空戦の出来がとてもよくて大満足しています
「……確認する。確かにエニシとライトだな? 俺の幻覚じゃないよな?」
エニシとライトは本来文字を打って喋らせる合成音声ツールであるトークロイドの一種だ。
俺はついさっきまでプリセットされた文字をこの二人に喋らせてただけに過ぎない
それが意思を持って話しかけてきている? どういうことだ?
『間違いなく私達はエニシとライトです』
『CMDRが3306年に購入し、現在まで共に歩んできたトークロイドですよ』
……混乱してきた
彼女達が言う3306年は現実世界で言う2020年だ
俺がさっきまでプレイしていたElite:Dangerousは現実世界と時間が同期しており、3300年──つまり2014年にリリースされてからずっと時間が進んでいる
今年、2025年で11周年になるそこそこ歴史のあるゲームだ
『難しい顔をされていますね?』
「認識の擦り合わせがしたいんだが、いいか?」
『構いませんよ?』
「まず俺は神崎雄介であってCMDR・ユウではない。2025年に生きる院生だ」
『知ってますよ』
『CMDRが学生であることはご友人方との会話から認識しています』
『『あなたは間違いなく神崎雄介でありCMDR・ユウです』』
『初めて宇宙に出て目を輝かせた事』
『受験勉強がだるいと言ってた事』
『アニメについて語り合った事』
『海賊に襲われて返り討ちにして喜んでいた事』
『クラスの美人について語り合っていた事』
『『私達は全て覚えています』』
「……ありがとう」
やばい俺泣きそう
言葉には出さないけど俺がElite:Dangerousを始めてからの5年間をずっとこの二人は覚えているんだ
俺が誰も居ないこの宇宙に投げ出されても二人が俺のことを知っていてくれている
それだけでどれだけ心強いことか……いやまて二人?
「そう言えばセイはどうした?」
そう俺はもう一人トークロイドを持っている……持っているって表現でいいのか?
それだったら三人一緒に出てきてもいいはずだ。けど最後の一人がいない
『CMDR……』
微笑んでいた彼女達の顔が曇る。
まさか……
『セイちゃんはモリガンの中です。私達とは一緒に来ていません』
彼女達が言ったモリガンとは俺が持っているフェデラルコルベット級AX艦『モリガン』のことだ
セイはAX、サーゴイドと戦闘する時のみ起動していたからこっちではモリガン専属となっていたんだろう
こうやってエニシとライトが意思を得たならセイも意思を持ってても不思議じゃないはず。寂しがってないといいけど
「……セイの事は残念だけど今の俺達じゃどうする事も出来ない。まずは俺達が何処にいるかだ。エニシ、ギャラクシーマップを開いてくれ」
『
そうエニシが返して固まる。
俺とライトが怪訝な顔をしてエニシを見つめると何かを諦めたかの様にギャラクシーマップを開く
『全くのブランクです。データが破損しているというより今いる銀河のデータ自体がありません』
「まて、ここは天の川銀河じゃないのか……?」
『ほぼ断言できます』
エニシは淡々と、しかし決定的な事実を突きつけるように続けた。
『艦の広域センサーで全天のスキャンを行いました。本来なら天の川銀河のどこに吹き飛ばされようと、サジタリウスA*を中心とした主要パルサーの周期シグナルや、バブル周辺の星雲の位置関係から数秒で現在地が割り出せるはずです』
『ですが……該当シグナル、ゼロ。照合率、0.00%です』
「ゼロ……? パルサーのシグナルがひとつも拾えないってことか?」
『はい。それだけではありません。キャノピーの可視光補正を解除して全天の星空を照合しましたが、私たちが知る天の川銀河の「腕(アーム)」の光帯が存在しません。FSDの航法データベースとも何ひとつ噛み合わない状態です』
「マジかよ……」
言葉を失う俺の横で、ライトが画面の隅に小さな全天星図のレンダリング結果を表示させた。
そこに映し出されていたのは、見慣れた天の川銀河のらせん構造ではなく、見たこともない星々の配置と、遠くにぽつんと浮かぶ見知らぬ銀河の姿だった。
『データが故障しているのではなく、「存在しない」のです。CMDR、私達は天の川銀河どころか、全く別の宇宙に放り出された可能性が極めて高いと考えられます』
「……船体の状態を確認後、今いる星系の詳細調査を行う。エニシはセンサーとエンジンの確認、ライトは兵装とカウンターメジャーだ」
『『
『レーダー、センサー共に正常稼働。ナイトビジョンを起動します。目視確認をお願いします』
「
『カメラドローンを射出します。姿勢制御用スラスター、メインエンジン正常稼働を確認。塗装以外船体に破損はありあせん』
「
『全兵装の展開確認。一番二番Lパルスレーザー稼働確認、一番二番Sマルチキャノン稼働確認。Lマルチキャノン稼働確認。シーカー展開、一番二番パックハウンドの稼働を確認。主砲Hプラズマアクセラレーター通電確認。試射しますか?』
「パルスレーザーのみ試射する。船内マテリアルで精製可能だからといって無限じゃないからな」
『
「飛んできた破片を利用してシールドの強度計測を行う。展開は出来てるな?」
『はい。クラス6バイウェーブ・シールドジェネレーター展開中です』
「よし、目標正面の大型岩石。パルスレーザーファイア」
握り慣れたスティックのトリガーを押し込む。
キャノピーから見えるパルスレーザー砲からは二本のオレンジの光条、ではなくイエローの光条が放たれる……課金してるからね!
