「アイツを救ってやってくれ。アイツは、ただこの世界で、『私』達の記憶を持たされているだけの……いや、『私』達の記憶どころか、実際の所、『軌跡』程度しか知らないだろうな……なのに、『私』達の『軌跡』のせいで本来のお前を殺すことが出来ず、『善を全うする奴隷』……責任と力を持ってしまった、そんな被害者だ……そんな奴を、救ってくれ…… アイツから話を聞けば、もしかしたら、どうして私がこの世界にいるのか、『私』という存在が生まれたのかがわかるかもしれない」
「……」
「『私』は、実の所、自身の動きを制御できない。割と自由っぽく振る舞えるが、極悪人以外を殺せなかったり、たまにある、『既定路線を歩む為の運命を退かすことはできなかったり』、呪霊すら容易には殺せなかったり……特に、お前に対しての行動には『敵』だからか大幅な制限がかけられている。『私』にはやりたいようにやり、動きたいよう動くことは半ば出来ない……それに夢で見た通りなら『私』はーー」
「またタイムリープ、するのか?」
「ああ、今の私には、それをしろと本能が叫んでいる。鬱陶しいが、これは我慢できるもんじゃない……呪霊として生まれた、人を犯す本能なんかよりも何京倍も強い、私を縛る枷だ。だから……私は独り孤独に時を渡ろうと思うよ」
そう言って、特級裨益呪霊は虚しそうな顔をした。どこか、寂しそうに。
そこ顔をみて、テラスは、
「ねえ、特級裨益呪霊」
「なんだい?本物」
「ヒーロー見参」
「……まさか、仮にも『私』を相手にそれを言われるとは思っていなかったな」
「ミッションは、お前を救うこと、善道って奴を助けること……了解」
「私を救う必要なんてない。善道を、アイツを助けるために動いてくれ……でも、言葉に意味はない……タイムリープをしたら忘れてしまうのだから」
「忘れる?……だったらーー」
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「――(――【【ヒーロー見参】】――)――」
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テラスはそう強く宣言した。
「……はっ、結局根性論じゃねえか」
テラスはむふふーと胸を張り、
「それが私の長所だからね」
「……それじゃあ任せたぞ。ヒーロー」
「おかえり」
夏油は返事を特級裨益呪霊に返す。対して特級裨益呪霊は、『吹っ切れた』顔をしてから、
「ただいま」
そう言った。
テラスが帷に入った時、もう既に戦闘は始まっていた。巨大な木が実物質化しており、それは天を覆い隠していた。その規模感から即座に、
「こりゃあ特級呪霊の仕業かな。準一級が二人いるとはいえ、早めに行かないとまずそう……」
タッタッタとテラスが寺付近に近づいた時だった。藍色髪の女が現れた。
「やあ」
「っ!誰、お前……ただもんじゃないね……」
足を震わせるテラスに、その呪霊は、
「約束、覚えてる?」
「やく……そく……?」
テラスの中で煮詰められた何かが吹きでる。時を、次元を越える覚悟という条理をぶっちぎった理屈にて、
「お前と……善……道……を、救う……?」
「ふっ、今はそれで十分だ」
まかせたよ。ヒーロー。
そう言いながら、呪霊は構えた。
テラスも、構える。その格闘は、五条が来るまで続いた。
帷が崩壊する。
「さて、テラスの足止め、私の役目は終了。じゃあねテラス」
「っ!まて!お前は一体、何者だ?」
「…………『私』は……いや、もう『私』じゃない私……」
特級裨益呪霊も前回の戦闘で、何をしても本物には勝てない事を悟った。だから、もう、『センテラス』に執着するのは、そう内心でも『名乗る』のはやめよう。だから……
「ただのしがない……
特級裨益呪霊……否、
「名前長くてめんどくさいからカドヒトって呼ぶけど……カドヒトって、まさか……後ろの方は初めましてだけど……」
カド=門
+
ヒト=人
