私立まことみらい学園、2年1組。
午後は新入生の歓迎会があるということで午前で授業が終わり、現在は少し早めの放課後。
生徒たちはみんな早めに授業が終わったからか、いつもより多くの人が教室に残り友達と雑談を楽しんでいる。
俺のすぐ横でも、みくるとあんなと依田さんが楽しそうに話している。
いつもなら浅間さんもいるのだが、演劇部での用事があるとかなんとか。
彼女たちの笑い声を聞きながら、先日のことを思い出す。
何やらみくるとあんなが原因不明のショートを起こした後のことだ。
あれからある程度時間が経って2人が無事戻って来たあと、商品などの最終確認をして無事コスメショップを開店することはできた。
まぁ、2人はちょっとの間目を合わせてくれなかったけど。
すぐに元通りになったので気にしなくてもいいだろう。
お店の名前は【Pretty Holic】。
夢中になれるかわいいものがいっぱい、という意味らしい。
お店を開けた後は意外にもお客さんが来てくれたので、俺もお会計くらいだが店員さんとして少し手伝いをしたりした。
事前に2人が呼んでいたのか依田さんや浅間さんがお店に来たり、商品を買いに来たであろう無口な少女に謎にガン見されたりしたくらいで特に問題もなく、盛況と言っていい結果だった。
Pretty Holicはこれからもジェット先輩が基本的に店員さんとして続けていくらしい。
あれならみくるが言ってた探偵事務所の存在を知ってもらう、と言う方も効果がそのうち出てくるだろう。
ちなみに、結局2人が言っていた良い匂いの正体は謎のままだ。
何だったんだろう。
「シルクのようなくちどけ……あーん。
私はこれ、シルキーアイス」
「あははは! 似てるー!」
依田さんの笑い声で思考が教室内へと戻ってくる。
声のもとを見てみれば、アイスのCMの真似をしているあんながいた。
「ポチポチ~♪」
そして楽しそうに話している3人を見て机の上のポチたんも楽しそうな声を出す。
……いやなんでポチたん机の上に置いてんのよ。
「ポチ……?」
「ポ、ポチポチアイス! い、いいよね〜」
「ポチ……そんなアイスあったっけ?」
「あ、あはは……」
案の定大慌てでポチたんを隠すあんなと誤魔化すみくる。
なおなんでこれで隠せているのかは謎である。
もはや依田さん側に問題があるんじゃなかろうか。
マジでなんだよポチポチアイス。
ポッピングシャワーの元ネタとかか。
ちょうど今年にポッピングシャワーが発売される予定なのはみくるのおかげだったのか。
「家入しるく、すっごくかわいいよね! 私大好き!」
「私も私も!!」
本当に無事ごまかせたようで、そのまま話題は家入しるくの方へ。
家入しるくは、この世界で大人気の俳優さんだ。
現役高校生という話題性もあって、いろんなドラマやCMに引っ張りだこなんだと。
まぁ俺も家入しるくのことを知ったのはつい昨日なんだけど。
あんまり家でテレビを点けないし、ドラマはなおさら見ないからな。
じゃあ逆になんで昨日知ったんだって話になると……
「昨日みくるとヒロくんと一緒に、しるくさんが出てるドラマ見たんだ~!
1999年にも素敵な俳優さんいるんだね~……!
すっかりファンになっちゃった!」
普通に言うとは思ってなかったけど、こういうことだ。
お店とはまた別の日に、また珍しく家のインターホンが鳴ったと思ったら、今度は『私たちと一緒にドラマみよ!』とのこと。
そのうち野球しようぜ~とか言ってくるんだろうか。
助手になったわけだし元から行くつもりだったからそのまま探偵事務所にお邪魔したが、その日は依頼もなかったので本当に一緒にドラマを見て事務所で雑談して終わった。助手とは一体。
それはそれとして、1999年にも~って君タイムスリップのこと隠す気ある???
ほら、さすがの依田さんもすごい不思議そうな顔してるじゃん。
「そういえば今さらなんだけど、2人とヒロお父さんっていつからそんなに仲良くなったの?
