いきなり金持ち人生 作:草原で昼寝したいけど明るいと寝れない
海老名がGW期間中にロボットアームの実演販売みたいなのをやったらしく、小型バッテリーの問い合わせが爆増した。あれ? 因果関係?
どうやら、既存工場にロボットアームを設置すればすぐにでもバッテリーを製造開始できるみたいな切り口で売り込んだみたいだ。それによりロボットアームの受注量が爆増し、バッテリーの問い合わせも爆発。少しのんびりしていた七福グループは一気に大忙しになった。
というのを、福路が予見していたみたいで、ロボットアームの製造をロボットアームができるようにしており、ロボットアームの製造はほとんど外部委託し、重要部品だけを七福製造部で作り続けるらしい。
製造部が大忙しの中、慈嶋AIから驚くべき発表がされた。ロボットの設計が完成したということだ。ロボットの設計!? そんなことしてたのか。
俺は期待で胸をワクワクさせながらも、まあいうて新型ロボットアームとかで想像してるような巨大合体ロボットとかじゃないだろうとたかをくくっていた。
「アイアン男! それはアイアン男じゃないか!」
「いえ……外部着装型パワーアシストロボットです……」
3Dで画面の中に表示されている製品を見て俺はテンションが上がった。
全身を覆う金属のスーツを着込むと、最大で1tまでの物を軽々と運搬できるらしい。移動は歩行専用で走ったり飛んだりできないのはちょっと残念だ。1t持った時の足元にかかる圧力で地面が陥没したりしないだろうかとかいろいろ考えることはあるけど、それよりなによりデザインがグッド。黄色いヘルメットのような頭パーツに、安全を示す十字のバイザー、ボディは余計な装飾は無く、のっぺりとした無骨なイメージ。マーク1って感じ。
「これは中に入ると茹るとかそういうのは無い?」
「小型エアコンがあるので中は快適のはずですが、実機で検証しないことには……」
「身長高い人とか低い人はどうするのこれ?」
海老名が聞くと、スッと別の3Dを映した。
全長は2.5mほどで、鉄パイプでくみ上げられた首から上が無い人体のような形状をしている。首元部分にコックピットのような部分があり、そこに腰掛けるように座って操縦するみたいだ。
「こちらは搭乗型アシストロボットです。調整が容易ですので、体系に関係なく操作することが可能です」
スペックを聞くと、500㎏まで軽々と持ち上げることができ、ジョイントパーツにより最大時速40kmまで出せるし、コックピットのコア部分と四肢を分離し、自由に付け替えることが可能で修理も容易らしい。腕もしゃべるとかドリルとかハンマーに換装できるので、万能重機として使えるとかなんとか。
アームズフォートコアって名前で売り出そう。装甲のある、砦だって建築出来ちゃいそうな中核部分が重要な重機ってことで。
「これだけでよくない?」
布袋がアホなこと言うので反論した。
「お前はヒーロー着地したくないのか?」
ハッとした顔で前言を撤回したので、それでこそだと腕を組んで頷いていると、同じく頷いていた慈嶋さんがそのまま新しい3Dを映し出す。
今度は小さなマネキン人形みたいなやつだ。全長2mのマネキンだ。
「作業用ロボットです」
「……あ、アンドロイド、ってことなのかっ!?」
驚きすぎて飛び上がったが、話を聞くと俺が想像しているものとは違うっぽい。
「AIで作業者の行動を学習し、同じ行動を繰り返します。また、遠隔操作も可能で、操作を繰り返すうちにより高精度な作業が可能になっていきます」
「髪生やしたり見た目を良くしたりは……」
「全身にセンサーがあるので、それを阻害するような装飾品はつけられないんです……次回からの課題です……」
ぜひとも技術を発展させてほしい。そのうち、二次元のキャラを投影できるコスプレロボットとか作ったら面白そう。アニメを現実世界で撮影するとかできたら、日常モノとか臨場感があって逆に面白いかもしれない。アクションシーンがあるとアニメーションの方が派手な動きとかエフェクトがあって見栄えがいいのかも? いやそれですらロボットがめちゃくちゃ動けるようになったりしたら解決できる問題かもしれない。夢が広がるぜ。
