ナツキ・スバル達御一行がどうやらトリコの世界に迷い込んでしまったようです。 作:お餅モチモチ
なめし牛の捕獲の際、ノッキングの道を示されたスバル。トリコとサニーに連れられてノッキングマスター兼再生屋の鉄平がいる癒しの国「ライフ」にてノッキングの修行をするためにやってきていたのだが…
「あのー、トリコさん?鉄平さんって緑髪のリーゼントヘアーの男って話でしたよね?何で俺はバンダナを頭に巻いている葉巻をふかした大男にみぐるみを剝がされているんですか?」
そこにいたのは再生屋としての鉄平の師匠である与作であった。どうやら鉄平は用事があって少しだけここを離れているようである。そんなとき、スバルを見た与作が何を思ったのかスバルをパンイチにして全身の診察をし始めたのである。
「がっはっは!小僧、ルールに縛られちゃいけねえぜ?鉄平に会いに来たからって鉄平に会えるというルールなんて無いんだからな!それよりもおめえ、ずいぶんと体を酷使しているようじゃねえか。そんな身体じゃあ鉄平のノッキング修行についていくことなんてできねえぞ?普段だったらお前さんの体のケアで1億は貰ってるところだが、今日の俺は機嫌がいいんでな、特別に新しい薬の実験台になるだけで代金は勘弁してやらあ!なーに人間への投与実験は俺の体で死ぬほどやってるから心配すんな!たまに死にかけるぐらいだよ!がっはっは!」
その言葉を聞いたスバルは全力で暴れて逃げ出そうとするもベッドに縛られているため逃げ出すことができない。故にトリコとサニーに半泣きになりながら助けを求める。
「たまに死ぬかもしれねえ薬を初対面の若造に使うんじゃねえよ!トリコさん、サニー、助けてくれー!ベア子もそこで優雅にお茶すすってないで何とかしてくれよー!」
スバルの助けを求める叫びを聞いてもトリコとサニー、ベアトリスは動こうとしない。その理由をサニーが語る。
「スバル、お前美しくねえ叫びをあげるのをやめろ。確かにこのおっさんは美しくねえし、むさくるしいし、キモイし、関わりたくもねえおっさんだが、再生屋としての腕は世界一と言ってもいい。再生屋ってのは絶対に命を粗末に扱うことはしねえ。そのポリシーだけは美しいと言わざるを得ない。そのおっさんが『スバルの体は鉄平の修行についていけねえ』と判断したならそうなんだろうぜ。本気で死にかけたら俺たちが何とかしてやる。だから、お前は自分の体がどんだけ超強化されんのかを楽しみに待てばいいさ」
サニーの言葉を聞いてトリコも頷いている。
「ほう?サニーにしては良いこと言うじゃねえか。この前のなめし牛の捕獲の時によっぽどスバルと仲良くなったと見えるな。スバルも心配すんなよ。与作は荒っぽいが腕は確かだ。何せおれの無くなった左腕をゼロから生やした実績があるからな。お前さんの体を修行についていけるくらいに強化するなんて朝飯前さ。そういえば朝飯まだ食ってなかったな。サニーとベアトリスはここでスバルの様子を見ておいてくれるか?俺は露店で朝飯食ってくる」
トリコがそう言ってから2時間後ようやくトリコが帰ってきたときには与作によるスバルの肉体回復&強化施術は終了していたが、その現場はトリコが出ていった時とは比べ物にならないほどあれていた。さらに、トリコの嗅覚にはスバルの体から嗅いだことのない異臭がするのも感じ取っていた。しかし、スバル自身は穏やかな顔でぐっすりと眠っている。このことについてトリコが尋ねると真っ先にベアトリスが口を開いた。
「なんで、なんであいつがいるのかしら。もう、あいつはこの世にはいないはずなのよ…」
ガタガタと震えるベアトリスをなだめながらサニーはトリコに事の顛末を説明する。
「なあトリコ。俺がスバルにノッキングの道を示した経緯はお前に話したよな?あいつには俺の触覚ですら反応できない未知の何かがある。それを使ってなめし牛を完璧にノッキングして見せた。おそらく今回のこの惨状もその何かが暴走したんだろうな。
与作による施術が終わる直前までスバルはわめいていたんだ。だが、施術が終わった瞬間こと切れたように眠り始めた。その直後だ、部屋中のありとあらゆるものがぶっ壊され、与作も俺も強い衝撃で壁まで吹っ飛ばされた。
