「なるほど、コスメショップに置く商品を考えたいから、男の目線からの意見も欲しいってことで俺は呼ばれたわけか」
「そういうこと!」
「なので、何かいい案はありませんか?」
キュアット探偵事務所内。
一緒にお店をやろう! と言われ連れてきた理由がようやく判明した。
最初に連れてこられた時、実際に男の子を呼んできましたーって言ってたのはこういうことだったらしい。
「でも、そもそもなんでお店をやろうって話になったんだ?」
「だって、ジェット先輩の作るものがすっごくかわいいんだもん!
私たちのだけのものにしておくなんてもったいないって思って!」
「それに、お店を開けばもっと探偵事務所の存在を多くの人に知ってもらえて、依頼も増えるかなーって思ったんです!」
「確かに、それは賢いな」
テレビの広告なんかと同じで、こういうのは選択肢として頭の片隅に入れてもらうだけで全然違うからな。
ジェット先輩の作るモノ……からくり迷路で使っていたミラールーペってやつとかか。
確かにかわいい見た目をしていたが、探偵道具を売るわけじゃないんだろうし。
「ちなみに、今ポチタンが来てる服もジェット先輩が作ったんだよ?」
「ポチ~♪」
「え、この服を? まじで?」
「はい、まじです。すごくかわいいですよね……!」
来ている衣装を俺に見せるように飛んでくれるポチタンと、それを見て若干顔が溶けかかってるみくる。あんま人前でしていい顔じゃないぞそれ。
にしてもジェット先輩、マジで天才なんだな。衣装を作るのは発明とは別の分野だろうに。
こんなものが作れるなら、コスメショップで売るものも問題なく作れるんだろう。
……うーん、男の目線での意見なぁ。
「コスメショップか……確かに、若い女性が来るお店のイメージあるな」
「そうなんです。でも、ジェット先輩のプリキットの可愛さを広げるためにも、事務所をいろんな人に知ってもらうためにも、できるだけいろんな人に来てほしいんですよね」
「だから、男の人も欲しくなる商品を置けたらいいなって思ったんだ!」
それで俺にも商品を考えてほしいってことか。
さっき自分で言ったイメージ通り、コスメショップに入ろうと思ったことは転生前も含めてなかったからな。
うーん、何かあるだろうか……
性別とか関係なく欲しいって思えるようなもの……
「香水とかはどうだ?」
「香水?」
「ああ。メイク周りは女性の方が需要あるだろうけど、いい匂いのするものは老若男女問わず好きだろうし」
「おお―たしかに! はなまるいいかも!」
「香水か、確かにそれならコスメショップに置くのにもちょうどいいな」
「あ、ジェット先輩!」
そんな話をしていると、奥の部屋からいろいろ抱えてジェット先輩が出てきた。
持っているのはさっき言っていた試作品だろうか。
てか作るのはや。
「なんだかみんな簡素な見た目だけど、これが試作品か?」
「の、前段階だな。これから一気に仕上げするんだ」
「仕上げ?」
ジェット先輩が持ってきた試作品たちを机に広げる。
そして、頭につけていたゴーグルを下げると……
「プリプリ! プリティースマーイル!!」
…………えっ、何今の。
なんかすごいかわいい動きをしたジェット先輩からハートが出てきて、試作品に当たったと思ったらすごいかわいい商品になってるんだけど。
「ああやって、妖精の力をぎゅって詰め込むんだって!」
「私たちのプリキットとかも、ああやって作ってるらしいです」
俺がポカンとした顔をしていたせいか、2人が説明してくれる。
な、なるほど、そういうことか。
情報量が多すぎて一瞬理解できなかったが、あれは妖精の力なんだな。
「あのゴーグルにはなんかあるのか?
