深夜の魔法少女アニメを履修してるタイプのマスコット(超善良)が来た 作:蓋然性生存戦略
あれから、数か月ほどの時が経った。
私たちは進級し、クラスが別々になったものの、変わらず《魔獣》を討伐している。
イベントは無事に終わり、なんなら二回目も開催され、普段の《魔獣》討伐の形式すら変わった。
御使専用のロビーが設けられ、居住地の近くに出現した《魔獣》の討伐にエントリーする形になった。
これにより、割とかなりの時間発生していた移動時間が解消され、利便性が上がった。
なおかつ、他地域の御使とも交流が多くなり、情報交換も盛んにおこなわれている。
時折発生するAランク以上のレイド、合同討伐作戦専門のクランなども立ち上がり、そろそろMMOか何かかとツッコミを入れたくなってきた。
「《焔塵卿》~~!!火力貸して~~!!」
「フィストとスターがそっち行ったでしょ、まだ足りないわけ?」
「そうなんだよ~~!!今いるメンバーだと火力枠が足りなくてさあ」
「悪いけど、私勉強したい……」
「ぐぬぅ……作戦を見直すかあ……学業優先だものな……」
コミュニケーションものぐさ太郎の私にも、知り合いと呼べる人間ができ、時折こうしてレイドに誘われるようにもなった。
毎度参加するわけではないが、相も変わらず平均スコアランキングトップの私は頼られることが多い。
尤も、私が通っている朱緋学園は小中高一貫の私立高。
偏差値は実はそれなりに高く、サボるとあっという間に落第点である。
そして、前回の期末が個人的にちょっとやば目の点数だったので自習期間なのである。
「《ギガンティックブロッコリー》は?」
「ギガブロは全国選抜大会でケガしてるから療養中」
「アイツケガとかするの!?」
「一応アイツも人間だぞ?!身長2m超えの筋肉もりもりマッチョマンの変態だけど!!」
そうか、いつもレイドに参加しているギガブロがいないのか。
彼がいないのなら仕方のない所があるか。
「仕方ないわね……今日のレイドは?」
「お、来てくれるのか?!今日はアイシクルドラゴンだ」
「ちょうど一区切りついてるとこだしね……氷ドラなら相性良いわね」
「みんなー!《焔塵卿》が来るって!!」
「っしゃあ!これで勝つる!!」
「交渉ナイスだ《アルゴー》!!」
「アイドラ素材で武器作るぞー!!」
全く、人ひとりが加わったくらいで大げさな人たちだ。
まあ、気分は悪くないけれど。
ああ、そうだ。
コンテンツの拡張として、武器やアタッチメント、そしてそれらの強化要素が追加された。
これは直接戦闘に向かない能力の御使や、欠点が大きな御使にすごく喜ばれた。
あと武器コレクターも喜んだ。
元から武器を持っている私みたいな御使はどうしているかって?
そういった御使にも、強化項目が追加された。
もうゲームだよコレ。
どこからどう見てもゲームだよ。
せっかく手伝ってもらうなら楽しんでもらいたいという気持ちは分かる。
ありがたいしね。
けどだからってゲームしすぎでしょこれ。
どんだけゲームが好きなのよ。
「《デモンズウォール》はいつも通り壁で」
「うっす」
「3巨頭の配置どうするよ」
「近接ディーラー2にメイジ1だろ?」
「スターは近接もできるわよ。普段私たちと組んでるからやらないだけで」
「マジで?」
「あ、はい、出来ます」
なので全員前に出たって良い。
というかアイシクルドラゴンは神秘系統の攻撃は効きが悪い。
物理でぶん殴ったほうが早いのだ。
「スター、ハンマー主軸で」
「了解です」
「え、じゃあサポの枚数も変えて……」
まあ、特に倒せない相手ではない。
カットカット。
『アイシクルドラゴン戦は!?』
「神が言っている。戦闘描写は得意ではないと」
『神はボクだが!?第四の壁を越えちゃだめだよ!?』
まあ、何はともあれ。
私は進級した。
色々とあったけれど、まあ今にして思えば特に何もなかったとも言えるだろう。
毎日毎日、《魔獣》を狩る日々。
変わったことと言えば、放課後にファミレスに寄ってお茶をする時間が増えたくらいか。
ご褒美で収入が沢山なので、気兼ねなくお茶をしている。
チーズケーキ工房のティラミスだって食べる。
最近肥えてきている気がしなくもないのが最近の悩みだ。
『アレだけ動いているのに丸くなっている気がするのはなんでだろうねえ……』
「……もしかしたら私、太りやすい?」
『まあボクは太ったことないからわかんないや』
「……すぞ」
『太らない代わりに身長も伸びなかったんだけどね』
ああ……(145に満たない身長を見ながら)。
『最低でも160㎝は欲しかった……ドウシテ……』
どんまい。
「まあ、良いんじゃない?若く見られるのは」
『成人しても成年コンテンツに年齢確認されるの、まあ心に来るよ』
「変に現実感のある感想やめてね」
『あと体格差も作られやすくて辛いこともしばしば。ボクは裏方専門なので特に問題は無いんですけども』
「まあ、そういうところはちょっと困りモノよね」
私の身長は153㎝。
これから成長期ということを考えるともう少し伸びるとは思うが。
普通に横に並べば、アローズより背が高いのだ。
アローズがあまりにも小さすぎるという話ではあるのだが。
『最近の子はよく成長するからボクは見上げることが多くてね首が辛いのが最近の悩みかなあ』
「それずっとじゃない?」
『そうとも言う』
ちなみに、アローズの伴侶は180㎝を超えるそうだ。
……そんな感じの美女をこの前見たな。
あの人がそうなのかな。
女性同士のカップル、まあ多様性か。
ん?そういえばコイツ二児の母とか言ってなかったか。
どうやって作ったんだ……?
