ちょっとした原作改変がありますがお許しを
彼女たちから逃げ出した俺は、そのまま木造の広い校舎を歩いて遠回りをしながら理科室へ向かう。
小林さんの誘いを断ったのは申し訳なかったが、おかげでだいぶ頭がすっきりしてきたしいろいろ思い出すことができた。
この世界は名探偵プリキュアの世界であること。
今日転校してきた明智あんなさんと前に転校してきた隣の席の小林みくるさんはプリキュアであること。
確か、キュアアンサーとキュアミスティック、だっただろうか?
それと、おとも妖精のポチタン。
あとは、確かジェットっていう見るからに有能そうな男の子の妖精もいたはずだ。
そして、まだほかにもプリキュアがいることも思い出した。
まず、キュアアルカナ・シャドウ。変身前は森亜るるかという名前だったはず。
俺が生前にプリキュアに興味を持ったきっかけの人だ。
いや、名前がかっこよすぎるだろ。なんだアルカナ・シャドウって。
だが気にするのはもちろんそこではない。
確かアルカナ・シャドウは、珍しく敵側のプリキュアだったはずだ。
理由は不明だが、怪盗団ファントムに所属する謎のプリキュア。
マシュタンというおとも妖精と一緒のはず。
次に、キュアエクレール。
アルカナ・シャドウについてもあんまり知っていることはなかったが、こっちはもっと知らない。
エクレールに関しては、そもそも転生前では変身する前が誰なのかということすら判明していなかったはずだ。
シュシュタンというおとも妖精がいるようだが……
本当に存在しているはず、くらいの情報しかない。
俺が名探偵プリキュアについて知っているのはせいぜいこのくらいだ。
転生したとはいえ、知っているのは放送前に判明していたことだけ。
大した情報量じゃない。
あと考えなくちゃいけないのは、プリキュアや彼女たちとどう関わっていくかだが……
正直なところ、これについてはあまり気にしなくていいかなとも思っている。
積極的にかかわりに行くことはないが、意識して避ける必要もないだろう。
だって俺が関わったところで特に何も変わらないだろうし。
彼女たちのことは応援しているから、必要ならいくらでも手を貸すが。
転生関連のことを隠して、普通のクラスメイトとして関わっていけばいいさ。
明智さんが教室に入ってきたときは頭が爆発しかけたが、いざ落ち着いて考えれば意外と早く整理できたな。
というより、俺が難しく考え過ぎていただけか。
俺はなぜかプリキュアのことを知っているってだけの一般人。
同級生にそのプリキュアがいたってモブの日常が変わるわけでもなし。
ほら、窓の外の桜を見てみろよ。
明らかに敵側のガタイのいい男と森亜るるかが上に乗っていようと昨日までと同じように咲き誇っているじゃないか。
俺もあの桜のように変わらぬ日々を……ん?
変わらぬ日々を……送れてないじゃねえか。
一瞬脳みそが反応してくれなかったわ。
桜さんおもっきし非日常過ごしてますやん。
気のせい……なわけないか。
男の方は初めて見るが、森亜るるかの方は間違いない。
横にマシュタンもいるし。あ、棒アイス割るのミスってる。
てなると、男のほうも怪盗団ファントムのメンバーと考えていいだろう。
「……目的はなんだ?」
一度冷静になって考える。
明智さんが転校してきてすぐにって考えると偵察?
それならまだいいが、学校で戦闘されるとほかの生徒が危ない。
怪盗団ファントムがどういう敵なのか知らないから、どうするべきか……
怪盗って言うくらいだから人前でも問答無用で暴れることはないと思いたい。
てなると何かを盗みに来てるってこともあり得るのか。
そんなことを考えてもう一度桜の方を見る。
そこには、いつの間にか日常を取り戻した桜が静かに佇んでいた。
「いなくなってる……が、帰ったってわけじゃないだろうな」
見てしまった以上無視はできないし、明智さんと小林さんに伝えよう。
さっき逃げたばっかりでなんだが、理科室へ行って二人を待つのが確実だろう。
普通に授業ももうすぐ始まるし、急ぐか。
******
「それにしてもこの学校、すっごく広いよね。
次は理科室だっけ?
移動のたびに迷っちゃいそう……」
腕を組んで困った顔をしているあんなのために、私は家から持ってきたものを取り出す。
「ふふっ、そういうと思って! じゃーん!
「あ、これって……! 学校の地図だ!」
「そう! と言っても、私が作ったわけじゃないんだけどね」
「え? じゃあ誰が?」
「これもさっきの閑鳴さんが私が転校してきたときに作ってくれたの!」
「へぇー……! やっぱりはなまる優しいね!」
あんなの言葉に深くうなずく私。閑鳴さんはとっても優しい。
そういえば、前に頭を撫でてくれたのもこの地図をくれたときだったなぁ。
「ねえみくる、閑鳴さん? ってどんな人なの?
