日とて帰りに《魔獣》狩りでもしようかと思ってふらふらと街を歩く。
ただ、今日は反応が薄いようで。
まあ別に、いつもいつも《魔獣》が湧いているわけではない。
今日のようにたまの休みだってある。
『今日は表出する《
「ま、帰り道ついでにぶん殴れるような奴が毎回いるわけじゃあないしね」
『それでもまあ、ここ
「え、そうなの?」
『そうなんだよねえ。この町、異様に《魔獣》が多くてさあ。ぶっちゃけ柳ちゃんが一生かけて《魔獣》狩りしてもなくならないレベル』
「やば」
じゃあ出てこない方がおかしいよね?
なんて、このくだりは実はすでに何回もやっている。
『ボクもそう思う』
「シレっと思考を読むのやめてもろて」
『まとまってデカいの来るんじゃないかなあ。今までの出現頻度と難易度平均を鑑みるに……次出てくるのは難易度Aくらいかな!!流石にまだまだ勝てないから挑まなくてもいいよ。ヤバそうならボクが対応するし』
「またかぁ……あー、悔しいなあ~」
『はっはっは、悔しがるのも仕事の内さ、若人よ』
「いうてアローズも見た目はロリじゃん」
『それはそう』
こういう時は大抵、一発デカいのが来る。
先日倒したCランクなど比べ物にならないレベルの大物が出るのだ。
例えばそう、ドラゴンなどの超大物が。
そうなるとまだ私には早いと言わざるを得ない。
まずもってサイズ感が違い過ぎるのだ。
精々人間の3倍程度のミノタウロスとは比べ物にならない。
一挙手一投足が必殺と言っても過言ではない。
なので今回は見送る。
「一回戦闘不能になると一週間戦えないのがねぇ……」
『流石にゾンビアタックできるほどの潤沢な魔力はないからね、仕方ないよ。死を前提とした戦術は組んでほしくないしね』
「命を軽く見ちゃだめってことね」
『そゆこと~』
仕方がないか。
公園のベンチでジュースを啜り、ボケーッと過ごす。
たまにはこういうのも悪くはない。
『って、あれ!?なんで一般人がフィールドに入り込んじゃってるの!?げぇーーー!!魔力持ちだこの子!?ナンデ!?アイエナンデ!?ワケガワカラナイヨ!!』
と思ったが、どうやらまずいことが起きたようだ。
『柳ちゃん緊急事態!!魔獣発生地点にまだ一般人の魔力持ちが迷い込んだ!!ボクの契約適用外だから襲われたら普通に死ぬ!!現場に急いで駆け込んでほしい、保護はこっちでやる!!』
「はいはい、ギャラは弾んでもらいますよ~?」
『もちろん!!』
私は、一も二もなく、その場から離れ、全速力で駆け込んだ。
ここはどこなのか。
何が起きるのか。
俺にはよく分からない。
近日引っ越す先に、先んじて散歩しに来ただけなのに。
よく分からない空間に閉じ込められた。
どうやって出ればいいのだろう。
分からないまま歩き回っていたら、それは現れた。
巨大な空間の歪みから、その巨体を揺らして現出する。
獅子の方な胴体に、長い首と尻尾、肉食恐竜の様な頭。
そして極めつけは、背中に生える巨大な被膜の翼。
それは誰がどう見ても、ドラゴンと呼ぶべき存在。
「マジかよ……」
ああ、俺はここで死ぬんだなと思った。
焦るでもなく、泣きわめくでもなく。
ただ冷静に、自分の死を直感した。
それでも。
「逃げるんだよォ!!」
俺は生存を諦めない。
幸いにして、ここは都市部の廃墟の様なフィールドだ。
射線を遮るためのものはたくさんあるし、何なら地下を見つけて逃げ込めばいい。
なぁに、なんとでもなるはずだ、俺は運動神経は良いからな!
体力ねーけど。
俺はすぐさま駆け出し、来た方向へと逃げる。
そちらに出口があると信じて。
「慌てず逃げに徹する、良い判断ねっ!!」
そして、それは功を奏した。
1分ほど全力疾走して。
すんでのところでかみ砕かれそうなところで。
紅蓮が俺の横を通り過ぎた。
「
『ナイスだ《焔塵卿》!!よく間に合わせた!!緊急離脱コード1109、開始ィ!!』
燃えるような緋色の髪を、後ろで一本にまとめた、黒装束の少女。
焔を纏った刀でドラゴンと対峙して、俺を庇うように立っていた。
『《焔塵卿》、30秒だけ持ちこたえてくれ』
「30秒?気楽に言ってくれる……さっきの一撃全く効いてないんですけど?」
『流石にAランクはタフネスの塊がデフォだからね~~……ま、派手にやってよ』
「オッケー。『森羅万象、暁を齎せ』《
そこから三十秒。
俺は、生涯忘れられない景色を見た。
「一の太刀!《
急いで《魔獣》出現地点に駆け付けたはいいが、既に《魔獣》は出現済み。
要救助者も30秒持ちこたえなければ助けられない。
最悪、私はここで負けてもいい。
契約の適用範囲であるから、死ぬこともないしケガすらしない。
だが、迷い込んだ彼は違う。
普通の人間であるため、普通に死ぬらしい。
稀に、ごくまれにこういうことがあるとのこと。
まさか自分の管轄で起きて欲しくはなかったが。
なんでも、一般人は近寄らないように人避けを展開しているらしいが、魔力持ちはたまにそれをレジストして入り込んでしまうことがあるそうだ。
それで今回迷い込んだのが彼ということなのだろうが。
――ガキン!!