前は閑鳴さんって呼んでたよね?」
引っかかったのそっちかい。
その方がましだけどさ。
「それは……えっと、ヒロくん、言ってもいいかな?」
「言う? 何のこと?」
そう言ってこっちに視線を向けるあんなとみくる。
釣られてこちらを見る依田さん。
言ってもいいか、というのは恐らく俺が助手であるということについてだろう。
もちろん、特に問題はない。2人が探偵をやっているというのはクラスのみんな知っていることだから、助手だと説明するのが一番手っ取り早い。
「ああ、2人がいいんだったら俺は問題ないよ」
「ありがとう! あのね、私とみくるで探偵をしてるって話をしたでしょ?」
「うん、お店の1階に事務所があったよね?」
「そうそう! それで、ヒロさんは私たち探偵の助手をしてくれることになったの!」
「助手!? へぇ~、ヒロお父さんが……あ、だからこの前お店で店員さんだったんだ!」
「そういうことだ」
「なるほど、それで仲良くなったと。
なんだかヒロお父さんが助手ってしっくりくるね!」
「そこがしっくりくることある?」
探偵の助手がしっくりくる人間なんか居るのか。
「なんかちょっとしたことで躓いてたらすぐに助けてくれそうだし。
正確には助手っていうか保護者のイメージかも?」
「……お父さんって呼び方に引っ張られてないか?」
「えへへ、そうかも」
「でも、そのイメージはちょっとわかる……!」
「実際、もう何回も助けられてるもん。ね、あんな」
「うん! 私たちの自慢の助手なの」
「おお〜、さすがヒロお父さん」
正直あんまり助けてる実感は無いけど……なぜか自慢げな2人と感心してる依田さんを前にわざわざ否定する気にはなれん。
そんなことを話していると、廊下から何やら騒がしい足音が近づいてくる。
教室のドアが勢いよく開くと、そこにいるのは足音の主であろう浅間さん。
「みんな、大変!! 事件だよ!!」
「「事件!?」」
大慌てで忙しなく動き続ける浅間さん。どうしたどうした。
事件と言ってるが……ポチタンが反応してないんだったらマコトジュエルは関係ないのか?
「い、い、いえ、りりり……!!」
「りえ、落ち着いてー」
「どうどう」
「深呼吸して~」
「いいから外! 来ーてー!!」
それだけ言うとまた走って教室から出ていってしまう浅間さん。
普段はあんなに慌てるイメージはないんだが、今は嵐みたいだな。
「どうしたんだろ……?」
「わからない、とりあえず外に行ってみよう!」
「そうだね。ヒロさんも行きましょう!」
「ああ、事件って言ってたしな」
反応的にだいぶ緊急性が高いものなんだろうか。
力でどうにかなるものだったら俺でも役に立つかもしれないし、少し急ぐか。
******
浅間さんの言ってた通り外に出てみたが、確かに人だかりができているし、キャー! という声も聞こえてくる。聞こえては来るが……
なんか、事件性のある声ってわけじゃないんだよな。
どっちかというと、喜んでるときに出る声のような……
「ヒロくん、こっちこっち……!」
周りの状況を不思議に思っていると、横の植え込みからあんなの声が聞こえる。
そちらを見ると、なぜか植え込みの陰に並んで隠れている浅間さんと依田さん、あんなとみくる。
「……なにやってんだ? てか、事件は?」
「わからないけど、りえがこうしてたから……」
「ヒロお父さん、あれ! あれが事件!」
「あれ?」
「あれは……」
そう言って浅間さんが指をさした先を見る俺ら。
そこにいるのはこの学校の理事長と、なにやらいろいろな機材を持っている大人たち。
それと、一際目立つちょうど昨日あたりに見た覚えのある女の子。
「家入しるく! 私立まことみらい学園へ、入りまーす!」
瞬間、再度周りから聞こえてくるキャー! という黄色い声。
……なるほど、さっきから聞こえる声は悲鳴じゃなくて歓喜の声だったわけか。
「これは……!」
「まさしく……!」
「「大事件だぁ~~!!」」
しるくさんが目の前にいると気付き、大きく驚いているあんなとみくる。
昨日出演してたドラマを見たばっかりだしな。なんてタイムリーな。
確かにこれは、前からしるくさんが好きな浅間さんとみくるやちょうどファンになったあんなから大事件だろう。
けが人とかが出たりとかではなかったらしい。
ずいぶんとかわいらしい大事件で良かった。
「家入しるくです、よろしくお願いします!」
理事長へハキハキと挨拶しているしるくさん。
周りの大人たちを見るに、学校で何か撮影でもするんだろうか?
