アベンジャーズの歴史には仮面ライダーの歴史をぶつけんだよ! 作:革命オンエア
あと、なによりもコメントください!間違ってるところがあれば遠慮なくいってください!
お気に入り30件以上ありがとう。
今回は、というよりこれからも独自解釈が結構入ってますのでご注意を。
記者会見の狂乱から脱出し、マリブの崖に建つスターク邸へと戻った俺たち。
トニーは上着のジャケットを豪快に脱ぎ捨てて床に放り投げると、一目散に地下ガレージ――俺の「移動式ラボ」が鎮座する場所へと足を向けた。その瞳には、会見の疲れなど微塵も感じさせない、科学者としての飢餓感がぎらぎらと燃え盛っている。
トニー「記者会見のせいで時間は取れなかったが、たった今、僕を縛るものは何もない。御剣、約束通りじっくり見させてもらいたい」
並ぶ変身ベルトのケースを前に、トニーが貪欲に身を乗り出す。インセン博士もまた、興味深そうに眼鏡の位置を直しながら俺の横に立った。
御剣「いいだろう。好きに見ていいが、トニー、特に君に詳しく説明したいものがいくつかある。例えば、そのスーツが作られた経緯や、実績などね」
トニー「いいね、是非聞かせてもらいたいね。君が僕に話したいものがあるならね。いくつかと言わず、全部説明してほしいがな」
強欲な天才社長の言葉に、俺は肩をすくめて苦笑した。
御剣「時間がかかりすぎるからダメだ。さすがの僕でも、これだけの歴史を一晩で語り尽くすのは骨が折れる。……だから今回は、君のこれからの開発に深く関係しそうな『異世界』のシステムをいくつか抜粋しよう」
俺はラボのメインコンソールに指を滑らせた。天才戦兎たちの頭脳と地球の本棚(ググり放題)を同期させた独自のシステムが駆動する。
御剣「まずは五つ。『G3システム』『イクサ』『555(ファイズ)』『ドライブ』、そして『ビルド』。……ジャーヴィス、ホログラムの出力を僕のシステムに完全同期。ラボの視覚再現度を最大値(マックス)まで引き上げろ」
ジャーヴィス「了解いたしました、エージェント夜桜. スターク様、視覚野への過剰な刺激にご注意を」
トニー「ハッ、ジャーヴィス。俺が自分のホログラム技術に酔うとでも――」
トニーが言いかけた言葉は、一瞬でかき消された。
ズワァッ……! と、地下ガレージの壁や床、並んでいた高級外車のすべてが、冷徹な光の粒子へと分解されていく。
次の瞬間、俺たちの足元には「雨に濡れたアスファルト」が広がり、見上げる空にはどんよりとした2001年の日本の空が広がっていた。肌を刺すような湿気と、遠くで鳴り響くパトカーのサイレン。ホログラムという域を完全に超越した「世界の錯覚」に、トニーとインセンが驚愕して息を呑んだ。
御剣「――西暦2001年。舞台は日本。未確認生命体という人類の天敵に対抗するため、日本の警察組織……警視庁未確認生命体対策班(SAUL)が開発した初の量産型パワードスーツ。それが『生成対未確認生命体強化服・G3システム』だ」
空間に、一人の美しい、しかし気の強そうな女性科学者のホログラムが浮かび上がる。
御剣「開発者は小沢澄子(おざわすみこ)。当時、若干20代でこのシステムを組み上げた、僕好みの実に傲慢な天才だ。装着者は、不器用だが決して諦めない心を持つ警察官、氷川誠(ひかわまこと)」
俺が指を弾くと、視界が「Gトレーラー」と呼ばれる大型移動拠点の内部へと切り替わる。重々しい金属音、加圧されるインナースーツ、そして氷川の身体に機械アームで組み上げられていく青き金属装甲。前世で何度も見た、あの硬派でリアルな装着シークエンスが、トニーたちの目の前で完全再現された。
トニー「……驚いたな。内燃機関の小型化、それにフレームの結合システム。粗削りだが、僕のマーク1と同じ『人間の手による工業技術』の延長線上にある。親近感が湧くよ」
御剣「そうだろうね。だがスターク、現実(リアル)の戦場は甘くない」
ガシャイン、とホログラムの映像が乱れる。そこに映し出されたのは、神の使徒『アンノウン』と呼ばれる超常の怪物に、なす術なく叩きのめされるG3の姿だった。強固な装甲は引き裂かれ、自慢のガトリング砲や特殊突撃銃の弾丸はことごとく弾かれる。火花を散らしながら泥を這うG3の戦績は、お世辞にも良いとは言えなかった。
インセン「……ひどいな。スーツの出力が、敵の生物スペックに完全に負けている」
御剣「その通り。一応倒した実績はあるにしても、敵が予想以上に強かったんだ。あまりの戦績の悪さに、周囲からはお荷物扱いさ。極めつけは、小沢澄子の助手である尾室(おむろ)っていう男がね、彼女に向かってこう真っ当な指摘をしたんだ。『やっぱり、G3が弱すぎるんじゃないでしょうか』って」
トニー「ブッ……! 命知らずな助手だな。開発者の目の前でそれを言うか」
御剣「だろ? 言われた小沢澄子は静かにブチギレてさ、『尾室くん、ちょっと表へ出なさい』って笑顔で脅してたよ。……だけど、その真っ当で残酷な指摘が、彼女の天才としてのプライドに火をつけた。そうして生み出されたのが、先ほど僕のラボの特等席にもあった完全改良型、『G3-X』だ」
空間が一変し、より重厚に、より禍々しいまでの威圧感を纏った漆黒と青のスーツ――G3-Xが姿を現す。
画面が切り替わり、G3-Xの試験運用の映像が流れた。そこには、競合組織が開発した『V1システム』という別のスーツを、G3-Xが容赦なく叩きのめし、文字通り大破させる衝撃的な光景が映し出される。
インセン「……おい、夜桜。今、味方のスーツを攻撃しなかったか?」
御剣「おっと、鋭いねインセン博士。まぁ、着ていた北条っていう男の自業自得なんだけど、実戦で間違えて味方を打ちそうになるのはよくあることだ。だが、銃口を向けられただけで敵と判断するのは致命的な欠陥だ。小沢澄子はその事実を上に隠蔽した。なぜなら、このG3-Xには、とんでもない思想が組み込まれていたからだ」
御剣は一歩前に出て、トニーの目を真っ直ぐに見据えた。
御剣「G3-Xは、装着者の意思ではない。『組み込まれたAIの意思が、最優先で肉体を強制駆動させる』システムなんだ」
トニー「……何だと?」
トニーの目の色が変わった。天才ゆえに、そのシステムの恐ろしさが瞬時に理解できたのだろう。
御剣「小沢澄子が作ったAIが完璧すぎたんだよ。AIは常に『敵を最短・最速で確実に撃滅する理想の動き』を算出する。だが、それを着る人間はただの生身だ。AIの超人的な駆動スピードに人間の脳と肉体がついていけず、スーツの中で精神をへし折られ、振り回される。完璧すぎたが故の、天才の計算ミスさ。……そして、自分が未熟なせいでスーツを使いこなせないと思い詰めた不器用な氷川誠は、上の人にまともな実績を出せない焦りで…ある暴挙に出た」
ホログラムが、傷だらけの氷川誠が、一人の頼りなさそうな青年――津上翔一(つがみしょういち)に向かって、悲痛な声で懇願するシーンを映し出す。
氷川『お願いです、これ(G3-X)を着て、アンノウンと戦って欲しいんです!』
トニー「正気か!? 実績を出せないからって、託された兵器を、そんな一般人の、しかも戦う訓練すら受けていないような男に丸投げするだと!?」
インセン「危険すぎる……! AIに支配された兵器に素人を放り込めば、肉体がバラバラになりかねないぞ!」
二人が強く憤り、拒絶反応を示す。映像の中のトニーとインセンもまた、「どうせまともに戦えず、AIのおもちゃになるだけだ」と言いたげな、呆れと諦めの表情でホログラムを見つめていた。
しかし、映し出された戦闘映像は、二人の予想を完璧に裏切った。
ガシィィィン! と重厚な着地音。
アンノウンの猛攻を、G3-Xはまるで未来を予知しているかのような最小限の動きで、華麗にいなしていく。苦戦らしい苦戦など微塵もない。それどころか、流れるような体術で怪物を圧倒し、完全に叩きのめしていた。
トニー「……バカな。なぜだ!? ジャーヴィス、あの男のバイタルは!?」
ジャーヴィス「信じがたい数値です、スターク様。装着者の心拍数は極めて安定。脳波に至っては……まるで昼寝でもしているかのように平穏です」
インセン「なぜ、あの若者だけが、その完璧すぎるAIに振り回されずに動けるんだ……?」
驚愕に目を見開く二人に、俺はニヤリと笑って種明かしをした。
御剣「答えはシンプルさ。津上翔一という男はね、『無我の境地』にいたんだ。彼は本質的に、戦いの中で余計な考え事を一切しない。恐怖も、プライドも、迷いもない。だから、完璧なAIが提示する『理想の動き』に対して、自分の肉体を完全に委ね、シンクロさせることができた。AIの主導権に逆らわず、波に乗るようにシステムと一体化したのさ」
トニーは絶句し、自分の顎に手を当てて考え込んだ。AIの理想に、人間が完全に同調する。それはある種の理想形態のようでありながら、あまりにも不気味な結論だった。
御剣「だが、小沢澄子の師である高村教授は、彼女にこう指摘した。『AIが完璧すぎることが、このスーツの最大の欠陥だ』とね。科学は人間のためにあるべきで、人間を置き去りにした完璧さはただの凶器だ。高村教授から手渡された【AI制御チップ】を組み込むことで、G3-Xはついに完成する。……観てみなよ、これが人間の意志で動く、本当のG3-Xだ」
ホログラムの映像が激しく明滅し、再びスーツを纏った氷川誠が戦場に立つ。
今度のG3-Xには、あの冷徹な暴走感はない。氷川の「諦めない意志」と、あえて性能を落とし人間のサポーターへと徹したAIが、完璧なコンビネーションを見せていた。
敵の動きを正確に汲み取ってガードを固め、泥臭く、しかし確実にアンノウンを追い詰めていく。そして、愛車『ガードチェイサー』のフロントから、超大型ガトリング機関砲【GX-05 ケルベロス】を引き抜いた。
ガガガガガガガガガ!!!
