いきなり金持ち人生   作:草原で昼寝したいけど明るいと寝れない

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第22話 4月 七福? ああ、あの核融合の会社ね

 気が付けばもう新年度なんだよね。

 

 年を取ると時間が過ぎるのが早いっていうけど、あまりにも早すぎない? 光陰矢の如しとかってレベルじゃなくない? 明らかに一日が短い。

 

 気が付きゃ今年で29歳。来年には三十路。

 

「う、うわぁぁあぁ!」

 

「うお!? どうした七福!?」

 

 布袋がびっくりして変な声を上げたので俺も冷静になれた。

 

「ああ、来年には三十路という現実が怖すぎて叫んだ」

 

「うおぉわわわぁぁぁぁ! 怖いこと言うな! そんなわけないだろ!」

 

「言われてみればそんなわけないのかも。そうだよな。俺らまだ三十路なんて何十年か後の話な気がする」

 

「そうだそうだ」

 

「……馬鹿言ってないで働いてください」

 

 俺たちが騒いでいると怒られた。新卒の子で、布袋のマネージャーの人だ。バカな、新卒に馬鹿って言われた今?

 

 恐ろしい子……! と驚愕の表情でショックを受けていると、布袋がマネージャーを紹介してくれた。

 

「こいつ俺の従妹だから気兼ねないんだよ。七福も会ったことなかったっけ」

 

「氷室(ひむろ)です。よろしく」

 

「はい、よろしく。うーん、七つ下ってことは中学の時に小学校入学したくらい? 高校の時もまだ小学生でしょ? さすがに面影とかないんじゃない?」

 

「あれこいつが今年22歳で七つ下ってことは俺たちは七つ上ってことで、今年で29歳……?」

 

「「ヒィィィィイ!」」

 

 そのままふざけていると布袋は引っ叩かれて連れていかれた。今日は普通に収録があったがうまくいかないので抜け出してきていたらしい。サボってんじゃんあいつ。

 

 俺も投資のための情報収集と称してニュースサイトの記事をなんとなく流し見していた。

 

 世間では核融合炉が実現したことに対する話題でいっぱいだった。

 

 原油価格が下落したり、電力会社の株が上昇したり、かと思ったら下落したり、もうてんやわんやだ。

 

 海外に追試依頼した結果が大々的に報道されたみたいで、各国から追試したいという要求がたくさん来ているらしい。

 

 なので、核心部分だけブラックボックス化して提供し、その他の外装部分は外注するようにしたとのことだ。それらの出荷もおおむね完了し、それらの機関でも全数追試完了し、すべてで成功を収めたらしい。

 

 世間ではしきりに核融合炉が実現したことで生活がどう変わるか、みたいな話ばかりやっている。

 

 そんなことがあり、七福って言ったら核融合炉ってくらいに世間に浸透した。

 

 いや、七福ホールディングスは金出してるだけで、核融合炉は喜多方エネルギーシステムだし、中核部品の製造は海老名ロボティクスじゃん。グループ会社ってだけで七福関係ないじゃん。

 

 なんて言ってもしょうがないが、最近は七福エンターテイメントチャンネルで配信している布袋の元にも核融合関係のコメントがたくさん来て、対応に苦慮しているらしい。核融合のコメントっていったい何を言われているんだ。核融合で一曲、とか?

 

 俺が暇をつぶしていると、海老名から連絡があった。明日海老名ロボティクスに行きたいらしい。

 

 去年慈嶋(いつくしま)さんが言っていた何種類かのロボットの先行量産機が出来上がったので見に行こうとのことだった。

 

 

( ・ω・)( ・ω・)( ・ω・)

 

 

「えーっと、海老名? 先行量産機が出来上がったんだよね?」

 

「ああ、その通りだ」

 

 目の前を作業員が歩いている。背に担いでいるのは何百㎏もありそうな鉄骨だ。彼は腕や背中、足になんかの金属のパーツをつけて、軽やかに歩いて行った。

 

「海老名ロボティクスの新工場の建設現場で、作業員の人たちが付けているあれは何?」

 

「ああ、外部着装型パワーアシストロボット簡易試作量産機だ」

 

「分かんねえよ」

 

 量産機を見に来たら実戦配備されていた。何がどういうことなんだ?

 

「説明しよう。検討を重ねた結果、外部着装型パワーアシストロボットは着装時に身長や体形の制限がきつく、外部装甲パーツが付いた状態だと調整が難しかったんだ。

だが、製造中に、海老名ロボティクスでフレーム部分だけでも十分に稼働することを確認し、慈嶋AIと設計変更を重ねて、極力必要なパーツのみで製造されたのが、外部着装型パワーアシストロボット試作型で、量産性確認のために外部着装型パワーアシストロボット試作量産型を製造し、耐用性確認と、AI学習のために買収した建設会社で海老名ロボティクスの新工場の工事現場で使ってもらってるんだ。

外部着装型パワーアシストロボット先行量産型は、これらのデータ取りが完了したことで、市場に出すのに十分だという評価がなされた製品ということになる」

 

「ああ、うん、試作先行量産型が量産試作先行試作型の量産が先行の量産……」

 

 だめだ分からねえ。

 

