広い下水道にて、薄暗い光を浴びて、二組の影が伸びる。
「ねえ夏油、君の思う最強の呪霊を教えてよ」
肌は、人の皮膚をツギハギしたような、髪は瓶覗の色をしている、そんな歪なヒトガタ、名を真なる人と、
男の様相を呈しているその異形は、興味を迸らせて相手、頭蓋を外さないように頭に糸を入れ、五条袈裟を着込む偉丈夫、夏油に聞く。
「伊達に生きてないんでしょ?君は。俺はまだ生まれて間もないからさ、後学の為に教えてよ」
飄々とした真人の言いように、くすりと夏油は笑いながらも、どうしようかなぁと渋らせる。
「ねー、教えてよー」
「仕方ないな。それじゃあ、私の『持つ』最強の『呪霊』を紹介しよう」
男がそうして呼び出し、『呪霊』と呼称して出てきたのは、常人とは比較にならないほど巨大で、更に異形を極めた姿をしていた。目は四つ、黒い大角が三本はえている。手には斧を携え、その見た目は正に、『呪霊』と呼ぶに相応しい様子だった。
それをみた真人は興奮気味にすごいすごーいと未知に喜び、インスピレーションを上げるものの、暫くしてから、ちらりと夏油に思惑の目線を傾ける。
「でもさぁ、夏油。コイツって、『持ってる呪霊の中』で、の話なんだよね。それじゃあさ、この世界に存在する中で、壱番の呪霊って、なに?」
なんでもいいよ。例えば壱番速い呪霊でもいいし、壱番力強い呪霊でもいい。壱番泳ぐのが上手い呪霊でもいい。そう言う真人に、
「君は、壱番が好きなのかい?」
「そんなことじゃないよ。けど、俺には『可能性』がある……それを開花させる為には、壱番を見るのが手っ取り早い。それだけだよ」
ま、純粋に興味津々なだけでもあるんだけどねーと付け加えて、
「じゃ、教えてよ。夏油。君の思う『壱番の呪霊を』」
そうだねぇ……夏油は思案する。
「わからないと言うのが答えになるのかな」
「わからないぃ?そんな姿勢で生きてたらツマラナイよ。もっと好奇心旺盛に、物事に興味津々に捉えていこうよ」
「ははは、私は人よりも、好奇心旺盛という自覚はあるのだけれどね」
夏油はそう笑いながらも、真人の質問にどう答えようかと脳を回す。
「じゃあ、『私が勝てない相手』をこの際だから紹介しようか」
「俺に当てさせてよ。まずは、両面宿儺でしょ?そして、五条悟。その次は……折本里香と乙骨憂太。あとは……まあ、このぐらいじゃない?」
「そうだね。この三組には私は敵わない可能性がある。前者二人に関しては、どう転んでも勝てないだろうね」
鼻歌でも歌いそうなほどの快活な敗北宣言に真人は、悔しくないのかなぁーと内心思いながらも、残りを探していく。だが、見当たらない。
「うーん、俺から出てくるのはこのぐらいかな。じゃあ、答えを発表してよ。長い時を旅した君でさえ勝てない相手を」
真人は夏油に催促する。だが、夏油はそれに首を振り、
「言えない。残念ながら、名前すら知らないんだ。申し訳ないね」
「えー、嘘だー」
「本当だよ。実際会っても、名乗ってくれなかったんだ」
「会ったことはあるんだ!どんな風貌なの?」
「君と同じ、人型タイプの『呪霊』さ。花御のような感じじゃなくて、本当に、人って感じ」
「へー、俺と一緒なんだ」
「名前も不明、術式も不明……ああ、そう言えば、上層部からも認知自体はされていて、名前……というより肩書きだね。それがないわけでは無いんだ」
「どんな肩書きなの?」
夏油はひと呼吸置いてから、発語した。
「『特級裨益呪霊』。そう、呼ばれているよ」