星マークが描かれたドアを開けた先は……
「学校の校庭か」
「っていうことは、出られた?」
「やるじゃないか! 名探偵とその助手よ!」
声の方を見ると、ゴウエモンが桜の木の下で待ち構えていた。
で、今なんて言った?
「助手?」
そんなのいたっけ? と思って周りを見るが、ここには小林さんと明智さんとポチタンしかいない。
ってことは……
「もしかして、それって俺のこと言ってる?」
「? 当たり前だろう。他に誰がいるってんだ」
そんな『何言ってんだ』みたいな顔されても困るんだが??
「いや、俺助手じゃないけど!?」
「はっはっは、今さら嘘をつこうったって無駄だぜ?
どう見ても助手だったろう、あの2人といいチームだった」
「あの、俺は偶然巻き込まれて体育館にいただけで……!」
「図書室でのあれはしてやられたからな!」
次はそうはいかないぜ! とこっちを褒めてくるゴウエモン。話聞けよ。
そしてあの見つけ方を褒めるの器が広すぎて怖いわ、敵だよね?
ていうかなんで否定するのが俺一人だけなんだ。
「おい、小林さんと明智さんもはやく言っ……」
「助手……! すごく探偵っぽい……!」
「閑鳴さんが私たちの助手……! はなまるいいかも!!」
「え、うそぉ」
助力を求めて2人の方を向いてみれば、映りこんでくるのはウキウキわくわく顔の2人。
どうしてそうなる。
「今回は妖精についてはよくわからなかったが、助手がいることは分かったから良しとする!」
「だから助手じゃ……」
「それじゃ、マコトジュエルは頂いていくぜ!」
「聞けよ!!」
おかしい、プリキュアも怪盗団ファントムもいる状況でなぜ俺に味方が一人もいない。
そしてぬるっと出てきたマコトジュエルは結局なんなんだ。
「嘘よ、覆え! 来やがれ、ハンニンダー!」
そう宣言したゴウエモンが、桜の木に向って何かするとたちまち桜の木が手足とマントを付けた存在へと変身する。
初めて目にしたが、おそらくこれが怪盗団ファントムの使役する怪物なんだろう。
ハンニンダー、だったか。
からくり迷路で面食らったが、俺の中のイメージ通りの戦い方もするんだな。
「桜の木が……」
「みくる、行こう!」
「うん! 閑鳴さんは……」
「ちゃんと離れておく。いざとなったらちゃんと逃げるから、気にせずがんばれ」
「「はい!」」
2人が懐中時計のようなものを取り出してハンニンダーのもとへ向かう。
「オープン! ジュエルキュアウォッチ!!」
そうして、小林さんと明智さんがプリキュアへと変身していく。
すげえ……。ここがプリキュアの世界であることはもう受け入れていたつもりだが、それでも目の前で2人が変身していくのを見ると、つい感動してしまう。
この子たち、本当にプリキュアなんだな。
「どんな謎でもはなまる解決!! 名探偵キュアアンサー!」
「重ねた推理で笑顔にジャンプ!! 名探偵キュアミスティック!」
「「名探偵プリキュア!!」」
「私の答え、見せてあげます!」
14年前見かけた、あのプリキュアが目の前にいる。
うん、ちょっとカッコ良すぎるな彼女たち。
……って、見惚れてる場合じゃない、もう少し離れなくちゃな。
「ハンニンダー!」
変身を終えたプリキュアとハンニンダーの戦闘が始まった。
巨体を活かして殴りかかってくるハンニンダーをジャンプで飛び越え、そのまま飛び蹴りを打ち込むアンサーとミスティック。
……わかってはいたが、間近で見るととんでもないな。
ハンニンダーが殴った地面は大きく抉れているし、2人のジャンプだって余裕で建物の数階分の高さを超えている。
こりゃ、本当に戦闘は見ているだけだろうな。身の程は弁えるべきだ。
14歳が二十代よりちょっと強い程度の力出せたからなんやねんってなるレベルの差だし。
