深夜の魔法少女アニメを履修してるタイプのマスコット(超善良)が来た   作:蓋然性生存戦略

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第三話:訊かれなかったからさ。知らなければ知らないままで、何の不都合もないからね

「というわけで、一番後ろの窓にいる山本さんの隣ね」

「はい」

 

嘘でしょ、本当に。

えぇ……?

昨日助けた男子が同級生として転校してきたんだけど。

 

(ま、そういうこともあるよね)

 

こいつ、直接脳内に……っ!!

 

(ファミチキください)

 

なんかやだな、スレ語録使うマスコット。

 

(そんなぁ……)

 

なにはともあれ、知った顔が隣に来るのは構わないのだけど。

 

「よっ。改めて、昨日はありがとな」

「別に構わないわ」

 

面識があるということで注目されてしまうのは非常にまずい。

というのも、紅ヶ咲の奴、ツラが良いのだ。

ただでさえ孤立気味なのに、こんなことになったらめんどくさいことになりかねない。

 

(ヤナギも容姿端麗、文武両道な完璧ガールだからねえ……ちょっと不愛想なのと趣味が女の子らしくないだけで)

 

女子グループにおいてそれは致命的なのよ。

はぁ……既に目線が痛い。

 

「というわけで授業始めるぞー」

 

休み時間、無事に済めばいいけど。

 

――休み時間

 

「どこから来たの?」

「山本とは知り合い?」

「なんか趣味ある?」

「今日午後どう?」

 

まあ無理よね。

気配を極限まで消そう。

 

「東京の方から来た。山本さんとは、昨日こっちに散歩した時に助けられてさ、それで知り合った感じ。趣味は基本ゲームだなあ。格ゲーとか。今日の午後は先約があるから無理だ、ワリ」

 

あぁ~~、よどみなく答えてる。

これが主人公か……。

 

「助けられたって何があったんだ?」

「いやぁ、道に迷ってさ。山本さんその時制服着てたから地元の人だと思って声かけた」

「あーね」

「この町は慣れてないと迷うからな」

 

上手いこと誤魔化してくれてるな。

主人公株が止まるところを知らない。

 

「休憩終わりな~、次の授業始めるぞー」

 

さて。

学校が終わったらさっさと帰ろう。

どうせやることないし。

 

(あ、そうだ。昨日の補填として魔力を補充しておきましたァ!!)

 

おい、聞いてないが?

 

(訊かれなかったからさ。知らなければ知らないままで、何の不都合もないからね……ごめんなさいデバイスをぶん殴ろうとしないで忘れてました)

 

よろしい。

じゃあまあ、出撃できるわけだ。

 

(あーそれなんだけども、クロトくん連れてってくれない?後方腕組み保護者面でも良いから付き添いおねがい)

 

私の時はなかったやんけ。

……まあ、私が第一号みたいなところはあるから仕方ないか。

 

(ついでにデバイスにクロトくんのデバイスの連絡先入れておいたぜ!!)

 

余計な真似を……。

まあいいか。

連絡が楽なのは良いことだ。

クラスL●neも入ってない私に最初に追加される連絡先が彼だとは思わなかったが。

 

(付き添いしてくれるなら微量ながらご褒美も増やすけど……)

 

規定はどうした規定は。

 

(これから御使も増えて来る予定なので後進育成システムを組んでるところ~。今回はテストランだね)

 

余念がないな……。

 

(ぶっちゃけね!!この世界バグやらエラーが多過ぎて大変なの!!御使システムが今すぐ本格稼働しても50年はかかる見込みだよ!!実際は100年かもね!!誰だよここまでほったらかしにしたの!!)

 

ああ、ご愁傷さまです。

せめてもの手助けとしてそのお願いは快く引き受けておくね……フィードバックもちゃんとするから……。

 

(うぅ、ありがとね……おかあさん頑張るから……)

 

誰がおかあさんじゃ。

アンタは精々近所のおばさんだよ。

 

(それもまた良きかな)

 

まあ、アローズが助かるというのなら頑張ってみたくはなるよ。

私が高校卒業するまでよろしくね。

 

(ん?言ってなかったっけ。別に高校卒業してもデバイス回収とかはないよ)

 

へ?

