夏油inまどマギ世界 作:使い魔
翌日。
茜色のグラデーションが空を染め上げる時刻、夏油が帰路についていた時のことだった。
人通りの多い大通りから少し外れた交差点で、聞き覚えのある切迫した足音がこちらへ向かって駆けてくるのが聞こえた。
「マミさん、こっちです……!」
「ええ」
息を弾ませ、走り抜けていこうとする二人の少女──鹿目まどかと巴マミの姿が夏油の視界に飛び込んできた。
こちらにも気づかないほど焦っている様子や、まどかの肩にいつものキュウべえの姿や美樹さやかの姿もないことに、夏油は目を細める。
「──巴さん! 鹿目さん!」
夏油が咄嗟に声をかけると、二人は弾かれたように足を止める。
「! 夏油さん!」
「あっ! 夏油先輩、大変なんです……! いま、病院に、魔女の結界が……それで、さやかちゃんたちが……!」
「落ち着いて、鹿目さん。なんとなく事情は察せたよ。……少しでも戦力や手数は多い方がいい、私も一緒に行くよ」
「夏油さん……! ありがとう、助かるわ」
混乱するまどかを落ち着かせるように夏油が優しく肩を叩き、マミが頷く。
三人で駆け足で移動しながら、マミが短い呼吸の合間に素早く事情を説明してくれた。
さやかとまどかがお見舞いに訪れていた上条恭介の入院先──市立見滝原総合病院。
その敷地内の駐輪場に、魔女の卵……グリーフシードが残されていたという。しかもそれは今まさに孵化直前であり、放置しておけば病院全体を巻き込むほどの惨事になりかねない。
そうならないよう、さやかは現場に残りキュウべえと共にグリーフシードの監視を続け、まどかはマミを呼びに走っていたのだという。
「テレパシーを通じて美樹さんたちに状況を聞いているわ。孵化まではまだ時間があるみたいだけれど、油断はできないわね」
「テレパシー?」
「キュウべえを介することで、全員で会話が共有できるのよ。二人ともいま結界内に囚われているから、今は遮断されてしまっているんだけれど……」
どうやら病院までは離れていなかったようで、数分も経たずに病院の裏手に到着した。
二人分のスクールバッグが放置されており、さやかとキュウべえの姿はそこにはない。病院の柱には、何かが刺さっていたようなひびが入っていた。
一般人の目には何も映らないのだろうが、夏油たちの視界には、その隙間から溢れ出すどろりとした悪意と、おぞましいコラージュのような異世界の断片がはっきりと見えていた。
「ここね」
「突入前に帳を張っておくよ。ここは人通りも多いだろうからね」
「ええ、お願い夏油さん」
夏油は静かに人差し指と中指を立てる。
「──闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え」
その詠唱に呼応するようにして、上空から垂れ込める墨のような黒が巨大なドーム状の膜となって広がる。夕焼けの空を塗りつぶしながら、それは周囲を急速に包み込んでいった。
「これで一般人はここを視認も侵入もできないはずだよ」
「ありがとう、それじゃあ行きましょう」
マミが凛とした表情で踏み出し、手を前に出す。指輪に変化させていたソウルジェムが強く煌めき、その魔力が結界の入り口を露わにした。
『キュウべえ、状況は?』
『まだ大丈夫。すぐに孵化する状況ではないよ』
空気の震えと耳を介してではなく、突然脳内に流れ込んできたマミの声とキュウべえのあの平坦な声に、夏油が思わず顔をしかめた。慣れるまではなかなか違和感がありそうだ。
『ってあれ、夏油先輩もいるの!? ナイスじゃん』
『……美樹さんか。元気そうで何よりだよ。そちらは大丈夫かい?』
