カモメの鳴き声⋯
遠くに聞こえる波の音
近づいてくる足音⋯
『女だな⋯ 足のサイズ⋯24.5くらいか』
「ナミか?」
「振り返りもしないでよくわかったわね⋯ ルフィ」
「あぁ」
「いままでどこでなにしてたの」
「フランキーがここに墓をたててくれたって聞いてな⋯」
「そっ」
素っ気なく返事するナミ。
ここは和の国、藤山の中腹の崖地。
遥か遠くにみえるレッドラインすら見下しているようにも見えた。
そこに雄々しく建てられた一本の墓標
ルフィは振り返りナミを見る。
トレードマークの麦わら帽子はない
「あれから三年かぁ⋯早かったわね」
「そうだな⋯」
といって下を向きつつ頭を触る、麦わら帽子を被り直すクセがまだ抜けないらしい。
「みんな元気か?」
「さぁねぇ、 たまぁにウソップやサンジ君から連絡がくることもあるけど⋯ なにせ私たちは世界一厄介な海賊団ですから⋯身を隠すのも大変なのよ」
「そうだな⋯ でもみんななら平気だろ」
空を見上げ少し晴れやかな顔をするルフィ
対照的に不満気なナミ
「そろそろ教えてくれてもいいんじゃない」
「?」
「あんた空島を出る時ロビンから最後の島への行き方を教えてもらったんでしょ⋯ なんで行かなかったの、あんたの夢だったんでしょ、『海賊王』」
「海賊王は俺じゃねぇ⋯」
「俺がもし海賊王なら、仲間を⋯ゾロを⋯死なせてねぇ」
「⋯帽子は?」
「渡してきたよ」
「そっ、 悔いがないなら私は全然いいわ、 もとからあんたを海賊王にするために航海士になったわけじゃないもの、あんたたちに恩を返すために一緒にいただけだから⋯」
「でも、最後の島を見たい気持もあったわ。 最終的にはあんたの指示にしたがったけどね」
「ロジャーも言ってたんだろ、あれを見るのは早すぎたって。 きっとそれと同じ結果になったよ」
「ならいいわ、 行きましょう、少しはゆっくりできるんでしょ?」
返事を聞かずにスタスタと歩いていくナミ
ルフィはもう一度墓標をみた。
そこにはゾロの愛刀3本が祀られている。
大業物『和道一文字』、大業物『三代鬼徹』、そして最上大業物へと位列を上げた『閻魔』。
主(あるじ)を失った名刀たちは、今なお凄まじい覇気の残滓を放ち、近づく者を拒むかのように鋭く輝いている。
墓前にはワノ国の民が供えたものが並んでいた。
大容量のひょうたんに入った最高級のワノ国銘酒『秋水』。そして、すでに空になった巨大な酒盞(さかずき)。
誰が置いたのか、少し不格好に握られたおにぎりが三つ。
風が鳴るたび、刀の鍔が「ちん、ちん」と微かに音を立てる。
それはまるで、地獄の底からでも、いつでも次の戦いへ赴こうとする男の、不敵な笑い声のようにも聞こえた。
世界一の剣豪になると決意した男はついにこの約束の地で、静かに、そして誰よりも誇り高く眠りについていた。
「じゃあな、ゾロ⋯」
そして墓標の頭に見慣れた手ぬぐいを巻き付け森の中へ姿を消していった⋯