アベンジャーズの歴史には仮面ライダーの歴史をぶつけんだよ! 作:革命オンエア
その日、永田町の総理大臣官邸の地下深くに設けられた極秘執務室には、ただならぬ緊張感が漂っていた。デスクの前に立つ一人の若者。まだ二十代前半のその青年は、背筋を真っ直ぐに伸ばし、正面の「最高責任者」――すなわち、日本の内閣総理大臣を静かに見据えている。
「――信じがたいが、これが君の『真実』というわけか」
総理が手元の極厚のファイルをパラパラとめくった。そこには、常識ではおよそ考えられない、一人の人間の「異常な記録」が並んでいる。
青年――夜桜御剣(よざくらみつるぎ)。彼は、この世界に「転生」した男だった。目覚めた時、彼は前世の記憶を持ったまま、マーベル・シネマティック・ユニバース…通称MCUの世界、後にサノスによって宇宙の生命が半分にされる絶望の未来が待つ世界に放り出されていた。悲しいことにMCUの知識はまだまだにわかレベルである。
しかし、神の悪戯か、それとも運命の導きか。転生した彼に与えられた「初期ステータス」は、あまりにも狂暴なスペックだった。
第一に、昭和特有の馬鹿スペックを誇る「改造人間」の肉体。筋力、耐久力、反射神経。そのすべてが現代科学の測定不能領域にある。生身で時速数百キロで走り、数トンもの鉄塊を素手で歪ませ、拳銃の弾丸程度なら肌で弾き返す。肉体のポテンシャルだけで、すでに並の超人を遥かに凌駕していた。
『たとえ変身できなくても、ベルトさんがいなくても、俺は刑事で仮面ライダーだ!!』を物理でやっちゃった奴である。スペックに物言わせて、上官たちの顎を閉まらなくしてやったぜ。真ん中の文章は違うけど。これをショッカーとかの力なしで成り立っているんだから、いいとこどりだ。改造人間であることに悩まなくても良くなった。まぁ余命で死んだ俺からしたら、改造人間になることに全然賛成だったんだけどね。俺自身の仮面ライダーとしての魅力が一つ無くなっちゃったわ。
第二に、「仮面ライダービルド」に登場する葛城忍・葛城巧・桐生戦兎並みかそれ以上の天才的な頭脳。あらゆる物理学、量子力学、生物工学、機械工学の知識が脳内に完璧にインストールされている。彼らにとって科学とは「可能性」であり、御剣の頭脳はすでに、この世界の最先端技術を数十年先を行くシステムを設計できる領域に達していた。
これもびっくりした。なんか、目に見えるものすべてが理解できるようになったんだよね。感覚としては、三人の頭脳を足して2で割ったみたいな感覚。よかったわ~巧だけじゃなくて。ぜったい悪魔の科学者になってたからな!『私、失敗しないので』という大門美知子スタイルでやっていく予定だったので、これも都合がよい。とことん自分に甘いねこの世界は。
第三に、「地球(ほし)の本棚」にアクセスする能力。頭の中でキーワードを検索すれば、この世界の過去、現在、そして「映画のシナリオ」という未来の情報まで、あらゆるデータがキーワード一枚で瞬時に閲覧できる。にわかな記憶しかなくても、この本棚をめくれば完全な正解に辿り著けるのだ。
『あーおれ全知になっちゃったよー』…うん、逆に何を持ちえないんだろうな俺。ここまでくるとなんか申し訳ないと思うのが普通ですが、この世界はMCUなので多分そんなことはないと思う。読んだことないけどコミックではそうでしょ?俺なんか秒でやられちゃうんじゃない?