『あたしはぜんぜん問題ナシ! 暇すぎて欠伸が出そう』
『美樹さん。もし孵化が始まって魔女が出てきたら、キュウべえの誘導に従ってすぐに隠れるのよ!』
『りょーかいです!』
下手に魔力や存在感を示し、刺激してすぐに魔女を孵化させるよりは、静かに来た方がいい。キュウべえの言葉により、夏油たちはそっと結界の中に入り込む。
近くに病院が建っているこの立地の影響かなんなのか。
魔女の結界の中は、包帯で結ばれた道や薬の瓶や医療器具が立ちふさがり、それに混じる可愛らしくもおどろおどろしいお菓子のようなものが散らばっている亜空間が広がっていた。
足音を立てすぎないよう、しかし最短ルートでグリーフシードのもとへ向かっていたが──背後に感じる気配に、夏油が、そしてマミが足を止める。
「言ったはずよね。二度と会いたくないって」
マミが穏やかに、しかし不敵に微笑みながら振り返る。
その先にいた黒髪の少女──暁美ほむらは、冷たさを感じるほどの無表情で髪を後ろにかきあげた。
「……今回の獲物は私が狩る。あなた達は手を引いて」
「そうもいかないわ。美樹さんとキュウべえを迎えに行かないと」
「その二人の安全は保障するわ」
「……。たとえその言葉が本心だとしても……私はあなたを信用できるほどの実力を知らないわ」
「……私が敗北するとでも言いたいの? どうしても引かないなら、実力行使でも──」
「待ってくれ」
会話が見込めないと分かりどこからかリボンを取り出そうとするマミと何か怪しげな動きを見せるほむらの間に、夏油が割り込む。
停滞する緊迫した空気が止まる。
「巴さん、気になるのなら私が彼女を見張っておくよ。少し話したいこともあるしね」
「夏油さん……」
「私のことは大丈夫。美樹さんの様子も心配だし、鹿目さんを連れて先に行ってくれ」
「……あなたと話すことなんてない。そこを引きなさい、夏油傑」
ほむらが目を細めて冷ややかに言い放つと同時に、左腕が鋭く動く。
そこに見えるのは、丸い盾のような装飾。光を反射し、彼女の意思に呼応して何か動きを示そうとして──
「おっと、動かないほうがいいよ」
ピクリ、とほむらの動きが止まる。
いや、止めたのではない。
「もう既に彼女の
ほむらのすぐ隣──真横の空間から、ゾワリと肌を撫でる禍々しく冷たい気配が立ち上っていた。
視線だけを横へと滑らせたほむらの瞳に、異形が映る。
ボロボロの大きなトレンチコートを羽織ったような影。そして、その顔面を覆う長い髪の合間から見える無数の目。包帯に巻かれていても分かるほど、耳元まで裂けた巨大な口、そこから覗く鋭く尖った歯。
『……ワ、わた、ワタし、キレイ?』
耳朶を直接震わせるような、おどろおどろしい女の粘着質な声。
ほむらの首元には、鋭利なハサミの刃が薄氷一枚ほどの距離で押し当てられている。
その異形の女の姿もハサミの刃も、すぐ傍に放置されているお菓子や医療器具の障害物が陰となっており、まどかやマミからは見えていないようだ。
何よりも、大柄な夏油自身が盾となるように彼女たちの視界に入らないようにしている。
突如動かなくなったほむら。
そして魔力とは違う
それは夏油ではなく、暁美ほむらを案じている様子だった。彼女はほむらに信用していないという意志を示しつつ、完全に敵として割り切っているわけではないという証左だった。
夏油は、マミを安心させるようにニコリと温和に微笑んでみせる。
「大丈夫。彼女を傷つけるつもりはないよ。少し話をしたいだけさ」
「そう……分かったわ。じゃあここはお任せするわね」
少しの躊躇のあと、マミは夏油に向かって頷いた。
ほむらから視線を外さないまま、まどかの手を引いて先へと進む。