「……とにかく、市場に出す前にテストとして作ったやつを工事会社の人が使っている。今回は、売り出す商品ができたんで見てもらうために来てもらった」

 

「最初からそう言えよな」

 

「そう言ったんだよ」

 

 工事現場から離れ工場内に行くと、みんな慌ただしく仕事をしていて、のこのこと見学に来た自分は場違いな感じがした。実際そうなんだろうけど。これあれか、なんかよくわからんお偉いさんが見学に来た時のやつ。よくあるよね。会社の偉い人がつきっきりで外部の偉い人案内するやつ。今それを偉い人側で体験できてるんだな。新体験。

 

「よぉ! 七福の坊主! よく来たな! これが海老名ロボティクス渾身の外部着装型パワーアシストロボット! Zets-A(ぜつえい)じゃぁい!」

 

 分かってたけど俺全然偉い人扱いされてないな。

 

 海老名の親父がガイナ立ちで作業服を風にはためかせながらライトアップされた機体を紹介する。どっから風が吹いている……?

 

 機体は黒に黄色のマーキングが施された、トラロープみたいな見た目だった。真っ黄色の安全ヘルメットじみた頭部装備と、黒と黄色で縞々の手袋みたいな腕部装甲。花粉団子がくっついているみたいなまっ黄色の下部装甲。背中側はローラーのついた第三の足みたいな尻尾じみたものがあった。

 

「蜂みてぇだ……!」

 

「その通り! 今後アップデートによりZets-Bee(ぜつびぃ)として売り出す予定じゃあい!」

 

「何アプデが入るんですか?」

 

 俺が聞くと、海老名の親父の背後からヌルっと慈嶋姫子社長が出てきて説明を始めた。いたのか。いつのまに。

 

「Zets-Aは今この時点で完成形……! しかっぁし! 各種作業を重ねることでよりAIの学習が進み、その動きを最適化させることができるわ……! その最適化の果てこそがZets-Bee……! そしてそのZets-Beeの学習成果の結晶こそが、今後製造していく作業用ロボット、Sec-Kit-Bee(せきとびぃ)なのよ……!」

 

 な、なるほど!

 

「さらにさらにィ! こいつを見よォ!」

 

「な、何ぃー! 巨大ロボット! 巨大ロボットだ! 海老名! 巨大ロボットがあるぞ! どういうことだ!」

 

 そこには全長5mほどの巨大ロボットがあった。なんかでっけえ布がかかった変なもんがあるなと思ってたが、まさかそれが巨大ロボットだったなんて!

 

「う、動くのか!? どうなんですか!?」

 

 海老名の親父を振り向くと、スンとした表情で言った。

 

「動きません」

 

「なぁぜだぁー!」

 

 

( ・ω・)( ・ω・)( ・ω・)

 

 

「……ええっと、つまり、もう一個提案されてた搭乗型アシストロボットを、規格間違えででっかく作っちゃったってことね。で、作り終えてから気が付いて、実際に動かすにも結構コストかかるし、総重量増えたせいで耐久性が弱いから、実際の作業には使えない、と。あれ? 動かそうと思えば動かせるの?」

 

「技術的には可能です」

 

 慈嶋社長の言質を取った。

 

「じゃあ動かせるようにしておいて、会社説明の動画とかに使ってみないか? ロボット作りたい人間なんて無限にいるだろうし。そういう人が入ってきたら、ホントにちゃんと動くやつが作れるんじゃない?」

 

「作っても使いづらいんじゃないですか?」

 

「工事とかでレゴやる感覚で足場建てたり柱建てたりできる巨人みたいなのが居たら便利なんじゃない? 超高層とかだとさすがに扱いづらいかもしれないけど、三階建てくらいならいけるんじゃない?」

 

 俺は今までにないくらい必死に脳を回した。

 

 巨大ロボットを乗り回したい。その一心だ。そのうち合体機構や飛行モードも何とかして実装してやる。

 

「開発コストに見合うのか?」

 

 クソが、海老名が邪魔してきやがる。こいつには子供のワクワクみたいな純真な心がないからマジレスをすぐしてくる。

 

「もちろんすぐにそれを作るって話じゃなくて、搭乗型アシストロボット自体の性能上昇のためにも必要なんじゃないかなって」

 

「ふーん、それならまあいいか。作っちゃったこれも処分するの大変だし、なんかのオブジェ兼アトラクションとして活用できるならそれがいいかもな」

 

 海老名も納得したようなので巨大ロボットの夢はつながった。よし、このまま突っ走っていってほしい。

 

「そういえば、搭乗型アシストロボットを失敗してでっかいの作ったのはわかったんだけど、もともとの設計サイズのやつはどうしたの?」

 

「そっちは今、計画止めてる」

 

 な、なぜ?

 

 俺は信じられない顔で海老名を見ると、心なしかしょぼんとした海老名の親父が説明を引き継いだ。

 

「ああ、Zet-Aの製造と超高性能バッテリーの部品製造と核融合炉の部品製造で工場ラインが手一杯でな……。新工場ができればそれらも解消される見込みだ」

 

 物理的限界なら仕方がない。

 

 その後、パワードスーツの実装体験をしてテンションを取り戻し、みんなでご飯を食べてから帰宅した。

 

 

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