そして極めつけは、『すべての仮面ライダーに変身できる能力』。天才的な頭脳を用いて、彼はすでに自身の肉体と『変身システム』を完全にリンクさせ、いつでもあの偉大なる戦士たちの力を引き出せる状態を作り上げていた。
「入隊からわずか数ヶ月。レンジャー訓練をトップで通過。その後、特殊作戦群――我が国の最高機密である『S』の選考試験を、負傷者ゼロ、全科目の歴代記録を塗り替えての合格。君のフィジカルは、すでに生物の域を超えている」
眼鏡を押し上げ、鋭い視線を瞬に向ける尾崎健吾(おざきけんご)総理大臣
尾崎「夜桜。君は一体、何者なんだ?」
御剣は表情を崩さない。常に冷静で、同時にどこか飄々とした余裕を漂わせていた。
御剣「ただの愛国者ですよ、総理。この力で、世界の均衡を少しばかり守りたいと思っている、ただの天才科学者です」
総理はふう、と深く息を吐き、机の上の資料を閉じた。
尾崎「今、世界は変わりつつある。アメリカでは『ハルク』と呼ばれる怪物の研究が進み、サドウス・ロス将軍率いる米軍の一派は、超人兵器の独占を目論んでいる。国際戦略秩序を揺るがす国際機関『シールド(S.H.I.E.L.D.)』の動きも不穏だ。……このままでは日本は、超大国の超人パワーバランスの波に飲み込まれる」
総理の目は真剣だった。彼は、いつかアメリカが超人や超科学兵器で世界を牛耳ろうとする未来を危惧していた。だからこそ、日本政府独自の「切り札」が必要だったのだ。
尾崎「君の戸籍、自衛隊での公式記録は本日をもってすべて抹消する。君を私直属の『極秘エージェント』に任命する。日本の法も、国際条約も関係ない。我が国の未来を守るため、君の判断で動き、世界の脅威を監視・排除しろ。コードネームは――『ビルド』だ。」
御剣「ありがたく拝領します……ちょうど、面白いニュースが飛び込んできたところですしね」
御剣は不敵に微笑んだ。彼の脳内にある『地球の本棚』が、たった今、ある重大な世界の転換点を捉えていた。
検索ワード:トニー・スターク、中東、テロ組織テン・リングス
頭の中に広がる真っ白な書庫。そこから引き出された本には、アメリカの巨大軍需企業『スターク・インダストリーズ』のCEOであり、天才セレブ社長であるトニー・スタークが、アフガニスタンで拉致されたという事実が記されていた。
すべての始まり。映画『アイアンマン』のシナリオが、ついに幕を開けたのだ。
御剣「総理。アメリカの傲慢な天才社長が、砂漠の真ん中で迷子になったようです。スターク社の超科学がテロリストやロス将軍の手に渡れば、それこそ世界の均衡が崩れる。少し、様子を見てきますよ。彼が『鉄のクズ』になるか、それとも『英雄』になるか、特等席で見届けたい」
尾崎「許可する。国際問題にならんよう、派手にやるなよ」
御剣「善処します。……さぁ、実験を始めるとしましょうか」
そう言い残し、瞬は風のように執務室を後にした。彼の背中は、これから始まる世界の激動を前に、ただ静かに昂っていた。
御剣「あっ、シールドのような機関作るときはCodeって名前にしときますね。今のところそんな予定ないですけど」
尾崎「まぁ…好きにすると言い。助けが必要な時は遠慮なくいってくれ」
御剣「ありがとうございます~」
御剣(折角エージェントになったんだから、ゼッツ要素含まないとね。コードネームビルドて…なんか複雑)
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アフガニスタン、荒涼とした岩山が続く無法地帯。
照りつける太陽の下、テロ組織「テン・リングス」の拠点は、異様な熱気に包まれていた。現地から数百メートル離れた岩陰に、如月瞬の姿はあった。アメリカでの活動用として、黒いタクティカルウェアに身を包んでいる。生身の改造人間スペックを持つ彼にとって、この砂漠の酷暑など涼風に等しい。「地球の本棚」を開く。
御剣「……なるほど。本来ならここでインセン博士が命を懸けて突撃し、トニー・スタークの『マーク1』が起動する時間を稼ぐ。だが、今回は僕がその役目を引き受けよう。日本の総理大臣から『世界の均衡を守れ』と頼まれているからな。少しばかり『先輩のヒーロー』として、手助けをしてやるとしよう」
御剣は腰の前に両拳を構えた。天才的な知能によって、彼の肉体そのものに、ヨクトレベルに埋め込まれた変身システム。
ジャキィィィン!!
