MARVEL世界でバットマンやってます。なお転生先はフラッシュ・トンプソン 作:スローダンサー
ニューヨーク クイーンズ 夕方
【キャプテン・アメリカ 老ける!】
【危機を退けるもののアベンジャーズはどうなる?!】
市民の不安を掻き立てるような書きように僕は眉を顰める。まあ素性顔がわかってるキャプテンアメリカだからこの程度で済んでいるだろう。もしこれが僕(スパイダーマンとして)の記事ならとんでもないことになってたはずだ。
「ピーター?眉間に皺があるよ。」
MJが僕の額に指を突っ込んできた。花のように美しい匂いが鼻をそそる。………なんで人だ!
「歳の割に老けるぜそのままだと!」
フラッシュの揶揄いを僕は無視した。MJが僕(の眉間)をマッサージしてくれているのだぞ?!これ以上重要なことはあるだろうか?
「はい、皺とーれた」
指が離れる。もう少し味わいたかったが………ここで惜しんでキモがられたら嫌だ。おわおわおわり!
「さーて、そんなピーターくんが老けた原因を見せておくれよ。」
フラッシュは山のような肉体に見合う指で僕の新聞を持った。うっすいものまでよく持てるものである。
「ふーんホーン………」
フラッシュの顔にもどんどん皺が寄っていく。デイリービュークルは老化の魔術でもかかっているのだろうか?
「MJ、フラッシュの顔にも皺が寄ってるよ。」
「いいんじゃない?このまま貫禄つけさせた方がいいよ。」
「アッハイ。」
フラッシュはデイリービュークルを畳んだ。見事に皺なく四つに折られている。相変わらず見かけによらない丁寧さだ。
「てかフラッシュ。君まで老け込むことなんてあった?」
「そりゃあ………あるだろ!僕『キャプテンアメリカ』の役やるんだよ?これじゃあ………僕がじーさんになるしかないじゃないか?!」
彼のいい草には苦笑しか出ない。僕、MJ、フラッシュは劇団サークルに入っている。劇の出来ははクイーンズ1と言えるものだ。
で、今回やる劇が『アベンジャーズ』である。アクションありのミュージカル。フラッシュはそこでキャプテンアメリカをやるのだ。(僕はハルク、MJはキャプテンマーベル)
そこにこのキャップ老人化のニュースである。
「でもさフラッシュ。今回の劇は10年前のニューヨーク決戦を題材にしたもんだし、別に老けなくていいんじゃない?」
「………MJのことは確かに一理ある。そもそもじーさんになっちゃったら今まで練習した盾投げが意味ないわ!」
フラッシュは手に持っていた段ボールの盾をぶん投げた。5m飛んだ盾はくるり見事に戻ってくる。方向は………僕?
「スマッシュ!!」
僕は盾をぶん殴った。段ボールがヨレ、地面に転がる。結構速かったからちょっと本気で殴っちゃった………
「おお、むっちゃ今ハルクっぽかったよ。」
フラッシュありがと!
「ピーター………折れてるよ」
MJ引かないで………
◇◇◇◇◇
ニューヨーク クイーンズ 夕方
『ピーター………折れてるよ』
MJのドン引き顔を僕は画面越しにリアルタイムで見ていた。ここはクイーンズ郊外のガラス工場跡地。ギャング同士の裏取引があると聞きつけ、僕は屋根に張り付いていた。
今ピーターたちと会話しているフラッシュ(僕)は偽物である。LMD(ライフ・モデル・デコイ)。精密なロボットだ。僕が金持ちでよかったと思う瞬間である。
………きた。ゾロゾロと蟻のようにやってくる。マジア(marvel世界のマフィアの呼び方だ)の連中か?だが………
「アルフレッド」
『承知しました。………警察データベースで検索をかけた結果、目立った大物はいませんね。』
「まあ………くるはずはないか。」
『取引とはいえ場末。規模感的にはこんなものでは?』
「だからと言って野放しにはできんだろうに。」
『それはその通りでございます。』
「アルフレッド、LMDの操作を任せる。」
『承知しました。完璧なフラッシュ様に擬態しましょう。』
「頼りになるAIだ。」
『貴方様がその様に作りましたからね。』
「ふっ、そうだったな」
『あっ、今から演技に集中する関係上サポートできないのでお気をつけて。』
「………そうだったな」
僕は降りた。音はなかった。だから気づかれなかった。先制パンチは見事命中!
パンチ!
パンチ!
パンチ!
パンチ!
キック!
反転してエルボー!
相手を駆け上って踏み台!
飛んで跳ねて吹き飛ばしつづけた!
10秒ジャストで8人。だがマジアはまだまだいる。巣を飛び出す蟻の如く、無規則に並び、僕へ銃を撃ってきた。その数21人!
僕はマントを盾にする。ヴィヴラニムを編み込んだ特別製!その威力は………
「パーフェクだシシド………!」
灰色に鈍く紋様が走るマントに傷は一つだってない。弾丸は僕の目の前に一つ残らず潰れて落ちている。では射撃によるエネルギーはどこへ行ったのか?マントだ。ヴィヴラニムの特性、そのうちの一つが衝撃エネルギーを溜め込むというもの。
この衝撃を解き放つのは今しかない。地面にマントを叩きつける。マントに蓄積された衝撃が僕を文字通りコウモリに化けさせた。僕はワイヤーなしで空を飛んだのだ!
マントを広げ、低空飛行。マジアの連中を引き飛ばす。これで残り5人。
だが流石はマジア。数が減り僕を見ても闘志は衰えていない。銃が聞かないを見るや、彼らはガラス工場内部にふさわしいガラス瓶を武器にした。
ご丁寧に割ることで短槍にしてやがる。
僕はガラス瓶に向かってバットラングを投げた。5本、風を切る音を出しながら飛んでいく。
ヒット!
