DS 〈デジタライズ・ストラトス〉リ・デジタイズVer. 作:LAST ALLIANCE
前回のお話を読んで頂き大変ありがとうございました。
まさかいきなりお気に入り登録して下さる方々がいるなんて思ってもいませんでした。
この感謝を忘れず、引き続き面白いと思って頂けるようなお話を執筆します。
それでは第2話をどうぞお楽しみください!
4時間目の授業が終わり、IS学園はお昼休みの時間となった。女子生徒達は友人で集まって教室でお弁当を広げたり、食堂に行ったりと行動は様々。そんな中、正義は食堂の片隅で1人昼食を取っていた。
前世では両親のネグレクトに遭っていた為、食事は一人で作る必要を迫られた。高校卒業と共に社会人となり、実家を出て一人暮らしをしていた過去もあり、自炊する事に何の抵抗も無い。むしろその方が性格に合っていた。
しかし、この日は例外。入学初日でお弁当を作る余裕が無かった為、食堂に行って日替わり定食を頼んで食べている。この日のメニューは生姜焼き&エビフライ定食。大食いではない正義にはちょうど良いバランスだった。
「ごめん、ここ座って良い?」
「あぁ、どうぞ」
「ありがとう。お邪魔します」
黙々と食事をしている正義の許可を得て、目の前に座ったのは1人の少年。短い黒髪をウニのように立たせている。座るや否や、美味しそうにカツ丼を食べ始めた。
「え~と……君は?」
「あ、ごめん。挨拶してなかったね。俺は
少年の名前は獏良純一。1年4組所属で、『
「(『
「よろしく。3組か……だよね! 2時間目の時に声聞こえていたよ? 何かクラス代表戦の代表になるとかならないとか……」
「そうなんだよ~! それがさ~女子達が僕の事を推薦して断れないし、来週僕の専用機が来るから駆動テストと実戦テストも兼ねて出る羽目になってさ~もう入学初日から散々だよ~!」
「あはは、それはそれは……こっちは日本代表候補生の簪さんがクラス代表に決まったんだ。俺はルール的に代表になれないけど、実戦データの為に出る事になったよ……」
「……お互い大変だね」
「済まない、隣、良いか?」
正義と純一がお互いのクラス代表戦の事情を話しながら悩みや苦労を共有していると、お盆を持っている1人の女子生徒が話しかけて来た。
ふと純一が女子生徒を見ると、その後ろに3人の生徒がいた。1人は男子でもう2人は女子だった。
「良いよ。座って座って」
「折角だし皆で一緒に食べようよ。その方が楽しいし美味しいからね」
「ありがとう」
そう言って女子生徒が純一の隣に、男子生徒が正義の隣に座った。残る2人の女子生徒はそのまた隣に座り、食事を始めた。
「え~と……? 君は確か……」
「あ、初めまして。俺は織斑一夏」
「篠ノ之箒。よろしく」
「初めまして。セシリア・オルコットですわ。イギリスの代表候補生です」
「織斑マドカ。日本の代表候補生だ」
6人で食事をしている間、正義は表情には出さないものの、更なる原作知識との乖離に内心戸惑いながら驚いていた。
まさか入学初日で色々ととんでもない事が明らかになり、自分が持っている原作知識と明らかに変わっていたのだから。事前に分かっていたと言えど、ここまでとは思ってもみなかった。
(マジか……まさか入学初日でここまで原作と乖離しているとは思ってもみなかった。担任の先生はまだ分かるよ。でも一夏とマドカが兄妹で同じクラス……まぁ『
本来であれ、織斑マドカは一夏達とは敵対関係。しかし、目の前にいる彼女は日本代表候補生の1人。改めてこの世界は原作世界と違う事を突き付けられた。
「そういえば純一と正義は何を話していたんだ? 何か正義が頭を抱えていたけど……」
「あぁ、それね。実はお互いにクラス代表戦の事を話していたんだ。俺の4組は簪さんがクラス代表になったんだ。俺は『
「そうか……1組は兄さんとオルコットの試合になった。1時間目の授業に行われる。ちょうど実技の授業が重なっているから好都合だったんだろう」
