いきなり金持ち人生   作:草原で昼寝したいけど明るいと寝れない

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第16話 11月 大赤字確定!? 地獄の大運動会!

 海老名が頼んでいたアニメPVが出来たらしい。そういえばそろそろだったなと思いだして、鑑賞会を実施しようと、経営会議の時に流した。

 

 素晴らしい出来だった。布袋のギュワンギュワン鳴っているギターに合わせたバトルシーンはもう最高だった。なんで四分しかないんだ。1クール見たいぜ。

 

 実際にはもう少し編集とか手直しが入るらしいので、動画アップロードは月末になりそうという話だった。動画のアップロードはチャンネル大臣の布袋に一任しているので、いい感じでやるぜという意気込みを聞いた。

 

「次に、営業部の報告に入る。

第一次設備投資は概ね完了した。稼働後、問題が無いようなら次の設備投資を進めていく」

 

 工場のある、海老名ロボティクスと喜多方エネルギーシステムの老朽化個所の全面改修が完了したらしい。併せて、慈嶋(いつくしま)AIと喜多方エネルギーシステムの研究用の各種設備や資材も準備完了したとのことだった。

 

「今年度は宣言通り、赤字の見通しだ。設備投資分と人件費による赤字がメインだ」

 

 数百億円の損失が発生していた。七福エンターテイメントの赤字が1億2000万円くらいなので比じゃない。

 

「投資部が大黒字なので特に問題は無いでしょう」

 

 福路が補足し、海老名が頷いた。

 

「来年度も設備投資分などで赤字の予定だが、先日、慈嶋AIから良い報告があった」

 

 海老名に促され、慈嶋社長が変わって話し出す。

 

「慈嶋AIです。海老名ロボティクスさんにお邪魔して、実証実験を繰り返させていただいたところ、工場作業用のフィジカルAIが完成いたしました。

このロボットアームであれば、どんな細かな作業であろうとも寸分違わず作業が可能です」

 

「海老名ロボティクスだ。嬢ちゃんのAIが搭載されているロボアームは省スペースで、既存の製造ラインであれば簡単に設置が可能だ」

 

 写真や動画も見せてくれて、見た目は球の先に何本ものタコの触手が付いたモニターアームみたいなものだ。名指し難い不気味な見た目をしている……。でもたぶん便利なのだろう。

 

「ボトルネックとして、こちらはまだ量産の目途が立っていないということが挙げられます。海老名ロボティクスに製造ラインを増やすというのも手ですが、近隣にある精密機械の工場を買収するというのが一番手早いかと」

 

「精密部品だけじゃなく、大きめの部品が作れる工場も後々必要なはずだ。そちらも併せて買収し、海老名ロボティクスの傘下に入れるべきだろう」

 

 ギラリと目を輝かせた海老名がそう言った。なんだってこの親子は飢えた獣みたいな顔をしやがる。もっと平穏に会話できないものか。

 

「任せます」

 

「よし、先行して水面下で接触していたので、グループ編入は来年度4月だ。こちらも設備投資含めできるだけ素早く進めていく」

 

 先行してたんなら聞かなくてよくない? とも思うが、会社という組織で一応上司になっている俺が最終確認するのがスジなんだろう。

 

「ということで、営業部では赤字だが、投資部の黒字によりグループ全体では黒字だ。営業部の赤字は数年で解消する計画になっているので、来年度以降の目標は赤字額の減少となる。

営業部からは以上」

 

 ということらしいので、今日の会議はここまでになった。

 

 

( ・ω・)( ・ω・)( ・ω・)

 

 

 会議が終わって二週間後。海老名ロボティクスに呼ばれたので、海老名と布袋と福路の四人で工場まで行くことになった。

 

 買収した企業との顔合わせを実施したいらしい。もう? 早くない? と思ったが、早いに越したことはないだろう。

 

 俺たちが住む都内から車で二時間くらいで海老名ロボティクスに到着する。運転する海老名は慣れた道のりのようで、カーナビに頼らずにすいすい運転していた。

 

「飛猫(とびねこ)工業と出発(でっぱつ)技術研究所って近所のあそこだよな……確かよく海老名のところと運動会みたいなのやってた……」

 

