〜特級裨益呪霊〜 黄昏の福音   作:楓舞星

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8話:センテラスvs宿儺(5本) ②

 

「領域展開」

 

「っ!」

 

「伏魔御厨子」

 

 空間がひび割れ、そこから新たな空間が現れ、現実を侵食する。暗く喰らって、現実を犯すのは宿儺の領域、伏魔御厨子。

 

「っ、聞いてたのと違うんだけど!」

 

 通常、領域というのは、現実のスケールを自身のスケールに置き換え、使用される。だが、この領域展開は模様が違った。

 

 現実のスケールにそのまま領域を照合させるような、キャンバスを用いず絵を描く様な、まさに神技。

 

 印を結んだ宿儺は、上段からニヤリと笑いながら、テラスに問いかける。

 

「さあ、これに対し、お前はどうする?テラス」

 

 今から明確に、テラスは修羅場を迎える。

 

 最初に来たのは、横からの、胴体を狙った解だった。

 

「一閃!」

 

 いつも通りの首でないことを訝しげに思いながらも、避けれないと判断したテラスはそれを弾く。

 

 更に次は、首ではなく顔面を斜めに切る様な解が来る。それを髪のを数本切らせた程度でなんとか避け、そうして、その速さどんどん増していき……

 

 テラスに浴びせられるのは、連続怒涛の解と捌だ。

 

 それに対して、テラスはそれ以上の超絶技巧、正しく御業で対応しようとする。

 

 テラスは自身が領域内、つまり相手の胃袋に入ったことを自覚すると、

 

「私に斬撃で勝負するなんて百年早え!」

 

 そう答えながら、テラスは自身に浴びせられる解を全て避ける。避けれなかったモノは、

 

「一閃!」

 

「神速一閃!」

 

 屠坐魔での一太刀にて弾き返す。避けれるものはなんとか避け、仮に当たっても致命傷以外だったら許容する。全身がズタズタにされようと、なんとか避ける。

 

「乱舞一閃!」

 

 少年院がまるまるチリと化すまで、その猛烈な攻撃は続く。

 

 そうして攻撃が終わった時、

 

 テラスは死屍累々の姿になっていた。高専に用意された制服は宿儺の攻撃を前に簡単に破れ、肉は裂けていた。だが、重要な血管や筋肉、関節などは全て守り通すという偉業。

 

「ほう、生き残るとは……天晴れだ、『人間』。テラスよ」

 

「はぁ……はぁ……まあ、このくらい?朝飯前どころか東雲の飯前っていうか?」

 

 テラスはよくわからないことを言いながら、それによって自身のバイタルを安定化させていく。

 

「さて、では本番と行こうか」

 

「え、まだなんかあんの?」

 

「うむ。そうでなくてはこの技を使ったら意味がないと言っても過言ではない技がな」

 

「お、お手柔らかにね?」

 

 テラスのビビりように、普通に内心笑いながら、これをどう対処するのか見ものであると言う宿儺。

 

「竈、フーガ」

 

「っ」

 

 詠唱を終わらせた後、宿儺の手に出てきたのは、超高出力の炎だった。

 

「や、やばい……それはマジでやばいって……」

 

「くくくっ、では、放つぞ。3、2、1……ゼロ」

 

 まるで導火線に火をつける様だった。これが宿儺の神技の極地。そうテラスが認識した時、テラスは、はぁとため息をついて言った。

 

「『私のオメガバスティオンは全ての現象を無効化する』」

 

 導火線に火は付けられた。後は爆発するのみ。テラスは極限の集中をもって、その球状に爆発するそれに対してーーー

 

 ーーーオメガバスティオン。

 

 爆発はピシュンという音と共に消え去った。何もなかったように、アッサリと。場にある起爆剤も爆発の消失と共に消滅した。

 

 

「……なんだ、その技は……」

 

 宿儺はその理解不能な現象に瞠目する。

 

「説明はしてあげない。まあ、精々頑張って辿り着きな」

 

「ふふふふ、ははははは!!本当にお前は面白いな」

 

「じゃあさっさと、虎杖の体治してよ。呪いの王なら反転術式ぐらいできるでしょ?」

 

「くくく、無論、出来るな。お前が俺に相対するのはやはり、それが理由か……しかし、俺にはやる事がある。それにしても、小僧はやはり出てこないな……余程死の恐怖を感じていると思われる……同い年の女が命を張っているのに、なんてみっともない……」

 

「死ぬのは大体怖いでしょ」

 

「ん?てっきり、お前は死すらも享受する人間と思ったが違ったか?」

 

「一番恐れるのはこの怒りがやがて風化してしまわないかということだ……」

 

「……」

 

 テラスの言葉に押し黙った宿儺に、テラスは内にいる虎杖に伝える。

 

「ねえ、虎杖。聞こえてる?お前は出てくるな」

 

 懇々とテラスは告げる。死屍累々の姿で、血まみれで、それでも、

 

「コイツをなんとか生け取りにして、反転術式を使える家入さんの元に連れていく」

 

 無数の解や捌を受けて、逆に研がれたような様子をみせる屠坐魔を向けて、何より、何物よりも鋭く研ぎ澄まされた目線を宿儺に向けて、

 

「ここには私がいる。だから、大丈夫。お前は絶対生きて帰らせる」

 

 そう言うと、ボロボロのテラスはニッと笑って、

 

「ヒーロー見参!」

 

 テラスがそう言った時だった。虎杖の体の紋様が、徐々に消えていき、顔つきが青年の物に戻った。

 

「ーー虎杖っ!それをしたら!!」

 

 テラスは焦り、どうにか応急処置が出来ないか虎杖に近づいた。だが、虎杖は、

 

「いい……もういいんだ……テラス」

 

「なんもいくない!そ、そうだな……と、とりあえず、内にいる宿儺に後で治してもらえる様に伝えとけ!」

 

「あ、そんな方法も……がはっ、あるんだ、な……」

 

「内なる宿儺は計五本の指をもう取り込んでいる。だったら、お前を無碍に扱うことはしない。チカラの4分の1は宿儺にとっても失い難いはずだから……なんらかの縛りは結ばれるかもしれないけど、それでも、多分生き帰れる術がある……と思う」

 

「そうか……テラス…………ありがとな。一応、伏黒と釘崎にもよろしく言っといてくれ」

 

 そう言って、虎杖は仰向けに倒れ、生命活動は完全に停止した。

 

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