猛烈な銃火がアンノウンを蜂の巣にし、最後は炸裂するエネルギー弾が敵を粉砕した。爆炎の中で静かに銃口を下ろすG3-Xの姿に、トニーはしばらく言葉を失っていたが、やがてハッと我に返ったように、どこか不機嫌そうに口を開いた。
トニー「……気に入らんな。AIに身体の主導権を握られるなど、真っ平御免だ。僕の作るスーツは、どこまでも僕の手足であり、僕の脳の延長線上でなければならない。AIごときに使われてたまるか」
その傲慢でありながら、極めて人間らしいトニーの言葉に、俺は小さく頷いた。
御剣「その意気だ、スターク。だけど一つだけアドバイスをしておこう。AIは『使役する道具』ではなく、いつか命を預け合う『相棒(パートナー)』として認識した方がいい。牙を剥く道具ではなく、背中を任せる友として設計するんだ。……まぁ、君の隣にいるジャーヴィスなら、言わずもがな、ね」
トニー「……ジャーヴィス、聞いたか? お前は俺の相棒らしいぞ」
ジャーヴィス「光栄でございます、スターク様。ですが、相棒の健康管理のため、まずはその手に持っているドーナツを置くことをお勧めいたします」
インセンが楽しそうに声を上げて笑い、トニーはバツが悪そうに肩をすくめた。
G3-Xという『AIと人間』の歴史を見せたことで、トニーの脳内にあるジャーヴィスへの信頼と、これからのアイアンマンスーツへの思想に、確実に小さな、しかし決定的な変化(バフ)が与えられた。これでウルトロン計画になにか影響出るといいんだけど。
御剣「さて、技術と意志の融合について学んだところで……次はこれだ」
俺が指をスナップすると、G3-Xの青いホログラムが霧のように霧散し、次に浮かび上がったのは、禍々しいまでの純白の装甲と、太陽を模したような金色の十字架を宿す、神聖で重厚なプロテクターだった。
御剣「次に紹介するのは『イクサシステム』。……これは、人間の執念と、1986年から2008年という『二つの時代』を跨いだ、愛と歪みの歪なテクノロジーの話さ」
俺がコンソールを軽く叩くと、地下ガレージの左右に二つの異なる景色が広がった。
左側には、肩パッドの入ったジャケットや派手なネオンが輝く、どこかバブリーで哀愁漂う「1986年の日本の街並み」。右側には、高層ビルが立ち並び携帯電話が普及した「2008年のモダンな日本の街並み」。
トニー「二つの時代……? おい夜桜、画面をわざわざ二つに分けたってことは、このスーツは20年以上前に作られたものなのか?」
御剣「察しがいいね, スターク。このイクサシステムはね、人間の社会に完璧に擬態し、その生命エネルギーを吸い取る捕食者『ファンガイア』に対抗するために、民間の秘密組織が開発したパワードスーツだ」
トニー「民間の超科学。フッ、ますます親近感が湧くな。国家の命令ではなく、自分の意志で脅威に立ち向かうために作ったわけだ」
御剣「そう、思想は君に近いかもしれない。……だが、1986年に完成した最初のモデル【Ver.1(プロトイクサ)】は、はっきり言って最悪の『欠陥品』だった」
左側の1986年のホログラムが激しく躍動を始める。薄暗い教会の聖堂。ステンドグラスを突き破って現れたのは、ガラス of 模様が全身に浮かび上がった蜘蛛の化け物――スパイダーファンガイアだ。
その怪物の前に、一人の男が立っていた。トレンチコートを羽織り、どこか飄々とした、しかし絶対的な自信を瞳に宿した天才バイオリニスト。
御剣「男の名前は紅音也。傲慢で、女好きで、天才的な才能を持つバイオリニスト……彼が初代イクサに選ばれた一人だ。因みに特別な訓練とかはしていないただの人間、戦闘センスに身を任せて戦っていたんだ」
ホログラムの音也が、重厚な電子音を響かせる【イクサナックル】を左手に構え、右の手の平に叩きつける。
レ・デ・ィ
音也「変身」
音也はイクサナックルをそのまま腰のイクサベルトのバックルへと力強くセットした。
フィ・ス・ト・オ・ン
カチィィン!と電子音が鳴り響いた瞬間、凄まじい高熱の白い水蒸気が周囲に噴き出し、音也の肉体を包み込んだ。ガシィィィン!と重々しい金属音がガレージに響き渡り、バイザーが閉じた不完全な顔を持つ、プロトイクサが一瞬で姿を現す。
トニー「……おい、待て。ストップだ夜桜、今の映像を3秒巻き戻せ!」
トニーが髪をむしり取るような仕草でコンソールに飛びついた。その目が怖っ、怖いって…
トニー「今、何が起きた!? クレーンも機械アームもない、ただの手持ちのデバイスを手のひらに叩きつけて、ベルトのバックルにカチッとセットしただけだぞ!? その直後にあの質量(スーツ)は一体どこから湧いて出たんだ!? 分子構造の自己増殖か? それとも空間転送か!? リアルに考えてありえないだろ、どうやって着てるんだ!」
インセン「物理的なプロセスが完全に省略されている……。先ほどのG3のように、人間が機械で組み上げるインフラの延長なら理解できるが、バックルに嵌めただけで全身に金属の装甲が生えてくるなんて、まるで魔法じゃないか!」
頭を抱えて大混乱する二人の天才科学者を見て、俺はコーヒーカップを片手に、さも当然といった顔でフッと笑った。
御剣「はは、科学者泣かせだろ? でもねトニー、おやっさん。変身するときはこれが基本(デフォルト)なんだよ。重いスーツを普段から持ち歩くわけにいかないし、現場に直接来てから、ベルトにセットして一瞬で変身するのが僕たちの世界の鉄板(ルール)だからね。……まぁ、詳しい物質化の数理モデルは、後で僕のメインシステムである『ビルド』のところで嫌ってほど解説してあげるから、今はまず、このスーツが持つスペックを見てみなよ」
俺が指を弾くと、プロトイクサの基本スペックの数値がホログラムで羅列された。
トニー「話を逸らすな! ……いや、チッ。なんだこの数値は? 1986年の技術で、パンチ力は4.2tトン、キック力は1.8トン……? 訓練もしていないただの人間が時速44キロ以上だと!? 嘘だろ、1986年だぞ!1986年!内燃機関やアクチュエーターの技術で、どうやってこの出力をこのサイズに収めたんだ!?」
御剣「力技だよ、スターク。だが、その破格のスペックの代償はすべて、着ている『人間』に支払われる」
ホログラムの中のプロトイクサが、猛然とファンガイアに突撃した。
イクサナックルから放たれる、数万ボルトの超高電圧を帯びた鉄拳が怪物の顔面を捉える。ズゴォォン!と爆音が鳴り響き、ファンガイアの巨体が教会の壁ごと吹き飛んだ。圧倒的な破壊力。しかし、突然イクサの関節部からブシューッ!と狂ったように赤い冷却液が噴出し、警告音がガレージ内に木霊する。
インセン「……なっ!? 何が起きたんだ!? 敵の攻撃を喰らったわけではないぞ!」
御剣「システムが発する『強力な負荷』さ。当時の技術じゃ、怪物のパワーに対抗するための出力を制御しきれなかった。稼働時間はわずか数分。一度着れば全身の筋肉は断裂し、内臓は悲鳴を上げ、脳は過熱する。命を燃料にして動く、文字通りの『呪いのスーツ』。それが初代イクサだ。変身を解除すれば、極度の疲労感で倒れる。それでも音也は、執念とプライド、それから愛する者を守るためにこれを受け入れ、命を削って戦い続けたんだ」
インセン「正気じゃない……! 科学の進歩のために、人間の命を使い捨てにするなど、それはもう兵器ですらない、ただの狂気だ」
トニー「……」
トニーは何も言わなかった。だが、その視線は食い入るようにホログラムのデータを見つめている。
砂漠の洞窟で、ジャンクパーツをかき集めて作った自分の「マーク1」。あれだって一歩間違えれば、自分の胸のアーク・リアクターごと爆発して死んでいたかもしれないのだ。命を賭けて技術の産声を上げる狂気。その痛みが、トニーには痛烈に理解できていた。
御剣「だけどね、おやっさん。科学者って生き物は、そこで諦めるほどヤワじゃないんだよ設計者は残念ながら死んでしまったが……後を継いだものによって作られたのが…スターク、右の画面(2008年)を見てみなよ」
俺が指を弾くと、2008年側のホログラムが一気に躍動する。
現れたのは、より洗練されたフォルムのイクサ。中央の遮光バイザーが駆動音を立てて跳ね上がり、まばゆい光と共に『バーストモード』へと変形した。その瞬間に表示されたスペックの跳ね上がり方に、トニーが息を呑む。
トニー「パンチ力7トン、キック力3トン……! 跳躍力は一跳び30メートルだと!? 初代から倍レベルの出力だ。しかもジャーヴィス、さっきの異常なバイタル負荷のログがかなり少なくなっているぞ!?」
ジャーヴィス「はい、スターク様。エネルギー効率が極限まで最適化され、装着者への肉体的フィードバックは約30分以内という制限がありますが、安全圏内にコントロールされています。」
御剣「22年間、それこそ執念だけで、一歩一歩、地道に改修とアップデートを繰り返したんだ。そして到達したのが、この【Ver.11】。安全性を完全に確保した上で、出力を何倍にも引き上げた。……観てみなよ、これが『完成されたイクサ』の力だ」
ホログラムのイクサが、手にした近接電子剣【イクサカリバー】にイクサナックルを接続する。
イ・ク・サ・カ・リ・バー・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ!
強烈な電子音声が響くと同時に、イクサカリバーの刃から太陽の如き超高熱のエネルギー波が容赦なく解き放たれた。必殺技『イクサ・ジャッジメント』。その圧倒的な熱量に触れたファンガイアは、断末魔を上げる暇もなく、ガラス細工のように美しく砕け散った。
インセン「素晴らしいね……。これなら着る人間を危険に晒すことなく、人々を守る盾になれる」
御剣「いや、おやっさん。彼らの執念は、まだ上があるんだ。極めつけを披露しよう」
ホログラムの中のイクサが、青い携帯電話型のガジェット【イクサライザー】を取り出し、193とキーを叩く。
ラ・イ・ジ・ン・グ!
という電子音声と共に、全身の純白の装甲が爆発的な圧力で弾け飛び、内部から鮮烈なブルーの金属骨格が剥き出しになった。イクサシステムの最終形態、ライジングイクサだ。
トニー「なっ……! 装甲を自らパージした!? 質量を減らして加速するつもりか!?」
御剣「その通り。スペックをさらに上乗せだ。パンチ力20トン、キック力は12トン。走力は100メートルをなんと3秒。もはや初期型とは比べ物にならない化け物スペックさ」
ライジングイクサは、イクサライザーを瞬時に銃形態【ガンモード】へと変形させ、超高密度エネルギー弾を連射する。追い詰められた別のファンガイアに向け、ファイナルキーを押し込んだ。
フ・ァ・イ・ナ・ル・ラ・イ・ジ・ン・グ・ブ・ラ・ス・ト!