「ミスティックリフレクション!」
ハンニンダーとゴウエモンの攻撃をミスティックがなんとか防いでいるが、2人がかりの飛び道具とそれによって舞う土埃に苦戦しているようだ。
力になれないのはやはりもどかしいが、ただのクラスメイトには何もできん。
2人なら大丈夫だと信じるしかないな。
……そういえば、結局ここまで森亜るるかは顔を見せなかったな。
ただの付き添いだったのか? 図書室で大声を出す前は一応呼びかけたが。
今もどこかで見てたりするんだろうか。
そう思い、なんとなく周りを見渡した。
「え、普通にいるじゃん」
こっちを見渡せそうなところ……上かな。とか考えて目を向けたら普通にいた。
校舎の屋上から座って3段アイスを食べながら2人とハンニンダ―たちの戦闘を見てる。
……あれ、君さっき桜の上で棒アイス食べてなかったっけ。
アイスが好物なのか? だとしてもそのスパンと量は腹壊しそうだが……
……あ、やべ。そんなこと考えてたら目が合ってしまった。
どうしよう、すっごい気まずい。なんで俺もあの子も無表情で見つめ合ってるんだろう。
いつの間ににらめっこが始まったのか。
とりあえず手振っとこ。……あ、あっちも振り返してくれた。
……なにこれ?
「「これが! わたしたちの! アンサーだ!!
プリキュアフライングスペクトル!!」」
「「キュアっと解決!」」
気が付いたらアンサーとミスティックがハンニンダーを浄化? させていた。
俺が世にも奇妙なにらめっこをしている隙に……!?
すると、周りの雰囲気が馴染みのある感じに戻り、先ほどまでの戦闘の痕がもとからなかったかのように直っていく。
なんて便利で環境に優しいんだ。
いつの間にかゴウエモンもいなくなっている。さすが怪盗、撤収が速い。
森亜るるかの方も……もういなくなってるな。
もうアイス食べ終わったのかな。お腹壊してないといいけど。
……いや、そこそんな気にするところじゃないか。
「2人とも、お疲れ様。かっこよかったぞ」
桜の木の下で喜んでいる小林さんと明智さんに声をかける。
「閑鳴さん! 大丈夫でしたか?」
「お陰様でな。2人は大丈夫だったか?」
「うん! 平気だよ!」
「ポチ~♪」
3人で元通りになった桜を見上げる。
「元通りになってよかったぁー……何か忘れてない?」
「何か? ……あ」
「「理科の授業!!」」
「そういやそうだった……!」
3人で慌てて走り出す。
元は授業に行こうとしてたんだ。
さっきまであんな非日常だったのに、いきなり日常に戻られても困るわ!
******
「厄介な力ね」
腕の中でプリキュアたちを見ていたマシュタンが呟く。
「そっちは想定内……でも」
「助手のほうが気になる?」
「……うん」
あの子、私たちのことに気付いてた。
今だけじゃない。図書室でも、明らかに私たちに向かって呼びかけていた。
お陰で耳を抑えられたから、助かった。
なんでさっき手を振ってきたのかは、わからないけれど……
ただの助手、というわけじゃなさそう。
「不思議な子だった」
「そうね」
帰りは何のアイスを食べようかな。
******
「ぎりぎりセーフ!」
急いでドアを開けて教室に入ると、ゆみとりえがすでに教科書などを机に広げていた。
「遅かったねー」
「あはは……」
「あんなはどうしたの?」
「え? あんななら一緒に……」
……あれ!? いない!?
もしかして……!?
「あんな、置いてきちゃった……」
「えぇ~なにしてるの!」
「あんな、理科室までの道分かるの?」
「わからないと思う……閑鳴さんも一緒だったんだけど……!」
「ヒロお父さんも?」
「なら大丈夫なんじゃない?」
閑鳴さんの名前が出ただけで落ち着くゆみとりえ。
閑鳴さんへの信頼がすごい……!