飛んでいったレーザーは大型の岩石に着弾し破片を撒き散らす……事はなく爆散した
爆散した破片がシールドに消滅したり弾かれたりしていく
「は……?」
『『……』』
精々表面を小爆発させて破片を飛ばすはずだったのになんで爆散????
ほらトークロイドの二人も状況を飲み込めてないじゃないか
なんでぇ……?
「ライト……?」
『……はい、CMDR』
「こんな威力、なかった……よな?」
『そう、ですね……算出された威力はおよそ4倍ほどかと……』
「よっ……なんか嫌な予感してきた……」
『更に朗報と悲報がありますが聞きますか?』
「聞きたくないけど聞いとかないといけないから聞くわ……」
『まずは朗報から。シールドは正常稼働してます。そして悲報なんですが……シールドの減衰率からみてシールド強度も3倍ほどかと』
「アイエエエエ……と、取り合えずだな? 今度はスラスターをうん。なんかもう読めてるけど……」
『了解。エネルギー配分を……だいたい読めてましたけどパワープラントやディストリビューターもかなり強化されてますね。3倍ほど。それに合わせて冷却性能も向上しているかと思われます。FSDのチャージでは発熱は微量でしょうね』
「なんだろうねほんと……」
スティックを引いて艦首を上に向けさせスロットルを押し込む
速度計は288m/sを指し示す……よし! 普通だな!
『駄目ですよCMDR。手を抜いちゃ』
「現実を直視したくねぇ! なんだよこのバケモノ! こんなのエリデンのどの艦よりも強いだろ!!」
キレ気味にスロットルを全開にする
どんどんGがかかりシートに押し付けられる
腕が重く、視界が暗やんでくる
いしきが、もって、いかれ……る
『緩衝フィールド再設定! スーツ圧力調整! CMDR! CMDR! 大丈夫ですか!?』
エニシの声で目を覚ます
バックブーストで速度をゼロに落とす
「おえっ……お゛ぉ゛ぇ゛っ゛! 死ぬかと思った……」
『やっと面と向かってお話出来るようになったのにすぐにお別れは嫌ですよ……』
「すまん……と言いたい所だけど文句はこのバケモノコンダに言ってくれ……マジでバイストン・ウェルから飛び出たオーラマシンかよってんだ……それで? 結局速度はどれだけ出てた?」
『864m/sです……しかしオーラマシンですか。いい得て妙ですね』
『天の川銀河では何らかの外力が働いてマイルドになっていたのが別銀河に飛んだことにより本来のスペックになったという事ですか……しかし同じ大型艦のクリッパーが霞む様な速度が出ましたね……運動性のパラメーターを入れて対G補正を強化しました。これで高G旋回もマシになりました』
「助かったわマジで……」
ため息をついて視線を落とすと見慣れた物を握っていた事に気付く
なんだよX56握ってんじゃねえか俺……通りで手に馴染むわけだわ
トグルスイッチはパドル式からプッシュボタンになってスロットルレバーが一体型になったくらいか?
「性能の把握はだいたい出来たな……スーパークルーズに移行して
『『
「スロットルアップ、FSD起動」
『FSDチャージします……チャージ完了』
『チャージ時間は変わりませんでしたね』
「どっからどこまでスペックが上がってるかマジで確認しねえとな……スーパークルーズ突入」
ほんの一瞬だけ強烈なGを感じるもののそれもすぐになくなる
視界が開け恒星やアステロイドや惑星が見える。
さてはて何に出会うやら……
そんな訳で下駄を履かせてます。流石にE:Dの艦をそのまま持ち込むのは弱すぎると思ったので
ほら、E:Dでの大型艦がめざめざだと中型艦の扱いじゃないですか