そして全員が視たんだよ『白銀色の髪を持ち、黒色のローブで顔を隠し、うっすらと見えたその眼の色は紫紺の女』をな。そいつは一言だけ『スバルは私だけの人』と言ってその場から消えた。
全くあいつにはどんな謎があるってんだよ。仮にあれがスバルの中にいるグルメ細胞の悪魔的な存在の暴走なのだとしたら、その暴走状態も克服しねえと美しくねえよな」
そんな話をしているうちに鉄平が用事を済ませて戻ってきていた。
「師匠~戻りましたよ~って、えぇ!何ですかこの惨状は!師匠、また大暴れしたんですか?客人がいるのに?」
「おいおい鉄平。俺がいつも大暴れして部屋をめちゃくちゃにしているような人間に見えていたのか?ま、間違っちゃいねえな。がっはっは!だが、今回に関しちゃ俺のせいじゃねえ。ここで寝ている小僧の中の何かが暴れたんだよ。俺にもサニーにも暴れる瞬間は見えなかったがな。ま、その辺のことはこの小僧から聞けばいいさ。《気付けショック》!」
与作の《気付けショック》によってスバルはたたき起こされ、部屋の惨状を見て驚いている。
「うわあ!何事何事!って、部屋ン中めっちゃくちゃになってるよ!ベア子、トリコさん、サニー、熊みたいなおっさん、一体何が起きたんだよ!」
スバルの驚きようを見ればこの部屋をスバルが意図的に荒らしていないことは明らかであった。そうであるならば、一体何がスバルから出てきたのか…何かを知っていそうなベアトリスは先ほどの件について決して口開こうとしない。トリコたちは少し考えてみたものの原因不明の事態としていったん飲み込み、スバルの修行について話をした。
話し合いの結果スバルの修行については以下の条件で行うこととなった。
・修行の期間は1か月、鉄平が見込みありと断定すれば延長の可能性あり
・修行自体はスバルとベアトリスのみ同行し、トリコとサニーは同行しない
・スバルが修行について来れていないと鉄平が感じた瞬間仲間のもとへ送り返される
与作による肉体強化施術によってなんだかんだで体の調子が良くなったスバルは修行に対して高い意欲を見せていた。
「いよっしゃあ!どんな修行だってどんと来いってんだ!パワーアップしてみんなのもとに帰ってやらあ!」
時は流れ3か月後、ロズワール服飾店はだんだんと界隈にも浸透し始めていたのだが、ムードメーカーであるスバルがいないロズワール邸はややマンネリ状態となっていた。スバルが帰ってきていないこと自体は「スバルに見込みがあった」ということなので喜ばしいことであるのだが…
「だあもう!大将は1か月くらいで帰ってくるんじゃなかったのかよ!ここのメンツは女ばかりだから話し相手としちゃ、ちょっとちぐはぐになっちまうんだよなあ。オットー兄いは日本語教室を卒業した後『武者修行だ!』って言って十夢の兄貴と一緒に市場を駆け巡って忙しそうにしてるしよお。狩りをするって言っても最近は歯ごたえのあるやつは依頼が入ってこねえからなあ」
ソファでだらんと横になっているガーフィールを見てフレデリカは諭すように声をかける。
「ガーフ?いくら暇だからってそんなはしたない姿でいてはだめですよ?スバル様が帰ってこないということはそれだけスバル様の力が買われているということです。スバル様の弟分を自称するならもっとシャキッとなさいな」
この様子を見ていたペトラも会話に混ざる。
「そうだよ、ガーフィール君。スバルが帰ってこなくて寂しいのはみんな一緒だよ。レムさんなんて最近洗濯しながら『スバル君、スバル君』言っているんだよ?オットーさんまでいなくて話し相手がいなくて寂しいのは分かるけど」
ガーフィールは少し顔を赤らめて叫ぶ。
「な、な、な、何を言ってやがる!誰が『寂しがり屋のスルッタン』だ!俺様は別に寂しくなんか…!」
3人がじゃれあっているところにトリコが現れた。
「おう!今日はこの3人が留守番の日か。なかなか珍しいじゃねえか?そうだ、いい知らせを持ってきたんだ。スバルの修行がもう少しで終わるらしい。そして、卒業試験としてとある食材の捕獲に行くそうだ。お前たちもついてくるか?まあ、あと一人問題児も連れていく予定なんだが…」