瞬の腰に、重厚な金属音と共に「タイフーン」――あの伝説の変身ベルトが出現する。
中央の風車が、砂漠の熱風を受けて猛烈に回転を始めた。瞬は右腕を鋭く、左から右へと振り、風を切るようなイメージでポーズを取る。前世から憧れ続けた、すべての始まりの構え。
御剣「ライダー…変身!!!とぉーっ!!!」
高く跳び上がると同時に、凄まじい風圧が周囲の砂を巻き上げた。眩い光と風の中で、瞬の肉体が組み替わっていく。
着地したその姿は、カードの力でも、偽物のスーツでもない。深緑のマスク、怪しく輝く赤い複眼。胸を覆う頑強なコンバットスーツ。そして、砂漠の風に激しくなびく一本の、鮮烈な赤いマフラー。このマーベルの世界に、本物の「仮面ライダー1号」が誕生した瞬間だった。
御剣「原点には原点をぶつけんだよ」
1号となった瞬は、地面を力強く蹴り飛ばした。ズゴォン!と、凄まじい爆音と共に地面が陥没する。昭和の改造人間フィジカルに1号の本物のスペックが乗ったその跳躍は、一瞬で数百メートルの距離を飛び越え、テン・リングスの拠点である洞窟の入り口へと文字通り「着弾」した。
ノートパソコンの画面には、マーク1の起動パーセンテージが非情に表示されていた。
『62% …… 65% …… 』
「スターク! 連中が来るぞ! 時間が足りない!」
と、焦るインセン博士が自動小銃を手に取り、通路へ飛び出そうとした。
「待て、インセン! 行くな!プラン通りにやれ!」
マーク1の重い鉄の装甲に拘束状態であるトニー・スタークが叫ぶ。
足元に落ちていたARを手に取り、インセンが通路に飛び出した瞬間、そこへ突入してきたテロリストの集団と鉢合わせになった。兵士たちが一斉に銃口を向ける。インセンが覚悟を決めて、特攻を仕掛けるその時、
「ハッ!」
洞窟の闇を裂いて、一条の影が飛び込んできた。凄まじい回転蹴りが、テロリストたちの銃を一瞬で叩き折る。衝撃波だけで兵士たちが吹き飛び、壁に激突して気絶した。
インセン「……な、何だ!?」
インセンが腰を抜かす。そこに立っていたのは、赤いマフラーをなびかせた、バッタの姿を模した異形の戦士――仮面ライダー1号だった。本物のヒーローが放つ圧倒的な威圧感が、洞窟の空気を支配する。
1号「君は下がっているんだインセン博士、ここは僕が引き受ける、命を無駄にするな」
そう言い残すと、洞窟の奥から次々と押し寄せるテン・リングスの増援に向かって、悠然と歩き出した。ガガガガガガガ!と激しい銃撃が1号の肉体に浴びせられるが、避ける動作すらしない。
1号「痛くも痒くもないな。これが昭和の力だ。鎧武、見てるか?」
弾丸は1号の強靭な胸部装甲に弾かれ、火花を散らすだけだ。1号は一歩踏み出し、軽く拳を振るった。
ドゴォッ!
