転生したらロボだった件。
そして目の前は無限に広がる宇宙だ。
待て待て帰らないでブラウザバックは気が早い。
チープなのは認めるけど誰かに聞いてもらえないと俺の自我がおかしくなるから、ここは助けると思って聞いていってくれ。
よし、聞いてくれるんだな?
おほん、なら話そう、始めから話すからな。
俺の
転生前は普通の学生で、主にロボ物を片っ端から摂取していた。
ダイナミックな奴から、歌で銀河救う奴から、ニュータイプな奴から、最低野郎から、ほぼ網羅していくように見ていたオタクだ、スパロ◯はバイブル。
特に好きなのはター◯∀、やはり良いだろあの丸っとしてかつ威厳のある感じ、可愛げない兵器が搭載されてるのはうん……ね?
趣味がおっさん臭いとか言うな、オヤジの英才教育だよ。
そんな俺は、新作スパ◯ボを買いに向かった道中、事故にあって死んだ。
それを哀れに思ったドワォな神様が俺を何処とも分からない世界へ転生させてくれたのだ、だがタダで転生させてくれた訳でもなくて。
──その世界の最強の力を持ってして、お前の懸想を本物にしてこい
と、言われた。
つまり、お前を最強ロボにするから世界救ってこいってことだ。
パイロット通り越してロボになるのはまぁドワォの神様だからいいか。
俺の転生はただの転生ではなく世界のための転生だと言うことで、緊張するし困るし悩む、だけど、俺にはそれ以上のロマンと理想がある。
憧れのヒーローに肩を並べるチャンスなんだ、ゲッ……も、マジン……も、ガ……ダムも、俺は好きだ、なぜ好きかと言われればそれは強くてカッコいいからだ。
強くてカッコいいは正義、つまり誰にも負けない力だ!
そんな決心がついた所で話は終わる。
ここから今の話をしよう。
今の俺はロボオタ人間じゃなくてロボオタロボなのである、そしてこの世界最強の機体である。
『レガリアクラウンMkX』
何がどう最強なのか、俺は俺であるが故にそのスペックを全て把握出来る、順に並べて開示しよう、ロボヲタの人ってこういうのが好きなんでしょ!
全長 150m
重量 15000トン
動力 アンチマターディメンションコア
武装 無
機能 ディメンショングラップ、自己再生、全領域センサ、破壊不能領域、慣性制御
なにこれ? 思ったより語ることなかった。
まず全長、これは大きいとも小さともいえる、ガン◯スターより小さいし、イ◯オンより大きい。
重量に関してはなんでここまで重いのか分からないくらい重い、宇宙空間専用なのかね。
動力が一番謎だが、アンチマターディメンション、反物質次元……よし、エネルギーはほぼ無限だってことか(思考停止)。
そして武装、なし、ないもんはない。
機能はやっぱり最強らしく、壊れても安心自己再生、どこでも見える全領域センサ、破壊不能領域はシステムの中枢を守る機能だ、仮に全身ボロボロにされて動力までミンチになりそうならこれが発動して安全地帯を作るらしい、慣性制御は重力下で重量を無視するために使うみたい、なら最初から軽くしろよ、異次元兵器がある世界でも質量はパワーなのか。
そして気になる『ディメンション・グラップ』とは。
読んで字の通り、次元掴み、次元投げが可能になるらしい、説明書曰く超弦理論で言うところの細長い次元をつかめるらしい、異次元綱引きでもしようとしてたのかな、これ作ったやつ。
さて、皆さま一番気になっているであろう外見を最後に回したのは意図的です、説明が難しいからね。
シルエットは細く華奢なボディだが、手足は割と太く、胴体に近い部位ほど細い、手は特に掴むことを意識しているのか鉤爪のようになっている、頭部が一番特徴的で大きな王冠を被る頭のその上にリングを天使の輪のように浮かせている。
背部は何もない、スラスターの類もなにも、代わりには肩部からアーマー付きマントがひらめく。
このデザイン、ちょっと永◯護っぽい、ナ◯トオブゴールドとかそっち系、結局俺の語彙じゃ説明しきれないから各々で最高にカッコいいロボを想像してくれ!