「本物のしるくさん素敵……!」
「かわいい~……!」
おお、これがいわゆるおまいうってやつか。きれいなブーメランだな。
あとみくるは毎回かわいいもの見ると顔溶けるのね。
「でも、どうしてうちの学校へ?」
「番組の撮影だって! 『学校でTRY!』」
「知ってる! 芸能人が学校に行って、生徒と一緒にいろんなことをやるんだよね!」
へぇ、そういう番組ってこの時代にもあるんだな。
転生前でもそんな感じの番組を見かけたことがある気がする。
「新入生の歓迎会で演劇部が劇をするんだけど、役者のしるくさんが協力して、劇を盛り上げるんだって!」
「じゃあ直接しるくさんとお話しできるのは演劇部の人たちだけかぁ」
「りえうらやましい~」
なるほどなぁ。
それで、演劇部である浅間さんは今死にそうな表情を浮かべているわけだ。
「りえ、どうしたの?」
「ほほほ本物のしるくさんだよ!? ちゃんと話せるかなぁ!?」
「しるくさん、憧れだもんね」
まぁ、テレビに出るような憧れの人が目の前にいて、その上プロの役者である人の前で劇をやるなんてなったらここまで緊張してしまうのも仕方ないだろう。
心中お察しします。頑張れ浅間さん。
心の中で合掌と激励を送りつつ、改めてしるくさんの方を見る。
でも確かに綺麗だし、大人っぽいな。
あの感じで高校生……16歳だったか。
転生前ですら自分の方が歳上だったとはとても思えん。
最近の高校生はすごい……って言おうとしたが、俺からしたら過去の高校生なのか。
この世界がすごいのかもしれん。
「しるくさん、これから収録が始まるまで少しの間時間がありますが、どうしますか?」
「あ、そしたら私、やりたいことがあるんです!」
「やりたいことですか?」
「はい! 撮影までの間は、現場を離れても大丈夫ですか?」
「ええ、始まるまでに演劇部の方へ来ていただければ問題ありませんよ」
「ありがとうございます! それじゃあ、んーと……あ!」
どうやら演劇部の出番はまだ先らしい。
それまでに浅間さんの緊張が少しでも取れればいいが……
……?
気のせい……か? なんか、しるくさんこっちに向かってきてない?
いや、気のせいだよな?
きっと横の植え込みから覗いてるあんなたちの所へ行くんだよな?
うん、そうに違いない。
なんかめっちゃ目合ってる気がするけどそんなわけは無い。
いやぁ、空き時間にわざわざ学校の女子生徒にファンサなんて優しいんだなぁ。
よし、じゃあ邪魔にならないようにそろそろ……
「あれ、ヒロくんどうしたの?」
「いや、ちょっと急用を思い出しかけてるから帰ろうかなと」
「どういうこと!?」
「ね、ねぇ、なんかしるくさんが……」
依田さんの不穏な声聞こえ、嫌な疑惑が確信に変わっていく。
謎の危機感に従い、体を180度回転させ教室に戻ろうとした瞬間。
とんとん、と先程まで向いていた方向から肩を叩かれる。
何故か出てくる冷や汗を額に感じつつ、ギギギ……と錆びたロボットのような動きで後ろを向く。
目の前にあるのは、先程まで遠巻きに見ていたはずの綺麗なライトスカイブルーの髪と、眩しいくらいの笑顔。
「ねえねえ、君! ちょっとこの学校を案内してくれない?」
「「「「え」」」」
「……はい????」
「「「「えええええぇぇぇ!?」」」」
周りの生徒たちの好奇と驚愕の目線を一身に浴びながら、全力で走り去りたくなっている足を気合いで抑える。
……本当に。
ここ最近、俺の日常はどうしてしまったんだろうか。
******
「まことみらい学園の校舎、本当に広いね!