ただの軽いストレート。しかし、改造人間の怪力によって放たれた一撃は、兵士を数十メートル吹き飛ばし、岩壁にめり込ませた。
「化け物め!」
ロケットランチャー(RPG)が1号に向けて放たれる。
1号は向かってくるロケット弾を、目にも留まらぬ速さで素手で掴み取った。
1号「おっと、危ないな。これはお返しするよ」
腕のバネを使い、野球のボールでも投げるかのようにロケット弾を投げ返す。
通路の奥で大爆発が起き、敵の突撃部隊は一瞬で壊滅した。その頃、マーク1の起動が『100%』に達した。プシューッという蒸気音と共に、暗闇の中から金属が激しくぶつかり合う重低音が響き、全身を荒削りな鉄の装甲で固めた巨体――アイアンマン・マーク1が姿を現した。
トニー「インセン! 無事か!?」
マスクの隙間からトニー・スタークの焦燥に満ちた声が響く。だが、彼が目にしたのは、無傷のインセンと、その前に転がるテロリストの山、そして見慣れぬ『緑の戦士』だった。
トニー「……なんだ、これは? それは米軍の新型スーツか? いや、そんな開発データは……」
天才トニーの脳がフル回転するが、目の前の戦士の正体を割り出すことはできない。瞬は1号の姿のまま、ゆっくりとトニーに歩み寄った。
1号「通りすがりの、極秘エージェントだ……実験は成功のようだな、トニー・スターク」
トニー「私の名前を……?」
1号「君のその歪な鉄のスーツ、悪くない。だが、右脚のサーボモーターの出力バランスが3%ズレている。そのままだと外に出た時、砂漠の砂を噛んで転ぶぞ。天才なら、もう少しクリアランスに気を配るべきだったな」
トニー「何だと…」
トニーは驚愕した。この極限状態の洞窟で、自分が即興で作ったマーク1の欠陥を、初見の一瞬で見抜かれたのだ。それも、軍事の専門家ではなく、この奇妙な格好をした男に。
1号「さあ、外の連中を一掃して、家に帰ろう。ここからが、君の『アイアンマン』としての始まりだ」
1号は赤いマフラーを翻し、洞窟の出口に向かって歩き出した。トニー・スタークは、重い足音を響かせながらその背中を追う。インセンの命が救われ、歴史が今、本物(見た目だけ)のヒーローの手によって塗り替えられた…
御剣(やべ、アイアンマンって言っちゃった。確か、自分で名乗ったわけじゃないんだよね…やらかした)
アフガニスタンの砂漠に、アメリカ軍の救助ヘリの爆音が響き渡る前。
御剣は、すでに仮面ライダー1号の変身を解除し、生身の姿に戻っていた。黒いタクティカルウェアを着こなすその佇まいは、二十代前半とは思えないほどの静けさと威厳を放っている。その傍らには、マーク1の装甲を脱ぎ捨てて疲弊しきったトニー・スタークと、奇跡的に生き残ったインセン博士がいた。
トニー「……インセン、お前はこれからどうする?」
トニーが、砂の上に座り込んだまま尋ねた。インセンは故郷の家族をテロによってすべて失っている。帰る場所など、もうどこにもなかった。
インセン「私には、もう何も残っていないよ、スターク。だが、あそこで死ぬはずだった命だ。これからは、私の命を救ってくれた彼の歩む道を、少し後ろから見守らせてもらおうと思っている」
インセンは穏やかな笑みを浮かべ、御剣を見上げた。彼にとって御剣は命の恩人であり、同時にその背負うものの大きさを本能的に察したのだ。科学者として、そして一人の大人として、この若き天才の「おやっさん」になろうと決めた瞬間だった。トニーとは、あくまで親友として接するつもりだ。
トニー「俺の命の恩人でもある。インセン、お前さえ良ければ、カリフォルニアにある俺の自宅へ来い。一生遊んで暮らせるだけの環境を用意する」
トニーがそう提案すると、御剣は静かに首を振った。
御剣「トニー、インセン博士を…いや、これからおやっさんと呼ばせてもらおう。おやっさんを君の家に居候させるのは構わない。だが、それは彼が一人でも生きていける力を持った上で、君の判断として受け入れるものだ。勘違いしないでほしい。私たちは君の慈悲を乞うているわけじゃない」
トニー「……分かったよ。お前たちのプライドは安くないってわけだ。なら、条件を変えよう。インセンには、俺のプライベートな技術顧問兼、良き友人として自宅に居てもらいたい。それなら文句ないだろ?」
トニーのどこか折れたような言葉に、御剣はフッと口元を緩めた。
御剣「いいだろう。おやっさん、スタークの家で美味いものでも食べさせてもらうといい」
インセン「勝手に話を進めるな……スターク、君の家のコーヒーは美味いといいんだがね」
こうして、ただの科学者でありながら、後に数々の世界の危機で地味にMVPレベルの立ち回りを見せることになる『おやっさん』が、トニーの自宅に迎え入れられることが決まった。やったね!
