タイトルにありますけど、ゴウエモンの能力ってちょっと楽しそうですよね。
「そろそろ落ち着いたか?」
「は、はい、なんとか……?」
「なんかこっちがパニックになっちゃって、ごめんねー……」
とりあえずわちゃわちゃしていた2人に対して、「ちゃんと説明するから落ち着け―」と言っていたら、意外と早く大人しくなってくれた。
「でも、本当にどうしてポチタンのことを?」
「あと、なんで先に体育館にいたか!」
今度は落ち着いた様子で、改めて先ほどまでのことを聞いてくる2人。
指摘された時は一瞬焦ったが、問題はない。
実はさっきの教室移動中に、こうやってバレた時用の誤魔化し方も考えておいたのだ。
いや、かといってこんなに早く使うことになるとは思ってなかったけど。
体育館にいたのは本当に偶然というか、巻き込まれた感じだし、正直に説明すればいいだろう。
「まず、俺がポチタンのことを知ってる理由だけど、全然深い理由はないぞ?」
「深い理由はない?」
「おう。だってさっき教室でポチタンが動いてるとこ見かけたってだけだし」
「「え゛」」
今度は、小林さんと明智さんの2人が固まる。
さっきは誤魔化しと言ったが、嘘をついているわけではない。
俺は実際にポチタンが動いているのも見たし、2人のひそひそ話も聞こえていた。
そして、恐る恐る質問してくる明智さん。
「教室で見たっていうのは……どういう……?」
「いや、そのまんまの意味。
カバンからぴょこって出てきたのと、2人がポチタンに話しかけてたのを見た」
2人がさび付いたブリキみたいな動きで顔を見合わせてから、再度こちらを見直す。
次は小林さんが恐る恐る質問してくる。
「ちなみに、他に何か見た……というか、聞こえたりは……?」
あー……ここでさらにとぼけてもややこしいし2人もやりづらいか。
さっき変に避ける必要はないって自分で決めたしな。
「二人がプリキュアだってことなら聞こえてたけど」
「「あ゛あ゛ぁぁぁぁぁ……」」
俺の言葉を聞いて項垂れる2人。
orzのネットスラングってこの時代にはあったんだろうか。
そう考えてしまうくらいお手本のような落ち込み方である。
実はこの誤魔化し方にはちょっと穴があるが……本人たちはそれどころじゃなさそうだし、まぁ大丈夫だろう。
「まぁ、そんな気にすんなよ。
別にポチタンやプリキュアのことを知ったからってどうこうするつもりもないし」
「閑鳴さん、冷静過ぎじゃないですか……?
もうちょっと驚いたりしててもいいと思うんですけど!」
「冷静に見えるんだったら、さっきの小林さんの提案を断ってまで考える時間を作った甲斐があったってことで」
「あぁー! 閑鳴さんの言ってた考え事って、私たちのことだったんだ!」
「そういうことだ。突然の情報量に戸惑ってな、整理する時間が欲しかった感じ」
「それは、確かにそうなった原因の人たちから誘われてもまたの機会にってなりますね」
正確に言えば情報に襲われたのは話が聞こえたからではなく、明智さんが教室に入ってきたときにいろいろ思い出したからだが、概ね本当だしいいだろう。
「そういうわけだから、変に隠そうとしなくても大丈夫。
ポチタンも、俺の前だったら気にせず動いていいからな」
「ポチポチ~♪」
そう言うと、俺の周りをくるくる飛び回ってから再び頭の上に乗っかってくる。
気に入ってくれたのだろうか?