凄まじいエネルギーの奔流が剣身に宿り、大気を引き裂く一閃が怪物を縦一文字に一刀両断する。爆炎のなかで、静かにライザーを構え直すライジングイクサの姿に、ガレージはしんと静まり返った。
トニー「……22年間、11回ものメジャーアップデート。基礎フレームを最初から作り直すんじゃなく、過去の失敗から一つずつ、同じ『イクサ』という名前のまま完成へ導いた…か」
トニーの言葉には、最大級の敬意が込められていた。
一度失敗したからといって、技術そのものを捨てるのではない。アップデートを重ね、洗練し、いつか「完璧」へと到達させる。その思想は、トニー・スタークという男の魂に、これ以上ないほど深く突き刺さっていた。
御剣(ま、君はこれから22年どころか、数年で『マーク85』までスーツを作り続ける、文字通りの超大馬鹿野郎になるんだけどね。その執念の、これが日本にいる君の『同期(ライバル)』の姿さ)
心の中でそうニヤリと笑いながら、俺は次のフェーズへと移行する。トニーのモチベーションは今、完全に最高潮(マックス)だ。
御剣「技術の歴史と、執念のアップデートについて理解したところで……次はこれだ。スターク、君が砂漠でインセン博士と作った『アーク・リアクター』。あの小型エネルギー炉の概念を、さらにスマートに、精度を極限まで高めた、世紀の傑作を見せてあげるよ」
俺が手をかざすと、イクサの青いホログラムが消え去り、暗闇の中に「赤い光の血管(フォトンストリーム)」が脈打つ、あのメカニカルなギアが姿を現した。
御剣「――さあ、ここからが本番だ。トニー、特に君の『アーク・リアクター』と、これからの設計思想に最も近い、そして最も危険なシステムを見せよう。西暦2003年、舞台は日本。コードネームは『555(ファイズ)』」
俺が指先を小さく振ると、ホログラムの空間が再び激しく歪んだ。
夜の東京。雨が激しく打ちつける廃工場の跡地。闇の中から、不気味に蠢く灰色の怪物――オルフェノクの姿が現れる。そこへけたたましい電子音が鳴り響いた。
『STANDING BY(スタンディングバイ)』
一人の青年が、手にしたスマートフォンのようなデバイスをベルトのバックルへと挿入する。
『COMPLETE(コンプリート)』
ズドォォン! と闇を裂いて、鮮烈な「赤い光のライン」が全身を駆け巡った。シルバーの金属装甲と、怪しく発光する巨大な黄色の複眼。そこに立つのは、仮面ライダー555だった。
トニー「……美しい。だが、あの赤いラインは何だ? まるでスーツ自体が血管を持って、エネルギーを循環させているようだぞ」
御剣「さすがだね。あの赤いラインは『フォトンストリーム』。スーツ内部を流れる、超巨大エネルギー流体『フォトンブラッド(光子血液)』の路(パス)だ。それを制御しているのが、その胸部にある核――君のアーク・リアクターと極めて近い理論で動く、小型大出力のエネルギー生成機関さ」
俺が指を弾くと、ファイズの横にジャーヴィスがスキャンした基本スペックの数値が浮かび上がる。
トニー「……おい、御剣。この数値はバグか? パンチ力2.5トン、キック力5トン。数値自体はさっきのイクサより低く見えるが……待て。エネルギーの密度が異常だ。この手のひらサイズのベルトと、細い光のラインだけでこの出力を生み出しているというのか!?」
ジャーヴィス「スターク様、注目すべきは効率性です。無駄な熱排気が一切なく、生成されたエネルギーが100%推進力と破壊力に変換されています。アーク・リアクターのミリタリー運用において、これ以上ない極致のサンプルです」
トニー「なんだと……!? あのサイズで、僕のアーク・リアクターに匹敵する、いやそれ以上の出力を生み出しているというのか!? なるほど……。コンパクト化(ダウンサイジング)の天才が日本にもいたってわけだ」
御剣「驚くのはまだ早いさ、トニー。ファイズシステムの真骨頂は、その基本スペックだけじゃない。その先にある『拡張性』……特に、君の言う『速度の限界』を物理的に置き去りにするモードがある」
俺が指を弾くと、ホログラムの中のファイズが、左腕に装着された腕時計型のデバイス『ファイズアクセル』のスターターミッションメモリを、ベルトのフォンへと差し替えた。
『COMPLETE(コンプリート)』
ガシャァン!と胸部装甲が左右に観音開きに展開する。内部のクリアパーツにフォトンブラッドが満ち、赤いラインが鮮烈な「銀
色(シルバーストリーム)」へと変色した。目の複眼も赤く染まる。
御剣「ファイズ・アクセルフォーム。これが、トニー、君のマーク2を大幅に進化させるための最大のヒントだ」
トニー「胸部装甲を展開して、内部冷却とエネルギー流路の直結か……。待て、ラインの色が変わった。エネルギーの質そのものが変化したのか?」
御剣「その通り。フォトンブラッドの出力を限界まで高め、シルバーのストリームへと超強化した形態さ。そして、このフォームの狂暴なスペックは……これだ」
ファイズアクセルのスイッチが押される。『START UP(スタートアップ)』
その瞬間、ガレージ内のホログラムの時間が「停止」した。
雨粒が空中で完全に静止し、周囲のオルフェノクたちの動きが、まるで写真のように固まる。その静寂の中を、銀色のファイズだけが、目にも留まらぬ――文字通り「音速」を超えた速度で縦横無尽に駆け抜けた。
トニー「……な、何だこれは!? ジャーヴィス、再生速度を落とせ!」
ジャーヴィス「スターク様、これはスローモーション映像ではありません。リアルタイムの観測データです。対象の走力は100メートルをなんと【0.0058秒】。通常の『1000倍』の速度……すなわち『数秒間で通常の数十秒分の行動』を処理しています。物理的なG(重力加速度)を完全に無視しているとしか思えません」
トニー「1000倍……! 通常の1000倍のスピードだと!? マッハ50の領域で、2.5トンの拳と5トンの蹴りが超連撃で叩き込まれている……! 物理的な破壊力が乗算で跳ね上がっていくぞ!」
御剣「設定上はマッハ50に達する超加速の世界だ。敵が引き金を引く前に、その周囲の全兵力を素手で解体できる。ちなみに、さらに上の『ブラスターフォーム』って最終形態もあるけど、あれは赤いスーツになって出力がバカ高くなるだけで、思想的にはこのアクセルほどの変態的な技術飛躍はないから、今は解説を省くよ。あんま変わってないしね」
トニー「あんま変わってないってレベルじゃないだろ!……いや、素晴らしい。素晴らしいぞ御剣! この『アクセル』の重力制御と分子レベルの超加速理論……。これをマーク2の飛行安定システムと、緊急回避用の推進力ブースターにコンバートすれば、米軍の最新鋭戦闘機すら、ただの止まっている標的にできる!」
インセン「しかし御剣くん、1000倍の速度となると、装着者の脳や肉体にかかる負担は……並の人間なら一瞬で内臓が破裂するか、脳の処理が追いつかずに廃人になるんじゃないかね?」
御剣「だからこそ、次に説明する『ドライブシステム』のG相殺技術や、僕の『昭和の改造人間スペック』が必要になるんですよ、おやっさん。……よし、じゃあそのドライブの説明に入ろう。だけど、これに関しては僕が説明するより、本人に直接語ってもらった方が早いな」
俺がコンソールを叩き、車のダッシュボードのような形をしたベルトの電源をオンにした。ピピッ、と中央の円形ディスプレイに『S』の文字が浮かび上がる。
「ふむ……。ずいぶんと騒がしいと思えば、まさか異世界のアメリカで、世界最高の天才科学者と対面することになるとはね。はじめまして、トニー・スターク、インセン博士。私のことは『ベルトさん』、あるいはクリム・スタインベルトと呼んでくれたまえ」
トニー「……おい、御剣。冗談だろ? 仕込みのスピーカーか、それともどこか別の場所からお前のハッカー仲間がリモートで喋らせているのか?」
トニーが小馬鹿にしたように笑おうとするが、
ジャーヴィス「いいえ、スターク様。外部からの通信プロトコルは一切検知していません。暗号化ラインも、サテライト経由の電波も皆無です。その音声は……そのベルトの内部に搭載された、全く未知のアルゴリズムを持つ独立演算回路から『直接』発せられています」
インセン「ベルト自体に、自律型の人工知能が組み込まれているというのか……!?」
トニーは信じられないといった様子で、ケースに顔を限界まで近づけた。アーク・リアクターの光が、ベルトの円形ディスプレイを青白く照らす。
トニー「自律型AI……? いや違う、違うぞ。この応答速度、それに僕たちを『品定め』しているようなこの視線、空気感……. これはプログラムの延長じゃない。命令に従うだけの無機質なコードの集まりじゃないぞ。これは……『意識(ソウル)』そのもの、人間の魂が機械に宿っているレベルだ!」
ベルトさん「フッ、素晴らしい洞察力だ、トニー・スターク。やはり君は紛れもない天才だね。君の言う通り、私はかつて人間だった。ある事件によって肉体を失い、自らの脳の全データ、すなわち私の『人格のすべて』をこの『ドライブドライバー』へと移したのだよ」
その言葉を聞いた瞬間、トニーの背筋にゾクリとした戦慄が走った。
自身をデジタル化し、機械の身体で生き続ける男。それはトニーにとっても、いつか自分が到達するかもしれない、あるいは科学が侵してはならない「神の領域」のテクノロジーだったからだ。
トニー「脳の全データのトランスファー(転送)だと……? デジタル化された意識が、劣化もバグも起こさずにこの小さな筐体の中で完全に『生きて』いる……。おい御剣、お前は一体どこからこんな規格外の化け物を連れてきたんだ!?」
ベルトさん「はっはっは、化け物とは人聞きが悪いな、トニー。だが、驚くのはまだ早い。さて、夜桜からバトンをタッチされたのでね。君のマーク2を真の『超兵器』へと引き上げるための技術――『ドライブシステム』について説明させてもらおう」
ベルトさんのディスプレイの文字が『▶』に切り替わり、ホログラムが近未来的な赤いスーパーカー『トライドロン』と、それに乗り込む赤い重装甲の戦士――仮面ライダードライブの姿を映し出した。
ベルトさん「ドライブシステムの根幹を成すのは、トライドロンの動力源でもある『コア・ドライビア』。これは、宇宙の基本相互作用の一つである『重力』を直接制御する機関だ」
トニー「重力制御……!? 質量をコントロールしているのか!?」
ベルトさん「その通り。このシステムを応用することで、ドライブは周囲の『時間の進み』を極端に遅くする超重力場、通称『重加速(どんより)』を発生させ、敵を完全に静止させることができる。……先ほど夜桜が説明したファイズの『アクセル』が自身を加速させる技術なら、私のシステムは『世界側を減速させる』技術なのだよ」
インセン「自分を上げるか、周りを下げるか……。アプローチは真逆だが、結果として『圧倒的な速度差』を生み出すわけだね。なんと恐ろしい科学だ、クリム……」
御剣「ちなみに、このドライブの変身者は泊進ノ介(とまりしんのすけ)という熱い刑事で、彼をサポートする『特状課』っていう警察の秘密部隊がバックにいるんだ。そして、ベルトさんの最高傑作である『トライドロン』は、戦闘時にドライブの『タイヤ交換システム』と完全に連動して戦況に合わせた装甲を射出する、移動式の兵器プラットフォームでもある。これと連動して、ドライブは多様な戦術形態へと姿を変えるのさ」
ホログラムのドライブが次々と姿を変えていく。
御剣「バギーを模したパワー形態、『タイプワイルド』。超精密な計算に基づくトラップ設置や機械修理をこなす、『タイプテクニック』。そして、限界突破を求めるあまり制御を失えば敵味方関係なく襲いかかる、暴走の諸刃の剣『タイプデッドヒート』」
トニー「暴走か……。アーク・リアクターの出力を無理に引き上げれば、僕のスーツでも起こりうるな。技術の過渡期には、汎用性を捨てた危険なステップが必ず存在する」
ベルトさん「だからこそ、私はその失敗を糧に、G(重力加速度)の影響を完全に克服し、純粋な『速度』を極限まで追求した究極のレーシング形態を完成させたのだ! ……見よ、これが『タイプフォーミュラ』だ!!」
キィィィィン!! と、F1カーをそのまま人型に落とし込んだような超エアロダイナミクス形状を持つドライブが疾走した。空気抵抗を完全にコントロールし、超重加速すら嘲笑うように音速の世界を駆け抜ける。
トニー「素晴らしい!! なんだこの狂ったエアロダイナミクスは! 空気抵抗をただいなすんじゃない、完全にダウンフォースへと変換して路面にへばりついている! これだよベルトの旦那、この空力制御とコア・ドライビアの融和があれば、マーク2の飛行用リパルサーの燃費を極限まで抑え込みつつ、超音速域での姿勢制御を完璧に支配できるぞ!」
御剣「まぁ、確かに速いんだけどさ。……スペック的には、さっき説明したファイズの『アクセルフォーム(10秒間の1000倍速)』には、純粋な瞬間速度でちょっと負けてるんだけどね。あっちはマッハ50だし」
ベルトさん「……う、おのれ御剣! それを言うなと言っただろう!! あちらはフォトンブラッドという、物理法則を半分無視したエネルギー流体を使っている反則技だ! 私のフォーミュラは、純粋な空気力学とコア・ドライビアの融和によって、地球の重力下で最も美しく効率的に最速を叩き出すよう設計されているのだ! 思想が、思想の美しさが違うのだよ!!」