「そうなんだ。実は僕ら3組も同じなんだ。僕の専用機が来週のお昼ぐらいに到着するらしく、駆動テストと実戦テストも兼ねて放課後に総当たり戦やるんだって。僕の他にナタリアさんとパクさんが名乗り出たから、2試合は確定だよ。さっきデータを受け取ったから、放課後に整備室に行ってシュミレーター借りるよ」
「正義、お互い頑張ろうぜ!」
「応! 相手がどうなろうと、機体がどうだろうと僕らはベストを尽くすだけだ!」
一夏と正義が固く握手を交わし、早速漢同士友情を築いている中、正義の話を聞いていたセシリアとマドカは真剣な表情を浮かべた。
彼女達は代表候補生。正義の相手となるナタリア・スアレス=ナバーロとパク・ソヒョンの事を知っている。
「ナタリアさんとパクさんですか……ナタリアさん……彼女はスペインの代表候補生の中でも屈指の強豪ですわ」
「そうなの!?」
「えぇ、正義さんには申し訳ありませんが、正直に言って、かなりタフな試合になりますわ。私も過去の模擬戦で押し切られたことがありますの」
「うわぁ……確か、オルコットさんはイギリスの代表候補生だったよね? そこまで言わせるなんて……」
「あぁ。ナタリアは生粋のファイターだ。普段は明るいのに、ISに乗った瞬間からシールドエネルギーが尽きるまで足を止めない。私は負けたことはないが……毎回エネルギーをゴリゴリ削られて骨が折れる」
「成る程……こっちの装甲ごとエネルギーを潰して来るタイプか……そういう相手には真正面からのバトルは避けるべきだな」
セシリアとマドカの話を聞き、正義は来週戦う相手の強さを思い知って内心ヒヤヒヤしつつ、対策を考える事にした。
ナタリア・スアレス=ナバーロは現役IS候補生の中でも生粋かつ屈指のファイター。正義の持つ原作知識の中でも強豪の部類に入るマドカも認める強さの持ち主。
「ええ。ですが……ナタリアさんはともかく、パクさんですか。あちらのIS事情は、今や惨惨たる有様ですわ」
「そうなのか? えっ、でも、韓国って昔は国際大会で上位にいた強豪国じゃなかったか? 千冬姉の試合を見てた時は、かなり強い選手がいたイメージがあるけど……」
「兄さん。それは昔の話だ。姉さんが現役だった時はそうだった。だが、私が日本代表の育成施設にいた頃、あそこは“過去の遺物”……“失敗作の生きた反面教師”としきりに言われていた」
「そこまで言われてるの……? 昔は強かったなら、ノウハウとか残ってそうなもんだけど……実際の所どうなんですか?」
そのまま話はパク・ソヒョンの話題になる筈が、韓国の現在のIS候補生事情となった。セシリアとマドカと言う2人の代表候補生が語る話に興味を持った純一が話を促すと、セシリア主導で話が進んでいく。
「そうですね……かつての韓国は『一部のエリートへの集中投資』と『過酷なしごき』で短期的な成果を出していました。ですが、今ではそれが裏目に出ましたの」
「と言うと?」
「いつしか選手の『
「あぁ~そうか。如何にも韓国ならではの話だね。俺のイメージだけどさ、韓国は『一部のエリートへの集中投資』によってけっこう成功している印象が強いよ」
(これだけ聞くとあれだな……僕が前世の時に聞いた強豪野球部の事を思い出すよ。あそこも昔は凄く強かったけど、暴力事件とか色々な問題が出て最後は廃部になったんだよな……)
セシリアの話を正義は前世の事を思い出した。とある高校野球の強豪校が様々な問題の末に廃部状態に追い込まれた事を。
「あぁ。指導者は不調になった選手に“根性が足りない”としか言わず、終始無茶な精神論による指導しかしなかった。無理な負荷をかけた結果、選手達は次々と壊われていった。私も国によって潰されて捨てられた選手を何人も見てきた。あんなのを見せられてみろ。次世代が育つわけがないだろう?」
「た、確かに……」