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それから数日後。アメリカ、カリフォルニア州マリブ。
太平洋を見下ろす崖の上に建つトニー・スタークの超豪邸の地下ガレージ。普段はトニーの高級外車や開発機材が並ぶその場所に、日本政府の極秘ルートを使って運ばれてきた「巨大なコンテナ」が鎮座していた。御剣が私物として持ち込んだ、彼専用の「移動式ラボ」の中身だ。トニーとインセン、そして人工知能のジャーヴィスが見守る中、コンテナの重厚なハッチがプシューッと音を立てて左右に開いた。
御剣「さて……スターク。君のマーク1も面白いが、これが私の『科学』の結晶だ」
御剣が中に足を踏み入れ、壁のスイッチを入れる。一斉に点灯した眩いLEDライトが、ラボの全貌を照らし出した。その光景を目にした瞬間、天才トニー・スタークの息が、完全に止まった。反応が楽しみだ。
トニー「……お、おい。ジャーヴィス、俺の目は確かか?」
ジャーヴィス「スターク様。私のスキャン機能も、一時的なエラーを起こしているようです。」
壁一面のガラスケースに、「ズラリと並べられた無数のベルトと武器」。それは、天才的頭脳を用いて、この世界の物理法則に適合させ、完璧に造り上げた「仮面ライダーの変身システム」の群れだった。中央には、先日の砂漠で風を孕んだ、重厚な金属の輝きを放つ「タイフーン」。その隣には、古代の超エネルギーを秘めた金色の「アークル」。さらに、フォトンストリームと呼ばれる赤い光のラインが走るメカニカルな「ファイズドライバー」。自動車のダッシュボードを思わせる未来的なディスプレイが怪しく明滅する「ドライブドライバー」は、人工知能を搭載した意思を持つベルト。地球の記憶を内蔵したガイアメモリが差し込まれた、左右非対称の「ダブルドライバー」。そして、歯車と数式のホログラムが周囲に浮かび上がる、「ビルドドライバー」。
それだけではない。
壁には、あらゆる装甲を一撃で叩き割るであろう無骨な大剣、超高熱のプラズマを放つ銃、破格のコスパで次元を切り裂くような剣が、完璧な整備状態で整然とディスプレイされている。トニーは、まるで宝の山を前にした子供のように、狂ったように目を輝かせながらケースに顔を近づけた。
トニー「信じられん……! このエネルギーの波形は何だ!? アーク・リアクターとは全く違う、未知の粒子がこの小さなベルトの中で循環している。お前は、一体どれだけの天才なんだ? 物理学の教科書を何冊書き換えればこんなものが作れる!?」
世界最高の科学者を自負していたトニーのプライドは、この瞬間、完全に粉砕された。御剣のラボにある技術は、トニーがようやく辿り着いた「マーク1」の数十年、あるいは数百年先を行くものだったからだ。インセンは、呆然とするトニーの肩を叩きながら、おやっさんらしくクスクスと笑った。
インセン「私たちはまだまだ若いということだな」
御剣は、ケースの前に立ち、愛用するビルドドライバーを軽く指で弾いた。
御剣「驚くのは早いさ、スターク。これはまだ、私のコレクションの一部に過ぎない。君がこれから作る『オモチャ』が、これらに追いつく日を楽しみにしているよ」
圧倒的な立場の違いをトニーに見せつけた御剣。世界のバランスを握る二人の天才科学者の共同生活が、ここから始まる。
御剣(なんかMCUって基本ギスギスしてるらしいから、いったんなんか傲慢気味のプライド砕いとこっと)
そして、御剣の視線は、すでに次の歴史の転換点――スターク・インダストリーズの「帰国記者会見」へと向けられていた。