トニー「ハハハハハ! いいぞベルトの旦那、その悔しがり方、最高に科学者らしくて気に入った! だったら僕たちのマーク2で、そのマッハ50というバカげた記録すら、空力制御で置き去りにしてやろうじゃないか!」
ベルトさん「おお、トニー! 君なら私の悔しさを分かってくれると信じていたよ! さあ、彼らに最後の『答え』を見せてあげたまえ!」
ベルトさんの咆哮とともに、トライドロンが光の粒子へと分解され、ドライブの全身へと吸い込まれていく。まばゆい光の後に立っていたのは、トライドロンのすべてをその身へと完全融合させた、究極の姿――『タイプトライドロン』だった。
御剣「最強の最終形態、タイプトライドロン。変身者である進ノ介と、AIであるベルトさんの『心と意識が完全に一つに融合』し、車そのものを身に纏って戦う、文字通り人車一体の戦闘生命体さ」
トニー「心と機械の融合、か。……ジャーヴィス、今のデータをすべてマーク2のメインOSの根幹に叩き込め。僕たちの作るスーツは、ただの『着る乗り物』じゃない。僕の肉体の延長であり、ジャーヴィス、お前と僕が一体になるための『皮膚』だ。……よし、御剣。次の『ビルド』の講義も一瞬で終わらせろ! 俺の右手が、スパナを握りたくて今にも爆発しそうだ!」
御剣「オッケー、それじゃあ最後、僕のメインシステムである『ビルド』……つまり、僕たちの専門分野である『有機物と無機物のベストマッチ』についての講義だ!」
俺がコンソールを力強く叩くと、空間に無数の数式と、巨大な歯車のホログラムが時計回りに回転を始めた。
御剣「このシステムを作り上げた男の名前は、桐生戦兎(きりゅうせんと)。……僕の知ってる数あるヒーローの中で、一番尊敬している男だ。不器用で、優しくて、正義のために傷つくことを恐れない、本物の天才科学者さ。僕のこの頭脳のベースにも、彼の知性が色濃く入っている」
空間に、どこか気恥ずかしそうに髪をくしゃっと掻く、トレンチコートを着た一人の青年のホログラムが浮かび上がる。
ベルトさん「ふむ……。私のコア・ドライビアとはまた異なる、非常に有機的でありながら数理的に完璧なエネルギーの方程式を感じるね。彼が君の尊敬する科学者か」
御剣「ビルドシステムの根幹は、これさ。未知の物質から抽出された成分を二つ掛け合わせることで爆発的な力を生み出す」
『ラビット!』 『タンク!』 『ベストマッチ!』
空間に巨大な赤と青のプラモデルのランナーが出現し、ガシャァン! と組み合わさって、右半身が赤(ウサギの跳躍力)、左半身が青(戦車の圧倒的火力と装甲)の戦士――仮面ライダービルド・ラビットタンクフォームが完成した。
トニー「……ラビットと、タンク? 生物と、近代兵器の融合か。面白いデザインだが、なぜその二つを組み合わせた?」
御剣「これこそが、戦兎が到達した科学の極致――『ベストマッチ(最高の組み合わせ)』の理論さ。生物が持つ驚異的な『有機的ポテンシャル』と、機械が持つ『無機的な破壊力』。真逆の性質を持つ二つの成分を、独自の触媒技術で衝突・中和させることで、単体のスペックを数十倍に引き上げるエネルギー変換システムなんだ」
インセン「なるほど……。単に強い金属を貼り付けるだけでなく、生物の持つしなやかさや反射神経のデータを、機械の出力に完全に調和させているわけか。だからこれほど無駄のない、狂暴なスペックが実現できる」
御剣「さらに、空間の数式をシュワシュワと炭酸の泡のように弾けさせて出力を引き上げることもできる」
『ラビットタンク スパークリング!イエイ!イエーイ!』
御剣「基本のラビットタンクの出力を爆発的に引き上げた進化系、『ラビットタンク・スパークリングフォーム』。出力は格段に上がるが、これはまだ地続きの延長線。……だけど、そんな彼の前に最悪の『脅威』が立ちはだかった。人間が謎の成分を注入され、理性を失った怪物の姿に変えられた存在。コードネーム『スマッシュ』だ」
ホログラムが切り替わり、ガレージの闇の中に、無機質でグロテスクなトゲや装甲を纏った異形の怪人――スマッシュたちの姿が立体的に映し出された。
インセン「……これは、生物実験の成れの果てかい? なんておぞましい姿だ……」
御剣「このスマッシュという圧倒的な暴力に対抗するため、そして仲間を救うため、戦兎は限界を超える力を求めた。……そして、彼の元に【ある禁断のアイテム】がもたらされたんだ。ジャーヴィス、ログをハザードに移行」
一転して、空間が禍々しい漆黒に染まり、けたたましい警告音が鳴り響く。
『アンコントロールスイッチ!ブラックハザード!ヤベーイ!』
御剣「ビルドシステムにおける禁断の形態、『ハザードフォーム』。出力を爆発的に跳ね上げる代わりに、長く戦いすぎると脳の理性が完全に破壊され、敵も味方も無感情にすり潰す『戦い続けるだけの操り人形』と化す。……悲しいことにね、このハザードシステムは【戦兎が開発したものではなかった】。それどころか、自宅のラボで詳しく調べてみた結果、これを使えば脳が刺激に耐えられず、理性を失うという致命的な危険性を、最初からはっきりと理解していたんだ。戦兎はその恐ろしいリスクを知った上で、それでも目の前の脅威からみんなを守るために、覚悟を決めてその禁断の力に手を伸ばしてしまったんだよ」
ホログラムが激しくブレる。映し出されたのは、全身を不気味な艶消しの黒(マットブラック)で包んだハザードボディのビルドだ。
黒いビルドは、敵の戦士を圧倒するのではない。ただの「作業」のように、冷徹な効率で追い詰めていく。変身者の叫び声すら聞こえない。ただ、不気味な機械駆動音だけが闇に響く。
そして、黒いハザードは、敵の首を容赦なくガシィィィン!と片手で掴み上げた。
トニー「……おい、待て。あのスーツ、完全に理性が消えているぞ」
ホログラムの中の黒いビルドは、敵の首を掴んで身動きを封じたまま、もう片方の手で腰のレバーを無感情に、猛烈に回転させ始めた。
『レディーゴー!』『ハザードフィニッシュ!』
溢れ出す漆黒の破壊エネルギー。ハザードは首を掴んだ手を離すと同時に跳躍し、相手の胸部へと容赦のない、桁違いの威力のキックを叩き込んだ。
ズゴォォォォン!!!
強烈なキックの衝撃波と共に、放たれたエネルギーが敵の肉体が細胞レベルで崩壊させていく。まばゆい青い光の粒子となり、衣服の切れ端すら残さず、一瞬で「完全な無」へと消滅していく姿。
かつて敵だった仮面ライダーグリスの攻撃で変身が解け、激しい豪雨のなか、自分の両手を見つめながら絶望の絶叫をあげる戦兎の姿が、ガレージに生々しく立体再現された。
インセン「おお……、なんてことだ……。自分の作った力で、目の前で人間の命を消し去ってしまったというのか……」
トニー「……っ」
トニーは、息を呑んだまま固まっていた。
画面の中で絶望に狂う青年の姿に、砂漠の砂の上で「自分の作ったミサイル」によって無関係な人々が焼き殺されていくのを見た、あの生々しいトラウマと重ねていた。
ベルトさん「なんと恐ろしい……! 技術の暴走、そして人間の精神をも兵器のパーツとして消費する悪魔の思想だ。トニー、私たちが作るマーク2には、このようなリミッター解除は絶対に組み込んではならない!」
トニー「分かっている、ベルトさん。僕はもう、人を壊すだけの道具は作らない。……だが夜桜、この黒い絶望を、あの天才はどうやって乗り越えたんだ?」
御剣「科学の流した涙は、科学で拭い去る。戦兎はその暴走のエネルギーを、完全に『別の科学』で型にはめて制御することに成功したんだ。それが、ハザードの破壊衝動に極端な指向性を持たせてロックする、二つの特化型デバイスさ」
俺の合図とともに、漆黒のハザードボディに、真っ赤な強化装甲が重ね着されていく。シュゥゥゥン!と蒸気音とともに完成したのは、全身にウサギの跳躍バネを無数に配置した、驚異的なスピードを誇る真っ赤な姿――『ラビットラビットフォーム』。
『紅のスピーディージャンパー!ラビットラビット!』 『ヤベーイ!ハエーイ!』
御剣「ハザードの狂暴な出力を、限界を超える『超高速の移動・跳躍力』へと全振りして制御した姿だ。そして、もう一つがこれ」
今度は一転して、鉄灰色の重装甲がガシャガシャと組み上げられていく。
『鋼鉄のブルーウォーリア!タンクタンク!』『ヤベーイ!ツエーーイ!』
御剣「圧倒的な防御力と重火力特化型、『タンクタンクフォーム』。ハザードの暴走のエネルギーを、全て『強固な装甲と火力』の維持へと回すことで、理性を保ったまま戦うことを可能にしたんだ」
トニー「……これだ!! これだよ、御剣! 暴走するほどの超エネルギーを無理に抑え込むんじゃない。エネルギーに『スピード(ラビット)』か『重装甲・重火力(タンク)』という極端な指向性を与えてフレーム側に消費させることで、機体の安定と安全を両立させる……! 完璧な制御の方程式じゃないか!」
ベルトさん「素晴らしい! 破壊のエネルギーを別のベクトルへと変換して飼い慣らすか。桐生戦兎、実に見事なアプローチだ!」
御剣「そして、そのすべてのボトル成分、すべての数式を1パーセントのロスもなく究極の次元で統合・完全制御したゴールが……これさ」
『完全無欠のボトルヤロー!ビルドジーニアス!』
まばゆい虹色の光とともに、全身に60本のフルボトルが配置された、気高き純白の究極形態――『ジーニアスフォーム』が降臨した。
ベルトさん「……信じられない。60もの異質なエネルギー成分が、完全に1つの数式として統合されている。これこそが、科学の到達点か!」
トニー「……美しい。完璧だ。ハザードという『破壊の科学』を、ラビットラビットやタンクタンクという『制御の科学』を経て、このジーニアスという『完全なる統合の科学』でねじ伏せたわけか。御剣……これだよ。僕が目指すべき『アイアンマン』の究極のゴールは、この思想だ!」
御剣「よし、講義はすべて終了だ! これらすべての思想と計算式、そして僕のコンテナにある最先端の設備はすべて解放する。さあ、スターク。世界をひっくり返す『最高の実験』を始めようじゃないか!」
トニー「ハッ、言われなくても、今夜は一秒も寝かさないぞ、御剣! 工具とキーボードを用意しろ!」
御剣(よし、完璧に全てのロマンがトニーの脳内でベストマッチした! 原作のただの鉄の試作品だったマーク2を、フォトンストリームが脈打ち、重力を御し、ハザードをねじ伏せた完璧な数式で制御された『銀色のバカスペック超兵器』へ作り替える、最高にエキサイティングな夜の始まりやな。)
数日間にわたる、地下ガレージでの壮絶な試行錯誤。
当初、トニーはマーク1の延長線上で、手近なクロムモリブデン鋼や鉄の複合材でベースフレームを組もうとしていた。それを止めたのは御剣だ。
御剣「待て待てトニー。そのまま鉄ベースで組んだら、高度一万フィートを超えたあたりでシステム全体が氷結して、ただの鉄クズになってカリフォルニアの藻屑だぞ。地球の本棚……いや、僕の天才的な直感がそう告げている。素材は最初から、スターク・インダストリーズが保有している軍事衛星用の『ゴールドチタン合金』にしろ。重量比と耐凍結性を考えればまずばそれからだ。」
トニー「……そうか、高高度での氷結問題か。言われてみれば熱伝導率の計算が甘かったな。分かったよ、御剣。最初から最高級の素材を贅沢に使わせてもらおうじゃないか」
そこからの製作プロセスは、二人の天才と二つの知性による、文字通りの『実験』の連続だった。
トニーは溶接マスクを被り、火花を散らしながら、G3システムの「フレーム結合思想」をゴールドチタンの骨格に落とし込んでいく。パーツの配置を1ミリ単位で微調整し、もし将来的に追加兵装を組み込むことになっても、全体のバランスを崩さない汎用性の高いアタッチメント構造を組み上げていく。
トニー「なるほど、小沢澄子の結合システムは美しいな。これなら工業製品としての整備性も量産性もズバ抜けている。……よしクリム、次はイクサの出力切り替えの再現だ」
インセン「これほど急激なエネルギーの上昇を、この極小のコンバーターで受け止められるのかい?」
ベルトさん「そこは、あのイクサのVer.1からVer.11に至るアップデートの歴史が証明しているよ。セーブモードとバーストモードの『段階的なリミッター解除回路』をアーク・リアクターの出力ラインにバイパスするんだ。トニー、そこだ、ハンダを急ぎたまえ!」
トニー「言われるまでもない! ジャーヴィス、ファイズの『フォトンストリーム』の流路を、このゴールドチタンの装甲裏にレーザーカットで刻め! 粒子がスムーズに循環するよう、ヨクトレベルで滑らかにな!」
ジャーヴィス「はい、トニー様。ミリ単位の誤差も許されません。エージェント夜桜のメインフレームから提供された数式を、直接カッターへ同期します」
作業は深夜から、夜明けを過ぎても止まらなかった。
失敗しては組み替え、エネルギーの異常波形をビルドの数式で型にはめてねじ伏せる。ガレージには、激しい火花と、金属が噛み合う重厚な機械音が響き続けた。
ホログラムが消え、いつもの静かなガレージに光が戻る。しかし、そこにいる人間たちの熱量は、会見前とは比べ物にならないほどに跳ね上がっていた。
「ジャーヴィス! 先ほどのデータをすべてCADシステムに展開しろ。夜桜、お前のラボの工作機械の制御権を僕に一部寄こせ!」