一旦、設計図を基に海老名ロボティクスで試作することになった。まあ最初の設計図通りにモノが作れるとも限らないし、作ったところで設計不備とかよくある話だから焦らず頑張ってもらおう。
会議も終了かというところで、布袋から話があるみたいだった。
「七福エンターテイメントから相談です。アニメ部門がプロジェクトを立ち上げたい」
「ああ、いつの間にかスゲエ人数いるもんな」
買収した四風動画は従業員がめちゃくちゃに増えていき、さすがに多すぎじゃない? って思って話を聞くと、業界自体が苦しい感じでそんな人たちを追い出すのも気が引けるなあと思っていたらズルズルと増え続けていったのだった。今後も増える予定らしい。
「このままだと、近いうちに暇になっちゃうからその前にプロジェクトを立ち上げたいらしい。今のところ4案あるんで、どれで行くか決めてほしいとのことだ」
「手が空くなら全部順番に作っていったら?」
「じゃあそう伝えとくよ」
布袋はどの案だろうと、タイアップ曲を作ることになるということで、ウキウキしながら報告に戻っていった。
あれいつの間にか七福エンターテイメントの管理も布袋に任せちゃってるけど、いいのかなこれ。まあいいか。
会議終了!
( ・ω・)( ・ω・)( ・ω・)
「布袋サン、どうだったっスか」
東山
七福グループの中のアニメーション部として四風動画は籍を置いており、今やその規模は業界トップクラスであり、福利厚生何もかもが突出している。
ただ、買収後に赤字を垂れ流しているだけの現状だけが不安事項として残っていた。
今の環境から失楽園するのだけは何としても避けなければいけない、というのが四風動画全員の思いであり、そのためには利益を出すための行動、つまりはアニメ作りをしたいのだ。
今のところ、目の前の布袋という男のMV作成くらいしか仕事が無く、人員を持て余してしまっているという状態だった。
「ウス、お疲れっす。経営会議の結果共有しますんで、会議室に集まってもらってもいいですか?」
「もう全員待ちきれないって感じで集まってるっス」
会議室に向かう途中にも手が空いている社員がぞろぞろとついてきて、そこまで広いわけでもない会議室がぎゅうぎゅうになってしまっていた。
5月ももはや初夏の気温はあるので普通にクソ熱い。散れっと社員を職場に返そうとする東山に、布袋はまあまあと窘めて、会議の場所を広い作業場に変更した。
「これなら社員の人もきけるっしょ?」
普通こういう大事な会議って上層部で共有とかしてから必要情報を社員に落とすもんじゃないの? と東山は思ったが、七福エンターテイメントというお得意様の言葉には逆らえなかった。
「えー、では、経営会議の結果報告します」
パチパチとまばらな拍手が鳴り、南川の特に大きな拍手を最後にシンと成ってから布袋は宣言した。
「皆さんからご提案いただきました、今後のアニメプロジェクト四つにつきまして、すべて実行OKです。必要な費用は稟議書を挙げてください」
「ぜ、全部ですか……?」
社長の桐生が確認のためにそう発言すると、布袋はもう一度言う。
「全部OKです。順番に全部作っちゃってください」
「う、うぉぉぉぉぉぉ!!」
北上
四風動画で総監督兼作画監督兼編集兼キャラクターデザイン兼音響担当を務めていた北上の夢は自分が総監督のアニメ映画を作ること、そしてそれが大ヒットすること。今その夢の入り口に爆速入場を果たした男はさっそく、素から書きあがっていた絵コンテを各チームに配布し始めた。
「ヤッタァァァ!」
西岡
彼女は四風動画でシナリオ担当兼作画監督兼キャラクターデザインを務めており、自分が担当したシナリオで映画作りたいしその上大ヒットしてえと夢を見ていた。そんな夢が棚ぼた的に叶い始めたので、グ腐腐と笑い声を上げながらさっそくどれを出力しようかとバラ色の未来によだれを垂らした。