 

(社会を正常に回すための措置でご褒美システムの対象外になるだけで、デバイスはずっと使えるよ?じゃないとフィールドに迷い込んだ時大変じゃない)

 

そういうコトは!!ちゃんと言え!!

 

(ひぃん……卒業時に回収する項目書いてないからわかってると思ったんですぅ……でも契約書に明記しておきますぅ……)

 

全くもう。

コイツはなんかどこか抜けてるんだからもう。

まあいいや。

昨日は疲れたけど、今日も頑張ろう。

えい、えい、おー。

 

 

 

――放課後。

 

 

 

「というわけで集合ね」

『りょーかい。どこ行けばいい?』

「この前フィールドから出た時の路地裏覚えてる?あそこで」

『分かった』

 

一度家に帰り。

時間がまだあるので着替えてから町をぶらつきながら、紅ヶ咲くんを呼び出す。

場所はまあ、昨日の路地裏だ。

あそこは私がリスポーン地点にしているので、アローズの計らいで私が近づく前後は人払いがしてある。

クラスメイトに見つかることもないのだ。

 

しばらく歩いて。

一足先に合流地点へ到着。

2分も待てば紅ヶ咲くんも来た。

 

『来たようだね』

「待たせたか?」

「いえ、全く。アローズ、認識阻害かけながら今日の最寄の《魔獣》まで案内してくれない?」

『オーケイ!ちなみに、今日の《魔獣》はFランクだぜ』

「初心者にはちょうどいいか」

「だな」

 

私たちは最寄りの反応まで一緒に歩いて、そして突入した。

 

「《燃え盛れ》」

「《イグニッション》!」

 

そして、同時に変身する。

ちなみに、変身ワードは自由であるが、変身後の姿は本人の適性に合わせて変化する。

……で、だ。

 

「黒地に赤マフラーのヒーロースタイルね」

「カッコいいだろ?この時は《シャドウフィスト》って呼んでくれ」

「了解、《シャドウフィスト》。しかし、どっちも黒黒なのがなんかね」

「ま、衣装は選べないみたいだしな」

『ちなみにシステム任せだからボクの趣味は入ってないよ』

 

さいですか。

 

「で、相手はどこだ?」

「そろそろ湧くんじゃない?侵入してからしばらくは出現しないようになってるの」

「変身の時間ってことか」

『イグザクトリィ!ちなみに今回の相手はコボルト2匹だね。落ち着いて対処すれば、負ける理由が無い相手だよ』

 

アローズがそう言うと、《魔獣》が出現し始める。

コボルト2体か。

言うは易しだが、2体というのはそれだけで大変だ。

片方が終わるまでは片方を受け持つべきか。

 

『今回は《焔塵卿》がケツ持ちしてくれるから、《シャドウフィスト》は好きに戦ってみてくれたまえ。フィードバックは彼女がしてくれるはずさ』

「そうなのか?」

「そうらしいわね」

 

ま、報酬は出るし、お守りくらいはしてあげよう。

 

「にしても体が軽いや。これが変身効果って奴か?」

「アンタは見るからに肉体派っぽいし、肉体強化の比重が強いんじゃない?」

「あー、そうなのか?分からねーけど。とりあえずまあ、一発行ってくるわ」

「サポートはしてあげる」

 

《シャドウフィスト》はそう言って加速し、コボルトAに接近。

右腕に黒い影を纏いながらぶん殴った。

出現して間もないコボルトAは反応できずに左頬に右ストレートを受けて吹き飛んでいく。

 

……なんかなりたての割には攻撃力高くなぁい?

 

『《シャドウフィスト》、魔力量多いんだよね。まだまだ無駄が多いけどこれは伸びるよ』

「マジ?」

『マジマジ、本気と書いてマジ』

 

主人公属性をここでも加点して来る彼は一体どこへ行くのか。

特に世界の危機とかそういうわけでもないのに。

っと、現状を認識したコボルトBが拳を振り抜いたばかりの《シャドウフィスト》にとびかかった。

棍棒を持っているので、当たるとそれなりに衝撃がある。

なお、痛みはない。

そして難易度Fとはいえコボルト君の動きはそれなりに素早いので、多分間に合わないだろう。

先に拾っておいた小石に魔力を込めてシューッ!超、エキサイティンッ!!

