『残念なスカウト』は勝ち筋を作る ~索敵・罠・毒。笑われた地味な技術で仲間を勝たせる~   作:久瀬ヤスノリ

27 / 27
第27話 盾は性に合わん

「ほな、今日は俺の奢りや。好きなもん頼んでええで!」

 

 反省会は、堂本が行きつけの居酒屋に行きたいと言っていたが、時間が早く、まだ開いていなかったため、手近なファミレスで済ますことにした。

 堂本は席に着くなり、メニューを樫村と成瀬に渡しながら言った。

 

「俺は生ビールやな。樫村さんは?」

「私もビールにします。飲むにはちょっと早いけど、飲みたい気分なので」

「おっ、ええなあ! やっぱり仕事の後の一杯は格別やろ!」

 

 朔と成瀬は烏龍茶を頼み、飲み物が揃うと乾杯した。

 

「慣れてないから、今日はずっと緊張してましたよ」

 樫村が、ビールを飲んで落ち着いてきた頃にそう言った。

 

「初心者の後衛をほったらかしにしてた前衛がいましたからね」

 成瀬はメニューを眺めながらさらりと言った。

「伊織、お前なぁ、何遍俺に謝らせたら気が済むねん」

 堂本が眉尻を少し下げ、困ったような表情で言うと、成瀬は「飽きたらやめますよ」と口角を少し上げて返した。

「なんや、今どきの子はドライやと思ったけど、ねっちこいな」

 

「私も、堂本さんがいなくなったときは結構怖かったです。朔くんがいてくれたから何とかなりましたけど……スカウトは基本中衛ですし」

 樫村も堂本に促されるまま、下の名前で呼ぶようになっていた。さすがに堂本のように呼び捨てにするのは抵抗があるらしく、朔くん、伊織くんと呼んでいる。

 

「樫村さんにまで言われると堪えるなあ」

 堂本は頭をかきながら、朔の方を見た。

「朔はどう思う? やっぱり俺、勝手に動きすぎか?」

「はい」

「即答かい!」

 堂本が素早くツッコむと、みんな笑った。

 

 なんだか懐かしい。

 大輝たちとも、ダンジョンに潜った後、簡単な打ち上げをよくしていた。朔は湊が待っていたので、少しだけ食べて話に付き合い、帰っていたが、柾木と大輝は二日酔いになるまで飲み、次の日に影響が出ることもあった。悪い思い出ではなかった。

 

「まあ、次からは朔の索敵をちゃんと聞いて動けばいいと思いますよ。この中では一番ダンジョン経験が多いみたいですし」

 成瀬が珍しくフォローするように堂本に言った。

 

 成瀬と朔は同い年だったため、お互いを下の名前で呼ぶよう堂本に強く言われ、仕方なくそうすることになった。成瀬もはじめは抵抗していたが、堂本が「先手必勝や」と熱弁してきたので、最後は二人とも折れた。

 

「せやな。ほな、今度一回、四人で潜らへんか?」

「ダンジョンにですか?」

「せや、休みの日にや。せっかく四人そろっとるんやし、普通に探索してみたいんよ」

 堂本はそう言って、ジョッキを持ち上げた。

 

「二階層やったら四人で楽勝やろ。せっかくやし、三階層まで行ってみいひん?」

 成瀬は少し考えるように箸を止めた。

「自主訓練としては、悪くないと思います。実際の魔物相手じゃないと、連携の練習にもなりませんから」

「私は、皆さんが一緒なら……」

 樫村も控えめに頷いた。

 

 三人の視線が、朔に集まった。

「……いいと思います」

「決まりやな! ほな、次の休みに集合や!」

 堂本は、少なくなっていたビールを嬉しそうに飲み干した。

 

 約束した休日。

 

 朔がダンジョンの入口に到着すると、すでに堂本が待っていた。

「おう、朔! こっちや!」

 朔は堂本の姿を確認して明らかにそちらへ向かっていたのだが、堂本はわざわざ手を大きく振り、朔を自分の方へ呼び寄せた。

 

「おはようございます」

「おう! 今日も頼むで!」

 堂本は、朝の情報番組のアナウンサーのように、テンプレート化された笑顔で今日も迎えてくれた。朔はこの笑顔に、初めは圧を感じてまっすぐ見られなかったが、何度か学校で話すうちに、特に意識することもなくなっていた。

 しかし、今日はいつもの笑顔を見せた後、なぜかソワソワと落ち着かない様子だ。

 

「どうしたんですか?」と堂本に声を掛けようとした時、朔はその視線の意味に気づいた。

「どうしたんですか、その盾?」

 朔が堂本の足元に置かれている大きな盾を指差して、そう言った。

 

「ああ、これか。ちょっと、イメチェンや」

 そう言って、なぜか照れくさそうにそっぽを向いた。

 

「盾は性に合わんのじゃなかったんですか?」

 柵の後ろから声が聞こえた。成瀬だ。

「性に合わん。性に合わんけど、性に合わんことを確かめるために持ってきたんや」

 堂本の後ろから押し殺すような笑い声が聞こえた。樫村だ。

 樫村が堂本の方をちらりと見ると、堂本はその視線から逃げるように顔を背け、大きな盾を拾い上げた。

 

「何か知ってるんですか? 樫村さん」

 成瀬がそう聞くと、堂本が成瀬と樫村の間を遮るように立った。

 

「知らん知らん。樫村さんは何も知らん。俺も何も言うてないわ」

 堂本がそう言うと、樫村は笑いを堪えながら答えた。

「はい。何も聞いてませんよ」

 樫村はそう言って立ち上がり、意味ありげな笑顔を朔と成瀬に向けてきた。

 

「行くで。盾が俺には合わんことを証明したるわ」

 堂本はそう言って、大きな盾を抱えて歩き出した。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

理論上、『聖剣』は錬金で作れる(作者:POTROT)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

レシピ通りの材料を錬金釜にブチ込めば決まった結果が出力されるタイプのRPG世界に、世界の真理を知ってる人間(廃人プレイヤー)を放り込む話。▼カクヨムにも投稿してます。


総合評価:19232/評価:8.57/連載:17話/更新日時:2026年10月21日(水) 21:59 小説情報

転職のスキル授かったらそりゃ全職極めるに決まってんだろ(作者:水色の山葵)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

人より道のりは長いが、ダンジョン中毒の彼にはあまり関係がない。▼カクヨムにも投稿してます。▼https://kakuyomu.jp/works/2912051601499000526


総合評価:8394/評価:7.88/連載:48話/更新日時:2026年10月18日(日) 17:18 小説情報

誰にでも出来る簡単な仕事(大嘘)(作者:オタリオン)(オリジナル:現代/コメディ)

1:ルールを破ってはならない。▼2:持ち場を離れてはならない。▼3:違反行動による損害等の責任は当方は負わない。▼4:どんな事が起きても業務を遂行しろ。▼「……まぁいいか」▼高単価の誰にでも出来る国営企業からの簡単なバイトは――超危険である。▼※スプラッターとホラー要素があります! 注意!※▼※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。


総合評価:19751/評価:8.77/連載:27話/更新日時:2026年10月21日(水) 18:34 小説情報

卍解までは転生者の嗜み。(作者:点差惨敗)(原作:BLEACH)

ナチュラルボーンド畜生主人公が無双する話


総合評価:49070/評価:8.93/連載:42話/更新日時:2026年10月21日(水) 16:10 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>