浮けるから関係ないかもだが、2人より背が高いから新鮮なのかもしれない。
「まさかこんな早くプリキュアのことがバレちゃうなんてね……」
「まぁ、バレたのが閑鳴さんで良かったってことにして、今後は気をつけよう!」
「うん、そうだね!」
切り替え早いな。悪いことじゃないからいいけど。
バレバレだったのは俺の席が近かったのもあるし、気を付ければ何とかなるだろう。
今日が2人での初めての学校生活だったわけだし、多少は仕方ない。
ダメそうなら俺もフォローを手伝うしな。
「それじゃあ、次は先に体育館にいた理由は?」
「ああ、それなら……」
『おーい、知らない顔とプリキュアの2人。
お前ら、ここが俺のからくり迷路の中だってこと忘れてないだろうな?』
「「「あ」」」
説明しようとした瞬間、理科室に響くゴウエモンの声。
……そういえば、俺ら一応接敵したんだった。
敵だけど申し訳ない気持ちになった、すまんゴウエモン。
少し気になることもあるし、ちょうどいいから後回しにさせてもらおう。
「俺から聞きたいこともあるし、先にこの状況なんとかしてから話すとするか」
「そうですね!」
「みくるとポチタンと閑鳴さん、みんなでがんばろー!」
「うん!」「ポチー!」「おー」
なんとなく合わせて返事してみると、嬉しそうにする2人。かわいい。
さて、気を取り直して。
とりあえずは現状の把握からだ。
さすがにだと思うが、一応念のため理科室のドアを開けようと力を籠める。
「……やっぱり開かないか」
俺の力でもびくともしないなら、力技や破壊といった方法じゃ無理なんだろう。
そりゃそうだ。力でどうにかなってしまうものなら変身したプリキュア相手には無意味になるだろうし。
「ん~!」
「ポ~チ~!」
「開かないよぉ~……!」
反対側のドアで明智さんとポチタンも力いっぱい開けようとしているが、動く気配はない。
……ポチタンの引手にくっついてるようにしか見えないあれは助けになっているんだろうか。
まぁ、かわいいからいいか。
「こっち側も同じくだ」
「やっぱり閉じ込められてるってことだよね?」
「何とかしないと……!」
「ポチ?」
「鍵穴はあるが……」
ポチタンがのぞき込んでいる鍵穴を見ていると、先ほどと同じように理科室にゴウエモンの声が響く。
『脱出せよ。ドアを開けるには鍵が必要。
理科室の注意を守り鍵を見つけよ』
鍵を見つけよ……ってことは、一応この理科室内にはあるのか。
「ここから出るには鍵を見つけないとってことね」
「そうみたいだな」
「よーし、そうとわかれば!!」
ポチタンと明智さんが棚や引き出し、フラスコの中など片っ端から探しまわっているが。
「ない」「ない……」「ない……!」
「ポチ!」
「どこにもなーい!!」
わー!! と頭を抱える明智さん。行動が速いのはいいことだと思います。
ただ、やはり探せば見つかるようなものじゃないか。
小林さんの方を見ると、メモ帳のようなものを開いて考え込んでいた。
メモ帳をのぞき込むと、先ほどのゴウエモンの言葉が一言一句違わずメモされていた。
うーん、偉い、偉すぎる。本当に相性が良いな、明智さんと小林さんの2人は。
って、感心してる場合じゃない。俺も少しは考えないとな。
確か、ゴウエモンはさっき……
「理科室の注意を守り鍵を見つけよ……?」
「やっぱり、小林さんもそこが引っかかる?」
「はい。鍵を探すだけでいいなら、『理科室の注意を守り』の部分はいらないと思いますし……」
「だよな。何かしらのヒント……もしくは、そこ自体が問題文とか?」
「問題文ですか?」
「ああ。ゴウエモンは体育館で謎を解けと言っていた。
物を探すことを謎とは言わないと思うから、その部分が謎にあたる問題なのかなって」
「なるほど、確かに……!
でも、理科室の注意ってなんでしょう?」
「それは……うーん、わからん」
ただの知識とかならともかく、こういう謎解きに関して転生の優位性は特にない。
長く生きようが頭の柔らかさは変わらんのである。
理科室の注意……部屋を限定するなら、理科室だからこそ気を付けなくてはいけないことだろうか。
すると、一緒に頭を悩ませながら教室を見回していた小林さんの目線がとある場所で止まる。
「あんな、こっち!」
「お、なんかわかってそうだな」
「もしかしたらですけど、気になることがあって!」
「そうか……偉いなぁ」
「?」
ついつい漏れたつぶやきに? を浮かべてこちらを見る小林さん。
別々の役割をこなしながら、気になることがあればきちんと相談する。とても大事なことだ。
引き続き理科室を探してくれていた明智さんとポチタンが駆け寄ってくる。
「どうしたの?」
「これを見て!」
そう言って、壁のポスターを指す。
これは……
「FIRE……は火のことだけど」
「注意を守るってこれのことじゃない?」
「確かに、理科室って実験とかで火を使うし、気をつけなきゃだよね」
「なるほど、確かに理科室ならではの注意だな」
「もし大きな火が出ちゃったらすぐに消さないとだし」
「火を消す……つっても、別にどこも燃えてないんだよな」
改めて教室を見渡すが、当然燃えているところはない。
うーん、と3人で考えていると、今度は明智さんが何かを閃いたようだ。
その閃いたときにアホ毛もピコーン! ってなるのはどういう原理?
