テラスはというと……
「お前……やっぱ私の敵か?」
「敵か敵じゃないかで言ったら根本で言えば敵だし、それ以外で言ったら味方っぽい敵だよ」
「中々ファントムトークが板についてきた様じゃないか……褒めてつかわす。くるしゅうない」
「いや、ファントムトークを使ったつもりはないんだけど……」
「まあとにかく、お前は本当に呪霊サークルの味方みたいだな。呪胎九相図の受肉を止めなかったみたいじゃないか。私だったら止めてるね」
「……私だって止めようとしたよ。けど、無理だった」
テラスは屠坐魔を振り回しながら、閃と話す。
「どういうこと?」
「この世界にはきたるべく運命がもしかしたら定められているのかも。それを本当の意味で超えられるのは、この世界にいない本来いない者……テラスだけなのかもしれない」
「『かも』とか『かもしれない』、とか、不安定要素てんこ盛りな言い方じゃないか」
「……私の術式はタイムリープを可能とする。この世界には、生きてちゃいけない人はいないけど、死ぬのが定められている人は一定数存在した。中でも強固な人もいて……それがきっと運命なんだ」
「……やっぱりそうだったのか。あと、お前、私の『何か』だったら、私の『名乗り』ぐらい知ってるよな?」
「勿論。当然だろう?けどね、『大戦』でもそうだった様に、テラス、君は別に『無敵でなんでもできる』訳でもなんでもない。いや、君自体はとても頑丈だし、殆ど無敵みたいなものだ。そこは間違いない。でもやっぱりその手から零れ落ちてしまう命はいるんだ。どうしても」
「……そこは否定しないよ。私の手から零れ落ちる命は計り知れないほど多い……だから、仲間がいるんだ。それに、諦めるなんて事はしない……絶対に……可能性があるんだったら……いや、『なかった』として、『それでも』と叫び続けてやる……」
「……そこが、私と君の1番の違いなのかもね。私は諦めた。幾千京、幾垓か抗ってみたけど、運命は強靭だった。私が抵抗すればするほど、被害は拡大した。それはもう途方もなく。九相図のような、変えられない運命を私が変えようとしたら、最終的には、どういう因果か、各国が核ミサイルを飛ばしてきたよ」
「……お前、合計で何度やり直した?」
「わからない。多分200兆年ぐらい頑張ったけど、私一人では、全部を救う事はできなかった。所詮、コピーの限界点」
200兆年……それは200億3万年しか生きたことのないテラスにはよくわからなかった。だが、200億3万年頑張ってきた記憶から、なんとなく、数字の大きさについては理解できた。
「……」
閃はどこか、しおらしい顔で、それでもと、
「救える者は何人も救った。日中夜問わず、毎日毎日テレビに張り付いて、事故や殺人、呪いによる被害から一般人、呪術師問わず救った。救える分は私だって救ったんだ。それは、誇りに思っている」
「……」
「それじゃ、私の暇つぶしに、独り言に付き合ってくれてありがとう。じゃあねテラス」
「っ!まて!」
現在は帷を壊す為に呪術師達は行動中である。
虎杖は冥冥、憂憂。
順平は釘崎、直毘人、真希。
伏黒は、七海、猪野琢真。
と共に行動していた。
五条は単独で渋谷駅の地下五階に向かっている。
テラスはというと……
「はぁ、なにしよう……」
迷走中であった。やれることは多いはずなのに、やることがないという矛盾。
「受験期真っ盛りな受験生が、暇だーとか言っているのと大体トントンで悲惨な有様だな……」
テラスは、屠坐魔ともう一本のナイフ、ただ頑丈でとある術式が刻まれているだけの呪具をナイフフォルダーにいれながら、ため息をつく。
そんな時だった。地下から振動を感じた。
「まあ、地震……ではないわな」
テラスは人混みに紛れながらも、渋谷駅へ向かう。
「今電波すらダメになってんだよねぇ……」
テラスはそう文句を言いつつも、降りていこうとするが、
「『渋谷駅を囲む一般人を閉じ込める帷』のせいで、私もいけないし、いい迷惑だよね」
そうぼやいたその時だった。少しの振動音がまた聞こえ、感じた。
「あーあ、こりゃ完全になんかありますわ」
そうやって、テラスは帷の解除を待ったあと、地下へと潜っていく。
________
「ねえ夏油。戦場の、渋谷駅の5階にいる人をさ、それどころか、渋谷駅の人間全員を排除できる?」
「排除ってことは、全員殺しちゃっていいんだ?君って奴は冷血漢だね」
「違えよ。私1人で五条の相手をするから、クズ……じゃなくて、真人にこれ以上、改造人間を作らない様に言って欲しいんだ」
「へぇ!君が五条悟の相手をしてくれるんだったら願ったりだ。それじゃあ、お願いできるかい?」
「縛りでも結ぼうか。『私は五条悟を封印へと持ち込む』、そっちは、『全力で死人が出ないように尽くせ』」
「ああ、いいよ。承諾だ」
(どういうことだ……?渋谷駅全域に誰も人がいない?というか、ここにも一般人を省く帷がはられている……)
五条は渋谷駅五階に辿り着いたが、そこには誰も人がいなかった。否、1人いる。
壁からコツコツと出てきたのは、ぴょこんとアンテナを生やした藍色髪の女性。ヒラヒラとした喪服を着込んでいる。
「やあ」
「……久しぶりだね。特級裨益呪霊……今は、どっちなんだい?」
「
「そうかい、閃。で、なんのようだい?」
「今から、お前を封印する。文句は言わせない」