──ピピッ、ピピッ、ピピッ
なんだ、せっかくお披露目の儀式をしているというのに……よく考えたらここ宇宙空間だったな。
これはなんの通信だろう、変な気分だな、機械的な処理を人間の精神でやっているからだろうか。
ともかく届いた通信にチャンネルを合わせて見る。
『こちら〝インペリアルナイツ1番艦アーサー〟! 誰でもいい! 助けてくれ! 〝アウトシング〟共に急襲されている! 〝クイーン〟も混ざってる! 助けてくれ! 頼む!』
若い男の声、必死に助けを求めてる、なるほどなるほど、世界観はまだわかんねぇが困ってるし死にそうになってる。
「さーて、ヒーロー活動しましょうか!」
宇宙空間に響くはずのない声をスピーカーから出力してから、手に取るように使い方がわかるディメンショングラップを起動する。
通信から逆探知した座標軸に向けて手を伸ばし、紐をぐいっと引くように空間をつかむ、するとそこに穴が空く、ワームホールだ。
「すげぇな、マジで」
穴の向こうには、数えるのも嫌になるほどおびただしい数の羽根の生えた虫と甲殻類の合体した姿を持つ異形の存在がいた、アレをアウトシングと呼んでいたのでそれに習おう。
アウトシング共は、一部大きな個体に従って、戦艦らしき宇宙船に襲いかかっている、その戦艦もビーム砲をバンバン撃ち込んでるがアウトシングの方が数が多い、状況は改善する様子を見せなかった。
「なるほど、ここでかっこよく登場してアウトシングを一網打尽にすりゃ……一クール一話目の活躍じゃないが、前作主人公的な登場になるかなぁ!」
俺は、未知と未知がせめぎ合う、数の殴り合いへと飛び込んだ!
◆
「終わりだ、何もかも……こんな作戦、通るわけなかった」
俺は誰も口にしなかったことを遂に口にした、だけど、このブリッジにいる奴らはそれに反論することない。
俺は通信士としてこのインペリアルナイツ1番艦アーサーへと乗り込んだ、アウトシングという外宇宙の脅威を滅ぼす為新造されたこの最新艦は現行の宇宙戦艦を大きく超える性能を持つ。
何度かの試験運用を経て、今回初めて単独作戦を決行した、まぁ、浮かれた上層部が目の上のたんこぶを排除しようと焦ったんだ。
それがこのザマだ、ブリッジからも見えるし、レーダーのモニターを見ても分かる、何万の反応がこの船を囲んで叩いている、アウトシングは小さくて数十メートル、大きければ数百キロメートルだ、規模が違いすぎる、アーサーはその一番デカい獲物を落とす為に作られたのにも関わらず、二番目にデカい〝クイーン〟と、その子機である〝アーミー〟に翻弄されている。
──3番砲塔大破
機械音声が告げる、無人化して久しい兵器類はこうして報告が来る、その言葉に四苦八苦する人間に気を回してくれはしない。
「くっ……右舷が薄いか、ロザリー! 4番、5番でカバー出来るか!」
「今やってます!」
「ノア艦長! 後方から高エネルギー反応!
「ええい! まだ来るというのか! ロイ! 規模は幾つだ!」
火器担当のロザリーと艦長のノア、索敵担当の俺でこの船を今、なんとか持たせている。
もうお腹いっぱいな所に更に奴らがワープしてくる、この船は相当呪われているなんて軽く愚痴りながら、手元の装置を操作して後方のエネルギー反応を詳しく見る。
「……な、嘘だろ……」
「どうしたロイ、報告しろ!」
言っていいのか、これ、言わないほうが、いや、だが……。
「ロイ!」
「……〝キング〟の100倍、いいや、推定数千倍の次元波形……空間の繋がりがおかしくなってる……まるで穴だ、空間に穴を無理やり空けて化け物が出てくるみたいだ……アイツだ……」
「……冗談はよしてくれ、……冗談……じゃ、ないのか……全く……ついてないな、俺も、お前たちも」
「んなこと言ってないで敵に齧りついてでも生き残るよ!」
ロザリーの激励に、俺と船長はやる気を取り戻す、一番若い彼女には、キング以上と伝えても分からないだろうが、ああ、今はそれでいい。
俺とノアに絶望を植え付けたキング以上の化け物が、ここに来る、俺とノアだけじゃない、銀河に住む全人類に絶望を与えるアウトシングの親玉。
俺の口は恐怖から、その名を口にしていた。
「……〝アウターワン〟」
100億の命を奪った、俺とノアの大事な人を奪った……絶望が。
レーダーを注視する、あの日も俺は観測していた、だから分かるこの反応が次にすることは、空間全体へと侵食すること、アイツは敵も味方もない、全部を壊す、星を喰い殺す。
案の定次元波形が大きくなる、予兆だ、空間は小さく圧縮されて元に戻ろうとする力によってその空間内のモノは全部壊れる。
インペリアルナイツ1番艦アーサー、コイツは呪いの方舟だったらしいな、ま、墓場にしちゃ上等かもな。
目を閉じ、すぐに来るだろう死を思う、クラリス、俺もそっちへと行く。
「な、おい! バカ二人! アレ見てみろ!」
「なっ! バカってなんだバカとは!」
「艦長に向けてバカだと! 軍法会議にかけてやろうか!」
「違うって! あれ! アレ!」
なん…………だと…………!?