 今回買収する二つの会社は海老名ロボティクスの近所にある会社だ。会議で言っていた大型部品の製造が可能なのが飛猫工業で、精密部品の製造が出発記述研究所。この人たちも海老名のところと一緒で従業員が妙に筋肉ムキムキだし経営陣もムキムキか細マッチョだ。

 

 そんな彼らは11月~12月くらいでよく運動会みたいなのやってた気がする。もう地元から出て結構経ってるから詳しくは覚えていないんだけど、人が吹っ飛んだりして派手だったのは覚えている。

 

「ちょうど今くらいの時期だったか。近所の廃校になった小学校でやってたよな~」

 

 布袋がのんびりとそんなことを言っているのを聞いて、少し嫌な予感がした。

 

「な、なぁ、海老名。なんで今日はこんな朝早く出発だったんだ?」

 

 朝六時にそれぞれの家に迎えに来た。早えよと思ったが、六時に出れば八時くらいに到着すると考えたら、朝飯食べればちょうどいいのかとも思ったが、途中にコンビニに寄って朝飯を与えられている。

 

「お前のような勘のいいアラサーならわかるだろう?」

 

 ギラリとミラー越しに目が輝いたのを見てしまった俺は悲鳴を上げた。

 

「い、嫌だぁぁぁ! 降ろせぇ! 降ろしてくれぇ!」

 

「ど、どうした七福! 急に暴れだして……!」

 

「布袋! これは罠だ! 海老名は俺たちをあのフィジカル運動会に参加させる気だぞ!」

 

 昔は小学生中学生として参加していたので、大人が吹き飛んだりするのを外から楽しんで見ることができていたが、今の俺たちはアラサー。吹き飛ぶ大人の仲間入りだ。

 

「あんまり覚えてないが、楽しかった気がするけど……」

 

「お前そりゃ大人に混ざってなかったからだろ! 騎馬戦とか自動車事故みたいな音がしてたぞ確か! っていうかアラサーで騎馬戦とかしたくねえよ!」

 

「残念だったな! この車は地獄行きの片道切符だぜぇ!」

 

 俺たちが大騒ぎしているのをよそに、助手席に座っている福路が珍しいものを見る目で俺たちを見ているのだった。

 

 で、のこのこと連れてこられた俺たちはなぜか別々の色のジャージに着替えさせられていた。

 

 海老名は緑ジャージで海老名ロボティクスのロゴがある。布袋は赤ジャージで飛猫工業のロゴ。俺は青ジャージで出発技術研究所のロゴがあった。

 

「我らの元にグループ会長の加護が下ったぞぉ! 者共! 鬨を挙げぇ!」

 

 ウオォォォ! と野太い声が挙がる俺のチームに対して、海老名のところも、布袋のところも同じようなことを言って声が挙がり、重なり合った重低音が共鳴して地響きとなり、乾燥した地面から土ぼこりが舞い上がった。ナニコレ。

 

「それでは、第一回、七福グループ製造部対抗運動会を開催させていただきます」

 

 買収は来年度じゃないのか? 気が早くない? っていうか福路は運営側なのかよ。道連れになれやあいつ。

 

「仲間になる前に! ぶつかり合わねえといけねぇんでさぁ!」

 

「毎年ぶつかり合っていたのでは……?」

 

「とにかく行くぞ! ウオォォォ!」

 

 俺は身長2m前後の巨人に囲まれながら、綱引きだの玉入れだのリレーだのに参加させられ、ズタボロになりながらも十五時、最終競技の騎馬戦にたどり着いた。たどり着いてしまった。

 

 ここまで長く苦しい戦いだった。綱引きでは巨体に押しつぶされて綱に引っ張られて回っただけだったし、玉入れは剛速球が飛び交う中、匍匐前進で安全地帯を目指すだけのゲームになっていた。

 

 布袋が参加していた障害物競走とかじゃなくてよかったと胸をなでおろしつつ、最後の騎馬戦はだれが参加するのかと考えていると、俺が大将として参加することになった。

 