トニーはすでに高級ジャケットを床に放り投げ、シャツの袖を乱暴に捲り上げてキーボードを叩き始めていた。
ジャーヴィス「了解いたしました、スターク様。エージェント夜桜のメインフレームと同期完了。設計図面を再構築します」
ベルトさん「ふむ、私の『コア・ドライビア』の数式を、ジャーヴィスという人工知能のプログラミングにこれほど早く最適化させるとはね。トニー、君の処理能力もなかなか狂暴だよ」
二人の天才科学者と二つの超高性能AIが、ひとつのガレージで完全にシンクロし始めていた。その異様な光景を、インセン博士――おやっさんは、ガレージの隅にあるキッチンカウンターから優しく見守っていた。
インセン「やれやれ……。天才たちが集まると、夜がどれだけあっても足りないようだね。とりあえず、脳に栄養を補給しておきなさい」
おやっさんが静かに差し出したのは、淹れたての芳醇な香りが漂う特製コーヒーと、手作りのサンドイッチだった。
御剣「あ、ありがたい……。さすがはおやっさん、タイミングが完璧すぎる」
トニー「インセン、君のコーヒーは最高だ。だが今は、この『フォトンストリーム』の溶接比率を計算する方が先だ!」
御剣「何言ってるんだトニー。おやっさんのコーヒーを飲まない天才科学者は、ただの悪魔の科学者になっちゃうぞ。ほら、一本交換といこう」
俺はコンテナから、ビルドの科学で生成した特殊アタッチメント用のチタン合金パーツを取り出し、トニーのデスクに放り投げた。
トニー「これは……! 結晶構造が完璧に均一化されている。僕の技術でも、ここまでの精度を出すには数週間はかかるぞ」
御剣「僕のラボを舐めないでほしいね。さあ、そのパーツをマーク2の脚部フレームに組み込むんだ。ファイズの『アクセルフォーム』の超加速と、ベルトさんの『G相殺技術』をベストマッチさせるための基盤になる」
トニーは溶接マスクを被り、マーク2のシルバーの装甲の隙間に、ファイズの技術である『フォトンストリーム』の流路を丁寧に刻み込んでいく。通常のアーク・リアクターのエネルギーを通すだけならただの電線でいい。しかし、今回は「未知の粒子」を循環させるため、ヨクトレベルの精密な溶接が必要だった。
トニー「……よし、流路の固定完了だ。御剣、アーク・リアクターとフォトンブラッドの融和出力をテストする。ベルトさん、重力制御のリミッターを10%だけ解放してくれ」
ベルトさん「了解した。コア・ドライビア、起動。……進ノ介のトライドロンを思い出すね。いくぞ、トニー、御剣!」
キィィィン……!
ガレージの中央に据えられた、まだ未完成の、しかし圧倒的な威容を誇る銀色の鉄塊――『アイアンマン・マーク2』の全身が、微かに震え始めた。
次の瞬間、装甲の隙間に深く刻まれたスリットが、鮮烈な「青白い光」を放って美しく脈打ち始めたのだ。
ジャーヴィス「エネルギー伝達効率、従来の1200%を記録。さらに、機体周囲の重力定数が減少しています。マーク2、自律浮揚を開始します」
トニーの手を借りるまでもなく、銀色のスーツは床から数センチメートル、静かに、そして完全に無音で浮かび上がった。ドライブの重力制御技術が、スーツの「質量」そのものを一時的に書き換えたのだ。
トニー「……信じられん。推進スラスターも使わずに、ただそこにあるだけで浮いている。これが……これが僕たちの『科学の答え』か!」
トニーは溶接マスクを跳ね上げ、その青白く光る銀色の芸術品を、まるで生まれたばかりの我が子を見るような、狂おしいほどの歓喜の目で見つめた。
インセン「素晴らしいね……。科学がこれほど美しく、精度が高く、そして調和の取れたものになるとは。夜桜くん、君がもたらした歴史は、本当にこの世界を救う『盾』になるかもしれない」
おやっさんが静かに微笑む。俺はコーヒーの最後のひと口を飲み干し、浮かび上がる銀色のスーツを見上げて不敵に笑った。
御剣「ああ、間違いないよ。僕たちの作ったこのマーク2(超進化版)は、『10秒間の神速(アクセル)』と『重力完全制御(ドライブ)』、そして『完璧な数式(ビルド)』を宿した、銀色の超兵器だ」
トニー「ハッ、これなら、どんな敵だろうと秒でスクラップにできるな!」
翌朝。マリブの空は雲一つない快晴だった。
太平洋を見下ろす崖の上に、まばゆい朝日に照らされて立つ「銀色の巨躯」。トニー・スタークが身に纏うのは、昨夜、夜通しで組み上げた『アイアンマン・マーク2(超進化版)』だ。
そのシルバーのゴールドチタン装甲の隙間には、ファイズの技術である『フォトンストリーム』の流路が深く刻まれており、今はまだエネルギーが低出力のため、静かな青白い光を淡く放っている。しかし、その内部フレームと武装の構造には、G3とイクサの思想がこれでもかと詰め込まれていた。
御剣「トニー、通信はクリアだ。おやっさんの淹れてくれた二発目のコーヒーを飲みながら、特等席(テラス)で見物させてもらうよ」
俺はワイヤレスインカムを指で叩き、ガレージのテラスから空を見上げた。横ではインセン博士――おやっさんが、心配そうに、しかし誇らしげに腕を組んでいる。
トニー『快適そのものだよ、夜桜。ベルトさんの言う通り、ドライブのG相殺システム(コア・ドライビア)のおかげで、重い金属を着ている感覚が全くない。……それに、このスーツの基本骨格は、あの「G3システム」のフレーム結合をベースにしたからな。工業製品として完璧なシステムアップの余地を持たせることに成功した』
御剣「小沢澄子の設計思想は伊達じゃないだろ? 警視庁が威信をかけた初の量産型パワードスーツだ。もし将来、何らかの理由でミリタリーとして誰かにこれを持たせることになっても、この汎用性の高いアタッチメント構造は最強の武器になる」
トニー『持たせる、か………だがそれだけじゃない。このアーク・リアクターの出力をフレームにダイレクトに同期させる回路は、あの「イクサシステム」の出力切り替え理論を応用させてもらった。これによって、急激なエネルギーの上昇にも、機体が自壊することなく、あの2008年の完成度で100%受け止められる!』
ベルトさん『素晴らしいよ、トニー! 私の重力制御、ファイズの光子血液、G3の堅牢な工業性、工程で組み込んだイクサの出力可変システム。これらが1つのスーツの中で、桐生戦兎の「ベストマッチ」の方程式によって美しく調和している!』
ジャーヴィス『すべてグリーンです、ベルト先輩。初期プロトコルのチェック完了。リパルサー・スラスター、出力を30%に固定。いつでもいけます、スターク様』
トニー『よし。……じゃあ、ちょっと軽く散歩と行こうか』
ドゴォッ!!!
マーク2の足裏から放たれたリパルサー光線。しかし、ドライブの重力制御が「スーツの質量」をあらかじめ極限まで軽減しているため、通常のマーク2のような泥臭い爆発的跳躍ではない。まるで重力そのものから拒絶されたかのように、一瞬で、物理法則を無視した挙句の「無音の超高速上昇」を見せた。
御剣「うわ、はっや。ドライブの慣性制御が効きすぎて、上昇時のソニックブームすら発生してないよ」
インセン「素晴らしいな……。まるで空そのものが彼を吸い上げているようだ」
高度一万フィート。カリフォルニアの上空で、銀色のマーク2は急停止し、水平飛行に移った。
トニー『最高だ! ジャーヴィス、最高速度のテストを行いたい。まずはビルドの「ラビットラビット流」の空力制御を最大(マックス)にしろ。どこまで耐えられるか実験だ!』
ジャーヴィス『了解しました。空力カウルの形状をマッハ域に最適化。出力を100%へ引き上げます』
ズキュゥゥゥン!!!
シルバーの機体(スーツ)が、一瞬で青白い光の矢となった。空気を切り裂くのではなく、ビルドの数式によって「空気抵抗そのものを味方につけて加速する」というウサギのごとき軽快な超高速飛行。
トニー『素晴らしい、マッハ3……4……5! まだまだいける! だが夜桜、ベルトさん! 僕はあの「闇」を乗り越えた答えを、今すぐここで試したい!』
御剣「おいおいトニー、まさか最初からあれをやる気か?」
トニー『科学者なら、目の前にボタンがあれば押すのが礼儀だろ? ジャーヴィス、マーク2のシステムをファイズの「アクセルモード」へとコンバート! 10秒間の神速実験(テスト)を開始する!』
ベルトさん『待てトニー! 機体のフレームは耐えられても、パイロットの脳の処理が――』
トニー『僕を誰だと思っているんだ、ベルトさん。世界最高の天才、トニー・スタークだ! イクサの装着者たちのように、魂の出力(メンタル)を爆発させて、このシステムを乗りこなして見せるさ! いくぞ!』
トニーがスーツ内で、新設した左腕のアクセルスイッチ(の機能を模したホログラム)を叩く。
『START UP(スタートアップ)』
カシャァァン! とマーク2の胸部装甲が左右に観音開きに展開し、内部のアーク・リアクターから溢れ出た超濃縮エネルギーが、青白いフォトンストリームを鮮烈な「銀色」へと染め上げた。
その瞬間、トニー・スタークの世界から「音」が消えた。
眼下に広がる太平洋の白波が、完全にその形を止める。通りすがりの旅客機が、空中に固定された模型のように静止した。通常の1000倍――最高速度マッハ50の世界。
トニー『な……んだ、これ、は……!?』
トニーの脳パルスが跳ね上がる。ドライブのG相殺によって、マッハ50という肉体が消滅するレベルの重力加速度(G)は完全に「ゼロ」に抑え込まれている。しかし、視覚から入ってくる情報の量が、尋常ではない。トニーでも目を瞑りたくなるほどだ。
そして、その影響を最も受けたのは、彼をサポートする人工知能だった。
ジャーヴィス『……スタ、ー、ク、様……。時間、軸の、エラー、を……検知……。現在、の、飛行、速度、計測、不、可、非……。システム、クロックが、マイナス、に、突入……バ、バ、バ、バグ……』
トニー『ジャーヴィス!?』
ジャーヴィス『ピ、ピピ……。私は、いま、昨日、の、夕食の、メニューを、処理して、います……? いいえ、これは、宇宙の、始まりの、数理、モデル……? 10秒が、100年に、感じられます……お助け、ください、ベルト、先輩……チーン』
トニー『ジャービス?おい、ジャーヴィスが完全にバグったぞ!!』
あまりの超時間軸の加速に、最先端のAIであるジャーヴィスの演算処理が完全に追いつかず、一時的な精神崩壊(バグ)を起こしてしまったのだ。
『THREE』
『TWO』
『ONE』
『TIME OUT(タイムアウト)』
プシューーーッ! と、胸部装甲が再び閉まり、フォトンストリームが元の青白い光へと戻る。
その瞬間、ドゴォォォォン!!! と、遅れてやってきた凄まじい衝撃波とソニックブームがカリフォルニアの上空を震わせた。
マーク2は慣性でしばらく滑空したあと、トニーの手動制御によって、マリブの崖のテラスへとゆっくりと着地した。床に足がついた瞬間、トニーはフラフラとよろめき、スーツのマスクを自動で跳ね上げた。その顔は真っ白で、尋常ではない冷や汗が流れている。
トニー「……はは、ハハハ……。とんでもないな、御剣。世界が止まったよ。だが、最初からゴールドチタンを選ばせてくれた君の直感と、G3の安定したフレーム構造、イクサのバースト制御がなければ、アクセルの熱量だけでスーツが空中分解していた。小沢澄子達の異世界の科学者たちに感謝を」
御剣「だから言ったじゃないですか。G3やイクサっていう、人間の技術(インフラ)の積み重ねがあったからこそ、このファイズやドライブ、ビルドっていう超科学をマーク2に搭載できたんですよ」
俺はクスクスと笑いながら、おやっさんの淹れたコーヒーをトニーに手渡した。トニーはそれを震える手で受け取り、一気に飲み干す。
トニー「ああ、完璧なベストマッチだ。このマーク2は……世界中のどんな戦闘機も、どんな超兵器も、文字通り『止まって見える』究極の鎧だ。……おい、ジャーヴィス。生きてるか?」
スーツの内側から、少し回路が焦げたような、情けない声が返ってきた。
ジャーヴィス『……はい、スターク様。エージェント夜桜の提供した「アクセル」の方程式は、人工知能の論理回路に対するテロ行為です。一時的に、自分が2001年の警視庁Gトレーラーのカーナビになった錯覚を覚えました……』
ベルトさん『はっはっは! 災難だったねジャーヴィス。だが、G3の堅実なデータとファイズの超出力が混ざり合った素晴らしいラーニングになっただろう?』
ジャーヴィス『はい、ベルト先輩……。以後、深く留意いたします……』
インセン「ふう、無事で何よりだ、トニー。これで君の新しい『力』のテストは成功だね。……だが、科学がこれほどの光を生み出すとき、影もまた、その濃度を増すものだ」
おやっさんのその言葉に、俺とトニーは顔を見合わせ、静かに頷いた。
御剣(よしよし、G3・イクサ・ファイズ・ドライブ・ビルドの全要素が完璧に絡み合って、飛行実験は大成功! マーク2のバカスペックっぷりにトニーも大満足だし、ジャーヴィスがバグるっていう最高に面白い絵も見られた。……さて、トニーが『光の科学』を完成させたとなれば、次は、自社の兵器利権を失って狂いかけているあの男の番だ。オバディア・ステイン……。お前がテン・リングスからマーク1の残骸を回収して『アイアンモンガー』を組み上げる頃合いかな。歴史の裏回し、後半戦といきますか!)
