いきなり金持ち人生   作:草原で昼寝したいけど明るいと寝れない

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第2話 10月 軽い心と重い体

 俺の誕生日が7月29日。

 

 宝くじの当選に気がついたのが8月31日。

 

 実際に金が振り込まれたのは9月15日。

 

 俺その後一ヶ月ほど仕事に行き、10月いっぱいで退職することにした。10月中旬からは有給消化だ。

 

 仕事に身は全く入らなかったが、引継ぎだけはきちんと終わらせた。これで俺は晴れて自由だ。朝早く起きる必要もないし、次の日の打ち合わせを悩みながら寝ることもない。身体が軽い。

 

 食う飯が豪華になって数週間。俺は太っていた。心に反して身体は重くなっていた。

 

 そりゃそうだ。仕事してない無職が一日中ゴロゴロしたり動画見たりゲームやってるだけでろくに外にも出ず、飯すらウーバーで栄養バランスも何も考えずに食いたいもの食ってたらそうなる。

 

 元々ガリガリに痩せていたわけでもないが、こんなに太っていたわけでもない。確実に仕事をやめてから太った。っていうか食うものが豪華になってから太った。

 

 こりゃあ痩せなきゃだめだ。

 

 そう思ってまずは形から入ることにした。

 

 通販で2万円のランニングシューズを買い、ランニングウェアも四着購入。その他必要そうなグッズを買い、即日配達にして、明日からのダイエットに備えて今日は英気を養ってピザを食った。

 

 次の日。あいにくの雨だった。午前中に注文していた荷物が届き、着込んだのだが無駄になった。流石に雨の中走るとかできないわ。子どもでもあるまいし。もうアラサーっすよ自分。

 

 更に次の日。その日は前から楽しみにしていた映画の公開日だった。平日の朝一に映画館に行き、映画を見終わったらちょうど昼。ハンバーガー屋で飯を食い、家に帰ったらもう外に出る気がなくなった。また明日頑張ろう。今日は割と歩いたし運動したってことで。

 

 一週間後。俺は更に太っていた。な、なぜだ。玄関にはピカピカのランニングシューズが俺をにらんでいるような気がした……。

 

 こ、このままじゃまずい。大体こういうことは初動が一番エネルギーを使うんだ。三日坊主もそう。初動が一番躓きやすい。

 

 まず改めて考えよう。

 

 俺は太ったので痩せたい。→痩せるには何したらいいのかという話。

 

 案1:運動をする。

 

 案2:食事に気を付ける。

 

 両方やるのがいいのだろうが、俺に案2は無理だ。期間限定商品が出たら食べたいし、スーパーでも割引になった総菜を気ままに買ってしまう。カロリー爆弾はうまいから我慢できない。茶色い揚げ物がウマすぎるのが悪い。

 

 となると案1をどうにか実行したい。

 

 俺だって学生時代には体育で運動していたこともある。夏休みにバスケ部と一緒にバレーボールやったこともある。運動の素養はあるはずだ。部活は文化部だったが、運動音痴ってほどでもない。マラソン大会だっていつも真ん中くらいの順位だった。

 

 ただ、ここ数日にあったように、ランニングとかしようにも外が雨だとやる気出ないんだよな。濡れながら走って体調崩したくないし。っていうか服が濡れるのはまだしも、靴がびちゃびちゃになったら洗うの面倒だし干しても乾きづらいし最悪だよね。

 

 そう考えるといつでもできるジムに行くというのが良いのかも。

 

 ジムに行ってみようと考えた俺は月額制のところにいきなり登録するのではなく、一回ごとに使用料取るタイプのところに試しに行ってみることにしてみた。

 

 で、行った結果、ジムもやっぱり向いてないかもというという結論に至った。

 

 まず、俺がトレーニング器具を使っていると順番待ちみたいな感じで待つ人が出てくる。これは広いジムに行ったら解決するかもしれないが、だとしても待たせてしまっているという事実が軽いストレスになる。筋肉の妖精は優しいが、それはそれとしてデカいのでプレッシャーがある。

 

 次に、汗かいた後の服を持って帰るのが面倒だし、シャワーとかもなんかゆっくり浴びる雰囲気じゃない。

 

 何よりジムに行くまでの移動時間が耐えられない。往復で三十分くらいかかる。それでジムで一時間くらい運動したとしてもなんかもったいない気がする。

 

 そんな感じで、ジムに行くのはやめようという結論に至った。

 

 じゃあ何するんだよ俺。やらない理由ばっかり言ってないでさっさと痩せろ豚!

 

 という暴言は一先ず心の中にしまっておいてほしい。俺だって大学出てるので、最低限度の学習という機能が備わっているのだ。

 

 ジムに行って、気が付いたことがある。つまりはジムが遠くて、いろんな人がいるから行くのがハードルになっているのだ。

 

 じゃあ家にジムの器具買って一人で使えば問題ないじゃん。頭がいいぜ。

 

 結論を出した俺はさっそく器具を調べ始め、そして大きな問題にぶち当たった。

 

 買っても置く場所がない。

 

 俺の今住んでいるアパートは木造二階建てワンルームのユニットバス物件だ。ベッドを置いて机に冷蔵庫とキッチンでもう部屋はパンパンだ。

 

 まずは引っ越しから考える必要がありそうだ。

 

 それから二週間ほどで引っ越し先が決まった。家賃30万円で最寄り駅が池袋の物件だ。七十平米くらいある一人暮らしではどうやっても持て余す六階建てのマンション。部屋が何部屋かあるので、一部屋をジム部屋とした。

 

 敷金礼金や家具を新調した結果、数百万円が飛び立っていった。

 

 100億円と数字の上では問題ない金額に思えたが、なんだかこの調子で金を使っていったら死ぬまでに金が尽きそうだ。自重しよう。

 

 前に脳内で考えていた通り、基本的な出費は月200万円までと心に決めておこう。

 

 ……月200万円までって別に制限でも何でもないよな。俺は前まで年収500万円いかないくらいだったし、手取りで言えば年収の半分以上を月に使えるってことじゃないのか。それすらも守れないような生活はもう一般的な生き方じゃない気がする。

 

 俺はキングサイズのふかふかのベッドで寝転がりながらそう思った。

 

 ところで、このサイズの布団はどうやって干したらいいんだ? 干すのも取り込むのも一苦労どころじゃないっていうか一人でやるもんじゃない気がするんだけど……。

 

 

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