あれをする前に付けてたけど」
「ふふ、ヒロさん、あんなと同じこと聞いてる」
「ううん、あれはジェット先輩に可愛いの大切さを教えてくれた、工房の先生のシニアンさんっていう妖精から譲り受けたゴーグルなんだって。
ジェット先輩の宝物!」
「へぇ……」
確かに、かわいいってのはそれだけでプラスだからな。
手に取ろうって思うし、使いたいって思うし。良い先生だったんだろう。
てか、妖精っていろんな種類がいるんだな。
「あれ、そういえばヒロさんってジェット先輩が妖精なの知ってましたっけ?」
「……あー、いや、知らなかった。けどまぁプリキットを作ってるって知ったから普通の男の子だとは思ってなかったしな。すんなり納得できたよ」
ヒヤッとした、急に引っかからないでください名探偵さん。
ジェット先輩がある程度仕上げを済ませたタイミングで、事務所のドアチャイムが鳴り来客を知らせる。
コンコン、とこの部屋のドアがノックされる。
「こんにちは~、カメリアインテリアです。
ご注文の収納ケース、持ってきました!」
「ちほさん! ありがとうございます!
二階の棚の整理に使いたくて」
「じゃあ二階に運んでおけばいい?」
「お願いします!」
入ってきたのはインテリア店の店員さんである前田ちほさん。
お店に必要そうなものはすでに頼んでたのか。
ちほさんに続いて、花や観葉植物を持った店員さんも入ってくる。
「こんにちはー! フラワーショップ花森です!
鉢植えや切り花、いろいろ持ってきました」
「ありがとうございます。
お店に飾ってみて決めていいですか?」
「もちろん!」
フラワーショップ店員の花森もりおさん。
室内にある植物ってそれだけで部屋がきれいに見えるから不思議だよな。
さらに続いて入ってくるのは……あれ。
「ジェットくん、いつものスイーツ持ってきたよ」
「店長! いつもありがとう」
「お礼を言うのはこっちだよ。ジェットくん、うちの常連だから……って、あれ?」
俺が良く行くパティスリー、チュチュの店長である浅井たいらさんがこちらを見て少し驚く。
……なぜに?
「もう一人うちの常連さんがいるなんて思わなかった」
「常連って、ヒロさん?」
「ヒロくん、チュチュの常連さんなの?」
「あ、ああ。確かに良く行くけど……自分のことわかるんですか?」
思わずたいらさんに尋ねてしまう。
確かに良く行くが、そもそもチュチュは人気のお店だ。
俺以外にも常連なんていくらでもいるだろうに。
ジェット先輩はそこそこ目立つ見た目をしているからわかるけども。
「もちろん。君はよくうちで食べていってくれるし、なにより帆羽さんのお気に入りだからね」
「帆羽さん?」
「うちで働いてる青い髪の店員さんのことだよ」
「あぁ、あのかわいい店員さんか。
帆羽さんって言うんですね……お気に入り?」
「え、ヒロさんって女の子にかわいいって言うんだ……!」
「どこで驚いてんだよ」
確かに口に出すことはあんまりないけども。
謎な部分で驚くみくるも気になるけど、今はそれよりもたいらさんの話だ。
帆羽さんのお気に入り……? 俺、あの店員さんとちゃんと話したことは無いはずなんだけど。
最後のお会計の時にお菓子の感想を聞かれたりするくらいで。
しかも毎回おいしかったしか言ってないから多分あんま印象に残ることもなさそうなのに。
「君の名前は?」
「閑鳴ヒロです」
「閑鳴くんね。君、うちに来ると毎回ホットティーと一緒に気分で5種類くらいお菓子を頼んでくれるだろう?」
「そんなに!?」
「甘いものはいくら食べたっていいだろ」
「ヒロさんがジェット先輩みたいなこと言ってる……」
「わかる、わかるぞヒロ……」
驚くあんなとちょっと呆れているみくる。
後ろで頷きまくってるジェット先輩が甘党の同類なのは分かった。
一瞬ほかの常連と俺を勘違いしてるのかもと思ったが、そうではないみたいだ。
「でも、それが何でお気に入りって話に?」
「閑鳴くんが頼むお菓子は、私のよりも帆羽さんの作ったものが多くてね。
すごく幸せそうに食べる君を見るのが楽しいんだそうだよ?」
「は、はぁ……」
食べてるところを見られていたってことだろうか。全然気が付かなかった。
さすがに少し恥ずかしいが、まぁ喜んでくれているのならいい……のか?