もしかしたら私の通ってる高校より大きいかも?」
「……まぁ、中等部と高等部両方ありますしね。
それにしたって立派な校舎ですけど」
「木造の部分が多いのもなんだか雰囲気があっていいね!
わぁ、あの桜きれい!」
「あの桜はこの学校が創立したときからあるらしいですよ、大先輩ですね」
「へぇ~、とっても素敵!」
あの後、わけもわからず言われたとおりに学校内を案内しているが……元気だな、この人。
とにかくあのとんでもない注目から逃れたくてすぐに引き受けてしまったけど、そもそもなんでこんなことになったんだろうか。
「それで、家入しるくさん? そろそろ質問をしてもいいですかね?」
「ふふ、もちろん!
でもその前に自己紹介がまだだったね、ごめんなさい。
知ってくれてるみたいだけど、私は家入しるくです! 俳優をやってます!
あなたは?」
「て、丁寧にどうも?
えと、自分は中等部2年の閑鳴ヒロです」
「じゃあヒロくんだね! それで、質問だったっけ?」
うーん、ひしひしと感じるコミュニケーション強者の風格。
あれだけ人気が出るのも頷ける愛想の良さだ。
さて、それはそうと質問だ。とりあえず聞くべきなのは2つ。
「まず、なんで急に学校の案内をしてほしいって話になったんです?」
「ああ、これは私がこの番組を撮影する前のいつものルーティンなんだ。
『学校でTRY!』の前に学校の中を実際に見て回って、雰囲気に慣れておくの!
そうすると、撮影するときに緊張が減るんだぁ。
今回はさっき言ったみたいにすごい立派な校舎だったから、校舎のことをよく知ってるであろう生徒のヒロくんに案内をお願いしたというわけです!」
ふむ、なるほど。想像以上にしっかりした理由が返ってきたな。
仕事に対して真摯というか、プロを感じる返答だ。
こっちの疑問はきれいに解消されたが……
「次の質問、何で自分に案内役の白羽の矢が立ったので?」
「んー、撮影のためと興味が半々って感じかな?」
「? 撮影のため? 興味?」
逆にこっちは全く解消されなかった。
興味を持たれる理由もわからないし、俺と撮影は全く関係がないからもっとわからん。
どういうことだ?
「撮影では演劇部で一緒に劇をやるでしょ? 案内してもらうついでに演劇部の人と仲良くなれたらその時もやりやすいかなって思って!」
「……ん?」
「ん?」
「演劇部の人と仲良く?」
「うん!」
「その演劇部の人は一体どこに?」
「? ヒロくん、演劇部でしょ?」
「違いますけど?」
「……ええ!?」
「……ええ?」
数秒固まったあと、あからさまにびっくりしているしるくさん。
そしてびっくりしているしるくさんを見てびっくりする俺。
どういうことだってばよ。
「ほ、本当に演劇部じゃないの?」
「ここでそんな嘘つきませんよ。
逆になんで自分が演劇部だと思ったんです?」
「それは、その、なんとなくではあるんだけど……!」
「なんとなくかい」
「じゃ、じゃあ今までに何か演技の経験は?
そっちはあるんじゃないかな?」
なんとなくって言われてついタメ口出ちゃったよ。
演技の経験……劇や舞台の経験ってことだろうか。
「ありますよ? 小学校の学芸会なら」
「……それだけ?」
「はい、それだけですね」
「そ、そんな……!」
役者としての私の観察眼……と言ってなぜかショックを受けているしるくさん。
うーん、さっぱりわからん。
でも一応こっちの疑問も解消はされたか。
要は俺のことを演劇部の部員だと勘違いしたからこうなったわけだ。
このくらいの理由のほうがしっくりくるし、あとで来るであろうクラスメイトの質問攻めも『勘違いだった』と答えればいいだろう。
「……とりあえず、ある程度学校の案内は済んだのでいったん休憩しておきますか?