これ以上は気にしてはいけない気がした。
やめよう。
『もし女の子の方が好きだったら秘儀を授けない事も……』
「生憎とノーマルです」
『人生何があるか分からんぞよ、ぞょ……』
というかそもそも恋したことが無い。
だからガールズトークとかふられても分からないのよね……。
『修学旅行も目と鼻の先だよ~?こういう話題には慣れていた方がいいんじゃない?』
「私に話しかける酔狂なクラスメイトはいないわよ」
アローズは心配そうな声音で問うてくるが、ぶっちゃけ私のクラスでの立ち位置は変わらない。
クラスとの関わり、驚異のゼロ。
紅ヶ咲や星野さんとは別のクラスになってしまったし、本当にゼロである。
まあ、めんどくさいし自分から行くこともしないが。
特に気にしていないのだから、別に構わないという判断である。
とはいえ、修学旅行か。
どうしようか。
流石に旅行中は《魔獣》狩りするわけにはいかないか。
『無理に来ようとするなら一時的にアク禁するからねー』
「分かってる」
アローズは過保護なんだから、もう。
入り浸ろうとする子供は追い出すし、逆に家庭環境が良くなかったら手を回すし。
結局自分で仕事を増やしているのでは?ボブは訝しんだ。
『いやぁ、最近御使の平均値が上がったから仕事がとても楽なんだよねえ』
「その分仕事増やしてどうすんのよ」
『仕事じゃないよ、趣味だよ』
「えぇ……」
お人よしが過ぎない?ねえ?
『趣味だからね、無理のない範囲でやってるから良いのさ。子供たちが笑っているのが一番なんだから』
「……ババくさいこと言うねって思ったけど、普通に年上だもんね」
『これでも1000歳を超えたおばあちゃんなのです』
「ロリババア……ってコト!?」
『ロリ言うなし』
ババアは良いんだ……まあ事実だし気にしてないのか。
『そういえばさぁ』
「何?」
『そろそろSランク挑んでみなぁい?』
「まだ全然勝てるビジョンが浮かばないんだけど」
『そりゃ簡単に勝てるようには調整してないもの』
それはそれとして。
Sランクに挑んでほしそうなアローズ。
何か隠していることでもあるのか。
そう思って見つめてみるが、その顔には『せっかく作ったのに挑んでくれないの……?』みたいなクリエイターの顔しか見えなかった。
勘繰るこっちが馬鹿みたいに思えるほどの純粋な目だった。
『今の御使の水準なら頑張れば行ける行ける!!』
「そう言ってこの前みんなで初めて挑んだレイドの時に蹴散らされたんですけど」
『だってあれ《
「なんでよりにもよって貧乏くじを引くんだか……」
『ま、運が無かったネ』
あの時は大変だった。
最終的には負けたが、ランカーが勢揃いで善戦したものだ。
最後は徐々に押されてタゲが分散せずに押し切られた感じだ。
悔しいものである。
『まあ、あと半分だったね』
「くっ……」
『逆に言えばあそこまで粘れたんだからいけるって』
「そうかなあ……?」
個人的に敗北というものは印象が強い。
一度負けるとそのイメージが強く残ってしまうものだ。
なまじ負けることの方が少ないのがそれに拍車をかけているような気もするが。
まあ、良いだろう、別に。
『Sランクの討伐報酬は特に力入れてるのになあ』
「エンドコンテンツでしょ、どう足掻いても」
『まあねえ。最終的には―――――大討伐作戦をやりたいし……』
「なんて?」
『おっと口が滑った。こっちの話だよ』
……まーたなんか企んでるな?
良いけども。
それで被害を被ったことは一度としてない。
確かな信頼と実績があるので、私は信じることにした。
「出来たら言ってね」
『え?どーしよっかなー』
「言ってね???」
『にひひ。その日の楽しみってことで』
やっぱり信じるのはやめようかな。
ちょっと不安になって来た。