SPIDER-MAN:Earth『ZZZ』 作:糸吐く不審者
今回から二章です。よろしくお願いします。
是非Onry one SPIDER-MANを聞きながら前半部分読んでくださいな。
プロローグ
おっけ! じゃあ最初から説明するね。僕の名前は、ピーター・パーカー!!
「起きた……起きた起きた。起きたってば。起きたからやめて。ねぇ、聞いてる?」
一見平和でそれでも物騒な街――――新エリー都で暮らす、ちょっと冴えないフリーターさ!
「ねっむい……いやだから起きてるって。大丈夫」
……ひと月に一回くらいのペースでバイトをクビになるような男だけど。まあ、それくらいなら『ちょっと冴えない』で許されるよね。許してもらえるよね??
「わかってるよ……うん。そう。クビになりたくないし。天職だからね」
でもそんな僕も、最近天職に就けたんだ。その名も、レンタルビデオ屋『Random Play』!! 僕映画が大ッ好きでさ。そんな大好きなものに囲まれて仕事できるなんて、天国だと思わない? 好きなものを仕事にすると辛くなるからやめろ、なんて最初に言い出したヤツとは仲良くなれないだろうね。だって今の僕、とっても楽しいから。
「――――いやそもそも三時ごろまではキミもノリノリだったじゃん」
『――?――、――――え』
「あーーーーーーそういうこと言うんだ!? ふーーーーんそう!! ああそう!!」
……あと、ちょっと独り言が多いから不審者かも。でも独り言ではないよ。少なくとも、今はね。
え、イヤホンから若干音漏れしてる? 結構音量下げてるつもりなのにな。
「……研究発表会いつだったっけ」
『――――の、――――』
「いや今のは独り言。ありがとうだけども」
あと最近ちょっと寝不足でさ。一応鏡で、隈が無いかチェックする所から僕の一日は始まりがち。
「おはようございま〜す」
「おはよう、ピーターさん!」
「おはよう、ピーター。今日もよろしく頼むね」
新しい仕事も絶好調!
「――――まあだから、正直スクリーンでする映像体験と家のビデオデッキとテレビだと、それくらいの差は生まれると思うんですよ」
「なるほどねぇ」
「今ルミナスクエアでリバイバル上映やってるみたいだし……どうです?」
「行ってみようかしら……」
好きなものを語るってなると、ちょっと早口になっちゃうのが玉に瑕だけどね。
「またのご来店を〜!」
「……ピーターさん、今のお客さんと何の話してたの?」
店長のリンちゃんとアキラくんとも、と〜っても仲良し!
「え? いや。見たい映画があるって聞いたからさ。ちょうどリバイバル上映してるよ〜って」
「……、……ああ、うん。そう。そうだね〜、劇場での視聴体験は何物にも代え難いもんね……お兄ちゃんもいつも言ってるよ……」
なんか僕を見る目が冷たいけど。絶好調だよ。いや、ホント。絶好調……だよね?