いかんせん相手が悪い!!
相手は難易度Aの大物、ドラゴン!!
難易度Cの相性が良かったミノタウロスで時間をかけていた私が敵う相手じゃない。
そもそもアローズも、今の御使が相手することは想定していない。
今回は本当の本当に緊急事態ということで私が駆り出されただけなのである。
今繰り出した渾身の一撃も、前足で止められてしまった。
とてつもない硬度。
私の《残照》の方が欠けてしまうかもしれないほどだ。
「かっった……!!」
『うーん、《焔塵卿》なら傷くらいはあるいはと思ったんだけど、流石にダメかぁ』
「言ってる場合!?要救助者は!?」
『大丈夫、タゲが移らないようにはした』
「てことは私は狙われるってこt、あぶなぁ!?」
くっそアイツブレス吐きやがった!!
当たり前だけど!!当たり前だけど!!
『へいへーい、解析結果、出たぜー』
「ちょうだい、はやく、ッハァァァァルゥィィィィィイ!!」
『えー、一定ランク未満の攻撃無効の概念装甲があります!!具体的にはランクBに十分以上に通用する火力を持って来てね』
「んなもんねーわボケェ!?酸欠は効く!?」
『行けると思うけどそれキミも要救助者も死ぬ』
「ちくしょうめえ!!」
このまま逃げ回れってのも癪だけど!?
『ちなみにこうして鬼ごっこしてる間に良い感じに20秒が過ぎました』
「っしゃオラあと10秒!!」
『耳を澄ませたら10秒先へ!!』
「ネタ拾ってる暇ねーからぁ!!」
残り3秒、こうなりゃヤケだ、限界を超えた火力をぶつけたらァ!!
残りの稼働時間、全てをここに込める!!
「終の太刀、《
私の愛刀から、白い焔が立ち上る。
人間が視認可能な領域限界の焔。
「死なないのが分かってんなら、もう何も怖くないっ!!ふ、き、と、べっ!!」
『コード実行完了!後で会おう!!』
ブレスとぶつかる私の焔。
せめぎ合うこともなく私の焔は気おされ、そして世界は閃光に染まり……。
私はリスポーン地点である裏路地に瞬間移動した。
「ああもう、強過ぎ!!Aランクほんとに倒せるようになってんのアレ!?」
『一応、理論上は』
「はぁぁあ……これから一週間先の稼ぎがパァかぁ……」
『ごめんね、ボクの不手際だ』
「良いけどさ。人命第一だし」
「あ、アンタか!助けてくれたのは!!」
「あー……アローズ?」
『ごめん、転送先同じだった』
「なにやってんのホント」
転送された先には、私と、迷い込んだと思わしき男の子。
そしてデバイスにいるアローズ。
何気に身バレしたのである。
「あー、気にしないで。このポンコツマスコットに頼まれてギャラ目当てでやっただけだから」
「それでも礼は言わせてくれ、ありがとう!!」
「何この子すっごい真直ぐにお礼言ってくるじゃん……」
『主人公属性だねえ』
今時見ないよこんなやつ。
まあ良いけど、悪い気はしない。
「で、なんだ。アレか?魔法少女って奴か?」
『御使って言うんだけど、まあ似たようなもんさ。ニチアサ的なアレ』
「男もなれんのか?」
『むしろキミはあの空間に入り込めちゃった時点で資格大ありなんだよね……』
「うぉぉぉおお!!やってもいいか?!やりてぇ!!」
うわぁ、すごい喰いつきよう。
まあ、男の子だものね。
『別に良いんだけどもぉ……え、キミいま死にかけたよね?メンタル大丈夫?』
「最後まで会話も聞いてたからな。多分変身中にやられても死なないってことは分かってる。ていうか、ああいうところに迷い込んじまった時に手段が無い方が問題だろ。似たような奴が現れねえとも限らないし、正気で俺はやりたいと思ってる」
うわぁ、急に冷静になるな。
なんだこいつ、勢いだけに見えてちゃんと考えてる。
アローズとは別ベクトルでなんだこいつ。
『ねえこの子凄い主人公属性なんだけど、まぶしい、目が潰れる』
「アンタそこまで日陰者みたいなキャラじゃないでしょうに」
『まーね。ま、今回はボクの不手際の尻拭いをさせちゃったから、その分の補填はさせてもらうよ。その間はこっちの……キミ、名前は?』
「
『クロト君に頑張ってもらおう。ま、この町の担当が1人って言うのも問題だと思っていたし、ちょうど良いしヤナギちゃんは休んでてよ』
「言われなくてもそうするわよ。じゃ、私帰るから。疲れたわ、ホントに」
『というわけでクロトくん、ボクとはまた後で会おう』
あ”~~~!!本当に疲れた!!
一週間は《魔獣》狩りを休まないといけないくらいには疲れた!!
……今日は宿題だけやって終わろう。
はぁ……。
――翌日
「転校生の
「よろしくお願いします!!」
……マジ?