2人の落ち着きを見てたら私も落ち着いてきた。
確かに大丈夫かも……?
でもあとでちゃんと謝らないと。
ごめんねあんな~……!
******
からくり迷路内じゃなければいくらでもやるとは言ったけどさぁ……!
「さすがに次の機会が早すぎるんじゃないですかね明智さんや……!!」
「すごいすごい! はなまる速いよ閑鳴さん!」
閑鳴ヒロ、ただいま同級生の女子をお姫様抱っこで全力疾走中。
腕の中の明智さんはキラキラした顔で大はしゃぎ中。
だから呑気かて。
まぁ彼女が悪くてこうなってるわけじゃないからいいけどさ。
3人で急いで理科室へ向かっている最中、明智さんがはぐれてしまったのだ。
すでに校舎の構造を理解してる俺と小林さんはともかく、今日転校してきた明智さんは急ごうにも急げない。
小林さんは気づかず先に行ってしまったため、考えうる限り最速の移動法を取ることにした結果こうなったというわけだ。
変身してない状態であれば、道を教えながら2人で走るよりも俺が抱えて走った方が速い。
「ねえねえ閑鳴さん! あのね……!」
「悪いが、さすがに揺らさないように走るってのは難しいからな……!
舌噛むと危ないから喋らないことをおすすめする!」
「……!」
ぶんぶん! と腕の中で口を押さえてうなずく明智さん。
素直に言うこと聞けて偉いぞ。
まったく、今日はとんでもない日だな。
思考とは裏腹に上がる口角を意識しながら、明智さんを抱え直してさらに足に力を籠める。
それじゃ、もうちょい急ぐか……!
******
「それじゃあ皆さん、気を付けて帰ってくださいね~」
帰りのホームルームを終える担任の先生の声が教室に響く。
多くの生徒が席を立ち、友達のもとへ向かったり、荷物を持って帰宅を始める。
あの後、俺と明智さんは無事授業には間に合った。
ちゃんと明智さんを降ろしてから教室に入ったため、息切れした俺とにこにこな明智さんを見てクラスメイトは頭に?を浮かべていたが。
小林さんもすぐに謝りに来たが、上機嫌で水に流す明智さんにほかのクラスメイト同様?を浮かべていた。
その後の授業は問題なく進み、ようやく波乱の1日は終わりを迎えつつあるということだ。
転校生と隣の席の子がプリキュアだと判明。
学校で敵である怪盗団ファントムを目撃。
その後攻撃に巻き込まれプリキュアとからくり迷路へ。
異空間でいくつもの謎を解き、ようやく出られたと思えばプリキュアとゴウエモンたちの戦闘。
なぜか森亜るるかとにらめっこをして、非日常が収まったかと思えば明智さんを抱えて全力ダッシュ。
本当に激動の日だった。
それでいて、正直とても楽しい時間だった。
間近で彼女たちを見て、話すことができて、とても応援したくなった。
今日は俺の中で忘れられない日になるだろう。いい思い出になった。
さて、俺もそろそろ……
「「閑鳴さん!」」
帰ろうと席を立った瞬間、今日はよく聞いた声が横から聞こえた。
そっちを向けば、いるのは当然小林さんと明智さん。と、ポーチのふりをしているポチタン。
「どうした? 2人は帰らないのか?」
「ちょうど今から帰るところなんですけど」
「良かったら一緒に帰ろ!」
……どうやら、激動の日はあと少しだけ続くらしい。
「そうだな、一緒に帰るか。
朝は断っちゃったからな」
「ほんと? やったねみくる!」
「うん! よかった~」
元から話していた小林さんはともかく、明智さんもずいぶん打ち解けてくれたみたいだ。
今後どれだけ話す機会があるかはわからないが、話せるに越したことはないからな。
「じゃ、さっそく帰るか」
「「はーい!」」
******
「そういえば、結局閑鳴さんはあの時なんで体育館にいたんですか?」
3人で帰り路を歩いている最中、小林さんが質問してくる。
確かに話せていなかったな。
……ふむ、さっきは正直に言えばいいと思っていたが、少しだけ隠し事をしよう。
「それなら、ほぼ偶然だ。理科室に向かってる最中に桜の上にゴウエモンがいたのを見かけてな。
見るからに怪しかったから2人に伝えようと思って理科室のドアを開けたら気が付いたときには体育館に居たって感じだ」
「なるほど、閑鳴さんも私たちと同じように理科室に入ろうとしただけだったんですね」
「私たちも桜の下に居たはずなんだけど全然気が付かなかった……」
「俺が見かけたのは2階からだったし、仕方ないんじゃないか?