「行きましょう、鹿目さん」
「えっ、あ、は、はい……!」
まどかは終始おろおろしていたものの、マミに手を引かれてようやく返事をした。
後ろ髪をひかれるような表情を夏油とほむらに向けながらも、マミに連れられてその場から立ち去っていく。
二人の足音が包帯の敷き詰められた廊下の奥へと消えていき、歪んだ亜空間の只中には、夏油とほむらの二人だけが取り残された。
静寂が満ちる。ほむらは、まどかの背中が見えなくなるまでそちらを凝視していたが──やがて、怒りすら滲む瞳で夏油を睨みつけた。
そのまま再び銀色の円盤が装備された左腕を動かそうとして、それができない。
「彼女は──『口裂け女』という怪談から生まれた呪霊でね」
夏油はゆっくりとほむらとの距離を詰め、唐突に口を開いた。
「質問に答えるまで、お互いに一切の不可侵──攻撃行動を取ることができない簡易的なルールを強制することができる。下手なことをすれば、彼女の刃が君の喉元を裁断する方が早いと思うけれど……試してみるかい?」
ほむらは息を呑み、動かしかけた左腕を静かに止めた。
「今はこんなことをやっている場合じゃない。一刻の猶予もないわ。このままじゃ……!」
「このままじゃ……。まるで、この先を知っているかのような言い草だね。もしかしてこの結界の魔女のことも知っているのかい?」
「……何が目的?」
質問に質問で返される。刺さるようなほむらの視線を受け止めながら、夏油はふっと目を細め、静かに口を開いた。
「少し話がしたいだけだよ。君の魔法が何かは知らないけれど……それを収めておとなしくしてくれるなら、こちらも何もしない。君はただ首を縦に頷いてくれるだけでいいんだ」
「……やり方がヤクザと変わらないわね。それは脅迫というのよ」
「それが返事かい?」
「……、……分かったわ。けれど、会話をするなら後でいくらでも時間をとる。今は、本当に時間がないの。このままでは巴マミが……マミさんが死んでしまう」
「……何を言って……。いや……、」
ほむらの突拍子もない言葉に夏油は一瞬瞠目したが、すぐに真剣な表情に戻す。
ほむらの表情が真剣そのものであり、あの時ふたりで会話した時以上の緊迫感を孕んでいるのを見ると、それを一蹴することはしなかった。
「それは、本当なのか?」
確認を求めるような問い。ほむらは真っ直ぐと夏油の目を見つめ、しっかりと頷いた。
それを見てから、夏油は静かに溜め息を吐いた。
瞬間、ほむらの首元に突きつけられていた鋭利なハサミの刃が、そしてほむらの視界を圧迫していた怪異の異形が、煙のように霧散していく。
空間を支配していたあの息が詰まるほどの不快な
「……この件が無事に終わった後、必ず私と話す時間を作ってもらうよ。嘘や誤魔化し、まして逃亡はナシだ。これは単なる口約束ではなく、
「……分かってる。この件が終われば、あなたの質問に答える時間を設けることを約束するわ」
夏油が『縛り』という単語を使ったのはほとんど無意識であったが──その単語を舌の上に乗せて口にした途端、吐き出した言葉に、何かしっかりとした力が籠る気配を感じていた。
ほむらもまた、首元を軽く指で撫でながら、夏油を見返した。
「ありがとう、拘束のためとはいえ、手荒な真似をしてすまなかった。……そうと決まれば、立ち話をしている場合じゃないね」
直視してくるほむらの瞳に揺らぎがないことを確認し、夏油は頷いた。
「ひとまずあの二人を追いかけよう。巴さんを死なせたくないという思いは、私と君も、共通しているようだからね」
鹿目まどかからの純粋で真っ直ぐとした──それはまるでキラキラと金平糖のように甘く輝くような、尊敬と羨望の眼差し。