「じゃあ、ピーター。このビデオをルミナスクエア西側の住宅街まで届けてくれるかい?」
「サー・イエッサー!」
「常連さんで良い人だから、最悪遅れても怒られないよ。ピーターの不幸体質が起こらない程度に、ゆっくり頼むね」
「……サー・イエッサー」
あーはいはい、フリーターの僕のことはとりあえずこれでおしまいでいい。
……キミたちだけに教えてあげる。僕にはもうひとつの顔があるんだ。
【ザ、ザ――――ミナスクエア中央通り、強盗犯が現在逃亡中】
幼い頃に、実験所に居たエーテルまみれの蜘蛛に噛まれてから、僕は特異体質を得た。……らしい。らしい、ってなんだよ! ってツッコミは受け付けてませーん。
『あるじ、近いです』
「みたいだね。行こっか」
壁に張り付き、這い回り――――まるで蜘蛛のような能力と、超常的なパワー。
【こちら、セス・ローウェル! 現場に急行します!!】
「おっ、セスくん来るんだ。でもごめんね、僕の方が早いかも」
もちろん、その力をどう使うかと聞かれれば――――この街を守る親愛なる隣人。
『行きましょう、』
「ん。よし行こう、」
スパイダーマンだ。
「おっ、スパイディ!! 今日も――――え、今日は何でそんなキテレツな」
「ちょっとね!」
まぁ街を守るって言っても最近ホロウに入る許可を主治医のヤニカ――――こほん。Dr.MJからもらってね。
「スパイディだ!! ……何でそんな変な」
「ちょっとね〜!!」
最初の依頼は苦労したよ……めっちゃ強力な、蠍の尾っぽみたいな機械を付けた男と戦ってさ。
「スパイディ〜!! ……えっ、なにそ」
「いやまあ、ちょっとね!!」
ドン、ドゴン――――ドガ、バギ、ピュピュイ! ムズムズでブチブチ、バシュ、バシュッ……で大勝利さ。
「スパイダーマン……」
「あ、丁度いいところに。この紙袋持っててくれる? とっても大事な荷物なんだ。絶対開けずに、大事に持っててね」
「良いけど……なんで」
「ちょっとね!!」
……ンなに、わかりづらかった? じゃあ読んどいてよ。無料で読み放題だからさ。
何って……そりゃネットニュース。活字あまり読まないタイプ?
『やはり目立つようですね、あるじ』
「みたいだねえ……」
『あ、お腹の穴の縫ったところ、ほつれてます』
「うっそ。これのせいかな……」
その最初の依頼のおかげで、ちょっと――――いやだいぶ騒がしい相棒のAI……Jinniが仲間になってさ。なんだかんだで楽しくやってるよ。
この一週間でだいぶ依頼もこなしたよ? それこそこんな風に。
「クッソ――――なんでこんな間抜けな見た目のやつに!」
「はいはい、逆さ吊りのままでいいから大人しくしてな、ね? そろそろ治安官が来る頃だろうからさ〜」
やっぱりホロウの中に入る危険な仕事ってなると、そこそこお金も貰えまして――――、
「お、来た来た。久しぶり、セス治安官。ブラック・スティングの時以来かな?」
「また先を越されてしまったか。いつも思うが、アンタはどうやって先回りしてるんだ……?」
「それは企業秘密」
今僕は、
「……というかその……スパイダーマン。聞いていいことか、わからないんだが」
「何、良いよ。僕とキミとの仲じゃん」
「……何故養生テープで、頭にスマートフォンをぐるぐる巻きに貼り付けているんだ……?」
「……ちょっとね」
新装備のテスト中だ。……そう。テスト中。キテレツだけどね。だいぶね。
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SPIDER-MAN:Earth『ZZZ』
VOL.2『
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時刻はそろそろ二十二時に差し掛かろうとしてるところ。六分街とルミナスクエア、スターループ辺りを見回って――――僕の現在地は、バレエツインズ付近。
特に何も異常はなかったけど、この辺は新エリー都の中でもだいぶ物騒だからね。一応念入りに見ておかないと。
「人の通りはいつも通り殆どないけど――――ほら、やっぱり」
ビルの屋上から見下ろした先。銅像広場に降りる階段で、何やら怪しい動きをしてる、フードを被った人影があった。
右足を乗っけた階段にはリュックが放置されていて、その中からは無数のスプレー缶が顔を覗かせている。