そこ、空き教室なので」
「あ、そうしよっか! ごめんね、案内させちゃって」
「いえいえ、勘違いとはいえご一緒できて光栄でしたよ」
「う゛」
切り替えはやいな―とか思ってたらまた傷を掘り返してしまった。申し訳ない。
別になんとなくだったなら違くてもダメージ受ける必要はないと思うが。
******
収まりつつあるショックを感じながら空き教室に入る。
先に入って窓の外を見ているヒロくんを眺めながら、並んでいる机の端に腰を掛ける。
少しお行儀は悪いけど、ヒロくんの他に人もいないしいいよね。
「あ、少しずつ新入生の子たちも来始めてますね。
時間は大丈夫そうですか?」
「そうだね、もう少しここで休んだら演劇部のところに行こうかな」
「はい、了解です」
なんだかマネージャーみたい、なんて思いながらもう一度ヒロくんを観察してみる。
……本当に演劇部じゃないのかな。
役者は、いつでも自分じゃない誰かになるために観察している。
常日頃から心掛けていることで、最近は一目見ればその人のことがある程度わかるようになった……と思ってたんだけど。
案内してくれる生徒さんを探してヒロくんを見かけたときに、『あ、演技に慣れている人だ』ってなんとなく思ったから演劇部だと思ったんだけど。
どうやら全然違ったみたい。やっぱり、何事も決めつけちゃダメ、だね!
役者としても観察する力としても、まだまだ頑張らなきゃってことかな!
あ、そうだ。どうせならヒロくんを選んだ理由の興味のほうも聞いちゃおっと。
******
「ねえねえ、私って可愛いかな?」
「……はい? なんですかいきなり。口裂け女?」
空き教室で休んでいると、突如謎の質問をしてくるしるくさん。
「違いますぅー。ね、どうなの? って、あれはさっきの……」
「そりゃ可愛いっすよ。俳優さんな訳だし」
「あれ、そうなんだ? それにしては、なんか他の子より反応が薄い気がするんだけどなー」
「あー……」
他の子……さっき言ってた興味ってやつの方だろうか。
確かに、最初校門に集まっていたほかの生徒たちに比べれば反応は薄かったかもしれないが。
別にかわいいと思ってないわけではもちろんない。
単に中身が大はしゃぎするって精神でもないのと、あとは……
「あれ、その反応を見るに何か理由があるのかな?」
「……まぁ、だいぶ失礼な理由ですけど」
「全然平気だよ? なになに、教えて?」
本人に言うのは申し訳ないが、まぁ個人の感想なので許してほしい。
「実は、同級生にも同じくらい可愛い子たちがいるんすよ。
あと、よく行くパティスリーの店員さんとか。
なんで、言い方は悪いですけど目が肥えてるのかもですね。
……それと、しるくさんは可愛いってより綺麗って感じがしますけどね」
そう、この世界の水準が高すぎるのだ。
ここでは言わなかったが、森亜るるかだって言わずもがなだし。
「わぁ、嬉しいこと言ってくれるのね!
ありがとう! ……ふふ、ねえねえ?」
「はい? 今度はなんです?」
なにやらとてもニコニコしているしるくさん。
褒めたから喜んでくれてるだけ……じゃなさそう。
「その可愛い子たちってもしかして、オレンジっぽい髪をふたつのお団子に纏めてる子と、小豆色っぽいハーフツインテールの子?」
「あれ、なんでわかったんです?
