雛森にTS転生したと思ったら草冠ポジだった   作:ナスの森

1 / 1
悦森に触発されて書き始めました。


突然の再会

 

「─────」

 

 護庭十三隊十番隊隊長、日番谷冬獅郎は絶句する。

 突如として、目の前に現れたその人物に。

 見上げたその人物の霊圧は、自身の知るソレとはかけ離れたもので、故にまだ目の前に現れた“ソレ”が彼女であると決定づけることはできなかった。

 

 だが、それを抜きにしても、決定的な証拠が、その人物の右手に握られていた。

 

「・・・・・・氷輪丸・・・・・・俺と同じ・・・・・・斬魄刀?」

 

 その人物の右手に握られていたのは、自分が背中に背負った斬魄刀とまったく同じモノだった。

 通常の刀よりも長めの刀身に、柄頭から伸びた三日月状の刃を持つ鎖鎌。そして4つの花弁を模した黄色い鍔。

 これだけでも、決定的な証拠だった。

 いや、むしろ動かぬ証拠だと言える。

 

 なぜなら・・・・・・自分以外に、この斬魄刀を持つ者など、彼女以外に、いるわけがないのだから。

 

「テメエ・・・・・・何者、だ」

 

 相手の手に握られる氷輪丸を警戒しながら、冬獅郎もまた背中から同じ氷輪丸を引き抜いて正眼に構える。

 対して相手は、同じ氷輪丸を握る手をダランとぶら下げながら、そんな冬獅朗を見下ろしていた。

 相手の容姿は、小柄な死神の女性のように見えた。女性のように見えた、という表現を用いたのは、相手の顔が面に隠されて見えていなかったからだった。

 服装は一般的な護庭十三隊の死神隊士が纏う黒い死覇装の上に、緑がかったボロボロのマントを羽織っている。

 そしてその素顔を────虚のモノと思しき仮面で隠していたのだ。

 口がなく、目の穴らしきものが頬の部位にかけてまで6つもある仮面。そしてその人物からは感じる霊圧は、紛れもなく虚(ホロウ)の物であり、だからこそ冬獅郎は目の前の人物の正体に確証が持てなかった。

 

 だが・・・・・・そんな冬獅朗の問いに答えるかのように、虚の仮面を被った死神の女性は・・・・・・面を半分だけずらし、その裏にある素顔を冬獅朗に分かるように覗かせた。

 

「噓・・・・・・だろ・・・・・・」

 

 今度こそ、狼狽えを隠せない冬獅郎。

 その顔を見違える筈がない。

 虚化の影響か、その白目は黒く染まり、黄色い瞳孔を覗かせているといった差異はあったものの、その瞳に理性の色は失われていない。

 あの時のままだった。

 

 それでも信じたくない様子で震える冬獅郎の様子に何を感じたのか、その死神の“少女”はずらしたその仮面を消し、虚化を解いたその素顔を完全に顕わにした。

 

 今度こそ、見違える筈がなかった。

 逃避のしようもない。

 

 あの日、四十六室の部屋で、冬獅朗自身の手で討った、大切な幼馴染みの少女。

 自分の手で殺した。

 ただ、同じ斬魄刀を持っているという理由だけで、奴らに、目の前の彼女と殺し合いを強要させられ、そして自分は、彼女を斬った。

 

 そして、後に隠密機動の手によって彼女は完全に屠られたと聞かされ、冬獅朗の心に大きな影を落としたあの出来事を、忘れられる筈がない。

 

 そんな彼女が、今、目の前に立って、冬獅郎を見下ろしている。

 

 

「・・・・・・久しぶりだね、“シロちゃん”」

「────ハ」

 

 

 あの時と、まったく変わらない呼び方。

 ────もう、シロちゃんじゃねえ。

 ────日番谷隊長だ。

 ・・・・・・そう言い返せれば、どれだけ楽だっただろうか。

 死んだと思っていた幼馴染みの顔は、あの時と寸分も変わらなかった。強いて違いを挙げるとすれば、右目の目元に火傷の跡があることくらいか。

 

 

「なん、で・・・・・・」

 

 

 言葉が、うまく出ない。

 斬魄刀を握る手が、喉が、足が、胴体が、震える。

 喜ぶべきはずなのに。

 生きていてよかったと、そう叫びたいのに。

 

 押し寄せる罪悪感が、そんな資格などお前にはないと言わんばかりに、その言葉が出るの遮る。

 震える手に握った氷輪丸は、目の前の彼女を葬った凶器そのものだ。

 ────巫山戯るな。

 ────コイツと斬り合うくらいなら、俺は氷輪丸を捨てる!