なんか、みんなからお父さんって呼ばれてたよね?」
「そっか、結局紹介できてなかったね。
私も転校してきたときはお父さん呼びでびっくりしちゃったもん」
「もしかして、みんなも一度は撫でられたからとか……!」
「ううん、近いけどさすがに違う理由。
私たち以外に撫でられてる人、見たことないし」
「うーん、でも撫でるの上手だったよね?」
「それはたしかに」
少なくとも私は見たことないし、私がされたのも最初と今日の2回だけ。
でもたしかに撫で方は慣れてそうだったし、全員じゃなくとも他の子にもしてるのかな?
……どうなんだろう?
「みくる?」
「ううん、なんでもない!
それじゃあ本人はいないけど、閑鳴さんのことを紹介しちゃいます!」
「おー! お願いします!」
「名前は閑鳴ヒロさん。さっきの通り優しくて、クラスのみんなからお父さんって呼ばれてる。
前にりえとゆみに理由を聞いたら、いろんな子の悩みを聞いたり、ケンカしてる生徒同士を仲直りさせたり、勉強で分からないところを教えたり……
みんなの面倒を見てくれるんだ―って言ってた!」
「なるほど、だからお父さんなんだね!」
「そうみたい。
さっき言った通り、私が転校してきたときにも学校を案内して地図まで作ってくれたし。
それに、この学校で最初に私の夢を応援してくれたんだ」
「みくるの夢って、名探偵になって困ってる人を助けることだよね?」
「そう! 転校してきた日、この学校を案内してくれてた時に私の夢を言ったの。
そしたら、『暖かくてかっこよくて、なんだか小林さんにピッタリの夢だな』って。
『それを夢にしようと思っただけでもすごいことだ。頑張れよ』って頭を撫でてくれたんだ」
「わぁ……! とってもはなまる素敵だね!
なんだか聞いてる私まで嬉しくなってきちゃうもん!」
「うん、すっごく嬉しかった。あの言葉に背中を押してもらえた。
だから、本当はプリキュアになれて夢に近づいたことを話したいんだけど、プリキュアのことは内緒にしないといけないから……」
「あ、たしかに……それは寂しいね。
でもそっか、閑鳴ヒロさんかぁ~
私も早くお話して、友達になりたいな!」
「私も、早く2人に友達になってほしい!」
「じゃあ、さっそく今日の放課後、一緒に帰ろうって二人で誘ってみよう!」
「いいかも! さっきはダメだったけど、帰りは大丈夫だといいな~」
こうやって閑鳴さんのことで盛り上がりながら理科室に向かっていたら、あんなが校舎裏の桜を見て止まる。
「ちょっと見てみる?」
「うん!」
近くまで行って、あんなと一緒に桜を見上げる。
何度見ても立派な桜だなぁ……!
「わぁー、おっきな桜ー!!」
「学校が創立したときからあるんだって」
「へー、すごいね……!」
「って、授業始まっちゃうよぉ!」
「そうだった!!」
ちょっと早めに出たのに、話が盛り上がっちゃった。
急がなきゃ!
******
あ……ありのまま、今起こったことを話すぜ。
俺は明智さんと小林さんにさっき見たことを伝えようと理科室に入ったら、いつの間にか一人で体育館に立っていた。
何を言ってるのかわからないと思うが、俺も何が起きたのか分からなかった。
敵の能力? そうだとして、別のドアとドアをつなげて何がどうなるんだ?
何かの攻撃ではあるのか?
もともと理科室にいた人たちは……
「間に合っ……た?」
「理科室……じゃない!? それに……」
「閑鳴さん!?」
急いできた様子の小林さんと明智さんが、体育館に入ってくると俺と同じように困惑する。
そしてなぜか先にいる俺を見て驚く2人にとりあえず手を振る。
ここに2人が来たってことは、やっぱり怪盗団ファントムの仕業だと考えていいだろう。
「よっ、さっきぶり」
「どうして閑鳴さん、というか私たちも体育館に?」
「私たち、道間違えちゃった?」
「地図みながら来たのに……!?」
「どう間違えても理科室へ向かって体育館に入ることないだろ、それだと俺も間違えてるし」
「そうだよね……じゃあなんでだろ」
そうしていると、2人が入ってきたドア勝手に締まり、体育館の舞台の方から威勢のいい男前な声が響いてくる。
「ようこそからくり迷路へ!
……ん? なんか知らない顔もいるな?」
「怪盗団ファントム!」
声の方を向くと、先ほど桜の上で見かけたガタイのいい男がいた。
やはりこの現象はアイツの仕業か。森亜るるかが見当たらないが……
「またマコトジュエルを盗りに来たのね!
って、からくり迷路?」
からくり迷路もそうだが、マコトジュエルってなんだ?
またってことは、何回か盗られてる、もしくは狙われてるってことだろうけど。
「フッ、このゴウエモンの力で学校全体を謎がひしめく異空間、からくり迷路に変えてやったのさ。
これからお前たちには謎を解いてもらう!
