小日向から完全な義眼の作り方を聞き終えて満足した無常は2階の屋根裏に隠して置いていた現金を取りに行っていた。
別に渡す必要はないのだが、前払いとして義眼の完成方法を教えて貰ったのだ。
そして、無常はそのやり方に心を動かされ、自分なりに決めた
そんな無常の頭の中では既に、これからどうやって作っていこうかという考えと、小日向を助けてからの生活の事を考えていた。
彼女の国外逃亡を手助けするとなれば、いくつかの犯罪を犯す事になるだろう。
だが、そんな事は無常にとってはどうでも良かった。
重要なのは、環境が変わる事だった。
(学校はともかく、義眼の完成はさせたいな!…というか、一瞬でも早くやってみたい!!)
小日向から教えて貰った
彼女の話を聞いている途中、”え!じゃあカーボンファイバーで代用したらどうなの!”や“それって
何度、彼女から話を最後まで聞いてくださいや、追われているからそんな時間無いと
小日向は「貴方が魔眼を扱えるようになる方法も後で教える」と無常に言った。
元々、目が見えるようになるために作ろうとしていた
最後までやり遂げたい。
そんな考えが無常にはあった。
(場合によっては、この家には帰ってこれないかも知れないし…重要なモノだけ持って行っとくか。)
無常は財布、携帯、研究データの入ったUSBメモリなどをリュックサックに入れていく。
持ち物を出来るだけ少なくするために、軽く、かさばらないものだけを厳選し、荷物に入れた。
荷物を入れ終わると、無常は2階から降りて1階にいる小日向の元に向かって降りた。
1階のリビングのソファの上でこじんまりと丸まりながら、勝手につけたであろうテレビ番組でお昼のニュースを見ていた。
色々とモノが散らかっている無常の家だが、別に汚いという訳じゃあない。
ただ片づけられないだけなのだ。
「よーし、俺は行けるぞ。そっちは?」
「…ちょっとだけ、待ってもらっても良いですか?」
小日向はそう返事をすると、目を瞑った。
まるで、瞑想をしているかのように黙っていたので、無常はこれからどうやって彼女を逃がすかと考えた。
先ほど、義眼の作り方を聞く前に“何故、追われているのか”について聞いた訳だが、その理由や誰に追われているのかについてはよくわからないという話になった訳だが。
無常には、それが違和感に感じていた。
(小日向の『占見眼』は明日の天気やテストの答えなども教えてくれるという、情報系の魔眼の中でもトップクラスの魔眼だというのに、追われている理由や相手がわからないなんて事、あるのか?)
小日向の魔眼『占見眼』の具体的な能力として、既に人類が分かっている事と、今までの結果による暫定的な占いみたいな未来予知が出来る。
故に、追われている理由や相手がわからないなんて事はおかしかった。
なにせ、それらは全て人が介入する事なので、既に人類がわかっている事に分類されるはずだ。
(なにかが、おかしい?)
一旦、彼女の目だけを頼るのではなく、自分の
「…おかしいです。この時間帯は…」
無常から見て、小日向は焦っているように見えた。
これはおかしい。
暫定的に未来が見える相手が焦るだろうか?
いや、そもそも、
無常は小日向に尋ねてみる事にした。
「なにか、おかしいのか?」
「はい、この時間帯なら、
「…」
(今日、朝早く起きれた理由はこれだったのか。)
無常は世界ってやっぱり繋がっているんだなぁ~とノスタルジックな気分に耽ってしまいそうになったが、すぐに立て直した。
「って事は予測が外れたって事か。よくある事なのか?」
「…たまに、あります。まぁ、そのたまたまが当たったのでしょう。」
小日向はそう言いなんともない顔をしたが、無常にはその考えが引っかかっていた。
そんな偶然、こんなタイミングであるのか、と。
(というより、朝にあった不発弾の爆発がニュースで流れないのって流石におかしくないか?)