そして、ともに魔法少女として戦うという言葉を受けた巴マミの心は、ひどく高揚していた。
これまでに感じたことのない充足感と、胸の奥から湧き上がる温かな期待。そして脳裏に響く暁美ほむらの『あなたはあの二人を魔法少女に誘導している』『危険に巻き込んでいる』という言葉が、罪悪感となって横からマミの心を柔く、深く刺す。
それを受け止めながら。まどかに魔法少女になることの危険性を説いて、あえて突き放すような物言いをしつつも──それでもまどかは、マミと共に戦いたいという意思を示した。
弱き者を助けるために力を振るい、マミを仲間だと言ってみせた夏油傑。
次いで、マミに憧れたうえで魔法少女になりたい、マミと共に戦いたいという願いを表明した鹿目まどか。
誰かのために一人で戦い続けてきた孤独な日々に、ついに光が差し込んだ。浮かれるのも当然だった。
「……もう、何も怖くない」
小さく呟いた言葉には、確固たる決意が宿っていた。
結界の最奥で──物陰に隠れているさやかとまどかが見守る前で──マミは襲い来る魔女の使い魔たちを軽やかな足取りで次々と散らしていく。
無数に召喚されるマスケット銃が閃光を放ち、お菓子や医療器具の散乱する異空間を華やかに彩った。
マミの目の前で、可愛らしい小さな魔女が、ふわりふわりと空から舞い降りるように姿を現し、長い椅子に腰を下ろす。キャンディのような丸い頭部に円らな目。
一見ただの人形の様にふにゃりとしていて、動く様子はないが──もちろんマミはそんな姿に油断はしない。
「悪いけど、一気に決めさせて──!」
マスケット銃を振り回し、魔女の小さな体を吹き飛ばしながら容赦なく撃ち抜いていく。そのまま空中にリボンで拘束すると、マミが魔力で顕現させた巨大な砲身から放たれた目もくらむような魔力の奔流が起こり──
「ティロ・フィナーレ!!」
魔女の巨体を正確に穿つ。直撃だった。
「やった!」
「マミさん、すごい……っ!」
さやかとまどかが瞳を輝かせ、物陰から顔を出して駆け寄ろうとしたその時だった。
身体を穿たれたはずの魔女の小さな口内から、「頭部」──巨大な口と鋭い歯を持った蛇のような異形が飛び出した。
「えっ」
いつもより浮かれていたからこそ。そして必殺技の直撃を見送っていたからこそ、マミは無防備だった。
だからこそその首元をめがけて、可愛らしい悪夢が大きな顎を開いた。
「──!」
回避も防衛も間に合わない死の刹那。
一瞬、
そして──次の瞬間にはマミの姿はその場から消えており、黒くカラフルな魔女の牙はただ虚しく宙を空ぶった。
「虹龍!!」
獲物がいなくなった事態にコミカルに驚く様子の魔女。
そして合間に響く夏油の声。
硬質な白い鱗に覆われ、光を受けて時折虹色に光を弾く巨大な龍が突如──その魔女目掛けて飛び込んできた。
『──!!』
結界の空気を震わせるほどの、龍の咆哮が響き渡る。
鱗と同様に最高度の硬度を誇る虹龍の牙が、お菓子の魔女の胴体に容赦なく噛みついた。
凄まじい衝撃波とともに、魔女の不気味な巨体は壁へと力任せに叩きつけられた。結界を構成する巨大な薬瓶やキャンディの柱を派手に粉砕し、バラバラと瓦礫となって落ちていく。
『──ッ!!』
不快な金切り声を上げてのたうち回る魔女だったが、夏油に一切の猶予を与える気はなかった。
「見た目のわりに喧しいね」
夏油は不敵に微笑みながら、滑らかに旋回する虹龍の背にそのまま飛び移った。
魔女が激昂しながら、使い魔たちを再び顕現させながら、自らも殺意の濁流となって夏油と虹龍を呑み込もうと迫る。