 いやそりゃウマ側とか支えられないし無理とは思うけど、将だって無理。相手の将を見てみろよ。呂布みたいなのばっかりだぞ。

 

「えー、飛猫工業、障害物競走で再起不能になった布袋君に代わりましてー、福路君、福路君、参加のほうよろしくお願いします」

 

 海老名のアナウンスに驚愕の表情を浮かべた福路が引きずられて行き、大将騎馬として参戦した。海老名も大将になっているみたいで、あいつだけは気合を入れた表情でガイナ立ちで騎馬に乗っている。

 

 クソ~、高校くらいから勉強に集中し始めて、筋肉お化けだった海老名がインテリっぽくなっていったのに、完全に昔のフィジカル脳筋族に戻っちまってる。あいつ極端なんだよな。

 

「ええい! 覚悟を決めたぞ! 皆の者! 俺に着いてこーい! 目指すは大将首ただ一つじゃぁ! 気炎万丈! 特攻!」

 

「ヘッ、ようやくいい男の顔になりやしたね!」

「貴様こそ真の三国無双よ!」

「ィャやあまだっぁぁぁ!(邪魔だ!の意)」

 

 衝撃波をまき散らしながら突進した俺たちだったが、なんと海老名と福路たちは即席のチームを組み、身動きの取れなくなった俺たちに東南の風が吹き、砂煙で敵を見失っている間に各個撃破されてしまうのだった……。

 

「敵将! 打ち取ったりぃ!」

 

 その後、いろいろあって海老名と布袋の一騎打ちを海老名が制し、第一回七福グループ製造対抗運動会は海老名ロボティクスの優勝になったのだった。

 

 今日という日はいったい何だったのだ……。

 

 で、運動会終了後にそのまま銭湯に行き、泥だらけの体を洗い流してから宴会場でパーティーとなった。

 

 顔合わせだけならこっちに参加したらよかったんじゃないの? と思うかもしれないが、今では運動会に参加してよかったと思っていた。

 

 仲間だと思うには、思われるには、輪の中に入るしかない。輪に入るには、一緒に何かをするしかないのだ。今日の運動会で一緒に汗を流し、泥だらけになり、チーム一丸となって優勝を目指したことで俺たちはもはや義兄弟と言っていいくらいの仲になった!

 

 と、社長演説でぶちかましたところ、そこまでは思ってないかも……という冷笑を浴びた俺は拗ねた。こいつら飲みの場で冷笑すんなよ! 内心どうあれ盛り上げとけや!

 

 そんな感じでちびちび飲んでいると、盛り上がった布袋が曲を演奏し始めた。さらに大盛り上がりだ。あいつやっぱり盛り上げ上手だし歌がうめえな。

 

 ぼんやりとその光景を眺めていた俺は、布袋のMVを依頼した会社から、最初にイメージとして複数のMVのラフをもらっていて、それがスマホに入ったままだったのを思い出した。

 

 宴会場に映写機があったので、スマホをつなげると映った。

 

「布袋ーっ! 今から流すMVに合うような曲を歌えーい!」

 

「よっしゃぁ! やってやるぜぇ!」

 

 酒が入って陽気になった布袋が無茶ぶりも気にせず変な曲を作っては周りをガハハと大盛り上がりさせる。

 

「「「ワッショい! どっこい! 七福! ドッカン! バッタン! 七福!

ホイ! ホイ! そりゃそりゃそりゃそりゃぁ!

七福! (((ドッコイしょ!)))

七福! (((えんやーこーら!)))

しーちーふーく! (((よっこいよっこい!)))

七福製造! (((えいえいおー!)))」」」

 

 最後はなんか七福グループ製造部のCMソングだとか言いながら野太い男たちが合唱した意味不明の歌が会場を揺らし続けていたのだった……。

 

 

 次の日。相変わらず二日酔いで目覚めた俺は、二度と馬鹿みたいに酒を飲まないと誓いながら、スマホを見るとなんかすごいたくさん通知が来ていた。

 

 な、なんだぁ!? とびっくりして内容を見てみると、昨日の飲み会の終盤でみんなが歌っていたCMソング(仮)を布袋がアップロードしていたみたいで、それがバズっていたみたいだった。

 

 

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