手元にあったスマホで検索をかけてみるが、関連する情報は一件も上がらなかった。
この疑念は無視していいモノではない、と無常の勘が言っていた。
だが、今この場で打つ手がないのも事実だった。
諦観や先延ばしは弱点となる。
いつか来るその時に考え直すかもしれない。
だが、時間は彼らにとって味方だろうか。
「まず、小日向が爆発させた不発弾によって、今頃ニュースで取り扱うだろうという未来が見えた訳だな?」
「はい。ですが、未来の事象なので確定している訳じゃなくて、暫定的な、IFとかパラレルワールドとか、そんな未来が観測可能なのが私の魔眼で、その魔眼が見た未来が外れた、という訳です。…一応、他の世界線でもあのニュースをやらない可能性はほんの僅かですが、ありましたけど…」
「なるほどね…ちなみに、他の世界線だとどういう理由でニュースをやらないの?」
無常はとりあえず他の世界線と今の自分達がいる世界線との差異を考えてみる事にした。
「えっと、参考にはならないと思うんですけど、あのニュースをやらない世界線だと、私自身が諦めて投降して捕まっている世界線なんですよ。ですので、関係ないです。
「…ちなみに、捕まった世界線だと、その後小日向はどうなるんだ?」
「残念ですが、私の魔眼は未来を知る際には“良し”、“悪し”、“これをやるべし”といった感じなんです。ですので、結末を知るためには時間が進むしかないです。…ですが、占い結果としては…『悪し』…です。」
良し、悪し、
これはおみくじや占いでよく使う言葉だ。
(流石は、邪馬台国の女王の魔眼か。内容まで占術になってやがる。)
「じゃあ、さっき言ってた誰に追われているとか、理由とかわからない訳は、どんな感じなんだ?」
「いつもなら、人類にわかっている事はすぐに答えが分かります。…ですが、今回は、濁された?曖昧?霧が様な感じで明確な答えはわかってないです。」
「いままで、そんな事はあった?」
小日向は右手を顎に当てて思い出すように言った。
「例えば…トロッコ問題を聞いたときには明確な答えが出ませんでした。人によって答えがかわる…みたいな?そんな答えには全ての答えを出してきます。」
「…情報量で頭痛くならない?」
「場合によっては鼻血を出しながら気絶するらしいですね。350年前にこの目を持っていた人はそれで3回倒れています。」
「簡単に自滅しそうな性能だよな。したことは?」
「小学生の時に10回は倒れました。端数は気にしない女なんですよ、私。」
「その端数は絶対にした方がいいって…!」
なんか、卑弥呼も倒れてそうだよな。
というか、これ先に聞いといてよかったかも。
「なぁ、これから逃げる訳だが、…この先それで気絶する事はありそう?」
「…私の事、担ぎながら逃げれます?」
「…」
(前途多難、か)
敵は不明、理由も不明、味方は一歩間違えたらお荷物。俺は白杖。
異世界系の勇者パーティーだってもっとまともな編成をしているはずだ。
(ま、なんとかするしかない、か。)
無常にここで引くという選択肢はなかった。
一本道しかない電車だ。折り返しに小日向が乗る事は出来ない。
ならば、途中で飛び降りるしかない。
すくなくとも、まだ電車に乗る前だ。
「理由が複数あった場合は、全部の理由がわかる。だが、その理由や追っては不明。…これ、
「!」
小日向は無常の考えを聞いて一考に値すると考えた。
実際、目に関する世界の研究の8割は
この2つの組織に認められない研究機関、研究者は目に関する研究をしてはいけない。そう国際法で決められている。
「
「…確かに。じゃあ、それが魔眼でわからない訳は?」
「…正確な答えはわかんねえよ。けど、世界で一番魔眼の研究をしている組織なら、小日向の『占見眼』みたいな情報系魔眼への対応策を1つや2つ持っていてもおかしくはないと思うけど。ま、証拠もなにもないし、全部推論しかないけど。」
「
無常と小日向との会話はここで途切れた。予め聞いておきたい事は大体聞けたからだ。
(…ここら辺りが推論の限界点か。これ以上は、妄想や希望の領域に入ってしますな。)
疑念への問いは途切れる事はないが、そろそろ締め切らなくてはいけなかった。
無常は思わず笑ってしまった。
小日向はそれを見て、
(お互いに、頑張ろうか。)
無常はカーテンで完全に仕切られた窓を
「時間もない、そろそろ鬼ごっこの時間だ。
「
無常は魔眼を扱えるようになる方法を知るために手を貸した。
だが
無常には全てを言ってはいなかったが、
『悪し』『悪し』『悪し』『狂なり』『凶なり』『大凶なり』『自害すべし』『希望持つ勿れ』『終わりの時来たれり』『自害せよ』『悪し』『悪し』『悪し』『狂なり』『凶なり』『大凶なり』『自害すべし』『希望持つ勿れ』『終わりの時来たれり』『自害せよ』
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