下からだと見えづらいし、すぐいなくなっちゃったからな」
森亜るるかのことは隠しておこう。あの子の目的とかはわからないけど、今日は最後まで2人の前に現れなかったことを考えると、まだ存在をばらしたくないってことはわかる。
確信はないが、ゴウエモンとハンニンダーに加勢すれば勝てそうな状況で見ていただけだったということは、完全な敵じゃないのかもしれない。
「今度はこっちからいくつか聞いても良いか?」
「もちろん!」
「何でも聞いてください!」
「答えられる範囲の内容で大丈夫だけどな」
今度はこちらの質問に答えてもらった。
1つは、マコトジュエルについて。
2人も詳しくは分からないが、どうやら人々が大切にしているモノに宿る想いの結晶らしい。
今回はあの桜に学校が創立したときから積み重なってきた人々の想いによってマコトジュエルが宿ったのだろう。
マコトジュエルを狙う怪盗団ファントムからマコトの想いとモノを守るため、2人は名探偵プリキュアとして戦っていると。
その流れで2つ目、怪盗団ファントムについても聞いた。
こちらも理由は分からないが、マコトジュエルが出てくる場所に現れては、マコトジュエルの宿るモノを盗んでいこうとする名前の通り怪盗団とのこと。
ゴウエモンのほかにも、ニジーやアゲセーヌという怪盗もいるらしい。
ちなみに、からくり迷路のような攻撃を受けたのは今回が初らしく、他は普通に変装などをして盗んでくるみたいだ。
やっぱり異質なのねゴウエモン。
「他に聞きたいことはないですか?」
「ああ、気になったのはこんなところだ。
答えてくれてありがとな」
「いえ、突然あんなことに巻き込まれたんですから気になって当然だと思いますし」
相変わらず律儀やなぁ。
でも、おかげでなんとなくは分かった。
この世界で起こるのはマコトジュエルを盗む怪盗団ファントムと、それを防いで事件を解決する名探偵プリキュアの戦いなんだな。
「それじゃあ、みくる!」
「うん、そうだね!」
そんな風に教えてもらったことをかみ砕いて整理していると、突然横に並んで歩いていた2人が前へ出て、こちらへ向き直す。思わず立ち止まる。
なんだ?
「今度はまたこっちの番!
聞いてほしいことが2つあるんだけど、いいかな?」
「? もちろんいいけど……聞いてほしいこと?」
聞きたいことじゃなくてか?