夏油は、極めて冷徹な瞳でそれを見極めながら、体術──洗練された動きで、最小限の跳躍と身のこなしのみで迫る注射針や使い魔の突撃をことごとく回避していく。
擦れ違いざま、鋭い手刀に濃密な呪力を纏わせ、迫る使い魔を易々と殴打して吹き飛ばす。さらには使い魔の足を引っ掴み、力任せに振るい回し──遠心力を乗せた使い魔は、周囲から肉薄しようとしていた使い魔たちの頭部や胴体を次々と砕き割っていく。
そうして最後に手を離して残りの使い魔たちにぶつけると、こちらに襲い掛かろうと口を開いている魔女の一撃を躱して虹龍の背から大きく跳躍しつつ──その魔女の頭蓋へ、重厚な蹴りを叩き込んだ。形容できない打撃音が響く。
魔法少女の華やかな戦闘とは一線を画す、呪霊と夏油による洗練された「暴力」が、お菓子の結界を形作っていた魔女を、完膚なまでに打ちのめしていく。
『────ッ!!』
なおも抵抗しようと顎を開く魔女に対し、夏油は視線を落とした。
「虹龍」
夏油の指示に応じ、虹龍が咆哮を上げる。
魔女の巨体をその強靭な顎で再び深く噛み留めると、その巨躯を持ち上げながら、螺旋を描いて結界の上へ上へと垂直に登っていく。
そうしてバリバリと空間を砕くような音を立てて壁を駆け上がり、最頂点へ到達した瞬間──虹龍は全身の筋肉を激しく収縮させ、魔女の胴体を天井を破壊しながら──完全に押し潰した。
「さて……
夏油が天井に向けて、右手を翳す。
白目を剥いて、天井から落ちてくるお菓子の結界の魔女。その姿からは魔力が溢れ出しており、もはや消滅寸前であったが──そこから溢れ出している魔力の残滓が、夏油の手のひらに収縮・集約していく。
お菓子の結界の魔女の巨躯が地面に沈むよりも先に──その身体は消え、そうして、夏油の掲げた右手の掌の上に、ポトリと黒い球体が落ちてきた。
夏油は掌に転がる暗い輝きを放つ種を見つめ、静かに指を絡めた。
「……これは……、成功した、のか?」
夏油がその身に秘めている、呪霊を手繰る呪術は──夏油自身も試行錯誤している段階だ。
魔女との戦闘を繰り返しているうちに、夏油は自分の呪力を使うことで、撃退した魔女がグリーフシードになる前に、別の姿──つまりこの黒い球体に変化させることができることを発見した。
とはいえ、黒い球体に完璧に変化させることができたのは、
いつもは呪力が上手くかみ合わず、結局グリーフシードに変化させてしまって終わっていたのだ。
(……こんなにあっさりうまくいくとはね。やっぱり、夢の変化は、私の呪術にも進化と変化を与えているのかもしれないな)
グリーフシードは魔女の卵。
一方で、夏油は自身の呪力を使って変化させたこの黒い球体は、もはや魔力ではなく、途方もない呪力が感じられた。呪霊の卵と言っても差し支えない。
夏油は以前から……勘ではあったものの、ほとんど確信に近い考えがあった。これを自分の中に取り込むことができれば──魔女を己の「呪霊」として、既に格納しているほかの呪霊たち同様に扱えるのではないかと。
(しかし、ここからどうやって自分の中に取り込むんだ……?)
ひとまずうまく呪霊の玉として取り込むことは成功した。あとは落ち着いてから考えようと、夏油はその黒い球体をポケットに忍ばせた。
魔女の結界が、お菓子と薬の世界がゆっくりと崩壊していく。
「みんな、もう大丈夫──」
振り返ってから、夏油は口を閉ざした。
魔女が首を穿つ前に間一髪マミを救い出すことに成功した暁美ほむら──に、巴マミがカタカタと身体を震わせてしがみ付いている姿が映る。すぐ近くでも、鹿目まどか、美樹さやかの二人が身を寄せ合って震えている。
ほむら以外の表情に浮かんでいたのは、安堵の色ではない。
明確な『恐怖』──死への恐怖であった。