II
「……
「さあ?だけど、今はそんなことを言ってる場合じゃないからね。五条がくる。それじゃ、せいぜい頑張りな。『テラス』」
私も頑張るから、ぼそっと言った言葉はテラスには聞こえなかった。そうして、高専は勝利を収めたのだった。裏で暗躍する者の行為を除いて。
_______
順平を含めた一年生達が八十八橋の怪異解決に向けて走り出していたころ。
テラスは状況を整理する。
(あの私のパチモンみてえな奴は、きっと、おそらく、戦闘力のコピー、或いはタイムリープ系の能力を所持している……)
普通に考えるなら、戦闘力のコピーが王道だろう。しかし、
(奴は自分の事を、
テラスはそう思うものの、
「敵……敵ねぇ……」
どうしても、アイツが敵とは思えなかった。
「敵ではないんだけど、中立でもなさそう……でも、味方……とも言えなさそうだったんだよなぁ……」
テラスはそこまで考えた所で、思考をやめた。
「まあ、とりあえず、ごじょせんに色々何があったか聞こうか」
そう、あの戦いがあった時、裏で何者かに暗躍され、高専の保管庫から特級呪物、呪胎九相図が3点、宿儺の指が数本奪われたのだ。
「やっほーごじょせん」
「ん?テラスか」
「おっすっす。げんきー?」
テラスは挨拶をしてから、
「ごじょせん。あの
「……君がそこまでいうとはね。わかった。警戒しておくよ」
テラスは相手が時間稼ぎを、防戦をしていたとは言え何分か武を相手と交わした。その結果分かったことがある。相手がとてつもない重みと、遥かなる強さを持っていることに。もしも自分でも殺されてしまうかもしれないと感じた。
「まあ、自分が殺されそうなことなんていつものことなんだけど」
テラスは過去を想起しながらそうポツリと、はははと笑いながら言う。
「家庭の事情でね」
ついでにファントムな言い回しをする。
「そう言えばテラス、ほれ」
「おっと、ナイフを放って渡すとか常識外れですよ?しっかりと相手に柄を向けて、自分は刃を持って渡しましょうや」
「いやだよそんなあぶらっかしいこと」
「お兄さんの術式なんでしたっけ?……で、これなんですか?」
「ーーの術式が刻まれている」
「は?マジ?」
「大マジだよ」
「はえーっすっごい」
テラスは素直に感心したのだった。
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とある森の中のマンションにて、2人の男が話し歩く。
「まだダメだよ。真人。彼には渋谷でも働いて欲しかったんだが……」
「わかってるよ。さて、それじゃあ始めようか」
「さっさとしろこの下衆」
「どうも、下衆以下」
真人はそのプールに入っている、『耳にインカムのような物』を付けている、草臥れた包帯でぐるぐる巻きにされている男……与幸吉に触れて、
「無為転変」
包帯でぐるぐる巻きの身体はすぐさま健全なそれへと戻った。
「これで、縛りは終了……」
そうして、両者は構える。幸吉は傀儡操術にて人形を用意し、真人はそれをニタニタ笑いながら見ている。
そうして、幸吉は駆け出した。人形を囮にしながら、人生で初めての走りを見せ、それに乗り込んだ。外に出た真人と夏油はそれを目の当たりにする。
「へー、なにあれー」
「彼は巨大な人形を作っていたようだね」
ダムから出てきたのは巨大な人形だった。
真人が戦闘する。だが、
「ん?」
まるで最適化されたような動きで真人は殴られ、
「チャージ1年!
行動に『焦らされた』真人は、
「ぐっ!領域展開!」
辺りは巨大な手に包まれていく。
「……計画があるとは言え、俺が領域使わないと思った?今は正に手のひらの上って事……」
「シン陰流・簡易領域」
「っち!」
簡易領域を張られた為、真人は直進していくと思わせて、爆発。背後に回り込んでから触ろうとして、
「お前はどうでもいい」
幸吉は振り返らずに、裏拳で刺すように真人に簡易領域を3本ぶち込んだ。
「は?な……んで?」