とりあえずビルの屋上から飛び降りて、片膝をつきながら着地。そのまま階段の一番上から見下ろしてみるけど、気づかれる様子は特になかった。
「……、……」
壁に右手をついてポーズを取ってみる。左手は腰に。足をクロスさせた渾身のセクシーポーズ。
……気づかれない。手すりに体を乗っけながら壁にスプレーを吹きかけるその姿は、真剣そのものだった。集中力がすごいなこの子。
「ねえ、ちょっと。その壁って、描いて良い壁?」
痺れを切らして声をかけてみる。大きく肩を跳ねさせたその子の視線が身体ごと僕に向く。フードで見えなかったけど、なんか怪しげな仮面で顔を隠していた。
目元だけ覆うような真っ黒い仮面。瞳の部分には、警戒した猫の瞳のように横に鋭く伸びた穴があって……その穴の向こうで、綺麗な青色の瞳が困惑で揺れているのが見える。
「素敵な仮面だね。猫モチーフかな? ……ああでも、目元に幾つか猫の引っ掻き傷みたいな塗装がされてるし……猫に引っ掻かれた人、がモチーフだったりする?」
「…………」
「猫好きだけど、猫に好かれないタイプかな。六分街に行くといいよ。あそこの猫、みんな人懐っこいから」
仮面の向こうから、僕の足先から頭までをゆっくり往復するような視線が向けられて、最後に大きなため息が吐き出された。
「……なんだ、治安官かと思った。驚かせないでよ」
「なんだとはなんだい、キミ。一応僕咎めに来た側の人間なんだけど」
「親愛なる隣人サマはこんな軽犯罪にも目くじらを立てるの?」
「犯罪に大きいも小さいもないからね。見かけちゃったからには注意くらいするよ」
「あっそ」
あ、また溜め息。大きく肩をすくめたその後で、右手に持ったスプレー缶をカラカラと音を立てて振っている。いや、辞めないんかい。
「……っていうか、なんかアンタのマスク……頭の部分。ベタベタしてない? ……テープでも貼ってた? ホコリとかくっついてるけど」
「……ああ、まあ。ちょっとね」
聞いたくせに興味ないみたいだし。また壁に塗料を吹き付けて、口元は真剣そうに噤まれた。
……何と無く、その子の背後に回って、反対側の手すりに腰掛けながら作業を眺める。初めて見るし、興味がないのかと聞かれれば、まぁ興味はあるしね。
「女の子がこの時間にひとりとか、危なくない?」
「この辺に居るのは大概、酔っ払って寝てる人かボンプくらいだし。それに、今はアンタが居るから危なくないでしょ」
「僕の方がキミを襲うかも知れないよ? 犯罪者には結構容赦ないんだ。糸で拘束しちゃうよ〜」
「その発言、治安官が聞いたらそっちの方が不審者じゃない?」
「今のはオフレコで」
あ、ちょっと笑った。小さく肩が揺れるのが見える。
「で、さっきの僕の質問に答えてくれてないけど。その壁は描いていい壁なんですか〜?」
「この新エリー都には描いていい壁なんてないよ。等しくどこに描いても犯罪だから」
「自覚あるんだ。それでも辞めらんない感じ?」
「わたしのストレス発散みたいなものだから。……それに、スパイディの私刑もある意味犯罪みたいなモンでしょ。一部の治安官はあまり良い顔してないみたいだよ」
……それ、何処かの誰かさんにも似たようなこと言われたな。タバコ吸いながら。
にしても口がよく回る子だ。この子も多分、頭が良いんだろうな。
「よし、できた」
少しの間があって、彼女が満足げに壁から厚紙を外す。その下から現れたのは、数本の色鮮やかな花が生けられた花瓶を、必死に背負って歩くボンプのイラストだった。ボンプからは吹き出しが出ていて、グラフィティでよく見かける字体で――――『RIGHT UNDER YOUR NOSE』と描かれている。
「目と鼻の先にあるのに気づかない……? なんの話?」
「んー……灯台下暗し、って感じの訳かな。わたし的には。どう? よく描けてるでしょ」
「よく描けてると思うけどね、タイル二枚分の小さい絵とはいえ犯罪ですからね」
「はいはい」
呆れたように笑う仮面の女の子と、二人並んで暫く壁に描かれたイラストを眺める時間が続く。
「よく描けてるイラストだとは思うけど、僕にはキミが伝えたいことはあんまりわかんないかな。……で、
「――――意外。イラストのテーマには気づかないのに、そっちには気づくんだ」
……言葉の通り『心底意外』と言いたげな声が飛んできた。何気にこの子、だいぶ失礼なのでは?????