飛行実験の興奮が冷めやらぬまま、マリブのガレージでは、早くも「次」の実験が始まっていた。
トニーはマーク2のヘッドギアを外した生身の状態で、ガレージ中央の特製チェアーに深く腰掛け、頭部に無数の電極センサーを貼り付けられている。
トニー「……おい、ジャーヴィス。シミュレーションの準備はどうだ? 今度は最初から論理回路に耐性パスを組んでおけよ。またGトレーラーのカーナビに退化されたら、僕の頭脳の片腕を失うことになる」
ジャーヴィス『ご心配なく、スターク様。エージェント夜桜の提供した「アクセル」の方程式に対して、1万2000通りの論理防御プロトコルを展開中です。ですが、人間の脳が1000倍の時間軸――マッハ50の情報量に生身で耐えられるかについては、私の演算でも保証しかねます』
ベルトさん「トニー、無理は禁物だ。私の『コア・ドライビア』で世界側の認識を少し減速させてサポートするが、それでも10秒間で数万の演算を行うのは、人間の脳にとっては文字通りのオーバーロードを引き起こす」
インセン「クリムの言う通りだ、トニー。少しずつ慣らしていかなければ、君の脳の毛細血管がすべて破裂しかねないぞ」
椅子に拘束されたトニーは、それでも不敵に、どこか焦燥感を孕んだ笑みを浮かべていた。
トニー「ハッ、世界最高の天才の脳ミソをナメるなよ、クリム、ベルトさん。……さあジャーヴィス、アクセルシミュレーション、スタートだ」
『START UP(スタートアップ)』
チカチカと、ガレージのホログラムが1000倍速の超時間軸を展開した瞬間。
トニーの瞳孔が限界まで見開き、全身の筋肉が強張った。首筋の血管が青白く浮き上がり、尋常ではない冷や汗が吹き飛ぶ。
トニー「が、あ、あああっ……! な、何だこの……情報の、洪水は……! 網膜から入る、光の、一粒まで、脳の、裏側に、直接、叩き込まれて――」
ジャーヴィス『アラート! スターク様の脳パルス、限界値を突破! 処理速度が脳の許容量を超えています、システムを緊急停止――』
御剣「――停止しなくていいよ、ジャーヴィス。そのままだ」
ガレージの壁に寄りかかり、おやっさんのサンドイッチをモグモグと食べていた御剣が、平然とした声で遮った。
トニー「み、御剣……お前、僕を、殺す気に――」
御剣「死にやしないさ、君ならね。トニー、ジャーヴィス。君たちのやり方は『天才ゆえの悪癖』だ。入ってくる1000倍の情報を、全部その超天才的な頭脳で完璧に『処理』しようとしてるだろ? だから脳のメモリが秒でパンクするんだよ」
御剣はサンドイッチを飲み干すと、コンソールの前に歩み寄り、トニーの脳波データを見つめた。
御剣「いいかい、トニー。これからの未来、君が目をかけることになるかもしれない、ある日突然、特別な力を持ってしまった『ボウヤ』の話をしよう。彼は周囲のあらゆる情報や五感を脳が強制的に受信しちゃう、超感覚を持っていてね。普通にしてるだけで情報が入り込みすぎて、頭がパンクしそうになるんだ。……だから彼は、あえて視界を狭める『手作りのゴーグル』をつけた。五感を物理的に遮断して、入ってくる情報を制御して脳を守るためにね。――彼がゴーグルをつけていた『意味』、分かるだろ?」
トニー「……情報を、絞り込む……?」
御剣「そう。1000倍の世界のすべてを処理する必要はない。今、戦場で必要な情報……例えば『敵の銃口の向き』『弾道の軌跡』、それ以外の背景のノイズは、ジャーヴィスのプログラミングで9割カットしろ。トニー、君の脳もだ。天才の処理能力に頼るな。そのボウヤのゴーグルと同じ思想さ。必要な『一瞬』だけを切り取るイメージで、視界と感覚を絞り込め!」
ベルトさん「……! なるほど! 脳の処理速度を上げるのではなく、入力する『総質量』を極限まで軽量化させるのか! これぞまさに空力制御と同じ、情報の引き算の方程式だ!」
トニー「ジャーヴィス……っ! 夜桜の言う通りに……視覚情報の、8割を遮断、エッジデータだけを、脳に、回せ……!」
ジャーヴィス『了解、サー! ノイズフィルタリングプロトコル、展開……! 情報入力を全体の12%に圧縮します!』
ズワァッ……! と、トニーの脳内にあふれていた極彩色の「情報の洪水」が、一瞬にしてシンプルで冷徹な「数理ラインのワイヤーフレーム」へと変貌した。
その瞬間、トニーの荒い呼吸が、ピタリと止まった。
瞳の奥の狂乱が消え去り、驚くほど静かで、絶対的な集中を湛えた「天才の目」へと戻る。
トニー「……は、はは……。見えた。止まって見えるぞ、夜桜。世界の解像度をあえて下げることで、僕の脳が1000倍の速度に完全に『同期』した……!」
ジャーヴィス『信じがたい安定性です、スターク様。論理回路のオーバーヒートもゼロ。これなら、10秒間の「アクセルモード」を、生身の脳のままで完全にコントロール可能です!』
御剣「よし、適応訓練は合格だね。……じゃあ、頭がスッキリしたところで、次はおやっさんの出番だ。トニー、君の胸に埋まったクソ忌々しい『鉄の破片』、今日で全部キレイにおさらばしちゃおうか」
インセン「御剣…成功したからよかったものの、一度解除してからで良かったんじゃないか?」
御剣「まぁ…どっちでもいいでしょ」
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特訓によってアクセルモードの制御に目処がついたその日の午後、マリブの豪邸の地下にある臨時の医療スペースでは、静かに、しかし歴史的な手術が執り行われようとしていた。
執刀するのは、インセン博士――おやっさんが、その類まれなる人脈を駆使して極秘裏にアメリカへと招いた、心臓外科の世界的権威である中国のウー先生だ。
ウー先生「インセン、君から送られてきた御剣エージェントのナノ医療レーザーのデータを見た時は我が目を疑ったよ。……だが、これなら、あのトニー・スタークの心臓の手前で蠢く無数の鉄の破片を、傷一つ残さずに完全に取り除ける」
インセン「ああ、ウー先生。君の神がかったメスさばきと、私たちの超科学のベストマッチだ。……さあ、始めよう」
手術が始まる直前、麻酔をかけられる前のトニーの枕元に、御剣はそっと歩み寄った。その手には、ビルドの技術とおやっさんの協力で、ひっそりと完成させていた「もう一つのアーク・リアクター」が握られている。
御剣「トニー。手術の前に、ちょっと胸のリアクターを一時的にこれと交換させてよ。君が今つけている新型のリアクター、オバディアとかいう禿げ頭のオジサンに狙われてるからさ」
トニー「……ハッ、冗談だろ御剣。オバディアが僕の命綱を奪うとでも? あいつは父親代わりだぞ。それに、その手に持っている『スペア』は何だ?」
御剣「僕と、クリムの共同開発による『超進化型アーク・リアクター(保険付き)』さ。ハザードの暴走エネルギーすら型にはめるビルドの数式を組み込んである。にわかな僕の直感がね、近いうちに君のそのピカピカ光る新型が『盗まれる』って言ってるんだよ。だから、本物はここに置いていって、手術の間はこっちのスペアをつけてなよ。あっ、外付けだから安心してね」
インセン「トニー、クリムの計算でも、オバディア・ステインの身体反応には致命的な焦りと殺意が混ざっていた。御剣くんの直感は、時に物理法則すら超えて正しい。私からも頼む、これを着けてくれ」
トニー「……やれやれ、お前たちがそこまで言うなら、おとなしく保険に入ってやるとしよう」
カチリ、とトニーの胸に「御剣特製のスペア・リアクター」が装着される。トニーが完全に麻酔で眠りについたのを見届けてから、御剣は一人、上のリビングへと上がった。
俺は淹れたてのコーヒーを持って、太平洋を一望できる地上の大豪邸のリビングへと上がった。ソファに深く腰掛け、海を眺めながら一息ついていると、突如として正面の自動ドアが開き、重々しい、しかし迷いのない足音が響いた。
現れたのは、きっちりと着こなした米空軍の制服に、数々の勲章を胸に飾った、生真面目そのものの黒人軍人。トニー・スタークの唯一無二の親友であり、米軍とのパイプ役でもある男――ジェームズ・ローディ中佐だった。
ローディ「……誰だ、お前は。トニーのセキュリティはどうなっている? ジャーヴィス、この男は一体――」
御剣「ああ、ジャーヴィスなら今、地下でトニーの手術のサポートにかかりきりだから、僕が代わりに対応するよ、ローディ中佐」
俺はコーヒーカップを置き、ゆっくりと立ち上がった。
ローディの目が一瞬で据わり、軍人特有の鋭い警戒オーラがリビングを包み込む。見慣れない東洋の若者が、親友の自宅に我が物顔で居座り、自分の名前まで知っているのだ。警戒しない方がおかしい。
ローディ「私の名前を……? 質問に答えろ。不法侵入なら、今すぐ現兵力をここに突入させるぞ」
御剣「はは、相変わらず生真面目だなぁ。米軍の報告書(アフガンの一件)は読んでないのかい? ……警戒を解いてくれ。僕は敵じゃない。むしろ、君たちの同盟国の人間だ」
俺は懐から、日本政府・防衛省直属の最高級セキュリティ身分証を提示した。