どれか一つでも謎を解けなければ、永遠にこの迷路からは出られない!」
「永遠に!?」
「そんなぁ!」
まじか。想像よりもずっと大規模なことをやっていた。
というかすごい能力だな。ゴウエモン、だったか。
イメージするプリキュアの敵って、怪物みたいなのを使役して戦わせるもんだったが。
他の怪盗団ファントムもみんなこういうことができるのか?
「さっそく最初の謎へと招待してやろう。
せっかくだし、そこのお前さんも行ってこい」
そう言ってゴウエモンが手をたたくと、俺たちの足元にいかにもな穴が出現する。
「ちょっ……!」
「「わああああ!」」
重力に従い、なすすべなく落下した俺はうつ伏せで地面に衝突する。
そこに続いて、2つの衝撃が俺の背中を、1つの小さな衝撃が俺の頭を襲う。
「うぐっ、あでっ!!」
「うぅ、いた……くない?」
「ここは……理科室?」
「ポチ?」
うつ伏せなので見えてはいないが、背中に伝わる体温と感触的に小林さんと明智さんは俺の上に落下してきたのだろう。頭の上はポチタンだろうか。
うつ伏せで助かった。
あ、背中は衝撃に強いって意味でね?
「さっきまで体育館にいたはずなのに……」
「というか、閑鳴さんは?」
「下だ下」
「……へ?」
「……下?」
「「わああああああ!!」」
慌てて立ち上がる2人。
気付いてなかったんかい。
「ごごごめんなさいー!!」
「もしかして、閑鳴さんの上に落ちてきちゃった!?
だ、大丈夫!?」
「そんな慌てなくても平気だって、2人とも軽かったしな。
そっちは怪我とかないか?」
「う、うん!私たちは大丈夫だよ!」
「おかげで……ていうのも変ですけど、助かりました」
「そりゃなにより」
服をはたいてホコリを落としながら立ち上がる。
さっき思った通りうつ伏せで助かった。
2人が軽かったのは本当だが、さすがにお腹側で受け止めるのは無理だ。
内臓が口からこんにちはしてしまう。
2人の無事を確認した流れで、自分の頭の上にも話しかける。
「ポチタンは大丈夫そうか? 俺からだと見えないが」
「うん! ポチタンなら閑鳴さんの頭の上で楽しそうにしてるよ!」
「ポチ!」
「そっか、ならよかった。まぁ軽そうだしな……というか、もしや浮ける?」
「ポチポチ~♪」
「おお、本当に浮いてる、不思議だなあ」
頭の上にいたポチタンが浮き上がり、顔の前あたりでふわふわしている。
わかっていたとはいえ、実際に目の前で妖精ってものを見ると不思議なものだ。
教室で見たときも思ったが、やっぱりかわいいな。
「さて、確かに理科室だが、俺らのほかには誰も……ん?
どうした小林さん、こっちを指さして」
「本当だ、どうしたのみくる?」
「な、な、な……!」
なんかびっくりして固まってる?
こっちを指さしてるから後ろに幽霊でもいるのかと思ったが、あるのは謎のFIREと書かれたポスターだけ。
そんなにおかしなものはなさそうだが……
「なんであんなは驚かないの!?」
「え? なにかあった?」
「閑鳴さん、今普通にポチタンのこと話してた!!」
「へ?」
あ。
今度は俺の体が固まる。
普通に会話してた明智さんが、眼をまん丸にして俺とポチタンを交互に見ている。
「……あああ──!! 本当だ!!」
「やっぱり変だよね!? 私がおかしいわけじゃないよね!?」
「おかしくないよ!? いや話してるのはおかしいけど!!」
「それに、そもそもなんで私たちより先に体育館にいたんですかー!?」
目の前でわちゃわちゃし始める2人。
俺も一瞬焦ったんだけど、自分より圧倒的に慌ててる人が二人いて冷静になってきた。
お化け屋敷とかホラー映画である現象だな。
とりあえず、2人を落ち着けるところから始めよう。
今のままだとまともに話が出来なそうだ。
読んでくださってありがとうございます。
まだ物語を書いて投稿するというのに慣れていないため、いろいろ試行錯誤、右往左往しているところです。
本編の文体も小説情報も安定せず申し訳ない。
今のあらすじ、自分で書いておいてなんですがあまりしっくり来ていないんですよね……。
もっと端的でシンプルなあらすじでもいいのかな―とか思ったり。
そのうちガラっと変えるかもしれません。
そしてふと思ったんですが、私は原作の1話分にどれだけ話数使うんですかね?
まだ第7話の中盤行くか行かないかくらいなんですけど。
展開が鈍いと感じる方は申し訳ない。
感想をくれた方、誤字報告をしてくれた方、ありがとうございました。
完全にポチタンをポチたんだと思い込んでいました。お恥ずかしい。
感想ももし良ければ是非。
とても喜びます。