MARVEL世界でバットマンやってます。なお転生先はフラッシュ・トンプソン 作:スローダンサー
ニューヨーク 夜
『バットモービル』
一言であらわすなら文字通り『バットマンの車』だ。
ただの車ではない。ゴッサム・シティを蔓延る悪党を追い詰める名馬だ。
デザインは千差万別。今僕の目の前にあるバットモービルも、特徴的なコウモリマークがなければただのハイテクマシンにしか思えない。
うへぇヨダレベトベト気持ち悪りぃ。
僕を吐き出したリザードは物言わぬバットモービル(エンジン音すら聞こえない!)を睨みつける。
はたき飛ばそうとリザードは尻尾を横に振るう。バットモービルは『スライド』した。そう『スライド』!まるでホッケーパックが氷上を滑るように。音もなく。
リザードの薙ぎ払いは、無人の車を複数台吹っ飛ばし、鉄屑にした。怒っている。自分の攻撃が当たらなかったからだ!
【今度こそ破壊してやる!】
そう言わんばかりにリザードは5mはあろう両腕を振り上げた。耳を劈くような衝撃音。リザードは笑った。自分の攻撃が命中したと思い『こんだ』。僕の目と耳はリザードの目論見が空振ったことをとらえている。
衝撃音。空気が焼ける音だ。リザードが真横に吹き飛ぶ。煙が二つ。リザード、そしてバットモービルからである。リザードが攻撃して吹き飛ぶまでは一瞬だった。
何があったのか?僕のスパイダー動体視力はその全てを映画を見る評論家よりも正確にとらえている!!
リザードの腕が迫り、当たる………その直前、バットモービルが『真横』に動いた。そう『真横』に!普通の車であるなら絶対に不可能な機動だ。
変形していたのだ、コンマ1秒ほどで。オートボットも腰を抜かす瞬間変形!メカニカルな車から、サイバーチックな戦車に変わっていたのだ。
そして、FIRE!一体どこに格納していたのか。恐ろしく長い火砲が火を吹いたのだ!一体どんな敵を想定しているのやら………
リザードは無傷とは言わない、煙をあげ、身体は肩で息をし、震えている。だが………健在!
その目は怒りに満ち溢れ、笑っていた。歯を見せて威嚇したいる方が正しいかもしれないが、あの顔は笑みに似ている。
吠えた。リザードの唸りは周りのビルの窓を割り、ガラスの雨が降る。街灯の光が乱反射した時、リザードはモービルに突っ込んだ。
獣の本能だろう。リザードは火砲の欠点を見抜いたようだ。僕が見るに長く取り回しがしづらいように思える。リザードも火砲に狙われぬよう、リザードは稲妻の如くジグザグに走っていた。
バットモービルの火砲の狙いが定まっていない。リザードは火砲に撃たれることなく、バットモービルにワンインチ距離まで接近!牙を開け、噛みつく。
悲鳴。リザードの喉からだ。バットモービルの火砲からは煙は上がっていない。では何がリザードにあったのか?
僕のスパイダー視力はバットモービルが纏う高電をとらえた。つまりリザードがガブリ噛みついた時に大量の電気をぶち込まれたのだ!
痺れダウンするリザードに、追い打ちで火砲を何度も何度も執拗に打ち込んだ。
何度も
何度も
何度も
何度も
何度も
何度も
何度も何度も何度も何度も何度も何度も
気がついたら僕はバットモービルのコックピットに飛び乗り、ノックした。
「もうそれぐらいでいいんじゃないか?!トカゲ君、身体あったまりすぎて体調崩しているよ彼。」
僕は初めてバットマンを見た。今まで実写になったどのバットマンよりもスーツが違った。どこかこう金属めいた黒い布スーツ。だがバットマンとわかる。『自分が考えた最高のバットマン』。そんな印象だ。
バットマンは僕に顔を向ける。目の形は白いせいで伺えない。鼻から下は素顔だが、ピクリとも表情はなかった。
「スパイダーマンか、初めまして。」
「口覆ってないのに、ミニオンみたいな声だな。」
「………減らず口は噂以上だな」
「バットマンって報道聞くんだな。俺、親近感わいちゃう!」
「しるか、私は帰る。」
「あっ、ちょ。」
バットマンは僕との話をブッチして変形。車形態になったバットモービルはそのまま闇に消えた。
後に残されたのはもはや一切動くことないリザード。ダメージを受けすぎた影響か、カート先生に戻っていった。
バットモービルを撮影する逃げなかった市民。
そして僕。
僕に近寄ってきた市民が話しかけてきた。
「ねぇスパイダーマン?彼のこと知り合い?」
「んにゃ、初見よ俺も。」
「えっ?へぇー、新米ヒーローなんすね。だいぶ気合い入ってるすね彼。」
「確かに。あの格好であんな車の回してすごいなよな。」
「金持ちなんすかね。」
「さあな、まあ金なきゃあんなの乗れんよ。」
「あっやっぱそうなんすね。しっかしかっこいいなぁバットモービル。」
「わかる。俺と作るか、スパイダーモービル。」
「いや貴方にはいらんでしょ?糸でスイングすればいいでしょ。」
「………痛いところつくね君!」
「ムフフ………しかしバットマンかあ、普段何やったるんだろう。」
「んー?俺には想像できない。」
「僕はアレっすね。金持ちだから毎晩パーティーして、スーパーモデルとかハリウッドスターとか呼んで朝までパーリィナイっやってると思う!」
「典型的な金持ちだぁ…」
市民とだべりながら僕は考える。バットマンの雰囲気。あいつは………怒りを抱えていた。そしてそれと同じくらいの喜びを。子供が与えられたおもちゃに喜ぶようなそんな感じの。
◇◇◇◇◇
ニューヨーク フラッシュ邸 夜
『お疲れ様ですフラッシュ様。『オモチャ』はどうでしたか?』
「なんだ、アルフレッド、妬いてるのか?」
『はぁ?そんなわけないですよ。私みたいな『超』高性能AIがたかが高速変形するオモチャ如きをなんだと思うんです。』
「おっ、おおう。」
そいつこんなふうにプログラムしたっけ?
