いつか、あの車窓の片隅で。   作:scarlet crocodile

3 / 3
主人公たちはいずれ壊滅と対峙することになる……と原作のカフカがそう述べてたので、ラスボス枠は壊滅のナヌークにしてみました。


『抗命の咆哮(共同戦線編)』

その神は、ただそこに存在するだけで、銀河のあらゆるエントロピーを破壊していた

 「壊滅」の星神ナヌーク

 金色の冷徹な瞳、全身を引き裂く金色の炎、そして、全てを壊滅に追い込む反物質レギオンの軍勢。

彼が司る運命とは、万物が等しく壊滅するという、絶対にして理不尽な世界の法則そのものだった。

 

その神の絶望を前に、

今、宇宙の歴史上あり得なかった二つの陣営が、

完全に背中を預け合っていた。

 

「穹くん、前方は任せて! ――『サム』、出力最大!」

 ホタルが叫び、サムの緑色の火の粉が暗黒の宇宙を燃え上がらせる。

ナヌークの放つ 金色の炎の嵐を、ホタルが命を燃やすような猛攻で切り裂き、穹のための道を切り拓いた。

 

「ハッカーなら、神様のシステムくらい書き換えてみせなきゃね!」

 銀狼が空間にホログラムのキーボードを展開し、

ナヌークの権能である空間圧殺の数式にノイズを叩き込む。

カフカの言霊が戦場を支配し、

刃の愛刀が「不滅」の穹をサポートするように

壊滅の使令たちの肉体を容赦なく引き裂いていく。

 

「穹、一気に行くぞ! 我々の『開拓』のレールは、星神の運命すら踏み越える!」

 

 丹恒の『撃雲』となのかの氷の矢、そしてヴェルトの擬似ブラックホールが同時に炸裂し、

ナヌークの動きを刹那の間だけ縛り付けた。

「――っ、おおおおおおッ!」

 穹は、先達から受け継いだ『アイビーの髪飾り』を胸に宿し、仲間たちが繋いでくれた光の道を真っ直ぐに突き進んでいた。

ナヌークの黄金の双眸が、初めて明確な戦慄を孕んで穹に固定される。 かつて己と同じ神の座にありながら、

「人に運命は要らない」と証明するために散っていった【あのナナシビト】の残熱が、

穹の胸元で燃え盛っているからだ。

それは、ナヌークという絶対の終焉すらも引っくり返されかねない、決定的な因果律の破綻を意味していた。

 

「無価値な抵抗だ。万物は壊滅に呑まれる。それがこの宇宙の終着点だ」

 

 ナヌークの冷酷な意思が空間を押し潰す。

神の全力が解き放たれ、宇宙を焼き尽くすほど金色の炎の一撃が、穹の身体を真っ向から捉えた。

 

一瞬で肉体が引き裂かれ、穹の生命活動は完全に停止する。

 世界の絶対のルールであれば、そこで全滅、敗北。宇宙の終わりだ。

 

 ――だが。

 穹の意識が暗黒に呑まれるよりも早く、彼の胸元でアイビーの髪飾りが、あり得ないほどの純白の閃光を放った。

 

【不滅の意志・アンチ・デスティニー】

 3時間制限も、回数の限界もない。

穹の精神(前進を諦めないド根性)が折れない限り、死の運命は彼を縛れない。

 心音のカットインと共に、穹のHPとEPが強制的に100%まで全回復する。

消滅したはずの肉体が瞬時に現世に上書きされ、穹は何事もなかったかのように、さらに鋭い眼光を滾らせて光の中から歩み出てきた。

 

「おや……? おかしいですわね。今の一撃で、確かにその矮小な命は潰えたはずですけれど?」

 

 絶滅大君たちが、生まれて初めての理解不能という恐怖に声を震わせる。

壊滅させるたびに、穹の背負う大剣のツタの紋様が輝きを増し、彼のオーラが累積で爆発的に跳ね上がっていく。

1度目、2度目……そして数十度目の死線を越え、穹の怒りは極限へと達していた。

 

これまでの穹は、どこか飄々としていたが、開拓の度に喪失を受け入れつつある少年だった。

 けれど、今は違う。

「……何が壊滅だ。何が宇宙の宿命だ……ッ!!」

 穹の口から、魂を震わせるような激しい咆哮が響き渡る。

 