てか、しるくさん2人のこと知っ……て?」
言い当てられた驚きでしるくさんの方を向くと、なぜか後ろのドアを指さしている。
その指をなぞるように視線を動かすと、ドアの小窓には真っ赤な顔でこっちを見ているオレンジっぽい髪の子と小豆色っぽい髪の子が。
「しるくさん」
「なあに?」
「一応聞きますけど、あの2人っていつからいました?」
「うーん、少なくとも君が私に口裂け女? って聞いた時には居たかなぁ」
「ほぼ最初からじゃねえか」
思わず溢れる2度目のタメ口。
どうしようね、これ。
「さてと、それじゃあ私はそろそろ演劇部に向かおうかな!」
「ああ、はい……え、あの2人丸投げですか」
「さて、なんのことかなー? 私はヒロくんに質問しただけだし!」
「後半は分かっててやりましたよね絶対」
じゃなきゃあんなピンポイントな質問できるもんかい。
「ふふ、決めつけちゃダメ、だよ! それじゃあ、またね!
お話しできてたのしかったよ~!」
そう言って、颯爽と演劇部の方へ向かって行くしるくさん。
……ついさっきした案内が早速役に立ってそうで何よりです。
「……おーい」
「「は、はいっ!!」」
固まっている2人へ近づいて声をかけてみれば、ビクッ!! っと反応してこちらを向く。
そんなこれから怒られる子供みたいな反応しなくても。
「えっと、これはその……!」
「決して、盗み聞きしようと思ってたわけじゃなくて……!」
真っ赤な顔のまま忙しなく体と口を動かすあんなとみくる。
……なんか、つい最近似たようなことあった気がする。
少なくとも俺にとっては事実しか口にしてないから、別に聞かれて困ることでもないんだが……
ま、こういう時は前回同様、変に触れないであげるのが一番だろう、多分。
「んじゃ、俺たちも演劇部のところに行くか」
「「え?」」
「どうせもうすぐ演劇部での撮影が始まるからって呼びに来てくれたんだろ?
浅間さんのことも気になるし、見に行ってみようぜ」
「「……うん!」」
「ねえねえ、何でしるくさんはヒロくんに話しかけたのかな?」
「なんか、俺のことを演劇部だと勘違いしたらしいぞ」
「ヒロさん、サインはもらいましたか!?」
「いや? 全然もらってない」
「え゛ぇ゛!?」
「どういう声よ。欲しいなら後で頼めばいいさ。
あの感じだし、きっと喜んで書いてくれるぞ」
「ほんと? じゃああとで一緒にお願いしに行こう、みくる!」
「うん! せっかくだしプリキットブックに描いてもらいたいな~!」
******
【おまけ】
「実は、同級生にも同じくらい可愛い子たちがいるんすよ。
あと、よく行くパティスリーの店員さんとか。
なんで、言い方は悪いですけど目が肥えてるのかもですね。
……それと、しるくさんは可愛いってより綺麗って感じがしますけどね」
「わぁ、嬉しいこと言ってくれるのね!」
(後ろでプクーってしてるあんなとみくる)
「その可愛い子たちってもしかして、オレンジっぽい髪をふたつのお団子に纏めてる子と、小豆色っぽいハーフツインテールの子?」
(え? って顔になるあんなとみくる)
「あれ、なんでわかったんです?」
(フリーズして顔が真っ赤になるあんなとみくる)
読んでくださってありがとうございます。
まさかの投稿間隔。10話を投稿したのが一昨日とは思えない文字数で自分でもびっくり。
前に言った続きが描けるのかという不安もありますが、読んでくださる方はそろそろ展開が変わらないと退屈だろうという思いもあり、少しだけ急いでみたりとか。
しかしその結果何かを書き忘れているんじゃないかという恐怖を抱えた今現在。
文章ももしかしたらいつもより雑かもしれない。
さすがにこのペースはきついですね。3日くらいで1話が自分にはちょうどよさそうです。
本編の第9話に入り、家入しるくさんのご登場ですね。
思いっきり独自展開を失礼します。
空き教室のシーンは直前までしるくさん側の視点で書こうとは思っていなかったから少し難しかったです。
この調子なら次で第9話を終えられる……かも?
あと、最後のおまけはどうでしたかね?
だいぶ小説としてはあるまじき形態で書いたので、もし蛇足だと感じたり、あるいはおまけならあのくらい自由でも問題ないとかがあれば教えていただけると幸いです。
それではまた次のお話で。