深夜の魔法少女アニメを履修してるタイプのマスコット(超善良)が来た   作:蓋然性生存戦略

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短め


幕間:皆には内緒だよ?

少年少女の裏側。

御使システムと呼ばれる《魔獣(バグ)》殲滅機構が『遊ばれている』、その舞台裏では。

 

「ごきげんよう(ズドラーストヴィチェ)」

 

某国、某所。

極寒の地の、その地の底。

国家のごく一部しか知らないはずの、極秘組織の中枢で。

 

「端的に用件を伝えるよ~~。おいたはだめだよ~~」

 

身長145㎝にも満たない、黒髪黒目の少女が。

何の武装も持たない、アカデミックドレスの子供が。

 

「もう何回目かニャ~~?触らぬ神に祟りなしって、知らないのかな~~?」

 

歴戦のエージェントを、過酷な訓練を終えたハズの男たちを。

圧倒している。

 

あまりにも鮮烈な、死の気配。

 

コイツはなんだ、この子供はなんだ、コレは一体なんなんだ。

 

彼らの脳裏に過るのは、尚早に陥ったトートロジー。

思考はもはや機能していない。

 

「仏の顔も三度までだぜ?ま、コミーに言って伝わるかは知らんけど」

 

少女は詠う。

彼らの罪を。

少女が罪と定めた罪を。

 

「日本に住まう、ボクを助けてくれる善良な少年少女のためのシステムに、何ハッキング仕掛けてくれちゃってんの?気付かないと思った?可愛いねえ、殺すぞ」

 

「何の罪もない、ボクの手伝いをしてくれているだけの子供たちに、なに誘拐しかけようとしてくれちゃってんの?うまく行くと思った?愉快だねえ、死ねよ」

 

「何よりも、善良な少年少女たちが懸命に消してくれたバグを、なーんで増やしてくれちゃってんの?許してあげると思った?どうしようかなあ、許さねえよ」

 

ひとつ、ふたつ、みっつ。

罪を数え上げるたび、少女の影が増えていく。

 

『き、貴様は一体なんなんだ……っ!!』

 

その中で。

最も胆力のある男が問う。

お前はなんだと。

 

「ボク?この星の管理者さ!押し付けられた役回りと言えど、やるからにはきっちりやらないとね!!ひとまず……バグを増やすお馬鹿さんはこの世に必要無いんだよ」

 

男は悟った。

会話は不可能だと。

少女の中ではすでに結末は定められており、何をどう足掻こうと変わることはない。

気付けば、アレだけいたエージェントは、いつの間にか消えている。

広くなってしまった部屋に無音が劈く。

 

否。

 

聞こえてくる。

音のない咀嚼音が。

ぐしゃり、むしゃりと、影が喰らう音が。

 

『バケモノめ……』

「さようなら(ダスヴィダーニャ)。もう会うことはないでしょう」

 

――ばくん!

 

今度こそ、静寂が舞い降りる。

もうそこには、誰もいない。

吐き捨てられた銃器と、散らばった書類だけが、彼らがかつて存在したことを示していた。

 

 

 


 

 

 

『ガッデム。よもや日本に現れた存在が、これほどの存在とはな』

 

場所は変わって合衆国。

ホワイトハウス。

終焉を齎す者とすら呼ばれた歴戦の大統領は、その少女の出現に息を飲んだ。

何の前触れもなく、瞬きをしたその刹那に、少女は現れる。

侵入者に対して戦おうとし、そして無駄だと悟る。

 

「ハロープレジデント。どうやら噂程度にはご存じみたいで?」

『報告は上がっている。そして、様子を見るだけで手を出さずにいたのは正解だったようだ』

 

規格外。

そう呼ぶほかない。

合衆国とて、こうした存在と無縁なわけではない。

だが、だがしかしだ。

格が違い過ぎる。

国を相手取って後れを取らない……などという可愛いレベルではない。

地球の総戦力を以てして敵わない、そういう手合いだ。

とはいえ、問答無用で殺しに来ているわけではない。

相手は対話を望んでいる。

大統領は大きく息を吸って、そして吐き出す。

ここから先は、己の発言ひとつで国が亡ぶのだと覚悟を決めた。

 

『……何が目的か、聞いても良いかな』

「別に?ボクは地球のバグを直したいだけ。手を出さないでいてくれるならそれで十分なのさ」

『そのバグとやらを直したとして、何が起きる』

「今を生きる人間たちには関係のない話さ。強いて言うのなら、システムを通して得たご褒美が、経済を潤すくらいかな?」

『聞き方を変えよう。人類をどうしたい』

「どうもしないよ。地球に積み重なったバグ、不具合が多くて多くて気持ち悪いから直したいだけ。人間の未来なんて知ったこっちゃないよ」

『……そうか』

「まあでも、今を生きる人類が滅ぶとかそんなんじゃないから、そこは安心して?バグを直したことで気候変動とか火山の噴火とか起きるかもだけど、ボクだって好きで人間を滅ぼしたいわけじゃない」

『合衆国としては、その活動を阻むつもりはない。大統領としてここに宣言しよう』

「なるほど……つまり、馬鹿がやらかしても、この国の総意ではないと、そう言いたいわけだね?」

『ああ』

「オーキードーキー、そのように手配しよう!少年少女の青春の一頁(ひび)を壊さないのであれば、言うことはないさ!システムを供与したって良い。好きだろ?スーパーヒーロー」

 

少女はウィンクして、デバイスを投げ渡す。

契約書と共に。

 

「ところで大統領。書類仕事は、さぞ肩が凝るんじゃないかと思うんだけども」

『……これほどうれしい賄賂は初めてだな』

「プレジデントのそれは、どこからでもチャレンジできる特別製さ。皆には内緒だよ?」

 

大統領は受取り、サインをする。

ひととき、大統領という重圧から解き放たれる手段を手にして。

 

 

 


 

 

 

少女(カミ)は笑う。

ある日の出来事を境に、世界に根を伸ばした。

とある国には制裁を。

とある国にはアメを。

自分の仕事を楽にするために。

そのために利用している少年少女を守れるように。

 

「よーし、今日も頑張っちゃうぞー!!」

 

少女(カミ)は笑う。

ある日の出会いを境に、乗り気ではなかった仕事に張り合いが出た。

とある日には笑いを。

とある日には驚愕を。

自分の仕事を楽にする過程で、思わぬ楽しみができた。

 

だからこそ。

 

「ボクが守る」

 

決意が固まる。

滅びを迎えさせはしないと。

 

「どこの誰とも……知らないわけじゃないけど。ここからは、ボクたちが引き受けるよ」

 

特級のバグ。

地球の存亡を揺らがす致命的なエラー。

『Code:1999/7』。

少女(カミ)は真剣な目つきでそれを睨む。

 

「珍しく彼女が手古摺ってるし、ボクも手伝った方が良いよね」

 

システムは軌道に乗った。

サポートも演算領域を割譲して行っている。

本体が離れても問題はない。

 

少女(カミ)はその目を離した。

一瞥と呼ぶには長過ぎるその視線を。




少年少女の裏側。
アローズが愚痴を吐きたくなる案件。
だいたい封印されたまま放置されたCode:1999/7が悪い。
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