「そりゃあ気づくよ。このタイル、多分だけど塗料が乗りづらい材質でしょ? なのに随分と綺麗に乗ってるし。それに、ライトに照らされて……フィルムかな。縁が薄ら見えてる」
「……へぇ。目、良いんだね」
「まあね」
彼女の指先が壁に触れる。向けられた視線は、生み出したばかりの
「……まあ、正直この絵に込めた感情はあまり強くないよ。意味を聞かれてもちょっと困るくらい。まあ……強いて言うなら、『みんなは背負われてる花瓶や花ばかり見て、背負ってる方のボンプのことはあまり見ないよね』くらいの」
「立派に伝えたいことあるじゃん」
「でもその辺の適当な落書きと変わんないよ。たまーに、高尚な考えとか政治への文句を描きたくてヤッてる子たちもいるけどね」
そう語る彼女の指先は一瞬滑るように、壁に描かれたボンプへと触れた。それでもすぐにその手は引っ込んで、スプレー缶をリュックの中に押し込むと、慣れた手つきでチャックを閉める。
「直接描いてるわけじゃないっていうのは正解。薄いフィルムを貼り付けて、その上に描いてるんだ。これ、お湯をかけるとすっごい簡単に剥がれる仕掛けになってるんだよ」
「……へえ。キミの自作?」
「そ。……だからね、剥がそうと思えばすぐに剥がせる。フィルムだって限りなく透明にはしてるけど、よくよく見れば存在に気づける。だからね、この絵が剥がされることなく、長いこと残されてること自体が『アート』になる――――って感じかな」
リュックを背負い直して、その子はゆっくりと立ち上がる。僕のすぐ傍まで歩み寄ったその口元には、楽しそうな笑みが浮かんでいた。そのままパーカーのポケットから何かを取り出して、
「世の中には上っ面を見る人間ばかり。このイラストを消したいやつだって居るだろうに、剥がす方法は案外簡単。必死こいて考えなくても、割とすぐに方法は見つかるんだよ――――ってことで、『灯台下暗し』ってトコ。初見で気づいたスパイディには、プレゼントをあげる」
僕のお腹にその取り出した〝何か〟を貼り付けた。何だ何だとスーツを少し伸ばして見下ろすと、『HELLO』と書かれたシールが貼られているのが見える。
……これ、名札シール? 空白には、
「StRaY……ストレイ?」
「そ。わたしの名前。タグネーム、ってヤツかな」
……あっ、やっぱり猫モチーフだったんだ。Sの頭の上には猫の耳……Yの真ん中の棒からは、Sの字を目掛けて猫の尻尾みたいな模様が伸びているのも見える。
「お腹、穴が空いてたのを縫い合わせたのか知らないけど、目立つくらいにほつれてたから。お近づきのシルシにプレゼント」
「あ、ありがとう……?」
「ああ、あとここのイラストを消す権利もあげるよ。んー……どうしようかな……うん。ひと月くらい経っても消えてなかったら、アンタの手で消してくれて良いよ」
「いやいやいや。すぐ消すよ。方法知っちゃったもん!」
「それじゃあだーめ。アートにならないでしょ? もう少し我慢してよ、親愛なる隣人サマ〜!」
「えぇ……」
言いながら、彼女――――ストレイは緩く手を振り、階段を登って何処かへと歩いて、消えていく。
「……なんか不思議な感じの子だったな。他にも何処かで、同じ文言が書かれた絵を見た気がする。何処だっけ、ジニー」
……ひとり取り残された階段に、僕の独り言が響いて消えていく。
「……えっ、あれまた充電切れ?! どうりで静かだと思ったら……もー……」
『いやまあ、ないだろ流石に……』で削除した項目を足して、再度アンケートをとってみます。良ければご協力ください。
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ゼンゼロだけ知ってる
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スパイダーマンだけ知ってる
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どっちも知ってる
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どちらも知らない