「……だが、国や協会もただ手をこまねいていたわけではないのだろう? 何か改革はしなかったのか?」
「もちろん、必死に助成金の拡充や制度改革を試みましたの。……ですが、時すでに遅く、“決定的な壁”にぶち当たりましたのよ」
「決定的な壁? それって一体?」
純一が首を傾げながら質問して来ると、マドカは深く深呼吸をしてから答えた。
「……使い潰された元代表選手たちの、悲惨なセカンドキャリアだ」
「セカンドキャリア……?」
「あぁ。これはIS業界の課題の1つだが、韓国ではより顕著に出ている。怪我で捨てられ、再就職もできず、身体を壊した元選手達の惨状が社会問題になった。それがテレビのドキュメンタリー番組で放映された。それを見た人達はどう思う?」
「あぁ……これはヤバいな……」
「そうだ。例え適性があっても誰もIS操縦者になりたがらない。なったら最後、『人生を壊される』って分かっているからな」
韓国の悲惨としか言えないIS候補生事情。それを聞いた正義達は言葉を失った。一早く再起動した純一は納得したように頷きながら声を発する。
「そういう事だったのか……これまで築かれた負の遺産と将来の恐怖で誰も集まず、今では人材不足に陥っていると言う事か。あれ? そしたらパクさんはどうして名乗りを上げたんだ? 自分がクラス代表になる実力があるのは分かっている筈なのに……」
「これは聞いた話なので何処まで本当かは分かりませんが……彼女の実家は韓国国内でのIS事業や軍事関連の利権に深く絡んでいる程の大財閥。ところが、国内のIS事業の失敗の煽りを喰らい、経営危機に瀕しているそうですわ。協会からは『彼女が学園で結果を出さねば支援を打ち切る』と、退路を断たれて送り出されたとか何とか……」
「……結果を出せば一発逆転。だが負ければ実家ごと終わりと言う事か……マドカ……ISってそんな過酷な世界なのか……」
「だから言っただろう、兄さん。ISの世界は生半可な覚悟で来る場所じゃないと」
(……マドカさんとセシリアさんの言葉には重みがあって、実感がこもっているな。前世の僕もそうだった。親や会社、世間の身勝手な都合で使い潰されて死んでいった。他人事とは思えないよ……)
その後は6人で和気藹々と食事をとりながら雑談に話を咲かせて交流を深め合った。しかし、正義はソヒョンの抱える事情を他人事と思えず、その後も時折真剣な表情を浮かべていた。
6時間目の授業が終わって放課後となった。そんな中、正義はスコールから手渡された寮部屋の鍵と、専用機のデータが入っているデータディスクを見ながら考えていた。
原作とは違い、入学前に寮生活になる事を聞かされていた為、事前に生活に必要な道具や趣味の物を学園宛に郵送していたので問題は無かった。
それよりも問題だったのは1週間後に迫ったクラス代表を決める試合。相手は原作キャラが口を揃える程強いファイターと、政治に振り回されている実力不足な財閥令嬢。どちらもタフな相手であり、素人同然の正義にはハード過ぎる。
(ナタリアさんはともかく、問題なのはソヒョンさんなんだよな。後がない相手が追い詰められた時に見せる決死の攻撃は極めて厄介だ。どう戦えば良い? と言うか僕の専用機ってどんな機体なんだろう? 整備室に行って確認してくるか)」
自分の専用機が一体どんな機体なのか。どういうコンセプトで、どういう装備をしているのか。気になった正義は教員室に向かって整備室の使用許可を頼むと、あっさり許可が出た。
そのまま整備室に向かうと、メインモニターを操作してデータディスクを挿入。画面一杯に映し出された専用機の見た目とスペック、武装を見ながら考えに耽る。
(名前は『流星零式』ね……そういえばこれ、教員部隊に制式採用される予定の機体だよな。だとすると、急遽僕用に手配した物みたいだ。どれどれ……成る程。機動力は高そうで、武装は……おぉ~! バランスが取れている。これは……良いね!)