「なんだあの兵器は、新銀河連邦の新兵器か!」
「違います! さっきの反応の正体だ、あれが!」
「……ねぇ、正体不明のロボなんだけどさ、こっちに顔向けてない?」
ブリッジから目視できる範囲にいて、確かに頭部をこちらへと向けている、あのアウトシングたちもあれに立ち向かおうとして、なぜか、尻すぼみをしているように見える。
「え? 親指立てた?」
まさか……あ、本当だ。サムズアップでこちらを見てから、鉤爪のような手を無造作に一振する。
──バン
宇宙空間で音がする、破裂音、あのロボが振り抜いた軌跡通りに、アウトシングの群れが裂けている。
あまりの光景にレーダーに目を落とす、事実は覆らなかった。
円形のレーダーを埋め尽くしていた無数の赤点、半径10000キロで探知していたからこそ分かる、画面を塗り潰す勢いだった赤点は真っ直ぐ1本の線を描いている、久しぶりにレーダー画面の緑を見た。
「……艦長、アレは、なんだと思いますか……」
ロボがブリッジから見える範囲から動かずに腕を振る、十字に振る、横に縦に、X字にも振る、ただ振る。
おびただしい数のアウトシングの群れは、残骸の反応一つ残さずにみるみるレーダーから消えていく、まるで消しゴムのように消えていく。
「現実か……これ……俺たちもう死んでるんじゃないか……」
「ロイ、あんたにそんな冗談が言えたことに驚きだよ」
「ロザリー? なんでくつろいでる?」
「アレ見てみてよ、クイーンと殴り合いしてるのよ、数キロメートルの化け物と高々150メートルのロボが……なんか馬鹿らしくなってさ」
いつの間にかレーダーには、大きな赤点一つ、小さい黒点一つが、動いているだけだった。
◆
俺は、強い! この上なく強い!
小さいアウトシングはディメンショングラップで異次元送り、今頃ミンチだろう、AIでいらない映像を消す気分だ。
何度も振って行けば小さいアウトシングは俺のセンサーの届く範囲はゼロだといっている、1光年圏内にはいない。
アウトシングは近くで見ると宇宙空間に順応したせいか黒ばかり、赤とか白とかカラバリがあっても困るけど、3倍早い。
そしてメインとして残しておいた巨大なアウトシング、アレが例のクイーンだろう。
他のアウトシングとは違って、虫だがより哺乳類に近い形状をした姿、クジラとイモムシとクモと……うへキモ、気持ち悪くなる、気持ち悪くなって腹が立つ。
よし、アイツは殴り殺すか。
守りたかった戦艦から飛び出して、慣性制御で宇宙を高速で泳ぎ、鋭く尖らせた手刀を思い切り突き立てる。
「オラァ!」
とは言っても数キロメートルの巨体に小さく穴を空けたに過ぎない、ので更に片腕もぶっ刺す!
クイーンは俺を認知すらしていない、突如消えた小さいアウトシングの増産でもしようとしているのか、体内に強いエネルギー反応が見て取れる。
「残虐ファイトはゲッ◯ー乗りの十八番ォ!」
ディメンショングラップの機能は次元を掴む事、突き刺した手で、クイーンを空間ごと真っ二つに引き裂くことも出来るってことよ!
──ギチギチギチ……ミチ、ミチチチ
硬い扉を両手で開くように、反対方向へと手を広げる。
繊維がぶちりぶちりと千切れていく、クイーンが声なき声を、悲鳴を上げる、苦しむが、やめない。
更に力を込める、数キロメートルの身体が縦に裂けていくのはチーズのようですらある。
体を裂かれて、ようやく俺を見つけたクイーンは小さいアウトシングを体の側面にある穴から放出してくるが、無駄だね!
「そらぁ!」
機能をフルに使い、完全に開き切る、二つに裂けた肉塊は一体何万、何億トンあるだろう、宇宙空間であり、俺の桁外れのパワーがあればこれをハエ叩きの代わりに出来る。
「よっこいしょ!」
肉と肉で挟むようにアウトシングどもをプチプチと潰す、三回くらい手を叩くように動かせばコバエ共は居なくなっていった。
爽快だな、パワープレーすぎるかな。
アウトシングを始末してから、手を持ったクイーンの死体も異次元送りした。
この宇宙空間でアウトシングと戦った証拠はあの宇宙戦艦に残された装甲の傷だけである。
さぁて、怖がらせないように近づいて、まずは軽く意思疎通が出来ることを教えないと──
『その機体のパイロットに告ぐ! 如何なる所属の人間か! 回答によっては主砲により即座に撃墜する!』
…………わあ、情熱的ぃ。
アニメ1話にしては、登場シーンが過激すぎたなぁ……アハハ、どうしょうもない、素直に投降です。
これが、俺と、後に人類最後の希望と呼ばれた彼らとの、出会いだった。