 

「ぐぎゃ!?」

「お、ナイス!ありがとう!!」

 

私がインターセプトしておいたので間に合った《シャドウフィスト》の動きが再び加速する。

うーん、魔力の無駄は多いけど、動き自体は良いな。

後は立ち回りさえ覚えればEランクまでは余裕なんじゃなかろうか。

いや、ゴブリンの群れ引いたらちょっとまずそうだな。

能力次第だけど。

 

「《シャドウストライク》!!」

 

加速し、遠心力をたっぷり乗せた蹴りが炸裂。

黒い爆炎と共にコボルトB君は爆散。

残すは先程吹き飛ばされて瀕死になったコボルトAだが……まあ、瀕死なので。

 

「ま、いいでしょう。《灯薙》」

 

残りは遠隔で焼いて処理。

フィードバックと行きましょう。

 

「というわけでね、まず集団に突っ込むのはやめてね」

「うっす……」

「やるにしても片方を相手の斜線に入れるとか、そういう立ち回りが大事なわけで」

「あー……対戦ゲーでもやるなぁ」

「そ。ここでもそう言うの意識しないとダメなのよ。複数相手の時はね」

「なるほどなぁ……」

「まあでも動き自体は悪くないわ。立ち回りが今回はゴミだっただけで」

「うっす」

「じゃ、次行きましょう。今日は反応がまだ3つくらいあるし」

「おっけ、次々やってくぜ」

 

なお、ここまでアローズは若者を生易しく見るような目で私たちを見ているだけだった。

事実だけどその目はやめてね。

むず痒い。

 

 

 


 

 

 

「うんうん、システムは今のところ順調。御使候補の選別システムも上々、青少年の魔力保有率は現在5%ほどか。今は日本だけで稼働させてるけど、メリケンとエゲレスも稼働させたいよなあ……」

 

どこでもない異空間で。

アカデミックドレスに身を包んだマスコット、もとい神たるアローズは呟く。

地球に蓄積された膨大なバグ、エラー、破損。

それらを修復するのに、アローズだけでは300年はかかる見込みだった。

だが、日本で稼働させた御使システムにより、徐々に見込みは短くなっている。

 

首尾は上々、アローズとしては文句なしの大成果であった。

しかし、だ。

範囲は地球全土。

日本という小さな島国だけで処理するには時間がかかる。

実のところ、御使システムはまだ日本でしか稼働していないのだ。

 

アローズとしては、アメリカ合衆国やイギリスなどでも稼働させたいが、日本とは異なりニチアサが存在しない。

日本国民の少年少女に刷り込まれている『変身ヒーローは素性を隠すもの』という不文律は、確実ではない。

そもそもアローズ自身、日本以外の国の経験はないのだ。

ぶっちゃけ何がどう転がってどうなるか、不安で仕方がない。

 

あと、間違ってもお隣の大国やその北にある国には露見させたくない。

最悪のケースを想定すると、迂闊なことはできない。

 

「はぁ……予想がつかない以上はしばらく日本だけで稼働させるしかないか……グスッ……家に帰りたい……」

 

長期出張が確定し、帰宅は随分と先になりそうだと遠い目をしながら、彼女は仕事に打ち込んだ。

その背中には、絶世の美少女には似つかわしくない、哀愁が漂っていた……。




・御使システム
地味に日本でしか稼働していないことが明らかになった青少年変身ヒーローごっこシステム。
卒業しても特にデバイスは回収されない。
いつでも変身できるが悪いことにはやっぱり使えない。

・紅ヶ咲(ベニガサキ) 黒人(クロト)
主人公属性の転校生男子。
主人公なので当然資質が強い。
山本は主人公だけど主人公ではないので潜在能力で言えば黒人より下。
「なん、だと……!?」と「終わりだ……」が定番の台詞になるかもしれない。
ならないかもしれない。
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