正義の専用機。名前は『流星零式』。元々教員部隊に制式採用される予定の機体を、正義用に手配した先行試作機で、全身を装甲ですっぽり覆った全身装甲型。
見た目は純白を基調とし、バイザーアイの量産を前提としたような頭部をしている。全身は角ばっていて重厚。機動力が高い事が特徴。
武装はレーザー・ライフル。両腕に装着されている長方形型のバックラー。バックラーに1本ずつ装備されているレーザー・ブレード。右肩のレーザー・キャノン。左肩のミサイルポッド。近~遠距離にバランスよく対応出来る武装構成だった。
(う~ん……これでどう戦えば良いんだ……? 分かんない……武器のバランスが良過ぎて分かんないよ……)
「……あの、どうしたの?」
「ッ!?」
正義が考え事に耽っていると、彼の背後から声が聞こえて来た。その声に驚きながら振り返ると、1人の女子生徒が立っていた。
セミロングの内巻きの癖毛と四角眼鏡、ヘッドギアを装着した内巻きの水色のミディアムヘアが特徴な少女―更識簪。1年4組所属で日本代表候補生。
「あ、簪さん……お疲れ様です!」
「そんなかしこまらなくて良いよ。お疲れ様。どうしてここに?」
「え~実は……」
正義にとって、簪は実家こと会社を救ってくれた恩がある大企業の社長令嬢。かなりガチガチになり、深々とお辞儀をするのも無理もない。
そんな正義の緊張をほぐす簪はメインモニターをチラチラ見ながら質問をすると、正義は正直に事情を話し始めた。
来週のクラス代表を決める試合に出場する事。そこで専用機の駆動テストと実戦テストを行う事。今見ていたのは専用機のデータ。どう戦えば良いのか分からず途方に暮れていた事。その全てを話した。
「簪さんから見て、この機体どう思う? 来週の試合に向けてどう戦えば良いのか分からなくて……」
「そういう事だったんだ。待ってて。データ見るから」
簪は巨大なメインモニターに視線を向けると、正義の専用機のシルエットとパラメーターを凝視しつつ、武装を一通り確認した。確認が終わると、隣に立っている正義に視線を向けて話しかける。
「……これ、一言で言うと素直で綺麗な機体。教員部隊用に開発されている試作機なのは私も聞いたけど……」
「何か問題でも……?」
「問題と言うのかな?……機体に強力なプロテクトがかけられている。操縦者が貴方だから、操作性を考えて急遽デチューンされて搬入されるみたい。この数値だと……本来のスペックの7割も出ないんじゃないかな?」
「そうか……でも仕方ないよ。最初からピーキーで扱いづらい機体渡されるより、多少性能が落ちても扱いやすい機体を渡された方が良いよ」
実際に簪が指摘した通りだった。『流星零式』は元々教員部隊に制式採用される予定の機体を、正義用に手配した先行試作機。
IS操縦者になりたててな正義が乗る事前提な機体な為、機体の出力等を抑えて本来の性能を発揮出来ない仕様となっている。
「でも……この状態でも戦えるよね?」
「うん、大丈夫。ベースの設計がすごく洗練されてる。高機動を謳うだけあって、フレームと設計がしっかりしているし、拡張性が極めて高い。クセがなくて扱いやすいから、操縦者の腕次第で限界まで性能を引き出せる。……武器の構成も、すごくロジカルにまとまってる」
「ちなみに簪さんなら、この武装構成でどう戦う? 実はさっきここで悩んでいたんだよ」
「私なら……このように組み立てるかな。……まず、レーザー・ライフルで遠距離から攻撃しながら相手を牽制。相手のシールドエネルギーを削りながら、相手の動きや相手を一定の方向に誘導する」
簪が機体の武装構成を見ながら説明するのを、正義はペンとメモ帳を取り出して静かに書いていく。
「誘導、か……それで次は?」
「うん。相手の退避行動に合わせて、左肩のミサイルポッドで範囲を抑える。狙いは定めず、散弾状に。そして相手がそれを避けようと動いたその瞬間に、本命の右肩レーザー・キャノンを叩き込む。ミサイルの着弾時間と、レーザーの即弾性をずらした“時間差の面制圧”。これなら、どんなに機動力が高い相手でも回避行動が取れなくなる」
「うわぁ~! あらかじめ回避先をミサイルで潰して、退路に高威力のキャノンを叩き込むのか。これは完璧な