ヒット!
ヒット!
ヒット!
ヒット!
ガラス瓶にバットラングはぶつかり、粉々にした。痛いのはマジア。彼らは手に持っていたガラス瓶のかけらが刺さり軽く血を流すことになる。
僕は走った。3歩で12mほどの距離を縮め、殴った。
蹴った。
殴った。
蹴った。
殴った。
これで全員片付いた。なんともまあ手慣れたものだ。
衝撃。
電撃が走る。
しまった。
数が合わなかった。
1人足りない。
僕が最後に見たのは赤い装束の人間。
◇◇◇◇◇
ニューヨーク クイーンズ 夜
「アルフレッド、何時間だ?」
『3時間ほどでございます。』
「この周りの有様は?」
『分析しますところ、どうやら殺し合ったようですね。お互いにお互いを。』
「………気絶させたはずだが」
『あなた様が1番遅く目覚めたといったところでしょうな?』
周りはガラスと血の海だ。気絶させたはずのマジアは別の態勢で倒れていた。今度は死んでいた。この量を流せば生きられる道理は………ない。
「うわお………この惨状全くやになっちゃうよ。掃除の人がヘソ曲げちゃうぜ」
窓から入ってきたスパイダーマンだ。まずいな。この現場を見られたら『まるで僕がこいつらを殺したようじゃあないか!』
「あっ?コウモリくん?なんでここに?」
見られた。『消すしかない』。
僕は赤と青のタイツの男と対峙した。
100tのものを持ち上げ、
危険を予知し、
そこらの人より頭が良くて、
100mを2秒で走って、
機械と生体の蜘蛛の糸を撃ち飛ばす
そんな正義のヒーロー『スパイダーマン』が僕の前にいた。頭が痛い。どうする………『やるしかない。』
「コウモリくん?この惨状は一体………」
僕は喋る彼にバットラングを投げた。指の隙間に5枚ずつ、20枚のバットラングがスパイダーマンに迫る。
「おっと?!」
スパイダーセンスで避けたようだが………無駄!
今投げたバットラングはリモートコントロールが可能だ。スパイダーマンの周りを回る、衛生の如く。そして彼へ引き寄せられる、隕石の如く。
「おいおいコウモリくん!?一体どうしたっていうんだい?」
「黙れ」
「この惨状は君が?」
「黙れ」
「せめて話し合おう!ラブアンドピース!」
「黙れ!」
くう、僕のリモートバットラングは当たることがない。
センスで避けられ
ウェブで固められ
握力で壊され
壁に刺される
だめだこれではやつを『黙らすことはできない』!
僕は自動運転でモービルを呼ぼうとした。その手が止まった。ウェブ!手首が拘束され、自由が効かない!
「君の力じゃ………俺の蜘蛛糸は剥がせないだろ?」
確かに。スパイダーマンは僕の肉体スペックをその目で分析している。生憎スパイダーマン対策装備は持ってきていない。不覚だ。今あるものでなんとかするしかない。
煙幕。却下
バットラング。却下
マント。却下
アイスグレネード。却下
エレクトロチャージガン。却下
グラップルガン。却下
村正。これだ!
僕は胸のバットマークを触る。コウモリの頭から刃が飛び出す。村正は簡単に蜘蛛糸を切り裂いた!
「はあ?!ニンジャソード?!バットマンはニンジャなのかよ!」
そんな軽口を気にしてはならない。僕はコウモリマークから村正を抜き放った。
「ウェブボール!」
迫る蜘蛛糸の塊。
払う
落とす
断つ
割く
裂く
切る
斬る
僕はマウントを取った。スパイダーマンは下、僕は上。村正を振り上げ、彼のスパイダーマークに狙いを定める。
「スパイダーマン………『くたばれ』!」
僕は口にした、その言葉は、僕の頭がスッキリさせるのに十分だった。
僕は逃げた。
◇◇◇◇◇
バットマンが逃げていく。その姿を僕は見送った。おかしい話だろう。僕は彼に殺されかけた。
まあ状況を見ると明らかにバットマン1人でこれを行えるわけがない。そういう死に方をしているからだ。だから話を聞きたかったのだが………
「やっぱりな」
僕はこのガラス工場に漂うガスの成分を分析した。人間の殺戮衝動を暴走させる成分が含まれている。彼らは(バットマンふくめ)これにやられたのだろう。バットマンに至っては僕みたく防毒対策をしているようなマスクじゃなかったし。
「しかし………」
バットマンが僕にとどめを刺そうとしたあの時、あれほど驚いた口は………
ヒーローをやるのは多かれ少なかれ理由がある。原因がある。彼にとって自分のしていることは自分の思うヒーローらしがらぬことだったのだろう。
「大丈夫だといいが………」
そんな呟きは月の影になる蝙蝠の風と共に消える。
◇◇◇◇◇
ニューヨーク フラッシュ邸 深夜
僕は震えてベッドの中に入った。
くたばれ?この僕が?人を殺そうと?
しかも………しかもピーターを?
「ううぐうわぁぁ………」
僕は泣くしかなかった。
フラッシュやピーターが生きてる世界には他にもヒーローがいます。そんな彼らの現状に少しだけ触れました。
今回終始バットマンが攻めていましたが、本気になったスパイダーマンに彼の今の装備では叶いません。あくまで拘束を重視したスパイダーマンと殺すことも辞さなかったバットマンで勢いに差がついた形になります。
次回更新は10/9
タイトルは『アベンジャーズ・アッセンブル!』
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