 「生きたい」と願う人間の意志を嘲笑い、ただ壊すことしかしない星神という理不尽。

先達が、そして彼が愛した女性が、絶望の底で命を賭けて繋いできた人間の「軌跡」を、

ただのゴミのように踏みにじろうとする神の傲慢。

 そのすべてに対する、人間としての、ナナシビトとしての根源的な怒りが、穹の心の中で爆発した

 

「お前たち神様が、勝手に人の限界を決めるな……! 運命なんて必要ない。

俺たちは、俺たちの意志で……お前を、そのシナリオを踏み越えていくんだ!!」

 

穹の激しい怒りに呼応し、全身から立ち昇るオーラが、宇宙に存在しなかった未知の輝き――新たな運命の概念【抗命(こうめい)】の光へと変貌する。

 

 神の定めた宿命に抗い、己の足で歩む人間のための運命。

それは敵のあらゆる「運命のルール」を完全に拒絶する絶対の力。

 その時、穹の掌の中で眩いばかりの青緑色の光が爆発した。

 光の中から現れたのは、これまでの野球バットでも、建造者の槍でもない。

先達の遺志が穹の怒りと融合して具現化した、美しくも苛烈な両手剣――『不撓の軌跡(ふとうのきせき)』だった。

 

漆黒の強固な刃の根元から、

青々と茂るアイビーの紋様が、まるで脈打つ血管のように刃先へと伸びている。

穹の怒りに呼応して、ツタの隙間から眩いばかりの不滅の残光が溢れ出す。

 

「これが、俺たちの……人間の意志だァァァッ!!」

 

穹は地を割り、大剣『不撓の軌跡』を構えて跳躍した。

無限の復活を経て最大100層まで累積した、銀河のすべてのナナシビトの、そして共に戦うハンターたちの不屈の想いを大剣に宿す。

 

 壊滅の軍勢を力任せに叩き割り、ナヌークの権能さえも切り裂きながら、穹はナヌークの黄金に輝く胸に向かって、真っ直ぐに大剣を振り下ろした。

 

 神の定めた「壊滅という運命」そのものを、物理的に真っ二つに叩き割る一撃が、ナヌークの巨躯を貫いた。

 

「(……お前は、宇宙の終焉すらも、その足で踏み越えるか……開拓者よ)」

 

 ナヌークの黄金の瞳に、明確な敗北の光が走る。

 神の巨像が内側から崩壊していくその瞬間、宇宙を縛り付けていたすべての不条理な宿命の檻が、ガラス細工のように一斉に音を立てて砕け散っていった。

 

 ナヌークの身体から溢れ出た莫大な金色の光と、

世界を焼き尽くしていた壊滅の軍勢は、爆発するのではなく、まるで一本の巨大な大樹の根のように、穹の足元へと吸い込まれていく。

 それは、宇宙のエントロピーすらも「人間の意志」が捩じ伏せ、新たなエネルギーへと変換した証だった。

 

暗黒だった宇宙の戦場に、かつてないほど清らかな「銀河の夜明け」のような、眩い光の夜明けが広がっていく。

 それは雨ではなく、星々の瞬きそのものが一斉に解放されたような、

どこまでも透き通った、無限の未来へと続く夜空の解放だった。

 

「……やったね、穹くん」

 サムの装甲を解除し、新しく生まれ変わった澄んだ星空を見上げるホタルが、涙を浮かべながら微笑んだ。

「運命に……勝ったんだね」

 

「ああ……」

 穹は大剣を背中に背負い直し、神々のシナリオが消え去った本物の宇宙を見上げた。

 その胸元にある『アイビーの髪飾り』は、役割を終えたように優しい音を立てて形を変え、小さくも力強く、純白に輝く「一輪の花」へと姿を変えていた。

 時空を超えて出会った、先達とあの彼女の笑顔が、脳裏をよぎる。

「運命なんて、最初から必要なかったんだ。……行ってきます。俺たちの『開拓』の果てを、あなたたちに見せるために」

 

窓辺の枯れない一輪の花を列車のラウンジに飾り、

星穹列車は、明日を自分で選べるようになった銀河の人々を背に、レールのない新しい宇宙が待つ未知の銀河へと、再び汽笛を鳴らして旅立っていくのだった。

 




俺のナヌークに対する解釈は大丈夫だったかな……?
夢女子は怒らせても別に良いんだけども


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。