「イエェェェェイ!」
東山
四風動画でCG担当兼作画監督兼キャラクターデザインの彼はクッソぬるぬるに動くアニメを作りたいという夢があった。今までは資金の都合でそこまでのクオリティは出せなかったが、七福グループは金の制限なくやっていいという意味不明の発注をよくしてくれる。布袋のMV作成の時点で割と叶っていた夢が、今度は映画という大スケールでやっていいということだったので最高だ。
「……! ……!! ……!!!」
南川
四風動画で背景担当兼編集担当だった彼女は美しいものを作りたいという夢があった。しかし社会では心の赴くままに芸術を作ったところで価値が付かなければ稼げず、稼げなければ死ぬだけだった。七福グループに買収されてからは違った。金に困ることは無く、開いた時間でさんざんに芸術を生み出す時間がある。もはや夢の中にいるような状況で南川は常にハイテンションなのだった。
「しっちふくっ! アソレ、しっちふくっ!」
布袋は社員の叫び声を聞いて、なんか音頭を取り始めた。みんな盛り上がってるなと思っての行動だった。社員が全員声がかれるくらいの音頭は数分続き、酸欠で意識がもうろうとしてきたあたりでトーンダウンしたので休憩を兼ねてようやく話が進んだ。
「……それで、四つのプロジェクトを改めて整理しましょうか。一つ目は何でしたっけ?」
「……はい、一つ目は、この会社がどこまでできるのかというのを試したく、五十分弱の映画を作製予定です。内容も捻ったものではなく、桃太郎をベースに作画能力の限界を目指したいです」
犬、猿、雉など、動物を違和感なくアニメで書くのは難しい。ましてや、戦闘描写などは特に難しいはずだ。桐生はその覚悟を感じ取り、ごくりとつばを飲み込んだ。
北上の発言に対して布袋はそうかと頷いていたが、そんな事情を知らないので頑張れと気楽に思っていた。
「二つ目は、1クール分のアニメを作る予定です。こちらは制作速度のテストを実施したく、多少無理なスケジュールで進行予定です。オリジナルストーリーで、女性向け作品として制作します」
「最高のシナリオとキャラデザをします」
西岡の覚悟の籠った発言に、思わず桐生はごくりとつばを飲み込んだ。女性向け作品は数あれど、今回の資金規模に見合うようなヒット作品レベルまで行くとそこまで多くは無いだろう。そんな恐ろしい環境に自ら飛び込む西岡の覚悟に胸を打たれたのだ。
布袋は相変わらず応援している。
「三つめはフルCGの作品を作ります。こちらは十分ほどの作品を十数本作製予定です。ストーリー調にするか、オムニバス形式にするかは協議中です」
アニメのCG化については常に批判が付きまとう。動きにリアリティがない、チープに見える。そう言った批判が無限にある。特に、前二作で作画に気合を入れた作品を出した後にフルCGを出すとなれば、前の方がよかったという批判は逃れられないだろう。
「ヘッ、望むところっス!」
しかしそんな逆境にも負けない東山のやる気に満ちた発言を聞いて、桐生は涙が止まらなかった。
「最後の四つ目に、ド本命の映画を作ります。二時間想定で、CGも作画もモリモリの最高の作品を仕上げて見せます」
「!」
もはや何も言うことは無かった。桐生は燃え尽きた灰のようにぐったりと椅子に倒れこんだ。南川のガッツポーズも心に響いた。あんなに小さかったのにこんなに大きくなって……。もう、俺が居なくてもみんなは大丈夫だろう……。
「以上四つを、社長の桐生がうまいこと配給し、ネット配信だけじゃなく映画館でも公開しつつ、制作進行します」
「グエェェェ!」
この後のハードワークに悲鳴を上げた桐生だったが、布袋の一言でスンと冷静になった。
「極力就業条件の提示は守ってくださいねー」
定時を含めた予定を組むことになり、結局桐生は悲鳴を上げたが、そこにはうれしい悲鳴も混ざっているのだと北上は信じていた。