「この火を消せばいいんだよ!」
そう言って明智さんが指をさすのは、先ほどまで見ていたポスター。
「この、ポスターに描いてある火ってことか?」
「どうやって?」
「それは……こう!」
明智さんがフラスコに入れた水をポスターにかけると、描いてあった火や文字がほとんど消え、FIREのFに擬態していた鍵がポスターから出てくる。
「「わぁ、鍵だ!!」」
「マジか、こういう隠し方がありなのか」
そりゃ明智さんとポチたんがいくら探しても見つからないわけだ。
確かに、火の注意喚起のポスターならともかく、火だけが描かれたポスターってのは違和感があったが。
そこからポスターの火を消そうっていう発想にはならなかった。
頭が柔らかいんだな。
てか、正直に言うとちょっと楽しい。
体育館で説明された時も少し思ったが、こりゃだいぶリアル脱出ゲームに近いな。
この時代は分からんが、少なくとも転生前はそこそこメジャーなレジャーイベントの一つだった。
実際に行ったことはないが、これは好きな人もいるだろう。
いや、一応敵の攻撃なんだけどさ。
手に入れた鍵をドアの鍵穴に刺して回してみると、ガチャリという音が鳴る。
「よし、これでここの謎はクリアってことだな」
「「やったぁ~!」」
「ポチ~♪」
ポチタンはくるくる回り、2人は手を合わせながらぴょんぴょんと喜んでいる。
微笑ましいなぁ、なんて思っていると、2人の手のひらがこちらにも伸びる。
「ほら、閑鳴さんも!」
「閑鳴さんのおかげで謎に気付けたので!」
別に俺がいなくてもどうにかなっていたとは思うが……
でも、2人の嬉しそうな顔に水を差す必要もないか。
こう言ってくれるのは俺も嬉しいしな。
とは言え、手を合わせるのはあれだから。
「おう、2人ともナイス」
両手を使って2人の手をそれぞれパチン、と軽く叩く。いわゆるハイタッチだ。
すると、少しびっくりしてから叩かれた手のひらを見て、再び嬉しそうにする2人。
「わぁ……! えへへ、ハイタッチってなんだか新鮮だね!」
「ふふ、確かに!」
「そうなのか? まぁ、あんまり女の子同士でするイメージはないしな」
だからって、喜ぶのはよくわからないが……嫌がってないならいいか。
すると、鍵を開けたことによりゴウエモンの声が聞こえてくる。
『まずまずだな。だが、次の謎がお前たちに解けるかな?』
「みくる! 閑鳴さん!」
「ええ! どんな謎だって……!」
「「解いてみせる!!」」
「そうだな、その意気だ。
早速次の謎に……と行きたいところだけど、一旦ストップ」
「ポチ?」
「どうかしたんですか?」
そのままの勢いでドアを開けて進もうとする2人を止める。
「念の為、先に俺がドアの向こうに行くよ。
さっきみたいに落下するかもしれないし」
「そういえば、さっき閑鳴さんのこと踏んじゃってたんだった……」
「でも、それじゃまた閑鳴さんの上に落ちてきちゃうんじゃ……?」
「ん? そうしようってことだけど」
「な、なんでそうなるんですか!?」
「さすがにそんなことできないよ!?」
慌てて拒否する小林さんと明智さん。
なんでそんなに……って、もしかして。
「一応言っとくけど、さっきと同じように俺のことを踏んでくれって言ってるわけじゃないぞ」
「あれ?」
「違うんですか?」
「違うわい」
聞いておいてよかった。
危うく俺がとんでもない特殊嗜好の持ち主みたいになるところだった。
「じゃあどういう……」
『早く移動してくれーい。
でないと、またその部屋の鍵を閉めちまうぞ?』
「あ、やべ。
まぁとにかく、俺が先に行くから2人は順番にドアから来いよ。
いいか、同時に来られたらさすがに無理だから順番にだぞ~」
「じゅ、順番ですね! 分かりました!」
「ほ、本当に大丈夫かな……?」
ちゃんと伝えられないけど、さっきみたいなことにはならないので安心してほしい。
小さなことだが、ようやく転生した利点を活かすことができる。
明智さんの不安そうな声を背に、俺はドアを開けて次へ進んだ。
読んでくださってありがとうございます。
まだまだ続く第7話。4人集まるのは一体いつになるのか。
そして、いったんここで話のストックが尽きたので、明日も投稿できるかは不明です。
2万弱のストックとは。
とはいえ話を書くのは楽しいので、3,4日に5000文字程度の話を投稿できるように頑張りたいですね。
もし続き楽しみにしてくれている方がいるならうれしい限りです。
それではまた次のお話で。