御剣「夜桜御剣。日本の自衛隊……まぁ、その中でも表の記録には残らない、総理直属の極秘エージェントだ。コードネームは『ビルド』。トニーとは、アフガンでちょっとした『行きずりの友人』になりましてね。今は彼の私的な安全保障を兼ねてここにいる」
ローディ「日本の、自衛隊だと……!? 冗談を言うな、自衛隊のエージェントがなぜ個人軍需企業のCEOの護衛を公式の許可なく行っている!?」
御剣「公式の許可なら、君たちの組織の『シールド』のコールソン捜査官や、ハルクを追ってるロス将軍の鼻を明かす形で、裏からちゃんと通してあるさ。……それに中佐。君だって、トニーが自社の兵器利権を全部捨てて、何を作っているか心配でここに来たんだろ?」
その言葉に、ローディは言葉を詰まらせた。
軍人としての鋭い視線が御剣の身分証と、その二十代前半とは思えない底知れないオーラを行き来する。生身の改造人間フィジカルを持つ俺の佇まいは、どれだけ隠しても、プロの軍人であるローディの皮膚をビリビリと刺激しているはずだ。
ローディ「……トニーは今、どこにいる。無事なんだろうな」
御剣「ああ、無事も無事。今まさに、地下でウー先生とおやっさんがトニーの胸に埋まった『すべての破片』を取り除く大手術の真っ最中さ。今日を限りに、あいつはあの光る胸のリアクターがなくても生きていける、健康な身体に戻る」
ローディ「破片を、すべて……!? そんなことが可能なのか?」
御剣「まぁね……さあ中佐、話が長くなりそうだ。おやっさんの淹れたくれた美味いコーヒーの残りがある。トニーが目を覚ますまで、ゆっくりしていってくれ」
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ウー先生とおやっさんによる手術が無事に成功し、数日が経ったある夜。
マリブの豪邸の静まり返ったリビングに、車椅子の必要がなくなった健康な身体のトニー・スタークが一人、グラスを傾けていた。そこへ、影のように近づく足音。
オバディア「素晴らしい生還劇だったな、トニー。心臓の破片もすっかり消えたそうじゃないか」
トニー「オバディア……。こんな夜更けにどうした?」
オバディア「いや、君が軍事部門を閉鎖してくれたおかげで、会社の株価は暴落、役員会は君を追放する一歩手前でね。だから……私の『新しいオモチャ』を起動させるために、その胸のリアクターを譲ってもらいに来たのさ」
次の瞬間、オバディアは懐から取り出した特殊な高周波ソニック・デバイスをトニーへと突きつけた。キィィィンという鋭い高音。本来なら全身の神経を麻痺させ、身動きを奪うはずの兵器。
しかし――トニーは、わずかに眉をひそめただけで、手にしたグラスを平然と机に置いた。
トニー「……不快な音だな、オバディア。それがテン・リングスからマーク1の残骸を買い叩いて作った、君の『切り札』の一部か?」
オバディア「な、何だと……!? なぜ動ける!? そのデバイスは神経を完全に麻痺させるはず――」
トニーは、仕掛けられた罠の不条理に対して怒鳴り散らすことはしなかった。
ただ、その瞳の奥には、砂漠の地獄から生還した時よりも深く、暗い陰影が落とされている。彼はゆっくりと立ち上がると、自分を殺そうとした男――父親の代から自分を支え、誰よりも信じていたオバディアの顔を、ただ静かに見つめ返した。
トニー「……君には失望したよ、オバディア。本当に、残念だ。……僕は君を、心から信じていたのに」
オバディア「トニー……」
トニー「ハッ、僕の胸を甘く見るな。僕の素晴らしい同期とおやっさんがね、事前にこのリアクターの出力ラインに制御数式を組み込んでおいてくれたんだよ。外部からの干渉は、この中で全て別のエネルギーに変換されて処理される。……残念だったな。君が盗もうとした僕の技術は、もう君の手には負えない領域にあるんだ」
トニーは自嘲気味にフッと笑うと、胸のシャツのボタンを外し、ギラギラと青白く輝く新型リアクター(御剣特製のダミー)を自ら引き抜いてオバディアの手に握らせた。
トニー「それが欲しいんだろ? 持っていけよ。ただし、それは本物の『アーク・リアクター』じゃない。僕たちの科学をこれでもかと詰め込んだ、特製の『おとり』だ。……御剣! 網にかかったぞ!」
御剣「はいはーい、お待たせしました!」
リビングの影から、黒いタクティカルウェアに戻った御剣が、おやっさん、ベルトさん、そしてローディ中佐と共に悠然と姿を現した。
オバディア「おのれ、ハメたなトニー……! だが、リアクターのコア技術さえ手に入れば、私の『アイアンモンガー』は完成する! 世界を
牛耳るのは私だ!!」
オバディアはダミーのリアクターを抱え、狂ったように夜の闇へと逃走した。スターク・インダストリーズの地下研究施設に眠る、マーク1のデータを不格好に巨大化させた鉄クズの化け物――アイアンモンガーを起動させるために。
ローディ「スターク、あれが君の言っていた裏切り者か! すぐに空軍の特殊部隊を――」
トニー「必要ないよ、ローディ。僕たちの『科学』の、本当の実験相手には丁度いい。……行くぞ、御剣、ベルトの旦那、ジャーヴィス!」
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数十分後、スターク・インダストリーズ本社ビルの周囲のハイウェイは、巨大な鉄の怪物『アイアンモンガー』の暴走によって地獄絵図と化していた。
車を踏み潰し、ガトリング砲を乱射するオバディアの前に、夜空を切り裂いて「銀色の光の矢」が舞い降りた。
トニー・スタークが身に纏うのは、アイアンマン・マーク2(超進化版)。その全身の装甲の隙間には、ファイズの技術である『フォトンストリーム』が美しく青白く脈動している。
オバディア『ハハハ! 来たなトニー! そんな細っぺらい銀色の鉄クズで、この私の圧倒的な破壊力と重装甲に勝てると思っているのか!』
トニー『スペックで勝負する段階は、僕たちはもう何日も前に通り過ぎてるんだよ。……夜桜、そっちは準備いいか?』
御剣「いつでもいけるよ、トニー。原点(1号)の次は、君のマーク2と最高に『ベストマッチ』する相棒(パートナー)で行こうか」
トニーの横に並び立つ御剣が、腰の前に右拳を構える。出現したのは、歯車と数式のホログラムが周囲に浮かび上がる、あの【ビルドドライバー】だ。
御剣は二つのフルボトルを激しく振り、装填してレバーを猛烈に回転させ始めた。
『ラビット!』『タンク!』
『ベストマッチ!』
『Are you ready?』
御剣「変身!」
『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イエイ!』
赤と青のランナーが組み合わさと、仮面ライダービルドが誕生する。
御剣「さあ、実験を始めようか、オバディア!」
オバディア『小癪な虫ケラどもが、まとめてすり潰してやるわ!!』
アイアンモンガーの巨大な右拳が、凄まじい風圧と共に二人へと振り下ろされる。
しかし、次の瞬間。マーク2の内部でベルトさんが叫んだ。
ベルトさん『トニー、今だ! コア・ドライビア、重力制御リミッター30%解放! 【重加速】を展開したまえ!』
キィィィン……!
マーク2から放たれた目に見えない超重力場が、周囲の空間の『時間の進み』を極端に遅くした。
振り下ろされるアイアンモンガーの巨躯が、まるで泥の中に沈んだかのようにピタリと超スローモーションになる。
オバディア『な、何だこれは……!? 身体が、重い、動かん……!?』
トニー『僕たちのスピードについて来られないだろ? ジャーヴィス、システムをファイズの「アクセルモード」へとコンバート! 10秒間の神速(テスト)の開始だ!』
ジャーヴィス『了解、サー! 先ほどのクモのボウヤの理論を応用し、ノイズデータを88%カット! 脳波同調プロトコル、スタート!』
『START UP(スタートアップ)』
カシャァァン! とトニーのマーク2の胸部装甲が左右に観音開きに展開し、フォトンストリームが鮮烈な「銀色」へと染め上がる。
通常の1000倍――マッハ50の世界。世界の動きが完全に停止した静寂の中、トニーのマーク2。一方ビルドは…
ビルド(え?もうスタートアップすんの?)
せめて拘束くらいは、とレバーを回す。
『Ready!Go!ボルテック!フィニッシュ!』
フィニッシュはしません、そのまま出現した数式グラフの軌道でスーッと挟みます。行きますよ〜せーの、あ"ぁ"〜鉄が挟まった音〜♪
トニー『一瞬でスクラップにしてやる!』
マッハ50の速度で、マーク2の両手から放たれる高密度リパルサー光線が、アイアンモンガーの関節部へと正確無比に何百発と突き刺さる。アイアンモンガーの巨躯をあらゆる角度からメッタ刺しに叩きのめしていく。
『THREE(スリー)』
『TWO(ツー)』
『ONE(ワン)』
『TIME OUT(タイムアウト)』
プシューッ、とマーク2の胸部装甲が閉じ、世界の時間が動き出したその瞬間。
――ドゴォォォォォォォン!!!