実際チュチュでお菓子を食べているときは幸せだし。
他人が自分の作ったものを食べて喜んでくれるのが嬉しいという気持ちはよくわかる。
「そういうことなら、たいらさんからいつも美味しいお菓子をありがとうとお伝えください。
もちろん、たいらさんもありがとうございます」
「ありがとう。帆羽さんにも伝えておくよ。
またうちでも食べて行ってね。
……おっと、話が盛り上がってしまったね。
ジェットくん、このケーキはどうすればいいかな?」
「あ、そうだった。
今お金取ってくるからちょっと待っててくれ!」
「おっけー。じゃあ冷蔵庫に入れておくね」
そう言って冷蔵庫のある奥の方へケーキを持って歩いていくたいらさん。
……冷蔵庫の位置がわかるってことは本当にしょっちゅう頼んでるんだろうな、ジェット先輩。
「わっ……! っとっと……!」
財布を持ってすぐに戻ってきたジェット先輩が躓いてしまい、財布の中から小銭がこぼれ落ちてそこら中に散らばってしまう。
「あちゃー、やっちゃった」
「拾うの手伝うよ」
「「私も!」」
「サンキュ、3人とも」
拾うのに邪魔だと思ったのか、頭のゴーグルを外して机の上に置いたジェット先輩と、俺とみくるとあんなの3人で散らばった小銭を拾っていく。
ソファーの下とかにも結構入っちゃってるな……
ここら辺は多少だけど手の長い俺がやっとくか。
「ヒロ、大丈夫か?」
「ああ、多分届くと思う……ほい。
こっちはこれで全部かな」
「はい、ジェット先輩!」
「こっちも全部集められたよ!」
「……ポチ!」
「ポチタン、どうした?」
全員が小銭を拾い終わり、改めて財布に入れ直したところで、ポチタンが何かに反応する。
「ありがとな、助かっ……わぁぁぁぁ!?」
その瞬間、ジェット先輩が大声を出す。
その大声を聞いて、ちほさんと花森さん、たいらさんが部屋に戻ってくる。
「ない!! ない、ない!!」
「どうしたんですか!?」
大慌てのジェット先輩。
机を見て慌てたってことは……
「もしかして、ゴーグルか?」
「そう、ゴーグルがない! 確かにここに置いたのに!!」
「俺もさっきここにジェット先輩が置いてたのは見たぞ」
となれば、考えられるのは誰かが盗っていったということ。
俺たちが落とした小銭を拾っているうちに……?
