MARVEL世界でバットマンやってます。なお転生先はフラッシュ・トンプソン 作:スローダンサー
ニューヨーク ライフ財団 夜
僕を蹴落としたシシドがどんどん小さく見える。このままいけば僕は人肉パティに早変わりだ。それを避けるため僕はグラップルガンを使う。近くの建物にワイヤーをひっかけ、空を飛んだ。
ライフ財団から遠く離れたマンションの屋上に僕は止まる。胸を蹴られた痛みが今更襲ってきた。骨が割れてるだろうな………。その類の痛みが僕を膝つかせる。
ん………?爆発音?僕は床から視線を外の周りに移す。黒いニューヨークの街が赤く染まっていた。車が、人が、街灯が、『何か』に包まれ、それがさらに暴れ被害を広げている。
「シンビオート?!」
シシドのやつ、まさかシンビオートを街にばら撒いたのか!?!?まずいまずいまずいまずい!!ライフ財団で確保されていたシンビオートは数十体ほど、それら全てが暴れ出しているのか?!
「うそだろ………」
僕は膝をついた。もうダメだ。シシドに勝てるビジョンが浮かんでないし、シンビオートがこんなに出てニューヨークはもう無茶苦茶だ。
【坊ちゃん!貴方面白かったですよ!子供みたいにはしゃいでバットマンごっこして………バカみたいに!!!!】
シシドの言葉が頭の中をぐるぐる回っている。ごっこ遊び………くそっ、だめだ。体が動かない。
「へーい、コウモリくん!何うなだれてるんだ?」
ウェブを切る音。僕の前にスパイダーマンがいた。
◇◇◇◇◇
ニューヨーク クイーンズ 夜
時間は数時間遡る。ライノスーツの爆発を受け、僕は吹っ飛ばされた。スーツも破れ、僕も傷つく。だが最もまずいのが正体がバレる危険だ。僕は自分を隠す系のヒーローである。
這いずり回ることでマンホールを掴み、なんとか下に降りた。臭い!しかし我慢しなくては………
下水道も僕のテリトリーのうちの一つだ。どこから入って、どこから出れば、どこに着くのか完璧にわかる。
目指すはぼくんちだ。しかしスパイダー回復力があまり効いてない。普通の火傷ならたちどころになるはずだが………
「核?!………んなわけないか。」
痛すぎる。毒とは違う純粋な火傷だ。ヒリヒリしてすごくきつい。そのせいか頭蓋骨がひび割れるほどの頭痛が走ってる。
痛みが治ることなく、歩き続け2時間。スイングならすぐ済む距離だ。なんとかマンホールを跳ね上げ、身体を出すが………力尽きた。
「んぁぁあ………」
目が覚めると僕はベッドの上にいた。知っている部屋だ。だが目的の部屋じゃなかった。体は包帯で固定されていた。
「あっ起きた!」
声の方に顔を向ける。ブロンドの少女だ。耳にピアスがバチバチに入って、パンキッシュな格好に身を包んでいる。僕の知っている人だ。
グウェン・ステイシー。ジョージ・ステイシー警部の娘でお隣さん。今中学生である彼女とは顔馴染みである。
「大丈夫スパイダーマン。すごく怪我してたから適当に包帯巻いておいたよ。」
「ああまったく助かったぜ。というかありがとうな。俺のマスク取んなくて。」
「そりゃ正体明かしてないでしょ?ならあたしが知ったらあんた嫌だろうなって思って。」
荒い言葉遣いと反比例して優しい子だ………。包帯のおかげで体も治ってきている。時間は………半日も寝てたの?!
「ありがとうね、君!」
僕はステイシー家の窓縁に立った。
「えっ?!もう行くの??その傷で?!」
グウェンは可愛い顔をひどく歪めている。だがまあこれ以上長居はできないし………
「俺は親愛なる隣人としてやることがあるからね。じゃあ!」
「あっ待って!」
待たない!僕は外へ飛び出す。その時、僕のスパイダー聴覚は小さな爆発音を捉えた。休む暇もない!………いやさっきまで休んでたね。僕はその音の方にスイングした。
「あれは………シンビオート?」
スライムのようにグニグニ動いているそれが色々飲み込みながら大暴れしていた。まずいな、この騒動が至る所で起きているからこの爆炎なのか?!
………あれ?あいつは。僕は屋上に飛び降りた。バットマンだ。なんかこう力が抜けているようだ。なんで??
「へーい、コウモリくん!何うなだれてるんだ?」
僕の返事にバットマンが顔を向けてくる。むっちゃ泣きそうな子供の顔じゃん!
「ああ………それは」
「みなまで言うな!」
「えっ?」
「まずはこの騒ぎを収めないとまずいだろ?立てるか?」
「………無理だ。力が出ないんだ………」
「ふーん」
僕はバットマンの肩を担いで無理やり立たせた。
「何を?!」
「バットマン。俺はお前がその格好をしている理由を知らないし、知るつもりはない。」
「………」
「でも、思い出せ。君がその格好をしているのは伊達でも酔狂でもないだろ?」
「………」
「バットマン、今このニューヨークで頼れるヒーローは君だけなんだ。この事態、僕だけじゃ手が足りない。頼む、協力してくれ。」
◇◇◇◇◇
「バットマン、今このニューヨークで頼れるヒーローは君だけなんだ。この事態、僕だけじゃ手が足りない。頼む、協力してくれ。」
………スパイダーマン、いやピーターは、僕をじっと見てくれる。僕はごっこ遊びに興じるガキなのに………
都合よく雨が降ってきてよかった。僕の顔が流す涙を消してくれる。
「やるよ。スパイダーマン」
その言葉を彼はすごく嬉しそうに見ていた。
次回は10/29日更新予定です
タイトルは『ザ・バトル』