『貴方様がその様に作りましたからね。』
「ナチュラルに心をよむなよ。」
『貴方様がその様に作りましたからね。』
「………そうだね。」
僕の家は古い屋敷を作り替えた感じだ。僕好みにアンティークとサイバーを適度に織り交ぜまている。家には僕以外人間はいない。アルフレッドだけいれば誰も雇う必要がないからだ。
「アルフレッド、飯は?」
『フラッシュ様の大好物【ロブスターロール】でございます。』
「おお、まじ?」
『コネチカットスタイルでございます。』
熱々のロブスターにバターがかけられたサンドイッチが僕の目の前に来た。一口食べる。ロブスターの熱さと旨さがガツンと広がり、僕の疲れを癒してくれた。
「アルフレッド。映画見るから1人にしてくれ」
『承知しました。』
僕はネットフリックスをつけた。最近は日本映画もよく見ている。前世の影響で日本に馴染みがあるし、今世でも日本で3年ほど暮らしていたから日本語もわかる。
「『踊る』おもろいな。一時代築くだけある。」
だが、ロブスターロールの熱が腹に溜まり、今日の疲れが僕を大きく襲う。詰まる所………寝落ちした。
◇◇◇◇◇
夢だ。
これは夢。
ここ最近は見ていなかった夢。
あの日の夢。
僕が8歳の頃の夢。
珍しく仕事が早くきりのついたパパが僕をロブスターロールの店に連れて行ってくれた。あの当時あった店だ。
とても大きいロブスターロールを僕は食べきれなくて、ただ残すのも勿体無いからテイクアウトしたんだ。
そして先月僕の誕生日を祝ってやれなかったお詫びでおもちゃ屋に連れってくれたんだ。車のラジコン。僕が欲しかったバットモービルのラジコンだ。
嬉しかった。僕じゃ重くて大きくて持てなかったらパパに持ってもらったんだ。パパはロブスターロールとラジコンで手がいっぱいだった。
そしてそして………強盗が僕たちの前に来た。あいつは銃を持ってて、それでそれで。
銃声。
パパは僕を庇った。
強盗は逃げた。
食べ物もオモチャも転がった。
パパは僕を1人にすることを謝ってた。
倒れている僕はパパの袖元に手裏剣を持っていたのを覚えている。
もし僕がパパの両手を塞いでいなかったら………パパは………
パパ………ごめんよ
パパ………
◇◇◇◇◇
ニューヨーク フラッシュ邸 朝
僕は目元の水をタオルで拭いた。今日は休日。
ふと壁にかかっている写真を見る。パパがいてママがいて僕がいるものだ。
「成長した姿見せたかったなぁ………」
僕は部屋を後にした。
なぜあの夢を見たのだろう。
何か嫌な予感がする。
この予想は………残念ながら当たることになる。
12時間後
ニューヨーク クイーンズ 夜
僕は赤と青のタイツの男と対峙した。
100tのものを持ち上げ、
危険を予知し、
そこらの人より頭が良くて、
100mを2秒で走って、
機械と生体の蜘蛛の糸を撃ち飛ばす
そんな正義のヒーロー『スパイダーマン』が僕の前にいた。
今回は少し短めです。ヒーローにはオリジンがあります。そのヒーローがどうしてその道を選んだのか。
今回の話はその一端になった出来事を書きました。もちろんこれだけでフラッシュがバットマンになったわけではありませんが、それはまた後ほどやっていきます。
次回は10/6の予定
タイトルは『スパイダーマンvsバットマン』
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