「うん! まぁ、2つ目は聞いてほしいというかお願いなんだけど……
まず1つ目! こっちは私のこと!」
「明智さんのこと?」
「私ね、実は2027年の未来から来たんだ!」
「……は?」
びっくりした? と笑う明智さんと、びっくりするに決まってるでしょ! と言う小林さん。
ああ、その通り。俺は今、死ぬほどびっくりしている。
明智さんが未来から来たこと、ではもちろんない。
そのことは、転生前の知識で分かっていた。
俺が驚いているのはそこじゃなくて。
「なんで、そのことを俺に言ったんだ?」
今回、俺がマコトジュエルと怪盗団ファントムについて聞いたのは、今日の出来事の中で話が出てきたからだ。知っておくべきだと思ったし、聞かないと変だと思ったから。
2人がプリキュアであることだって、俺が勝手に聞いてしまったってことになっているし、2人から言ったわけじゃない。
でも、明智さんが未来から来たことは、話に一度も出てきていない。
俺がどこかで聞いていたわけでもない。
今明智さんが言わなければ、少なくとも2人の中では俺は知らないままだったはずだ。
みんなに隠してるであろう大事なことを、なんでわざわざ。
「うーん、いくつか理由はあるけど……
一番は、これからお願いすることの前にちゃんと話しておきたいなって思ったの」
「これからお願いすること?」
「じゃあはい! 次はみくるの番!」
「えぇ!? きゅ、急に私!?」
唐突に話の主導権を渡されて慌ててる小林さん。
……小林さんもお願いの内容は知ってるのか。
「えっと、実は私たち2人からお願いがあるんです」
「……2人から?」
「うん! みくると私で話し合って決めたんだ!」
深呼吸をする小林さん。
そして、意を決した様子のまっすぐな目がこちらを映す。
「閑鳴さん! 私たち二人の助手になってください!」
「お願いします!」
そう言って頭を下げる小林さんと明智さん。
……助手? 助手って、あの助手? 俺が??
名探偵プリキュアの??
「待て、待て待て。ちょっと、時間。
考える時間をくれ」
「もちろん、ゆっくり考えてください」
「さっきも言ったけど、これはお願いだからね!
嫌だったら断って……欲しくないけど!
でも、ちゃんと受け入れるよ」
わからないことだらけで、多くの困惑が頭の中を巡る。
どれから聞いていけばいいのか。どれから受け止めればいいのか。
俺はどうするべきなのか。
「なんで、助手って話になったんだ?」
ごちゃごちゃしている頭の中から、ようやく最初の疑問が口からこぼれる。
「きっかけは、やっぱりゴウエモンの言葉かな?」
「そう! ゴウエモンが閑鳴さんを助手だって言った時、そうだったらいいな、って自然に思ったんです」
「私も! だからみくると相談して、お願いしてみようって話になったの!」
「もうプリキュアだってことも知られてますし、ポチタンも閑鳴さんのこと気に入ってましたから」
「ポチ? ポチ~♪」
ポーチのふりをしていたポチタンが、名前を呼ばれて反応する。
そして、ふわふわと飛び、俺の頭の上へ乗る。
「2人なら、助手なんかいらないんじゃ?」
次の疑問が口からこぼれる。
「ううん、そんなことないよ?」
「今日だって、何回も閑鳴さんに助けられちゃいましたし」
「からくり迷路だけじゃなくて、朝のポチタンのこととかも!」
「あ、そういえば結局そのことでお礼言えてない! ありがとうございました……!」
「あれはヒヤッとしたね……ほんとにありがとー……!」
改めてお礼を言ってくる小林さんと明智さん。
オ■■はそ■世■で■■な■だぞ。
心がザワザワする。
今日が終わったら、また元に戻るつもりだった。
プリキュアだってことを知ろうが、からくり迷路に巻き込まれようが、多少仲良くなろうが。
俺は偶然居合わせただけの同級生だから。
これ以上は望まないように、この日を思い出として眺めていこうと思っていた。
分からない感情や、隠れている思考がまだまだ沢山ある。
その中でも、はっきりしていることが2つある。
1つは頭の奥でしずかに鳴り続けている、
そして……
「本当に、俺でいいんだな?」
俺の言葉を聞いた2人が顔を見合わせて、そして笑う。
「閑鳴さんがいいんです!」「閑鳴さんがいいんだよ!」
「ポチポチ!」
もう1つは、たとえそうだとしても、
どうせ、ろくなことにならないぞ。
……そうだとわかっていても、俺はこの胸の暖かい感情に従いたい。
目の前で笑いかけてくれる2人を、もっと近くで。
「……わかった、なるよ」
「本当ですか!!」
「あ、待て。言い方が違ったな」
「?」
仕方なくじゃない。受け入れるんじゃない。
俺が望んでそうするんだ。
そこを間違える訳にはいかないからな。
「お願いします。俺を、2人の助手にしてください」
今度は俺が2人に向けて頭を下げる。
すると、少しの間もなく返事が帰ってくる。
「「閑鳴さん!!」」
名前を呼ばれて顔をあげる。
そこにあったのは、広い空を照らす太陽と見紛う程の、きれいなきれいな2つの宝石。
「「これから、よろしくお願いします!!」」
この時、目に焼き付いたこの輝きを、俺は絶対に忘れないだろう。
******
晴れて探偵と助手という関係になった、小林さんと明智さんと俺。
あのあとの帰り道でのこと。
関係は大きく変わったが、その瞬間何かが起きるなんてこともなく。
当たり障り無い会話をしながら俺たちは帰宅していた。
「そういや、探偵事務所ってどこにあるんだ?