 かつて、四十六室の理不尽な命令に対し、冬獅郎はそう宣言して異を唱えた。

 結局自分は、氷輪丸を捨てることができなかった。いや、絆を育んだ今となって捨てるという選択肢すら頭にない。

 だから、同じ氷輪丸を持つ彼女が生きているということは・・・・・・また、彼女と殺し合いをしなければならないのかと、戦々恐々とした感情が冬獅朗の頭を支配する。

 

 

「なんで、生きて・・・・・・?」

 

 

 恐る恐る見上げた彼女の顔からは、冬獅郎を恨むような気配は感じない。

 心なしか、泣きそうな顔になりながらも、冬獅郎を憎むような闇は一切感じられなかった。

 それが余計に、冬獅郎の胸中を焦燥へと誘った。

 最早、この場において、十番隊隊長を名乗れる人物などいない。

 彼女の前では、ただの冬獅郎でいることしか、彼にはできなかった。

 

 冬獅朗の疑問に、彼女──雛森桃は困ったように微笑んだ。

 気まずそうな笑い。

 そこからは邪気は感じられない。

 

 

「俺を・・・・・・憎んで、ないのか?」

 

 

 そんな問い、聞くまでもなかった。

 彼女は、どこまで優しく、そして明るい少女だったから。

 それでも冬獅朗は聞かずにはいられなかった。

 

 そんな冬獅郎の、絞り出た疑問に、雛森は目を瞑りながら首を横に振って否定する。

 その返答はある意味、冬獅朗にとっては残酷だった。

 いっその事、一思いに恨んでくれれば、一思いに殺しに来てくれれば、自分は躊躇もなくそれを受け入れられたというのに。

 

 だからこそ、冬獅朗の中に次の疑問が浮かび上がった。

 

 ならば、なぜ今彼女は、斬魄刀を──氷輪丸を抜いて自分の前に立ちはだかっているのだろうと。

 自分を恨んでいないというのであれば、また別の理由が。

 

 

「ごめんね、シロちゃん」

「ッ!?」

 

 

 雛森の言葉に思考が遮られ、冬獅朗は思わず氷輪丸を構える。

 敵意は感じない。殺意も感じない。

 だが、此方を押しつぶすような霊圧を、冬獅朗は明確に感じ取った。

 その霊圧は隊長格と遜色ないモノであり、護庭十三隊の死神として構えざるを得なかったのだ。

 だが、途端に頭にフラッシュバックしてしまう。

 

 

「ッ!!」

 

 

 四十六室の会議室の真ん中で、彼女と斬り合った光景を。

 自分の刃を受け入れた、彼女の悟ったような笑顔を。

 忘れられない、その光景を。

 

 トラウマに苛まれる冬獅朗の事などお構いなし、雛森は発した霊圧を冬獅朗に向けたまま、謝罪した。

 

「今はこうするしか、ないの。だからごめんね“シロ”ちゃん・・・・・・卍解(ばんかい)」

 

「ッ、卍解(ばんかい)!」

 

 卍解・・・・・・彼女の言葉に身構えた冬獅朗もまた、オウム返しのように叫んでしまう。

 だが、もう止められなかった。

 敵意も、恨みもない。

 だが、その言葉だけで、彼女は本気で自分の前に立ち塞がっているということだけは、理解してしまった。

 そして、2人の姿が変わる。

 

 

 

「大(だい)紅(ぐ)蓮(れん)氷(ひょう)輪(りん)丸(まる)!」

 

 

「氷(ひょう)万(ばん)輪(りん)華(かの)丸(まる)鏡(かがみ)」

 