「最後は、面制圧で体勢が崩れた相手に、高機動力を活かして一気に急接近。両腕のバックラーからレーザー・ブレードを展開して切り伏せる。……防御は最小限、両腕のバックラーで最小限のアタックを捌けばいい。これが一番綺麗で、隙のない基本パターンだと思う」
「完璧な提案だよ! ありがとう、簪さん!……いやこれじゃあ不十分だな」
簪の説明を聞いた純一は笑顔を浮かべながら深々とお辞儀をしたが、何かに気付いたのか、頭を上げると共に表情を曇らせる。
「相手が一般生徒のように綺麗に勝てる相手ならそれでいいかもしれない。けど、さっきも話したけど、来週のクラス代表戦の相手はナタリアさんとパクさん。片方は生粋のファイターで圧倒的な格上。もう片方は実力不足だけど後が無くて捨て身で来る相手。このパターンが崩された時、若しくはこの武装で状況を打開出来ない状況に追い込まれた時の為に、もう1つ武器が欲しい。……あくまで“保険”として」
「保険……? 追加の武装を申請するの? まだ1週間あるから大丈夫だと思うけど……」
「え~と……この場合どれが良さそうかな……? あ、あったあった!これだこれ!」
「……えっ、ショットガン……?」
正義は首を捻りながら数秒考えるとあるアイディアを思い付き、モニターを操作して追加武装をモニター画面に表示させた。
その追加武装はショットガン。近接戦闘用の武装の追加に簪は驚きながら目を丸くさせる。
「実弾の、近接用ショットガン? どうして……? レーザー・ブレードがあるのに、わざわざ実弾の近接火器を積む必要ある? 射程は極端に短いし、ISのシールドエネルギーを削るには、エネルギー刃のブレードの方がずっと威力が高いよ?」
「簪さんの言う通りだ。でもね、強い人や追い詰められた人と戦うにあたって、切り札は持っておいて損じゃない。相手にあらかじめブレードを使うと警戒させ、相手が受け止めようとしたその瞬間、超至近距離から相手目掛けてショットガンをぶっ放す。ISバトルは女性が今の所主役なんだ……まさか誰も男がするような泥臭い不意打ちを予想しないだろう?」
「ッ……!」
「ブレードで斬るだけが近接戦闘じゃないんだ。ゼロ距離で攻撃を叩き込み、衝撃で相手を動揺させてでも勝機を見出す。例えどんなにかっこ悪くても、泥臭く思われても良い。最後に勝てば良いんだ。それが僕の
そう言い切った正義の目。そこには何が何でも勝ちたいと言う強い執念と精神が宿っていた。正義の言葉に息を呑んだ簪は画面と正義の顔を交互に見比べると、少しだけ頬を緩めて、興味深げな視線で正義を見る。
「うん。凄く良いと思う。普通なら絶対に出てこない発想だね」
「気に入ってくれて嬉しいよ。けどこの機体で、そして僕の努力で勝つにはこうでもしないと厳しいと思うんだ。これから先……クラス対抗戦や学年別トーナメントで勝つ為にも。避けては通れない道なんだ」
「ふふ。その心意気、気に入った。そのショットガンのマウント位置と、零距離発射時の反動を逃すハードポイントのフレーム調整……私に任せてくれるかな? その代わり……」
「……その代わり?」
「シミュレーターで、その戦術を身体に染み込ませるまで……覚悟して練習するよ? 私、データ採りには厳しいよ?」
「応よ! どんなに厳しい訓練でも乗り越えて見せるよ。1週間後に間に合わせる為にね」
その後、正義は整備室の使用時間ギリギリまでシュミレーターを使った訓練をこなしていった。簪がセッティングしたのはナタリアとソヒョンの戦術パターンを模したAIプログラム。
「まだだ! まだ終われないよ! 次だ次!」」
「な、何と言う執念……」
モニター越しに正義を見守る簪は絶句して青ざめていた。例え何度撃破されようが、何度失敗しようが一切構わず、正義はリトライし続ける。
その狂気じみた執念と共に積み上げていくリトライ数と撃墜数。恐らくIS学園でも歴代と言える数字を刻みつつ、正義は簪が提案してくれた戦術パターンを徹底的に脳と体に刻み付けていく。
ミサイルとキャノンのコンビネーションを用いた時間差面制圧のタイミングを身体に染み込ませたり、間合いを詰められた絶体絶命の瞬間、ブレードを受け止めさせつつ、ゼロ距離でショットガンを顔面に叩き込むタイミングを徹底的に反復練習していった。