今って2人ともそこに住んでるんだろ?」
「そっか、助手になってくれたんだし事務所も案内しないとだね!」
「はたして今まで事務所に1度も入ることなく助手になった人間が居ただろうか」
「多分閑鳴さんが初めてだと思います……」
気付いたら世界初の面白人間になっていた。
とか思ったけど多分生まれた時にもうなってたわ。
「そもそも俺と明智さんに至っては今日初めて会ったしな」
「あれ、そうだっけ?」
「あなた自分が今日転校して来たことをお忘れ?」
「えへへ、なんだかそんな感じが全然しなくて……」
確かに1日にしては濃すぎたけども。
んで、結局事務所はどこなんだ?
いつもとは違う道だけど、このまま行くと……
すると、ある建物の前で2人の足が止まる。
その建物の扉の上には、『キュアット探偵事務所』と書かれた看板があった。
「はい、閑鳴さん! ここが!」
「私たちの探偵事務所です!」
「……マジか」
「あれ、どうしたの?」
「なんだかすごい驚いてますけど……」
思ってるより立派な建物だとか、かわいい外観の建物だとか、そう言った普通の驚きももちろんある。
あるけど、それよりもっと驚くべきことがたった今判明した。
「明智さん、小林さん」
「「?」」
2人を呼んで、とある家を指さす。
事務所の前であるここから見えるほど近くの、そこそこ大きな赤い切妻屋根の家。
「あれ、俺の家」
「「え」」
……まったく。
「「えええええええええ!?」」
俺と彼女たちは、今日だけで何回驚いたんだろうな。
読んでくださってありがとうございます。
今回は場面切り替えが少し多かったですね。少し読み辛かったと思います。
いろんなシーンを書きたくて欲張ってしまいました。
その分文字数も多めだったので良しとしましょう。
さて、なんとただの同級生から助手へとランクアップした閑鳴君。
彼は助手をお願いされて、何を感じて何を葛藤して、何で受け入れたんでしょうね?
後半のこの部分はとても難産でした。
どこまで主人公の心情を描写するべきかが難しかったです。
ここで丸1日悩んでしまいました。
自分にもっと文才があればと思わずにはいられない。
そして7話目にして初のプリキュア変身&戦闘シーン。
あまりここに力を入れすぎるとアニメの文字起こしみたいになってしまうし、展開もまた遅れてしまうので適度に描写を抜いたつもりなのですが、いかがでしたでしょうか?
さすがに毎回この短さということはないと思いますが。
これでも長いとか、あるいは物足りないとかありましたら感想などで教えて貰えると助かります。
他にもなにかありましたら気軽にどうぞ。怖い言葉を使われると泣いてしまいますが、それ以外は自由にしていただけると嬉しいです。
あと、ここすきっていう機能があることを初めて知りました。
付けてくださっていた方、ありがとうございます。
参考にさせていただきます。
この作品は基本的に原作であるアニメの通りに進んでいく予定です。
寄り道はするかもしれませんが。
ようやく第7話が終わったので、次からは第8話のプリティホリックの回ですね。
さすがに毎回1話分に7話は使わないと思います。
それではまた次のお話で。