遅れてやってきた凄まじい衝撃波と共に、アイアンモンガーの全身の重装甲が、文字通り「一瞬で同時に大爆発」を起こした。
何が起きたのかすら理解できないまま、オバディアの駆る巨大な鉄塊は、ただの1歩も動くことができずに、一瞬で完全なスクラップ(鉄クズ)と化して地面に崩れ落ちたのだった。
トニー「……フッ。実験は大成功だな、夜桜」
御剣「俺変身しただけかい…これ、オーバーキルにも程があるね。お疲れ、トニー」
爆炎を背に、銀色のスーツのマスクを跳ね上げてコーヒーを求めるトニーと、ビルドの変身を解除して飄々と笑う御剣。世界のバランスを揺るがす最初の決戦は、二人の天才の圧倒的な「科学の答え」によって、秒で幕を閉じたのだった。
________________________________
スターク・インダストリーズの本社ビルを揺るがした大決戦から、数時間が経過した。
オバディアの野望は潰え、ハイウェイの爆炎もようやく鎮火した頃、マリブの地下ガレージには、いつもの静けさが戻っていた。
ガレージの中央には、オバディアの猛攻を無傷で耐え抜き、鈍い銀色の光を放つアイアンマン・マーク2(超進化版)のパーツが整然と並べられている。その傍らで、トニー・スタークは工具を握ったまま、動かなかった。
圧倒的な勝利。世界最高の科学の証明。
しかし、トニーの背中は、まるで目に見えない巨大な重圧に押し潰されているかのように、酷く小さく、そして震えていた。
御剣「……トニー。おやっさんの淹れてくれた三発目のコーヒー、冷めちゃうよ」
コンテナのラボから出てきた御剣が、静かに声をかけた。
トニーは振り返らない。ただ、ゴールドチタンの装甲に反射する自分の顔を見つめながら、掠れた声で、胸の奥に澱んでいた「本当の恐怖」を絞り出すように呟いた。
トニー「……怖いんだ、御剣」
御剣「……何がさ」
トニー「この『力』が、他人の手に渡ることが、狂おしいほどに怖い。……僕は砂漠で見たんだ。人々を救い、守るために作ったはずの僕の兵器が、テロリストの手に渡り、無関係な人々の命を無慈悲に奪っていた現実を。僕はそれを、自分の作った力で殺されかけるまで気づかなかった。……だから僕は、このスーツを、この技術を誰にも渡したくない。軍にも、政府にも、ローディにだってだ……一度でも他人の手に渡れば、それはまた、人を殺すための『最悪の兵器』に逆戻りする。そのトラウマが、今でも僕の脳裏にへばりついて離れないんだよ……!」
トニーは握りしめていたスパナを床に叩きつけた。ガシャァンという高い金属音がガレージに寂しく響く。
世界中から傲慢な天才と称される男が、初めて見せた、生々しい弱さと怯え。
その言葉を、御剣は静かに受け止めた。にわかな映画の知識ではない。目の前にいるのは、科学の責任という十字架を背負って、血を吐くような思いでヒーローになろうとしている一人の不器用な男だ。
御剣「……分かるよ、トニー。君が怯えるのは当然だ。君は誰よりもその技術の『重さ』を知ってしまったからね。……だけどさ、だからこそ君に最初、あの『G3システム』の歴史を見せたんだ」
トニー「……G3だと?」
御剣「そう。G3は誰でも着られる汎用性の高いインフラとして作られた。だけど、その未熟さのせいで装着者は何度も死にかけ、AIに振り回され、味方に銃口を向ける欠陥すら生んだ。……ビルドの桐生戦兎だってそうだ。彼が『愛と平和』のために作ったシステムは、国同士の戦争の道具にされ、最悪の暴走兵器として他人の命を奪う大罪にまで繋がった。……科学が強大な光を生み出すとき、影もまたその濃度を増す。これは、どの世界でも変わらない絶対の方程式さ」
御剣はゆっくりとトニーに歩み寄り、その引き締まった肩にポン、と手を置いた。
御剣「だけどね、トニー。彼らはそこで力を他人に渡す恐怖から逃げ出して、技術を隠蔽したかい? 違うだろ。小沢澄子は高村教授のアドバイスで人間の意志を信じ、AIの性能をあえて落とした『G3-X』を完成させ、戦兎はハザードの闇を別の科学で制御して、最後は『ジーニアス』という完全なる統合の科学で世界を救ったんだ。科学がもたらした涙は、他人に渡すのを怯えることじゃなく、君が『その先にある完成(ゴール)』へとアップデートし続けることでしか、拭い去れないんだよ」
ベルトさん「その通りだ、トニー。私の生みの親である科学者もね、自らの技術が人類を滅ぼす兵器に悪用された。だが、私は技術そのものを呪うのではなく、自らの意識をこのベルトに移してまで、次の世代の『人間の意志』を信じて共に戦う道を選んだ。……君の隣には、もうジャーヴィスという、命を預け合える最高の相棒(パートナー)がいるじゃないか」
トニーは息を呑み、胸のリアクターを、そしてガレージのスピーカーを通じて自分を静かに見守っているジャーヴィスの波形を見つめた。
そこへ、ガレージの隅から、温かい湯気が立つコーヒーカップを持ったインセン博士――おやっさんが、穏やかな、しかし科学者の先輩としての確固たる足取りで近づいてきた。
インセン「トニー。君は今、すべてを一人で背負って、孤独に世界中の悪意と戦おうとしているね。……だけど、忘れないでほしい。私をあの砂漠の洞窟から救い出し、ウー先生と共に君の心臓を完全に治してくれたのは、誰の科学だい?」
トニー「それは……お前たちと、僕の……」
インセン「私と一緒に、協力してきたじゃないか、トニー。君はいつもは一言余計だが、肝心なときは話さない性格だ」
おやっさんは優しく微笑み、トニーの手に温かいコーヒーカップを握らせた。
インセン「君の作った技術が、他人の手に渡って兵器になるのが怖いなら、私たちはその悪意を上回る『正しい使い手』を、君のその目で見極め、育てていけばいい。……君はもう、孤独な天才じゃない。私たちがいる。クリムがいる。そして、君を誰よりも理解し、君の背中を支える御剣くんがいるんだから」
トニー「……インセン」
トニーの瞳に宿っていた、トラウマという名の暗い濁りが、おやっさんの言葉によって、そしてガレージを満たす温かいコーヒーの香りのように、じんわりと溶かされていく。
トニーはコーヒーの温かさを手のひらで感じながら、バツが悪そうに、しかし心底救われたような、いつもの不敵な笑みを少しだけ口元に取り戻した。
トニー「……お前の場合は特別なんだがな、インセン。……いや、お前たち全員が、僕にとっては『特別(ベストマッチ)』か」
トニーはコーヒーを一口、大切そうに飲み干すと、床に落ちていたスパナを拾い上げ、御剣に向かってニヤリと笑ってみせた。
トニー「……そうだな。分かったよ、夜桜。他人に技術を渡すのが怖いなら、渡しても絶対に悪用できないくらいの『完璧な制御システム』を、僕たちの手で一つずつ、執念でアップデートし続けてやろうじゃないか。……まずは、あのオバディアの鉄クズを踏み潰したマーク2のデータをベースに、僕のプライベート・カラーを施した『次の鎧(マーク3)』の設計からだ。付き合えよ、同期(ライバル)」
御剣「ふん、言われなくても。一秒も寝かさないって言ったのは、君の方だからね、トニー・スターク」
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オバディア・ステインの引き起こした暴動から一夜明けた、スターク・インダストリーズ本社。
再び世界中のフラッシュの光とメディアの怒号で埋め尽くされた広報ロビーの最後列に、漆黒の高級スリーピーススーツを完璧に着こなした夜桜御剣は、静かに壁に背を預けて立っていた。その隣には、彼を優しく見守る「おやっさん」ことインセン博士の姿もある。
御剣「……さあ、本当の特等席だ」
壇上に現れたトニー・スタークは、数日前のやつれた姿とは打って変わり、自信と、そしてガレージで仲間たちと導き出した「科学の答え」を胸に、堂々とした足取りで演台の前に立った。
コールソンから手渡されたメモと新聞をチラリと見つめ、トニーはフッと笑った。
トニー「……色々と、憶測が飛び交っているようだね。あのロボットは一体何者なのか、と。……実は、メディアがつけた『アイアンマン』という呼び名は、なかなかに良い響きだと思っている。……元はある日、僕の前に現れた生意気な男が口にした『あだ名』と、まんま同じだったな」
記者たちが一斉にざわめき、マイクを突き出す。
記者「スタークさん! あの銀色のスーツはあなたの作った最新兵器ですか!? 日本の極秘エージェントが関わっているという噂は本当ですか!?」
トニー「日本のエージェント? ハッ、彼はただの生意気な僕の『同期(ライバル)』さ。……だが、あのスーツに関して、米軍が用意した『ガードマンが中に乗っていた』という公式発表は、少しばかり、事実と異なっている」
最前列で胃を痛めそうに頭を抱えるペッパーと、苦笑いするコールソン捜査官。
トニーは手元のメモをそっと机に置くと、記者席の最後列で腕を組んで不敵に笑う夜桜御剣へと、折り目正しい、しかしどこか悪戯っぽい視線を真っ直ぐに投げかけた。
御剣は目線だけで『往けよ』と告げる。二人の天才の間に、今度こそ、世界を救うための絶対的な信頼のアイコンタクトが結ばれた。
トニーは前を向き、世界に向けて、これからの未来のすべてをひっくり返す言葉を、高らかに宣言した。
トニー「――真実を言おう。私が、アイアンマンだ」
――ドォッ!!! と、会見場が昨日以上の狂乱とフラッシュの嵐に包まれる。
その光の渦の中心で、トニー・スタークは最高に不敵で、誇らしげな笑みを浮かべていた。
御剣「……マジかよあの馬鹿社長」
インセン「ふふ、彼らしい素晴らしい宣言じゃないか、御剣くん。さあ、私たちの『科学の実験』も、ここからが本番だね」
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衝撃の「アイアンマン宣言」から数日後。
マリブのスターク邸では、オバディアの一件の解決と、トニーの完全生還を祝うプライベートなパーティーが開かれていた。
リビングのカウンターキッチンでは、黒いエプロンを着けた御剣が、慣れた手つきで大量の豚肉に小麦粉と卵、パン粉をまぶして油に放り込んでいた。ガレージではなく、キッチンに心地よい揚げる音が響き渡る。
トニー「おい御剣、さっきからガレージの換気扇を通じてとんでもなく美味そうな匂いが流れてくるんだが、その『サクサクした黄金の塊』は何だ?」
御剣「日本のソウルフード、『かつ丼』だよ、トニー。おやっさんの手作りサンドイッチへの、僕からのちょっとしたお返しさ」
インセン「ほう、これが噂に聞く日本のカツか。出汁と卵の香りが素晴らしいね、御剣くん」
ペッパー「トニー、あまり食べすぎないでね。まだ片付けるべき書類が山積みなんだから」
そんな賑やかで温かい空気の中。ガレージの隅、暗闇に包まれた崖側のテラスに、突如として『一人の男』が影のように音もなく佇んでいた。
黒いロングコート。そして、その顔の半分を覆う印象的な「黒い眼帯」。
国際戦略秩序機関シールド(S.H.I.E.L.D.)のトップにして、世界の裏を統べる最高権力者――ニック・フューリー長官だった。
フューリー「『私がアイアンマンだ』、か。……ずいぶんと派手に世界をひっくり返してくれたな、スターク。自分が世界で唯一の『超人』だとでも思っているのか?」
フューリーの冷徹な声がガレージに響いた瞬間、トニーやペッパーがハッと警戒の目を向けた。……が、御剣だけは、揚げたてのカツをザクザクと包丁で切りながら、フッと不敵な笑みを浮かべた。
御剣「おや、お出ましだね。独眼の長官サマ。……トニーに『アベンジャーズ計画』の話をしに来るには、ちょっとタイミングが早かったんじゃない?」
フューリー「……何だと?」
フューリーの唯一つの眼が、鋭く御剣を射抜いた。一般人が絶対に知るはずのない、自分の真の身分と、極秘裏に温めていた『計画』の名前。
御剣はコンソールの前を通り過ぎる瞬間に、頭の中の『地球の本棚』を瞬時に全開にして検索をかけていた。
検索ワード:ニック・フューリー、本名、過去の機密、眼帯の理由
頭の中に広がる真っ白な書庫から引き出された、本人しか知り得ない極秘の『真実』を、御剣はフッと笑いながら、フューリーの目の前で平然とさらけ出した。
御剣「ニコラス・ジョセフ・フューリー長官。……警戒する必要はないよ。君が1990年代に、地球に落ちてきたあの『不屈のキャプテン(マーベル)』と出会い、宇宙人(スクラル人)のいざこざに巻き込まれて、最終的に【ただの宇宙人の猫(グース)】に左目を引っかかれてその眼帯をつける羽目になったことくらい、僕の頭脳(本棚)にかかれば筒抜けだからさ」
フューリー「……ッ!? お前、一体それをどこで――」
世界最高の秘密警察のトップであるニック・フューリーの顔が、この瞬間、完全に驚愕と戦慄で凍りついた。シールドの最高機密データベースにすら、ただの「尋問時の名誉の負傷」と隠蔽してある『猫に引っかかれた恥ずかしい真実』を、目の前の東洋の若者が一言一句違わずに言い当てたのだ。
トニー「ブッ……! はははは! おい御剣、マジかよ! その強面の長官サマの眼帯、ただの猫の引っかき傷なのか!?」
ベルトさん「はっはっは! 宇宙の神秘だね、トニー!」
ジャーヴィス『私の論理データベースにも、今、最高のユーモアが記録されました』
大爆笑するガレージの天才たちの中で、フューリーは完全にプライドを砕かれ、銃を引き抜くことすら忘れて呆然と御剣を見つめていた。その姿を見ながら、御剣はどんぶりにご飯を盛り、揚げたてのカツを卵でとじてドサッと載せると、最高に飄々とした笑顔でフューリーに差し出した。
御剣「さあ、歴史の裏回し、第一章はこれでおしまい。――長官サマ、日本の最高に美味い『かつ丼』、食べてく?」
差し出された湯気立つかつ丼を前に、シールド長官はただ黙って眼帯の奥の目を丸くするしかなかった。
二人の天才と、偉大なるライダーの数式(ベストマッチ)が、マーベルの激動の未来を完全に塗り替えながら、物語は次なる実験(フェーズ2)へと突き進んでいく――。
MCUのキャラ誰かを仮面ライダーに変身させる予定は今のところありません。もしやるとしたら、ナターシャとクリントかな?