いつしか時間は過ぎ去り、整備室の使用時間ギリギリ。キリの良い時間になった所で訓練は強制終了となった。正義は滝のような汗をかいてシミュレーターから出て来た。
「お疲れ様です……簪さん、お付き合いして頂き大変ありがとうございました」
「お疲れ様……普通なら有り得ない回数だよ。本当に……正気じゃない……」
「正気じゃない……か。アハハ。最高の誉め言葉だよ。僕は凡人で相手は代表候補生と言う一握りの天才。凡人が天才に勝つ為には努力を積み重ねないとなんでね……悪いけど、明日もこのメニューでお願いしてくれますか?」
「え……っ!? 明日も……これをやるの……?(ほ、本当に凄い……何て執念なの……?)」
「当たり前でしょ……これくらいどうって事ないよ……」
凄まじい努力を積み重ねる事をどうって事ないと言い切る正義。そこには並大抵ではない執念と精神力があった。簪は内心で底知れない狂気と覚悟にドン引きしつつも惹かれていた。
(そういえば自分の専用機の調整が出来なかった……ま、良いか。それにしても……正義君の事お姉ちゃんに伝えようかな? あの執念と狂気……間違いなく化け物と言えない)
正義と別れた後、簪は自分の目的が果たせなかった事を後悔したものの、姉の刀奈に正義の事を報告する事を決め、自分の寮部屋に戻っていった。
その頃。寮部屋にいる純一はルームメイトの帰りを待っていた。彼は授業終了後、担任の八神カズマと訓練用アリーナで『
今は食事とお風呂を済ませ、明日の授業の予習を済ませた所。1人のんびりしていた所にボロボロになった正義が帰ってきた。
「ただいま戻りました~」
「おっ、やっと来たか……って正義!? お前、凄い汗だな! 何処で何してきたんだよ!? お風呂入ってこい!」
「あ、純一君。僕のルームメイトなのね……これからよろしく~」
「よろしく~はいいからさっさとお風呂入れって! お前今何時だと思ってんだ!」
大量の汗と狂気じみた目を見て恐怖を感じた純一に急かされ、正義はお風呂に入った。それから30分後、お風呂から上がって一息ついた正義に缶コーヒーを渡してから純一は尋ねる。
「ところでお前何処で何してたの? どうやったらあんな汗かくんだよ?」
「あぁありがとう。実は簪さんに頼んでシミュレーターで訓練受けていた。その時に専用機のデータ見て、戦い方も教わった。あの人には頭が上がらないよ」
「あぁ~昼食の時に言っていたな。来週専用機が届いて代表候補生と試合するって。食堂での話……あんな過酷な話を聞かされた後で、よくそこまで自分を追い込めるな。お前すげぇよ……」
「それはこっちの話だよ。君だって
「まぁな。でも、君がルームメイトで良かった。もしトレーニングがきつくて、毎日が辛くてもお前の頑張りを見たら言い訳出来ないし、頑張ろうと思えるよ」
「それはお互い様だよ。明日もまた頑張ろうぜ。これからよろしくな!」
正義と純一はお互いに笑い合うと、ガッチリと硬い握手を交わした。こうして2人目の男性操縦者と
LAST ALLIANCEです。ここまで読んで頂き大変ありがとうございました。
今回は皆さんが気になっているであろう質問に一問一答形式で回答していきたいと思います。
Q:この小説ってどういう作風?
A:凍結前とは違い、アンチ・ヘイト色をかなり薄めています。原作にはあまり無かった各国のISや候補生事情、原作に登場したISの開発背景を政治的な観点を含め,「こんな感じで開発されたのかな?」とかなり現実的に書くようにしています。
Q:主人公の強さは?
A:一夏・箒より強いくらい? セシリアと鈴音は原作知識を使えば勝てる(本人は不本意だけど)。シャル・ラウラは相性的に、簪、楯無に実力的に勝てない。
Q:『流星零式』の元ネタは?
A:『アーマード・コア4』に登場したホワイト・グリント。ジョシュアが乗っていた方。武装は『ガンダムSEED』のデュエルガンダムアサルトシュラウドの物も混ぜています。
以上になります。
皆さん。よろしければ感想・評価・お気に入り登録の方よろしくお願いします。
あたたかい感想とか前向きなコメント、作品の質を向上させるようなアドバイスや、モチベーションが上がるような応援メッセージや高評価を頂くと、作者のやる気になります。それが執筆意欲に繋がります。
それでは次回をお楽しみに。LAST ALLIANCEでした!