〜特級裨益呪霊〜 黄昏の福音 作:楓舞星
宿儺と閃は二つの領域の狭間にて殴り合う。両者はとあることを同時にしていた。
それは、『範囲を半径50メートルに絞る代わりに、領域効果を底上げする』という縛りを自身に結ぶことだった。
閉じない領域が閉じない領域と押し合いする。現実を陵辱しているとしか思えないその光景は、真なる呪術戦の極致。
「神闘、併殺古刹の型」
「っ!まだ神闘とやらはあるのか!」
閃は領域を維持しながら、神闘での格闘をこなしていく。そうして、両者の削りあいは続行されていく。
だが、
「龍閃崩拳っ!!」
「ぐっっ!!」
テラスと同程度に神闘を修めている閃に格闘戦は分があった。というか、一撃も宿儺は閃に打撃を与えられなかった。
しかし、押し込み過ぎると宿儺の領域に足を踏み込むことになり、そこでの無数の解や捌などは閃にもダメージを与える。
だが、閃は体を無数の攻撃に晒されながらも、攻めることを決意する。
「神速閃拳!」
「深淵閃風!」
「龍閃崩拳!」
「ぐぅぅ!!!」
神闘を陰で通しながら、攻撃を決め込む。そうして、宿儺が気絶しかけた寸前、
「……ちっ、時間か……だが、悪くない……」
宿儺は愉快そうにふっと笑ってから、顔が、呪いの顔から、青年の、虎杖の顔になる。
虎杖は一瞬、ふらつきながらも、立っており……
「宿儺の器くん?大丈夫?」
閃はそう言いながら、虎杖に話しかける。
「……あ、あっぶねぇ……アンタらありがとな!宿儺を止めてくれて……」
「おーけ。平気そうだね。これなら私も安心……さて、私も向こうにいくか……君はさっきの漏瑚に燃やされた人たちを助けてくれ」
時間と共に高まっていく呪力を伴って、閃は駆け出した。
_______
そこにいたのは真っ白な巨人であった。全長5メートルはあるだろう巨人。手甲に巻きついているのは対魔の剣。呪霊を一瞬で消し去る正の呪力が存分に込められている。
巨人は、気絶している伏黒に致命の一撃を喰らわそうとしてーー
ーー「させねえよ!!」
テラスは迅速に駆けつけ、前転を挟みながらも伏黒を助ける。
さて、どうやってこの怪物を倒そうか。
テラスは気絶している伏黒を側に置き、この強靭な巨大に対して、
「ーー1撃だ。1撃で決める」
それは奇しくも、それはその怪物に対する最も適した殺し方。
「……」
怪物はその言葉に何も返さない。ただ、剣を向けるだけ。
テラスは、
「いくぞ、怪物。殺してやる」
「心神殺華・一閃」
スパッと、その一撃は怪物の胴体を、否、中心を一閃に切り裂いた。それは、明確に致命傷を与えた……はずだった。
ガコン。
「なに!?」
切ったはずの怪物の頭上の方陣が回転する。つまり、生きていると言うこと。
だから、テラスは、
「前言撤回っ!」
「豪魔一閃!」
「魂魄一閃!」
「乱舞一閃!」
ガコン
そう、中心を更にメタメタに切り裂こうとしたのだが……
(っ!コイツの中心、尋常じゃないくらい硬くなっているっ!)
「理円・絶華・煉獄一閃!!!」
「……」
ガコン。
とうとう、ナイフが通らなくなった。そして気づく。
(こいつの能力はおそらく『適応』!私のナイフに対する適応をしている!)
テラスは200億年の経験で、怪物の能力を考察する。
怪物は、テラスに攻撃を仕掛ける。だが、それをテラスは、
「神闘、邪乱古奏の型」
テラスが神闘を使い、対応した瞬間だった。
ガコン ガコン ガコン ガコン ガコン ガコン
数秒で方陣を鳴らしながら、神闘に、テラスの動きに対応していく。それに一瞬動揺するテラスだったが……
だが、
「テメェの神闘の成長速度は確かにえぐちぃ。速度と神闘にまで適応出来ちまうレパートリーの広さだけは褒めてやる。だがな、私の200億3万年には足りねえよ。もしも私に勝ちたいのならーー
ーーその方陣をあと、そうさな、後2000億回はまわせ」
冗談か本当かわからないようにそう言ってから、
「図虚空……私から更に吸い上げろ。限界なんてぶち壊せ。私の前に限界など無粋なものなど不要だ……ーー
ーーだから、共に限界を超えて舞うぞ」
1??%
そう言って、テラスの姿が異形めいたものへと変わっていく。全身から血が出て、敵からのダメージは負っていないというのにもうすでに死屍累々。失血による昏倒と、それよりも重大なのが、精神への負担だ。
2??%
ざっと、肉体のダメージよりも、128倍ほどの強い精神的ダメージを受けている。
3??%
本来なら、頭がイカれてぶっ壊れる呪具なのだ。五条が用意できる中で、最も肉体的ダメージを抑えて、精神的ダメージをくらうようなモノにしてもらった。慣れれば、完全に肉体ダメージから精神ダメージのみに切り替えることも可能になるかもしれない。
4??%
本来なら、喋ることすらできない、呼吸することすらままならず、生きることを放棄するような地獄の中、テラスは、
5??%
「おい、まだ足りねえ。もっとだ。もっと吸い取れ」
『もっと』を要求する。その要求に、更にその呪具は正気と生気を吸い取る。テラスの精神を吸い取る。
凄惨に拷問されて死ぬよりも辛い地獄で、テラスは、余裕綽々の表情のまま
「コレなら…………テメェを殺せる……」
1000%
「……」
「じゃあな。怪物」
テラスは理解できない速さの、正に神速で怪物との距離を殺すと、
「天聖・龍牙一閃」
ズバッと中心を取り出してから、
「細転一閃」
人外の膂力と言う言葉ですら生々しいただの力技で、テラスは中心を一閃ではなく、粉々に、バッラバラに裂いた。
そして、その残った残骸に、
「龍閃崩拳」
まだ適応されていないだろう拳での一撃をお見舞いし、完全に吹き飛ばして消滅させた。