「お邪魔しまーす。」
無常の家の中は色々と散らかっていた。
ゴミの類は棄てているようだが、整理整頓がしっかりと出来ていないのは、小日向から見てもよくわかった。
無常が小日向を比較的に片付いているソファに座らせて、話は始まった。
話を切り出したのは、この家の家主である無常だった。
「で、個人的なロボット工作の研究って何の話だ?ドローンとか何かか?」
「その前にですが、私の話をしてもいいですか?」
「さっきからお前の話ばっかりじゃねぇか。」
無常は顔を顰め足を組み、上に乗せた右脚の太ももに肘をかけて掌に頭を乗せた。
早く彼女の言い分が聞きたかった。苛立ちや危機感よりも好奇心を優先させたのだ。
「まず、私は『占見眼』を持つ
「…ほぉ…なるほど、だからか。」
魔眼。
人間が2つに分けられるのであれば、それは人種や性別ではない。
有史以前から、その存在は確認されており、その能力も魔眼によって異なる。
言わば、超能力者、魔術師、
そして、魔眼に関する研究は世界各地の
そして、その研究でわかった事なのだが、どうやら過去の偉人達もこういった魔眼を所持していたと言われているのだ。
(『占見眼』か。歴史の授業で習ったよな?確か、邪馬台国の卑弥呼が持っていた魔眼だったはず…)
彼女の目と目を合わせる。
澄んだ黒目に白目。綺麗な目だ。数秒も目を合わせると、小日向は目を逸らした。
「…普通、
「致死性のある魔眼なら合わせないけど、『占見眼』だろ?確か安全な魔眼だったはずだ。」
『占見眼』
その名前の通り、先を見通す魔眼だ。
無常が学んだ歴史の授業では、卑弥呼はこの力を持って邪馬台国を治めた日本最古の
「まぁ確かに安全です。はい。」
「じゃあ何故、追われているんだ?」
危険性がある魔眼なら、国からの指導の下でしっかりと制御が出来るように管理官が派遣されるはずだ。場合によっては、
あんまり詳しくは知らないが、以前ニュース番組で
(ま、メディアの一面性だからあんまりよくはわからないけどな。)
彼女は少し黙ってから答えた。
「…それが、“眼”で見てみても答えが曖昧でよくわからなくて…」
「曖昧?」
「はい、『答えを知る為。』それが、追われている理由らしくて。」
「?答え?なんの?」
「わからないです。何度聞いてもこれで。一応、私の目について軽く説明しておきますね。」
こうして、小日向の『占見眼』に対する魔眼解説が始まった。
その説明を聞いている間も、無常は外の様子を
「私の魔眼、『占見眼』は聞いた事に対して答えややり方を教えてくれる魔眼です。明日の天気やテストの答えなども百発百中で教えてくれます!」
「おい。」
「えへへ…」
小日向が出来損ないな口笛を吹きながら、明後日の方向を向く。
人がテスト勉強で中間や期末でゼイゼイハアハアと勉強している(夏休みの課題終わっていないが)のに、なんてチートをしているのだコイツは…!
「いやーそれは
「バレなきゃ犯罪じゃないんですよ?」
「バレてんだよ。それで追われてんだよ…まて、まさか、国に魔眼に関する申請をしていないのか…?」
小日向の顔が強張った。足をもじもじとしながら右手をほっぺたに当てて軽く掻く。
こいつは真っ黒だ。わからせなきゃ…!
と、内心無常はふざけてみるが、実際ヤバい事には間違いなかった。
日本において、
報告を怠れば、強制的に
(やっぱり頭おかしいわコイツ。)
だが、無常の口の口角は上がっていた。
無意識かどうかはわからない。
「なるほどな。そりゃ追われる訳だ。…で、どうしたいんだ?俺にこうやって追われている最中にパンツ見せながら迫ってきたのは何か用があったからだろ?」
もうすでに無常の頭の中ではある程度の道筋が立っていた。
(最初に初対面であんな行動に出たのは『占見眼』で助かる方法を知った上での行動だった、か。確かに好奇心旺盛な俺なら話を聞くために家に招くな。…だが、なぜ『占見眼』は俺を指し示した?)
そこがどうしてもわからなかった。
無常仮寝は目が見えない。全盲だ。
なんなら、
生まれつき無く、アノフタルモスと言われているらしい。
この魔眼の有無で人生が良くも悪くも決まる社会で、何故自分が『占見眼』によって選ばれたのか、そこがよくわからなかった。
「はい、そうです。取引をしに来ました。」
「…出せるもんなんて何もないぞ?お金だって常に金欠だし、そこまでの余裕はないよ?」
「残念ですが、お金も欲しいです。私が出す対価として
「…自信満々だな。で、内容は?」
小日向が唾液を呑み込む。
彼女の今日は散々だった。朝から家に色んな大人が雪崩れ込んで来て、そこから逃げて、家族を置いて逃げて、友達を置いて逃げて、全てを置いて逃げて。
『占見眼』がなかったら、もうすでに捕まっている。そんな逃走劇だった。
正しく、幸運の連続。神の祝福によって逃げられたであろう
そう。
いくら『占見眼』を駆使しようが、ここから先は自分次第だ。
「貴方が魔眼を扱えるようになる方法と、貴方が制作している義眼の完成方法。この二つを対価に、私が国外に逃亡出来るように手助けしていただきたいのです。」