〜特級裨益呪霊〜 黄昏の福音   作:楓舞星

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6話:センテラスvs特級呪霊

西東京市の英集少年院。

 

「我々の窓が呪胎を確認したのが、つい三時間程前ーーー」

 

「む、息子の正は大丈夫なのでしょうか!?」

 

「なんとも言えません。現時点では、これ以上はなにも」

 

「……おっす!じゃあいってくる!」

 

「あの空の輪郭が呪胎か……中々の気配を感じる……」

 

 そうして伊地知は高校一年生達を死地に赴かせた。内心、仕方がないと心に言い聞かせながら。

 

 少年院に入る途中、テラスは伏黒に耳打ちする様に囁く。

 

「ねえ、岡崎正って人ってどう言う人か、事前に伏黒だったら聞いているんじゃないの?」

 

「……まあな。2回の無免許運転で下校中の児童をはねた経歴がある。立派な犯罪者だ」

 

「……ふーん。なるほど」

 

「お前……まさか助けるつもりか?」

 

「いいや?見捨てるけど?」

 

 テラスはそう言うものの、伏黒はその目をみていた。酷くめんどくさげな目をだったが、間違いなく、人を助ける者の目だ。

 

 そうやって、四人は中に入っていく。中は、外な見た空間とはまるで違う空間となっていた。それは、まるで空間を弄られたような外見だ。

 

「中は限定空間をカスタマイズした様な物に感じるね」 

 

「それは知らんが、これは呪力による生得領域の展開だ……気を引き締めていけ」

 

「うっす」

 

「おっす!」

 

「東京の呪霊ってどうしてこうもキモい奴らしかいないのかしら!」

 

 四人は歩く。

 

 そうして、

 

「っ!出入り口が塞がれた!」

 

 伏黒が焦るものの、玉犬・白が出入り口の匂いを覚えていることから、それを頼りに進んでいく。

 

「っ!!」

 

 最初にその気配に気づいたのはテラスだった。

 

「急ぐよ!!」

 

 テラスは駆け出した。

 

 それに合わせて、四人は一斉になって走る。

 

「おい!一体なんなんだ!」

 

「多分、孵化した!このままだと人が死ぬ!」

 

「人って、あの母さんの息子のことか!?」

 

 そうして、飛び出た瞬間だった。

 

 ソイツは、きっと岡崎より駆け出したテラス達の方が脅威であると判断できたのか、それともただの偶然かわからないが、とにかく、ヘイトがこちらに向いた。

 

 それと同時に、伏黒はわかってしまう。

 

 圧倒的、実力差を。

 

「た、助けてくれぇ!!」

 

 岡崎がこちらに向かってくる。

 

 それをソイツは楽しそうに見つめ、そして捕食者の目をしながら、逃げる岡崎の胴体をなき別れにしようとした。だが、

 

「豪魔一閃!」

 

 テラスは包丁での抵抗をみせる。

 

「ぎぎっ!?」

 

 呪胎から覚醒を遂げた呪霊、推定特級呪霊の腕がほろりと落ちた。

 

 それと同時に包丁の先端が粉々になった。テラスのあまりの技に道具が耐えられなかったのだ。

 

「虎杖!屠坐魔貸せ!」

 

「えっ、ああーーー」

 

 だが、ワンテンポ遅れて、呪霊の呪力砲が虎杖に直撃する。

 

 テラスが舌打ちをしながら周りを見渡すと、釘崎が居なくなっているのに気づく、状況は最悪だ。

 

「伏黒、釘崎と岡崎を頼んだ」

 

「お前……テラスはどうするつもりだ」

 

「私はなんとかコイツの足止めを決行する……」

 

「ぐぎぎぎぎ!」

 

「幸い、あと3回はなんとか技を使えそうだから、こいつの四肢切り裂いて中心を穿つ」

 

「自分に呪力がないことを自覚してるのか!?」

 

「それでも、これは私にしかできない仕事だ。崎崎コンビを任せた」

 

「くっ!」

 

 どうしてもテラスが引かないことを悟った伏黒は、奥歯を噛み締めると去っていった。

 

「さて、君は人語を解すかい?それなら私とハーブティーでも淹れながらちょっとしたお喋りをーーー」

 

「ぎゃあぎぎぎぎ!!」

 

 テラスが五条が来るまで行おうとした時間稼ぎは失敗に終わった。会話の代わりに送られてきたのは呪力砲。それをテラスは、

 

「まずはその幻想をブチ殺す!」

 

 送られてきた巨大な呪力砲を、自身が避けられないとわかると、接近する呪力砲に表面に、一瞬だけ腕を突っ込み、

 

「オメガバスティオン!」

 

 理外の技で攻撃を無効化する。

 

「ぎぎ!?ぎぎぎぎゃぎゃぎゃ!!」

 

「そうだね……『祓ってやる』でもいいんだけど、やっぱり、こっちの方が性にあっているみたい」

 

 テラスは大きく息を吸い込み、吐き出して、

 

 ギラリと輝く眼を見せて、

 

「いくぞ、特級呪霊。殺してやる」

 

 そう、宣言した。

 

 宣言した時、テラスのことを明確に自身を殺し得る敵だと判断した呪霊は、先ほど切り落とした腕を再生させる。

 

「あ、そんなピッコロさんみたいに生えてくるんだ……」

 

 テラスは若干引きながらも、状況の悪さを再確認する。

 

 (呪霊の方は中心を殺さない限り無限に再生できると仮定する。そうなれば、私の勝ち目は一瞬でこの特級呪霊を切り刻むことのみ……耐久して、五条先生が来るのを待つのが良いかもしれないが、私の予想が正しければ、これは、挑戦、または挑発……)

 

 虎杖のことを考える。その中にいる、宿儺のことも思案にいれて、

 

 (普通、こんな大事な出来事だったらもっと格上の呪術師が任務に当たるはず。なのに、数週間で死地に送り込まれるこの体制は明確に誰かが私達を陥れようとしている……)

 

 テラスは攻撃を躱しながら、長考する。

 

 (だったら、ここでどうにか一発かましてやりたい所だね。舐められるだけってのはひどく気分が悪い……)

 

 先端がもう既になくなっている包丁で、一体どこまで抗えるか……いや、

 

「違うね。抗うじゃない、勝つんだよ」

 

 長考をやめ、敢えて呪霊と接近戦を望んだ。そうして、繰り出すのは、ただの拳。

 

「逆気閃拳!」

 

 その技は、相手の体内の『気』を乱すという技である。それにあてられた者は、

 

「ぎぎっ!ぎぎ……ぎっ……」

 

 呪霊は、頭を抱え込みながら地に倒れる。

 

 まるで三半規管がバグり散らかしたような有様。ただし、呪霊には若干効き目が薄そうである。だから、テラスは早めに、

 

「天下一閃!」

 

「天上一閃!」

 

 その包丁捌きは呪霊の体の上下をズタズタに引き裂いた。ただし、呪力が篭っていない為か、ダメージはない。呪霊からしてみれば、ただ体を裂かれたに過ぎない様だ。

 

 だが、テラスは最後の一薙ぎ、もう既にカッターナイフ程の小ささまで縮んでしまったそれで、

 

「ーー神速一閃」

 

 呪霊の『中心』を跡形もなく消し去った。

 

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