3人は顔を見合わせて「行きます!」と元気よく返事をした。
「威勢のいい返事だ。なら、3日後俺の家の前で集合な。何日間か砂漠で野宿をするからきちんと準備をするんだぞ?」
そういわれて3日後、トリコの家の前でガーフィールたちはとんでもない人物に出会うことになった。
「おい、トリコ!俺ぁ聞いてねえぞ?こんなガキどもがいるなんてこと。んだてめえ俺と喧嘩するか?」
なんとも荒くれものと言った風貌の左の頬が大きく裂けている大男がトリコの胸倉をつかんでおり、今にも喧嘩に発展しそうな雰囲気なのである。しかし、トリコのほうは笑顔のままその大男に答える。
「おいおい、俺は言ったはずだぜ?連れがいるってよ。それにお前の聴覚をもってすればここに来る150km手前でこいつらの音が聞こえていたはずだ。嫌ならそこで《音弾》使ってこっちに知らせればいいじゃねえか。それをしなかったって時点で俺としては了承したって思ったんだがな。違うか?ゼブラ」
トリコからの反論を聞いたゼブラはばつが悪そうに胸倉を離した。
「チッ。こーいうときだけチョーシのいいやろーだぜ。まあ、ちょうど俺の探していた食材の情報をお前が持ってきたんだ。それでチャラにしてやる。てゆーかトリコ、お前のその食材に対する聴覚は何なんだ?俺よりもよーく聞こえてんじゃねえか。チョーシに乗ってんじゃねえぞ殺すぞ!」
トリコの胸倉を離し、怒りが収まったかのように見えたゼブラであったが、謎の思考回路によってまたトリコに殴り掛かる。さすがに見てられなくなったガーフィールは獣人形態になることでゼブラを止めようとしたのだが…
「やめろってゼブラとかいうお前!何が不満なのか知らねえけど、勝手に一人でブチ切れてトリコに喧嘩売るってどーいう神経してんだって…うわぁ!」
獣人形態になり、パワーが飛躍的に向上したにもかかわらずガーフィールはいともたやすく投げ飛ばされてしまった。
「おい、トラみてえな小僧。チョーシに乗ったことしてっとおめーからぶっ飛ばすぞ!なかなかのパワーはあるようだが、その程度じゃ俺様の足元にも及ばねえな。カッカッカ!」
自分に挑まれたことがよほどうれしかったのかゼブラはコロッと機嫌を直してしまった。それを見ていたトリコが本題へと移る。
「よおし、ゼブラの意外な子供好きなシーンも見れたことだし、目的地のサンドガーデンまで頼むぜ?」
「おいトリコ、またチョーシ乗ったことをほざいてみろ。置いていくからな。《ジェットボイス》」
ゼブラの《ジェットボイス》に包まれたトリコたちは音速の数十倍というとてつもない速さで目的地であるサンドガーデンに到着した。するとそこにはトリコたちを待っていたスバルとベアトリスの姿があった。
「お?来た来た!おーいみんなー!久しぶりー!元気にしてたか?俺がいなくて寂しかったんじゃないのか?」
「スバルがいなくて寂しがる奴なんていないかしら。自意識過剰にもほどってものがあるのよ」
久しぶりのスバルの姿を見て最初に飛び出したのはガーフィールなのであった。
「大将だ!本物の大将だ!あっはは!久しぶりだぜ、大将!」
続いてフレデリカ、ペトラ、トリコと続く。
「お久しぶりですわ。スバル様、ベアトリス様。なんだか見違えるような雰囲気ですわね。そのお力、今回の狩りで存分に見せてくださいまし」
「ねえねえスバル!ベアトリスちゃん!私も服飾店で頑張っているんだよ!おうちに帰ったら、私の作ったお財布見てほしいな!」
「お!スバル、お前一段と強くなったな。一目見ただけでわかるよ。肉体的な強さももちろんだが、何よりも覚悟の決まったいい目だ。それに、あんときの暴走も抑えられているんだろ?今回の捕獲の時もその力を存分に発揮するんだぞ」
少しだけたくましくなったスバルを迎え、一行は今回のターゲットである『フタゴプリンラクダ』の捕獲に挑む。果たして成長したスバルはいかにしてターゲットを捕獲するのだろうか。
「成長した俺の実力とくと見ろってんだい!」