 

 

 同じ斬魄刀が、しかして異なる卍解形態となって、激突した。

 

 

     ◇

 

 

 ・・・・・・どうして、どうしてこうなったんだろう・・・・・・。

 

 ・・・・・・シロちゃんとは、もう斬り合いたくないのに。

 

 ・・・・・・運良く、劇場版の草冠と同じように王印の力で生き残れたから、後は虚圏(ウェコムンド)でインやヤンと一緒に静かに暮らしたいだけだったのに。

 

 ・・・・・・あぁ、でも・・・・・・シロちゃんの曇り顔・・・・・・やっぱり素敵だなぁ・・・・・・。

 

 そんな思考をしながら、私(俺)は四十六室でシロちゃんと斬り合いをさせられ、隠密機動に処分されてから今日に至るまでの経緯を振り返るのだった。

 




Q.なぜ四十六室で冬獅朗の刃を受け入れた時、笑顔になったんですか?
オリ主「シロちゃんの絶望顔があまりにも最高すぎて」

尚、斬り合い自体はしたくなかったし、最初から見たいと思って斬り合いをした訳ではない模様。
ちなみに草冠とは異なり卍解は習得済みで、虚化もできる。仮面の形は映画で草冠が付けてた仮面と同じ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

その菊、手折られず(作者:もちがゆ)(原作:BLEACH)

もしも、少女乱菊さんがヨン様の部下に魂魄を奪われなかったら……という妄想を元に、原作知識まで持たせて大暴れしてもらい、遂には卍解に至……ったらいいなぁという内容。▼憑依と言うか人格混ざっちゃって本来の乱菊さんとはかけ離れてます。


総合評価:2640/評価:8.68/連載:28話/更新日時:2026年09月14日(月) 19:26 小説情報

BLEACHの世界に転生した俺は、初代剣八になるらしい(作者:まいちー)(原作:BLEACH)

刀を愛しながら、本物の刀を振るうことなく死んだ男。▼平安の世に女――卯ノ花清子として転生し、再び生涯を終えた彼が次に目覚めたのは、尸魂界だった。▼そして気づく。▼自分は後に、初代剣八――卯ノ花八千流となる存在なのだと。▼原作の卯ノ花を超えるため、清子は一本の錆びた刀を手に剣を学び始める。▼やがて彼女は、天下にあるあらゆる剣術を求めて歩き出す。▼これは、一人の…


総合評価:3009/評価:7.98/完結:54話/更新日時:2026年10月07日(水) 21:05 小説情報

転生したら初代護廷十三隊だった件(作者:宇川ゆうたろう)(原作:BLEACH)

なんやかんやで死んで転生したら初代護廷十三隊でした。原作開始まであと1000年!?長すぎんだよクソが!!▼初代護廷十三隊隊長の一人・王途川雨緒紀に転生してしまった主人公が、殺伐とした他メンバーにだんだん染まっていき倫理観×、霊圧◎、才能◎、斬魄刀◎、原作知識◎の圧倒的強さで敵を倒していくお話です。▼毎週火曜日19時に投稿してます。▼注:初代護廷十三隊メンバー…


総合評価:2381/評価:7.72/連載:14話/更新日時:2026年10月06日(火) 19:00 小説情報

トリコの世界に転生したら、ブルーニトロに改造人間にされた話(作者:あまんと)(原作:トリコ)

四獣に拉致られて、ブルーニトロに人体実験された結果、身体に八王を宿してしまった女の話。


総合評価:1336/評価:8.5/連載:4話/更新日時:2026年10月02日(金) 22:14 小説情報

覇気だけが全てを凌駕する世界で「斬れぬものなど、あんまり無い!」(作者:麦らァのみょん)(原作:ONE PIECE)

魂魄妖夢としてTS転生したら目覚めた場所はワンピースの世界、最弱の海イーストブルー。▼流れで麦わらの一味に誘われてとりあえず半霊探しの旅に出る。▼


総合評価:1229/評価:8.07/連載:10話/更新日時:2026年10月18日(日) 12:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>