トニー・スタークの電撃的な生還劇から数日。スターク・インダストリーズの本社広報ロビーは、世界中から集まったジャーナリストたちの熱気とフラッシュの光で埋め尽くされていた。誰もが、砂漠の地獄から生還した天才社長の第一声を求めていた。その狂乱の記者席の最後列に、男が一人、御剣は静かに壁に背を預けて立っていた。日本の総理大臣から直々に全権を委任された、国家最高機密のエージェントだ。今日の彼は、トレードマークのタクティカルウェアを脱ぎ捨て、寸分の狂いもなく仕立て上げられた漆黒の高級スリーピーススーツを身に纏っていた。ネクタイの結び目から革靴の輝きに至るまで、非の打ち所がない洗練された佇まい。ただそこにいるだけで周囲のジャーナリストたちが無意識に道をあけるほどの、異様なオーラを放っていた。
御剣「……さて、歴史の特等席だ」
特等席っていっても、常日ごろから特等席に座ってるようなもんだけどね。だが、実際に自分の目で見る歴史のうねりは、にわかな映画の知識とは比較にならないほど、生々しい熱量を持っていた。ステージの裏から、車椅子を断ったトニー・スタークが姿を現した。その顔はやつれ、しかし瞳の奥には、砂漠で手に入れた「新たな覚悟」の炎が宿っている。
トニーのすぐ後ろには、父親の代からの相棒であり、会社の副社長であるオバディア・ステインが、いかにも親身な笑顔を浮かべて寄り添っていた。トニーは演台の前に立つと、詰めかけた記者たちを見渡し、突如としてその場にペタンと座り込んだ。
トニー「みんなも座ってくれ。その方が話しやすい」
会場がざわめく中、トニーは砂漠での経験、そして自社の兵器が無関係な人々の命を奪っていた現実を、静かに語り始めた。
オバディアが
「トニー、冗談はそこまでにして――」
と、苦笑いで取りなそうとするが、トニーの目は真剣そのものだった。そして、歴史を動かす一言が放たれる。
トニー「私は、スターク・インダストリーズの軍事産業からの完全撤退を宣言する。本日をもって、即時、兵器製造部門を閉鎖する」
――ドォッ、と会場が文字通り爆発したかのように大荒れになった。
「スタークさん! 本気ですか!?」
「株価への影響は考えているのか!?」
記者たちが一斉に立ち上がり、怒号のような質問とフラッシュの嵐がトニーに浴びせられる。騒然となる会場の中、オバディアは顔をひきつらせ、必死にマイクを奪おうと動き回っていた。その混沌の極みの中。トニー・スタークは、ふと記者席の最遠、最後列の壁際に目を向けた。そこには、完璧な黒スーツを着こなし、腕を組んで自分を見つめる夜桜御剣の姿があった。トニーと御剣の視線が、真っ直ぐに交錯する。世界中がトニーを「狂った」と罵る中で、御剣だけは、不敵で、絶対的な信頼を込めた薄い笑みを浮かべていた。
御剣(よく言った、スターク。お前のヒーローとしての第一歩だ)
御剣が目線だけでそう告げると、トニーはマーク1の中で感じたあの圧倒的な敗北感と、同時に湧き上がった奇妙な高揚感を思い出し、小さく、誰にも気づかれないように頷いてみせた。二人の天才の間に、強固な「アイコンタクト」が結ばれた瞬間だった。
御剣(そしてごめんね、にわかの癖にえらそうなこといっちゃって)
そして、御剣はステージ上のオバディア・ステインを観察し始めた。一応知識として、彼がテン・リングスにトニーを襲撃させた黒幕であることは知っている。だが、御剣の超人的な「視覚」と「聴覚」は、映画のスクリーン越しでは分からない、現実のオバディアの生々しい変調を捉えていた。
御剣(……なるほど)
