アノフタルモスの魔眼使い   作:木原 無二

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「お邪魔しまーす。」

 

無常の家の中は色々と散らかっていた。

ゴミの類は棄てているようだが、整理整頓がしっかりと出来ていないのは、小日向から見てもよくわかった。

 

無常が小日向を比較的に片付いているソファに座らせて、話は始まった。

話を切り出したのは、この家の家主である無常だった。

 

「で、個人的なロボット工作の研究って何の話だ?ドローンとか何かか?」

「その前にですが、私の話をしてもいいですか?」

「さっきからお前の話ばっかりじゃねぇか。」

 

無常は顔を顰め足を組み、上に乗せた右脚の太ももに肘をかけて掌に頭を乗せた。

早く彼女の言い分が聞きたかった。苛立ちや危機感よりも好奇心を優先させたのだ。

 

「まず、私は『占見眼』を持つ魔眼所有者(能力者)です。」

「…ほぉ…なるほど、だからか。」

 

魔眼。

人間が2つに分けられるのであれば、それは人種や性別ではない。

魔眼所有者(能力者)か、非凡な人間か。その2種だ。

 

魔眼所有者(能力者)は文字通り生まれつき魔眼を生まれつき所持しており、行使する人の事を指し、9000人から1万人に1人の割合で魔眼所有者(能力者)は存在している。

有史以前から、その存在は確認されており、その能力も魔眼によって異なる。

 

言わば、超能力者、魔術師、呪術師(シャーマン)と世界各地で呼ばれており、近代になって隠秘学術院(ディダスカリア)によって魔眼所有者(能力者)と正式名称を制定された。

 

そして、魔眼に関する研究は世界各地の魔眼保全機関(エイワス)や世界三大宗教や古代から現存する宗教が力を合わせて創られた隠秘学術院(ディダスカリア)などが執り行っている。

 

そして、その研究でわかった事なのだが、どうやら過去の偉人達もこういった魔眼を所持していたと言われているのだ。

(『占見眼』か。歴史の授業で習ったよな?確か、邪馬台国の卑弥呼が持っていた魔眼だったはず…)

 

彼女の目と目を合わせる。

澄んだ黒目に白目。綺麗な目だ。数秒も目を合わせると、小日向は目を逸らした。

 

「…普通、魔眼所有者(能力者)とは目を合わせないもんですよ…?」

「致死性のある魔眼なら合わせないけど、『占見眼』だろ?確か安全な魔眼だったはずだ。」

 

『占見眼』

その名前の通り、先を見通す魔眼だ。

無常が学んだ歴史の授業では、卑弥呼はこの力を持って邪馬台国を治めた日本最古の魔眼所有者(能力者)の女王だと呼ばれていたはずだ。

 

「まぁ確かに安全です。はい。」

「じゃあ何故、追われているんだ?」

 

危険性がある魔眼なら、国からの指導の下でしっかりと制御が出来るように管理官が派遣されるはずだ。場合によっては、魔眼保全機関(エイワス)、最悪隠秘学術院(ディダスカリア)が来るらしい。

あんまり詳しくは知らないが、以前ニュース番組で隠秘学術院(ディダスカリア)が魔眼所有者(能力者)の対応中に殺害したというニュースを見た事がある。

(ま、メディアの一面性だからあんまりよくはわからないけどな。)

 

彼女は少し黙ってから答えた。

 

「…それが、“眼”で見てみても答えが曖昧でよくわからなくて…」

「曖昧?」

「はい、『答えを知る為。』それが、追われている理由らしくて。」

「?答え?なんの?」

「わからないです。何度聞いてもこれで。一応、私の目について軽く説明しておきますね。」

 

こうして、小日向の『占見眼』に対する魔眼解説が始まった。

その説明を聞いている間も、無常は外の様子を見(・)た(・)が、不審な人物がこの家に入ってくる気配はなかった。いや、もう既に自分で招いてはいる訳だが。

 

「私の魔眼、『占見眼』は聞いた事に対して答えややり方を教えてくれる魔眼です。明日の天気やテストの答えなども百発百中で教えてくれます!」

「おい。」

「えへへ…」

小日向が出来損ないな口笛を吹きながら、明後日の方向を向く。

人がテスト勉強で中間や期末でゼイゼイハアハアと勉強している(夏休みの課題終わっていないが)のに、なんてチートをしているのだコイツは…!

 

「いやーそれはアウトでしょ(ギルティ)?」

「バレなきゃ犯罪じゃないんですよ?」

「バレてんだよ。それで追われてんだよ…まて、まさか、国に魔眼に関する申請をしていないのか…?」

 

小日向の顔が強張った。足をもじもじとしながら右手をほっぺたに当てて軽く掻く。

こいつは真っ黒だ。わからせなきゃ…!

と、内心無常はふざけてみるが、実際ヤバい事には間違いなかった。

 

日本において、魔眼所有者(能力者)は国にその事を報告しなければならない。

報告を怠れば、強制的に魔眼所有者(能力者)専用のブタ箱にぶち込まれるのだ。

 

(やっぱり頭おかしいわコイツ。)

 

だが、無常の口の口角は上がっていた。

無意識かどうかはわからない。

 

「なるほどな。そりゃ追われる訳だ。…で、どうしたいんだ?俺にこうやって追われている最中にパンツ見せながら迫ってきたのは何か用があったからだろ?」

 

もうすでに無常の頭の中ではある程度の道筋が立っていた。

(最初に初対面であんな行動に出たのは『占見眼』で助かる方法を知った上での行動だった、か。確かに好奇心旺盛な俺なら話を聞くために家に招くな。…だが、なぜ『占見眼』は俺を指し示した?)

 

そこがどうしてもわからなかった。

無常仮寝は目が見えない。全盲だ。

なんなら、眼(・)球(・)すらない。

生まれつき無く、アノフタルモスと言われているらしい。

この魔眼の有無で人生が良くも悪くも決まる社会で、何故自分が『占見眼』によって選ばれたのか、そこがよくわからなかった。

 

「はい、そうです。取引をしに来ました。」

「…出せるもんなんて何もないぞ?お金だって常に金欠だし、そこまでの余裕はないよ?」

「残念ですが、お金も欲しいです。私が出す対価としてお(・)つ(・)り(・)は貰えると思うので!」

「…自信満々だな。で、内容は?」

 

小日向が唾液を呑み込む。

彼女の今日は散々だった。朝から家に色んな大人が雪崩れ込んで来て、そこから逃げて、家族を置いて逃げて、友達を置いて逃げて、全てを置いて逃げて。

『占見眼』がなかったら、もうすでに捕まっている。そんな逃走劇だった。

正しく、幸運の連続。神の祝福によって逃げられたであろう闘(・)争(・)劇であった。

 

そう。本(・)番(・)は(・)こ(・)こ(・)か(・)ら(・)。

いくら『占見眼』を駆使しようが、ここから先は自分次第だ。

 

「貴方が魔眼を扱えるようになる方法と、貴方が制作している義眼の完成方法。この二つを対価に、私が国外に逃亡出来るように手助けしていただきたいのです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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