すぐそこのはずなのにまったく気が付かなかった。
……さっきの2人の話によれば、あのゴーグルはジェット先輩の大切なものだ。
そして、普通の人からすればほかの人が使い古しているゴーグルを盗みたいとはあまりならない。
つまり、これは怪盗団ファントムの仕業である可能性が高い。
……他人の大切なものが盗られるっていうのは、当たり前だがあまりいい気分じゃないな。
前回は桜で個人の所有物じゃないから気が付かなかったが。
だが、ここには名探偵がいる。
「私たちに任せて!」
「オープン! プリキットミラールーペ!」
「ミラールーペがあれば、どんな手掛かりだって見つけちゃう!」
そう言って、あんなとみくるがミラールーペを持って床を探す。
だが、ここで前みたいに足跡を探しても……
「足跡がいっぱい……」
「私たちの足跡は消して!」
「はなまる発見! 足跡は3つ!」
え、音声認識マジ? ていうか任意の足跡消すなんてできるのかよ。
俺今後何回ジェット先輩の天才さに驚くことになるんだろう。
「3つの足跡は、ちほさん、花森さん、たいらさんのもの……」
「ポチタンが反応していたのは、ジェット先輩のゴーグル?」
「ポチポチ!」
たいらさんたちには見えない場所でうんうん、と頷くポチタン。
どうやらポチタンは人の大切なものが盗まれるとそれは察知できるらしい。
マコトジュエルがあるとわかるんだろうか。
「ゴーグルはファントムが盗っていったと思ったが、足跡は3人なのか」
「多分、3人のうちの誰かに変装してるんだと思う」
「そういや、変装して盗んでくるやつもいるんだったか」
「はい。なので、犯人は3人のうちの誰かでいいと思います」
みくるが手帖とペンを取り出しそれぞれに聞き込みを開始する。
「ご注文いただいた収納ケースを置いて、それから店内を見て回りながらインテリアのアイデアを考えていました」
と言うちほさん。
「ケーキを探偵事務所の冷蔵庫まで入れに行ってました」
と言うたいらさん。
「持ってきた花を2階に運ぼうと階段を上っていたら、声が聞こえたからあわてて戻って来たんだ」
と言う花森さん。
「3人の言っていることにおかしい部分は特にないな」
「そうですね……」
「いったい誰が……」
頭を悩ませるあんなとみくる。
ちほさんが2階の部屋にいたとき、花森さんはまだ階段。
たいらさんは冷蔵庫のほう。全員ちゃんとお互いが見えない位置にいたということだ。
ただ……
「たいらさんは、今回ファントムの変装じゃないと思う」
「どうしてそう思うんですか?」
不思議そうに聞いてくるみくる。
あんなもジェット先輩も疑問を持った顔でこちらを見ている。
「たいらさんはさっき、俺とジェット先輩のことをお店の常連だって言ってただろ?
それに、俺の普段の注文の仕方も覚えてた。
さすがに変装したファントムにはそこまでわからないはずだし」
「なるほど、確かにそうだな」
「本当だ、たしかに!」
「じゃあ、ファントムはちほさんか花森さんということですね……!
さすがヒロさん!」
「ね? ジェット先輩、ヒロくんすごいでしょ?」
「ああ。やるな、ヒロ。天才の僕が褒めてやる」
今のでそんな褒めんでも。
別に犯人を言い当てたわけでもないんだが……。
すると、急にあんなのお腹から出たキュウ~というかわいらしい音が部屋に響く。
いや、正確にはあんなのお腹の位置にいる悲しそうな顔のポチタンからだが。
……ポチタンってお腹すくんだ。
「ポチ……」
「えっ、今ポチって……!」
「ポーチが喋った!?」
あ、やっべ。今度はポチタンが見える位置だったか。
当然驚いているちほさんとたいらさんと……あ?
「き、気のせいだよ!?」
「私のお腹の虫です! ポチポチお腹すいちゃったな~……」
挙手して気合いでごまかすみくる。それぼちぼちな。
いや、それよりもだ。
「あはは、元気なお腹の虫ですね」
と、平然と笑う花森さん。
その瞬間、あんなとみくるも気付いたらしい。
3人で顔を見合わせる。
「見えた……!」
「これが……!」
「答えだな」
今の反応は明らかに不自然だったからな。
「犯人は……」
「あの人だ!」
読んでくださってありがとうございます。
サブタイトルを考えるのが下手ですぐこの書き方になってしまう。
『○○と○○と○○』の書き方便利すぎますね。
多分これからも擦ります。
第8話ならそんなに長くかからないだろうと思っていたんですが、それでも3話はかかりそうですね。
まぁ、本編の1話分を3話で書くのはちょうどいいんじゃないでしょうか?
今後の話がこれと同じ感じに書けるかは分かりませんが。
感想をくださっている方も、ありがとうございます。
引き続きこの作品を飽きるまで、もしくは肌に合う間だけでも楽しんでくだされば幸いです。
それではまた次のお話で。