御剣の頭脳が、オバディアの微細な身体反応を瞬時にプロファイリングしていく。オバディアの額から流れる、尋常ではない量の冷や汗。トニーの撤退宣言を聞いた瞬間の、一瞬だけ剥き出しになった、瞳の奥の「狂気と殺意」。マイクを握る分厚い手が、怒りでわずかに震えている。「地球の本棚」を開くまでもない。
オバディアは今、トニーを生かして帰したテン・リングスへの激しい怒りと、自分の利権がすべて崩壊することへの致命的な焦りに支配されている。
御剣(オバディア……お前はトニーの足元にも及ばない。だが、その焦りがお前を『アイアンモンガー』へと変える引き金か。面白い、泳がせてやるとしよう)
御剣はフッと視線を外し、混沌とする会見場を静かに後にした。彼には、もう一つ、この場で片付けておくべき「先手」があったからだ。広報ロビーを出て、少し離れた静かな廊下。そこへ、一人の男が足早に歩いてくるのを、御剣は待ち構えていた。きっちりとしたスーツに、少し後退した髪。一見するとどこにでもいる平凡な政府の役人に見えるが、その男こそ、国際戦略秩序機関『シールド(S.H.I.E.L.D.)』の敏腕捜査官、フィル・コールソンだった。
コールソンは、大混乱の会見場へ急ごうとしていたが、廊下の真ん中に立つ御剣の姿を見て、本能的に足を止めた。
御剣「お急ぎのところ失礼、コールソン捜査官」
御剣が声をかけると、コールソンは一瞬だけ目を見張り、すぐにいつもの社交的な、しかし冷徹なプロの笑顔を貼り付けた。
コールソン「おや、私の名前を? 私はただの『重要事件捜査局』の人間ですが……あなたはスターク社の関係者ではなさそうだ」
御剣「そんな長い名前の組織、君だって名乗るのが面倒だろう? 『シールド』と言った方が早い」
その言葉が出た瞬間、コールソンの目が完全に据わった。一般人が絶対に知るはずのない、自分たちの真の組織名。
コールソン「……何者ですか」
御剣「夜桜御剣。総理直属の日本で極秘のエージェントだ。コードネームは『ビルド』。以後、お見知り置きを」
御剣はそう言って、懐から日本政府の最高級のセキュリティがかかった特製の身分証を提示した。シールドのデータベースにも、日本の最高機密としてハッキング不可能な領域に存在する本物の証明書だ。
御剣「日本の、総理直属……シールドのレーダーを完全に掻い潜って、アメリカの、それもスターク社の懐に潜り込んでいたというわけですか」
コールソンが驚きを隠せずにいると、御剣は彼の肩を軽く叩いた。
御剣「警戒する必要はない。我が国は、アメリカのロス将軍や君たちの組織が、超人技術や超科学を独占することを快く思っていなくてね。監視と、多少の『保険』のために私が動いている。トニー・スタークには、私からよろしく伝えておくよ」
コールソン「……随分と自信がおありのようだ、夜桜エージェント」
御剣「当然さ。私は天才だからね」
御剣はそう言い残すと、完璧な後ろ姿を見せながら、風のように廊下の奥へと去っていった。残されたコールソンは、急いで通信機を取り出した。
コールソン「フューリー長官、至急伝達です。シールドの管轄外に、未知の『巨大な特異点』が存在します。日本のエージェント……夜桜御剣。彼は、スタークの拉致事件の裏すら知っている可能性があります」
世界の裏で動く巨大組織「シールド」に、その存在を強烈に刻みつけた夜桜御剣。歴史の歯車は、彼の思い描く通りに、さらに加速して回り始める。
御剣(きもちぇぇ…自分の正体明かす奴。これ言う悪役はさぞ気持ち良かったろうなぁ~今ならすごいわかるもん)
後日追加される予定のプリキュアの小説読んでくださいね~(^▽^)/
10月の中旬ごろに投稿します。