アノフタルモスの魔眼使い   作:木原 無二

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続けてどうぞ


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個人的には3だ。人は自分とは違うモノとは距離を取りたい生き物だ。恐らく素通りできるだろうし、何よりそのまま学校に行ける。

 

もうすでに、無常の頭の中から学校に行くのが億劫だという考えは消え去っていた。

頭を釘バットで殴られたかのような衝撃を味わったのだ。そんな感想はホームランボールのように明後日の方角へと打ち上げられていた。

 

まぁ、仮に家の中に入って誰かに“玄関前にパンツを見せながら逆立ちをしている女の子がいる”とでも言えば、次の日には障碍者手帳の階級が2階級特進するのは間違いない。つまり、この状況を解決するには一人でなんとかするしかないのだ。

 

無常は白杖をしっかりと持ち、前へと歩き始めた。

女の子の横をぶつからないように通り抜ける。

 

「あ、あの!私パンツ履いてて…」

「…」

(祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。驕れる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き者も遂には滅びぬ、偏に風の前の塵に同じぃ!!)

 

心を落ち着かせる方法として、瞑想や自己への問いかけ、大きな数字から小さな数字を引く引き算や素数を数えるといった精神的集中を手助けする方法は沢山ある。所謂、ルーティン動作と言われるものだが、無常仮寝のルーティン動作は、古文を唱える事だった。彼自身が様々な物語が好きというのもあり、中学生になった時には既にこの方法が身についていた。

 

そうパンツだ。

パンツなのだ。

彼だって今を生きる男子高校生。今のこの状況は無常の精神を大きく揺さぶっていた。

(この女の子、なんでこんなにも俺に…?)

 

そう。別に嫌じゃない。パンツを見せられるのは、別にいやじゃない。

ただ、こういう痴女は違う。そう無常は思っていた。

 

「あ、あの!とりあえず話を聞いてください!お願いします!本当に、お願いします!」

少女の切羽詰まった声に無常の身体が止まった。

 

別に、彼女が虐められてこういう行為をしているから助けたいと思った訳じゃあない。

見(・)た(・)感(・)じ(・)、そんな気配はなかった。まぁ、厄(・)介(・)事(・)の匂いはプンプンするが。右手の少し離れた所に3台の車が止まった。大きい車だ。

車に乗っているのは、3台合わせて12人。その内4人は拳銃を所持しているな。

…会話内容は、コイツの捕獲に関する事か。理由はわからんが、このパンツ少女を大の大人12人が追っているのは間違いないらしい。

 

(物騒な世の中になったモノだな。)

 

勿論、ここ日本は世界でも有数の治安が良い国だ。銃だって、警察官や自衛隊しか持っていないはずだ。

 

「…話って?」

だが、結局の所、彼が無視する事は出来なかった。

彼女を助けたい、救ってやりたい、なんとかしてやりたい、という訳でもない。

ただ、ここで見捨てたら一生この事が身に沁みつく。だから聞いた。

 

逆立ちをしたままだった彼女が地面から手を放し、しっかりと二足歩行で地面へと足を付けた。

「…話の前にですが、私は今、理由は言えませんが、追われています。それでも、聞きますか?」

「…まぁ。聞くだけならただ(無料)だからな。」

 

彼女は荷物を下ろすかのように息を吐いた。

 

「まずは、何で逆立ちしてパンツの事を紹介したのかを…」

「私の名前は小日向歌恋(こひなたかれん)。小さいに日本の日に方向の向。そして、歌い手の歌に、命短し恋せよ乙女の恋だ。よろしくな!」

 

小日向歌恋と名乗った不審者はフランクに敬礼をしながら事故紹介をした。

 

「何が、命短し恋せよ乙女の恋、だ。乙女は初対面の男の子に向かって自分のパンツを紹介しないんだよ!」

「仕方ないじゃん!こうしないといけないんだから!理由は言えないんだけど、とりあえず私は人にパンツを見せびらかす女の子じゃないって事は本当にわかって欲しいです!節に願います!」

「意味わかんねーわ!」

「あ、ちなみに立ち話はなんなんで、家の中に入れて貰う事って可能ですか?」

「あーもう滅茶苦茶だよこの女。」

 

海外でやばい女をカレンと呼ぶらしいが、彼女もその類の人間かも知れない。

いや、流石にカレンに失礼か、それは。新しく1段階上の“小日向”って言う名前で作るべきだろう。

 

そのまま、押し込んで来るように小日向歌恋は無常の身体を押しながら玄関から家に入ろうとした。

「ちょちょちょ、ちょっとまっ…!!」

彼女のいきなりの行動に対応出来なかった無常が一歩、二歩と後ろに歩いていく。

その時、彼女が小さく無常の耳で囁いた。

「それに、家の中だと個(・)人(・)的(・)な(・)ロ(・)ボ(・)ッ(・)ト(・)工(・)作(・)の(・)研(・)究(・)に関する事を話せますよ?」

 

その一言に無常仮寝は黙り、そして動かなくなった。

 

沈黙が世界を支配する。

場の空気が1段階下がった。だというのに、小日向歌恋の笑顔は咲いたままだった。

 

5秒か10秒か。

沈黙を破ったのは無常の方だった。

 

「……家、入るか?」

「お饅頭と緑茶をよろしくお願いします。あ、個人的には粒あんが好きでして…」

「悪いが、家(ウチ)はこし餡しかないんだ。嫌なら帰って貰ってもいいんだが?」

「いやいや!こし餡!いいですよね!なんというか、そう!こし餡という名前が!」

「もうお前黙れよ…」

 

こうして、無常仮寝は小日向歌恋を家に入れる事が決まった。

つまり、学校は遅刻確定なのであった。

 

 

 

 

 

 

 

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